東方 白狐伝   作:蛸夜鬼の分身

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第五話 虹色の龍

雪「魔物を襲う魔物⋯⋯?」

 

レミリア「ええ。最近噂になっているのよ」

 

 執事生活をしてから約数年。レミリアとフランに紅茶を出しているとそんな事を聞かされた。

 

 詳しく聞くと、最近この辺りに住んでいるそれなりの実力の妖怪⋯⋯もとい魔物が決闘を申し込まれているらしい。その噂の者はかなりの実力者らしく、今度はレミリアを探しているとの事だ。

 

レミリア「何でも貴方と同じ東の方からやって来たそうよ」

 

雪「して、何故俺にそんな話を?」

 

レミリア「その者と少し『お話』したいと思ったのよ。で、貴方にちょっとした命令があるのだけど」

 

雪「⋯⋯俺にその者を連れて来いと?」

 

レミリア「まあ、少し違うけどそんなとこね」

 

 ⋯⋯レミリアの魂胆は、話という名の決闘をして新しい従者にでもしようって所だろう。聞いた限りだとそれなりに実力はあるみたいだし、任せるとしたら門番だろうか。

 

 まあ、俺の仕事が減る点では良いかもしれない。デメリットは無いだろう。

 

雪「早速探しに行きましょうか?」

 

レミリア「いいえ。明日の⋯⋯そうね、私が起きる少し前くらいに門番をしておいて。あっちからここに来てくれるから、十分にもてなしなさい」

 

雪「分かりました」

 

 レミリアは何か確信を持った表情で俺に命令する。勿論、レミリアは適当に言っている訳ではない。これは彼女の能力によるものだ。

 

『運命を操る程度の能力』。どんな能力かは俺も明確には分からないが、レミリアが言うには『例えば死にかけの人間に私が一声掛ければ、その人間の結末は大きく変わる』との事だ。つまり未来改変、の様な事が出来るらしいな。それに加えて未来予知の様な事も出来るとも言っていたな(フランはレミリアが判ってる振りをしてるだけと言っていたが)。

 

 ⋯⋯もしかして俺がレミリアの従者になったのもその能力のせいじゃないか?

 

 そして執事の仕事を終えた次の日。レミリア達が未だ寝静まっている夕方に門の前で立っていると目の前の森から誰かがやって来た。

 

?「ふうっ⋯⋯ここが吸血鬼のスカーレット一族の館ですか。本当に真っ赤なんですねー」

 

 暢気そうな声で歩いてきたのは、淡い緑色の華人服とチャイナドレスを足して二で割った様な服を着た妖怪だ。髪は腰まで伸ばした赤毛のロングヘアー。その妖力からそれなりに強い妖怪だと分かる。

 

雪「ようこそ紅魔館へ。歓迎しよう、お客人」

 

?「おや。もしかしてこの館の執事さんですか?」

 

雪「ああ。俺は狐塚 雪。お前と同じ東の者だ。妖怪じゃないがな」

 

?「わあ、貴方もですか! あ、私は『(ホン) 美鈴(メイリン)』です。所で雪さん。貴方のご主人様はどちらに?」

 

雪「悪いがまだ寝ている。起きるまでお前を丁重にもてなせとの命令だ。館へ案内しよう」

 

美鈴「分かりました」

 

 俺は門を開け、美鈴を屋敷の客室へ案内する。そして紅茶を淹れると彼女に差し出した。

 

雪「飲み物だ」

 

美鈴「あ、どうも⋯⋯紅茶、ですか」

 

雪「む、紅茶は苦手か?」

 

美鈴「い、いえ。紅茶は好きですよ。ただ祖国のお茶とこっちのお茶は香りが違くって」

 

雪「香り?」

 

美鈴「はい。祖国の紅茶は癖がある強い燻香があるんです。私はそれが飲み慣れてて、この国の紅茶はあまり⋯⋯」

 

 燻香の強い紅茶⋯⋯ああ、もしかしてあれか。俺は美鈴に少し待ってくれる様に頼むとキッチンでとある紅茶を淹れる。そして部屋に戻ってくるとそれを出した。

 

美鈴「⋯⋯また紅茶ですか?」

 

雪「まあ飲んでみろ」

 

美鈴「はあ⋯⋯」

 

 美鈴は少し不思議そうな表情でその紅茶を口に運ぶ。そして一口飲むと目を見開いた。

 

美鈴「こ、これ! 私の祖国の紅茶じゃないですか!」

 

雪「やはりそれか」

 

 美鈴に出したのはラプサン・スーチョンという中国の紅茶だ。紅茶の茶葉を松葉で燻して着香したフレーバーティーの一種だな。

 

 人間の街に買い物に行ったとき、中国からの輸入品としてこの茶葉が売ってたから買ってみたんだが、レミリア達の口には合わなかった様で俺がちょくちょく飲んでたくらいなんだ。

 

 と、そんな事をしてる内にレミリア達を起こす時間になってしまった。起こしに行くか⋯⋯と思った所で客間のドアが開き、いつもの服装のレミリアが入ってくる。

 

レミリア「あら、その人がお客人かしら」

 

雪「おはようございます、お嬢様」

 

美鈴「えっと⋯⋯?」

 

 突然現れたレミリアを見た美鈴は困惑する。そんな美鈴を見たレミリアはクスリと笑うと、カーテシーと呼ばれるお辞儀をする。

 

レミリア「初めまして。私はこの紅魔館の主、レミリア・スカーレットよ。貴女は?」

 

美鈴「わ、私は紅 美鈴です。それにしても、ここの主がまさか女の子だったなんて⋯⋯」

 

 美鈴は少しガッカリした様子でそう話す。恐らくだが、美鈴は自身の実力を上げる為の旅にでも出ているのだろう。それで実力のある魔物に決闘を申し込んでいる。そしてこの近辺では『紅い悪魔』として有名なレミリアに会いに来たが、見た目が幼く拍子抜けした、といった所か。

 

レミリア「あら、見た目に騙されると痛い目に合うわよ」

 

 そう言ったレミリアはいつもは抑えている妖力を垂れ流す。それを感じ取った美鈴は顔つきとレミリアに向ける表情が変わった。

 

美鈴「⋯⋯成る程。噂に違いは無いみたいですね」

 

レミリア「それで、貴女は私に何の用かしら? まあ大方の予想はつくけど⋯⋯」

 

美鈴「はい⋯⋯この紅 美鈴。貴女と手合わせお願いします」

 

レミリア「そうねぇ⋯⋯ただ手合わせするだけじゃつまらないわ。勝者は相手に一つ、願いを叶えるっていうのなら良いわよ」

 

美鈴「構いません。その代わり本気でお願いします」

 

レミリア「ええ。じゃあ庭に行きましょうか」

 

 そして二人は庭に出る。まあ戦闘の内容は省略させてもらうが、結果としてはレミリアの勝利となった。

 

美鈴「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯私の負け、の様ですね⋯⋯まさか手も足も出ないとは⋯⋯」

 

レミリア「本気でとお願いしてきたのは貴方の方よ? それでも何気に危ない場面もあったわ。貴女、強いのね」

 

美鈴「あはは、光栄ですね⋯⋯それで、貴女は私に何をお願いするんですか? あ、流石に死ねとか血を吸わせろは嫌ですよ?」

 

レミリア「そんなお願いはしないわよ。そうねぇ⋯⋯貴女、この館の門番をやらない?」

 

美鈴「⋯⋯へ?」

 

 美鈴はレミリアの要求を聞くとポカンとした表情で固まる。

 

レミリア「何を変な顔してるのかしら?」

 

美鈴「あ、いや⋯⋯えっと、門番ですか?」

 

レミリア「ええ。今この館で働いている従者はユキしかいないの。ユキ一人で全ての仕事が出来る訳じゃないし、門番までやらせてたら休ませる時間が無いわ。そこで貴女よ」

 

 レミリアは座り込んでいる美鈴に近付き、手を差し伸べる。

 

レミリア「私達が寝てる朝の間、門番をしてくれないかしら。衣食住は保障するわよ」

 

美鈴「分かりました。というか、負けた時点で私に拒否権はありませんし、それに強い人に仕えてみたいとも思ってたんですよ」

 

レミリア「そう、丁度良かったわね。では美鈴、貴女はこれからこの館の門番として雇うわ。よろしく頼むわよ」

 

美鈴「はい。えっと⋯⋯お嬢様」

 

 美鈴が頭を下げ、レミリアは満足そうに頷くと美鈴と一緒に館の中に入っていった。そして俺は⋯⋯

 

雪「⋯⋯これ、俺一人で直すのか」

 

 二人の戦闘でかなり壊れている庭を見て、大きくため息を吐いた。

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