東方 白狐伝   作:蛸夜鬼の分身

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第八話 執事の休日

レミリア「ユキ、貴方に休日をあげるわ。偶にはゆっくりしたらどう?」

 

 咲夜がこの館に住んでから二年。そしてレミリアとの契約も残り一年となった今日。俺はレミリアに呼び出され、突然そんな事を言われた。

 

雪「休日⋯⋯?」

 

レミリア「ええ。考えたら貴方、ずっと働きっぱなしだったもの。咲夜も仕事を覚えた様だから、今日くらい休んで頂戴」

 

雪「分かり、ました」

 

 俺は部屋を出ると自室に戻る。しかし突然休日を貰ってもやる事がない。折角だし、みんなの様子でも見るか。

 

 そう考えた俺は執事服を脱ぎ、数十年ぶりの着物を着ると取り敢えず大図書館に向かった。

 

 

─────大図書館

 

 

 扉を開けると、まず大量の本が目の前に入ってくる。咲夜の能力、『時間を操る程度の能力』はどうやら時間だけでなく空間をも操れるらしい。それを利用して、ただでさえ広い大図書館が更に広くなっている。

 

 本棚の迷路を抜け、本が大量に積み重なっている開けた空間にやって来る。そこには分厚い魔導書を読むパチュリーと、読み終わったらしき本を棚に仕舞う小悪魔の姿があった。

 

パチュリー「あらユキ。珍しいわね、執事服じゃないなんて」

 

雪「お嬢様が休みをくれてな。今日は一日ゆっくりする事にしている」

 

パチュリー「レミィが? 珍しい事もあるものね」

 

 パチュリーが言うレミィというのはレミリアの事だ。どうやら俺が知らない間にかなり親密になっていた様で、いつの間にかレミィ、パチェと愛称で呼び合っていた。

 

小悪魔「あ、ユキさん! いつの間に⋯⋯あれ、執事服じゃないんですか?」

 

雪「お嬢様が休みをくれたんだ。今日はゆっくりしようと思ってな」

 

小悪魔「へ~。それにしても不思議な服ですね。ユキさんの故郷の服ですか?」

 

雪「ああ。和服と言ってな。やはりこの服がしっくりくる」

 

 ⋯⋯それにしても、この服は何百年と着ているがあまり劣化していないな。確か諏訪の国で仕立ててもらったから、諏訪子が何かしてくれたのだろうか。

 

パチュリー「それで、ユキは何で大図書館に来たのかしら? 魔法なら教えられないわよ」

 

雪「いや、みんなの様子でも見ようと来ただけだ。魔法ならもう諦めているさ」

 

パチュリー「あらそう。そうだ、折角だしこの本を片付けといてくれないかしら。小悪魔一人じゃ終わらないもの」

 

雪「⋯⋯休日の人間に働かせるのか。別に構わないが」

 

 そして俺は小悪魔と共にパチュリーの本を片付ける。さて、次は地下に行くか。

 

 

~白狐移動中~

 

 

 大図書館にある階段を降り、その先の通路を進むとフランの部屋がある。その扉をを開けると、前とは違い女の子らしい部屋が広がっていた。

 

 その部屋の中央で、フランが人形で遊んでいた。フランは俺に気付くとパアッと顔を明るくして駆け寄ってくる。

 

フラン「あ、ユキ! あれ? あの黒いお洋服じゃないの?」

 

雪「ああ。レミリアから休みを貰ったからな」

 

 実はフランとはとある約束をしている。それは『レミリアがいない時は執事ではなく、友人として接する』というものだ。

 

 だからレミリアがいない時は敬語は使っていない。フランが望んでいる事だし、俺もこっちの方が楽だからな。

 

フラン「じゃあ時間あるって事? なら私と遊びましょ!」

 

雪「ああ、分かった。少しだけでも良いならな」

 

フラン「やった! じゃあ何したい? お人形遊びでも、ボール遊びでも良いよ。何なら、弾幕遊びにする?」

 

雪「弾幕遊びは遠慮したいな」

 

 弾幕遊び⋯⋯魔法弾やら能力やらで戦う遊びだ。簡単に言えば俺がフランと出会った時にやった戦いが該当するらしい。

 

 時折暇を持て余したフランが俺やレミリアを誘って遊びたがるのだが、その遊びをした後は大体怪我を負うので出来るだけ遠慮したい遊びだ。

 

フラン「じゃあ⋯⋯あ、トランプ! トランプならどう?」

 

雪「分かった。トランプで遊ぼう」

 

フラン「うん! じゃあポーカーにしよっ。私、ポーカー強いのよ?」

 

 そして俺はフランとポーカーで遊ぶ事になった。自分で強いと言った通りフランはかなり強かったな。まさかロイヤルストレートフラッシュが見れるとは思わなかった。

 

 

─────

 

 

 さて、フランとの遊びに付き合った後だが、俺は今庭に来ている。少し外の空気を吸いたくなったんだ。

 

美鈴「あれ、雪さん?」

 

咲夜「珍しいですね、執事服じゃないなんて。今日はお休みですか?」

 

雪「ああ。お嬢様が休日をくれたんだ。お前達は庭の手入れか?」

 

 美鈴が来るまで俺がやっていた庭の手入れだが、最近は美鈴に任せっきりになっている。というのも美鈴は花の扱いに長けていて、俺が手入れするよりも丁寧なんだ。

 

咲夜「はい。美鈴さんから花の手入れを教えて貰っています」

 

美鈴「咲夜ちゃん、覚えるのが早くて教え甲斐がありますよ。今は薔薇の手入れを教えてるんです」

 

 薔薇か⋯⋯咲夜達が手入れした薔薇を見ると、俺がやった物より丁寧に扱われていた。

 

雪「ほう、見事なものだな」

 

美鈴「ですよね! この調子なら私が手入れするよりも綺麗に出来ると思いますよ」

 

咲夜「いえ、そんな事は⋯⋯美鈴さんの教え方が上手だからですよ」

 

 二人は仲睦まじく笑い合う。何だか男の俺が居づらい空間になっているな。

 

美鈴「あ、そうだ。今日は私が料理を作りますよ」

 

雪「良いのか? 悪いな」

 

美鈴「いえいえ。雪さんは休日ですし、ゆっくりしててください」

 

咲夜「あ、私も手伝って良いですか。中華料理も練習したいので」

 

美鈴「勿論! じゃあ庭の手入れが終わったら買い出しに行きますか」

 

 そう言って二人は俺と別れる。そして飯時、美鈴と咲夜が腕によりを掛けた中華料理が振る舞われた。

 

 

─────

 

 

雪「ふぅ⋯⋯」

 

 俺は今、自分の部屋にいる。休日も終わり、明日からまた執事としての仕事だ。早めに寝なければな。

 

 そう思っているとコンコンとドアがノックされ、レミリアが入ってくる。その手にはワインとグラスが握られていた。

 

レミリア「ユキ、少し良いかしら」

 

雪「はい、何でしょうか」

 

レミリア「⋯⋯少し、話さないかしら。ワインでも飲みながら」

 

 そしてレミリアの部屋に移動した俺は椅子に座らされ、注がれたワインを手渡される。

 

雪「ありがとうございます」

 

レミリア「今日は敬語を崩しても良いわよ。それじゃあ、乾杯」

 

 レミリアがグラスを掲げると同時に俺もグラスを掲げる。ワインを含むと独特の風味が口に広がる⋯⋯やはり俺は日本酒の方が好きだな。不味くはないんだが⋯⋯。

 

雪「で、話というのは?」

 

レミリア「そうだったわね。もうすぐ、貴方との契約が切れるわ。その前にお礼を言っておきたくてね⋯⋯ユキ、今までありがとう。貴方が来てくれて本当に助かったわ」

 

雪「ああ。俺もお前達と過ごして楽しかった。良い経験にもなったからな」

 

レミリア「そう。なら良かったわ」

 

 レミリアはそう言ってワインを飲む。そして神妙な面持ちになると、俺を真っ直ぐ見た。

 

レミリア「ねえ、ユキ。貴方にお願いがあるのだけど、良いかしら」

 

雪「お願いとやらの中身によるな。聞かせてくれ」

 

レミリア「ええ。ユキ、貴方⋯⋯この先も館の執事として働いてくれないかしら。今までより待遇は良くするわよ」

 

雪「成る程⋯⋯悪いが、新たに働く気は無い。出会った頃に言ったが、俺の帰りを待っている奴がいるからな」

 

レミリア「そう⋯⋯まあ分かってたわ。そういう運命が見えて、それは変えられなかったもの」

 

 少し悲しそうな表情をしたレミリアはグラスを傾け、ワインを飲み干す。

 

レミリア「悪いわね、変な話に付き合わせて。残りの期間、明日からしっかり働いてもらうわよ」

 

雪「ああ、分かってるさ。それじゃあ、俺は部屋に戻らせてもらう」

 

レミリア「ええ。おやすみ、ユキ」

 

 俺はレミリアの部屋を出て自分の部屋に戻ってくる。そしてベッドに潜ると、瞼を閉じた。

 

 ⋯⋯そして一週間後、レミリアから『幻想郷に向かう』という話を聞かされた。

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