東方 白狐伝   作:蛸夜鬼の分身

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第七話 幻想郷巡り 妖怪の山

 人里から北に向かった先の巨大な山。ここは人間や麓の妖怪とは違う社会を築いており、幻想郷のパワーバランスの一角を担っている。

 

 更に天狗や河童は外の世界の技術を一部模倣しており、天狗は写真や出版。河童は建築や道具の作成に関しての技術を持っているらしい。

 

 仲間意識が高く、豊かな生活を送っているがその仲間意識から余所者、特に人間には厳しい。もし一歩でも立ち入れば天狗が全力で追い返すそうだ。

 

雪「⋯⋯随分と変わったんだな」

 

 そんな山の麓に俺は来ていた。しかし数百年前に来た時と随分変わったらしい。天魔や勇儀達は元気だろうか。そんな事を考えながら山に一歩踏み入れると

 

?「止まれ」

 

 突如、凜とした少女の声が聞こえる。何だと声のした方を向くと犬耳が生えた白髪の少女が剣と盾を持ち俺を見下ろしていた。

 

雪「⋯⋯白狼天狗か」

 

?「ここから先は我々の縄張りだ。余所者は去れ」

 

雪「ふむ、俺は昔ここに来ていたんだが。そうだ、天魔に話を付けてくれないか」

 

?「天魔様に、だと?」

 

雪「ああ。これでも天魔とは知り合いでな。確認してくれるなら俺はここで大人しくしていよう。どうだ?」

 

 白狼の少女は暫く考えていた様だが、少しすると武器を降ろす。ほう、この少女は話が分かるようだ。

 

?「⋯⋯今から天魔様に確認しに行く。貴様の名は?」

 

雪「狐塚 雪だ」

 

?「では雪。私が確認している間、決してここから動くな。もし一歩でもこの山に入ろうものなら私の千里眼が見逃さないぞ」

 

 ふむ、彼女の言葉からして能力は千里眼だろうか。そんな事を考えていると目の前から白狼の少女が消える。

 

雪「⋯⋯しょうがない、暫く待つか」

 

 そうして俺は近くの木にもたれ掛かり、白狼の少女が戻ってくるまで待つことにした。

 

 暫く待っていると風が舞い、目の前に知り合いの姿が現れる。

 

文「あやや~。お久しぶりです雪さん」

 

雪「文か」

 

文「はい。清く正しい射命丸 文です。雪さんはどうしてここに? というか、いつから幻想郷に来ていたんですか?」

 

雪「幻想郷に来たのは吸血鬼異変の時だな。家を建てる土地を探しながら幻想郷を巡っていてな。それで久々に天魔や勇儀に会いに来たんだが、白狼の少女に止められていてな」

 

 俺の言葉を聞いた文は少し考えると口を開く。

 

文「⋯⋯もしかして、剣と盾を持ってて無駄に堅物そうな性格でした?」

 

雪「ああ、そんな感じだが⋯⋯何だ、知り合いか?」

 

文「あ~、知り合いというか⋯⋯まあ後輩みたいなものですね。彼女は『犬走(いぬばしり) (もみじ)』。『千里先まで見通す程度の能力』を持っていまして⋯⋯私とはあまり仲は良くないんですよね」

 

 ふむ、天狗同士でも不仲な者はいるのか。やはり(あやかし)それぞれ、と言う事だな。

 

 するとパシャリ、という音と共にフラッシュが焚かれる。何だと文を見ると、彼女はカメラを構えていた。

 

雪「⋯⋯何だ」

 

文「実は私、文々。新聞という新聞を出版してまして。折角ですし雪さんの記事を載せようかなと」

 

雪「別に構わんが、そういうのは一言言ってから頼む」

 

文「あやや~、それはすみません。ですが同意は得られたという事で、早速取材をしてもよろしいですか?」

 

雪「手短に頼むぞ」

 

 そして俺は文の取材とやらを受ける事になった。何か良く分からない事も聞かれたが、後日それを参考に記事を作るそうだ。

 

文「うんうん、有意義な取材が出来ました! ありがとうございます雪さん!」

 

雪「ああ。そうだ、今度自分の家を建てるつもりだから、家が建ったら新聞を持ってきてくれないか」

 

文「わあ、勿論ですよ! それでは私は新聞を作らなければならないのでここで失礼します!」

 

 そう言った文は目にも止まらぬ速さでその場を去って行く⋯⋯嵐の様な奴だったな。

 

椛「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯良かった、まだ居た!」

 

 すると椛が息を切らしながらやって来る。そして俺の近くまで来ると頭を下げてきた。

 

椛「申し訳ありません雪さん! 先程確認してきたのですが、まさか本当に天魔様のご友人でしたとは!」

 

雪「いや、別に気にしてない。お前も天狗の任務を果たそうとしていただけだからな。突然押しかけた俺も悪い」

 

 そう言うと椛はホッとしたかの様に息を吐く。その後、椛に案内されて天魔の所に通された。椛はまた任務に戻り、部屋には俺と天魔だけとなった。

 

雪「久しいな、天魔」

 

天魔「ああ。何年ぶりだろうか」

 

雪「勇儀達と喧嘩した時だから⋯⋯数百年振りといった所か。時間が経つのは早いな」

 

天魔「ハハハッ! 何を爺臭い事を言っておる。まだそんなにも若いではないか」

 

雪「これでも長い間生きてるから、他の者に比べたら十分爺だろう」

 

 そんな事を話しながら茶を飲む。暫く天魔と話していると、ふと一つ疑問が思い浮かんだ。

 

雪「そういえば、勇儀達はどうした? 力が感じ取れないが」

 

 そう、いつもなら圧倒的な力を放っている勇儀達、鬼の力が感じ取れないんだ。その事を聞かれた天魔は少しだけ黙ると

 

天魔「⋯⋯鬼達は、どこかへ消えたよ」

 

 一言だけそう言った。

 

雪「⋯⋯何故?」

 

天魔「また、人間の騙し討ちがあったのだよ。こちらの被害は無かったものの、嘘が嫌いな鬼で一度目は仲間が亡くなられている程だ。二度目は流石に堪えたんだろう」

 

雪「⋯⋯鬼達は、どこに?」

 

天魔「分からぬ。恐らくはもう人間と関わりの無い場所に行ったのだろうな」

 

雪「⋯⋯そう、か」

 

 その後、暗くなってしまった雰囲気を和ます為に天魔と色々話したが、俺の頭の隅では勇儀達がどこへ行ったのか、その事ばかり考えていた。

 

 そして天魔と別れた頃には空は暁に染まっており、一度紫の家に戻ろうと思った頃⋯⋯

 

?「⋯⋯ね、真っ白な狐さん」

 

雪「ん?」

 

 背後から声を掛けられる。何だと振り向くとそこには緑がかった銀髪の、恐らく十歳程度の容姿をしている少女が立っていた。胸元には何故が閉じた眼の様なものがあり、そこから出ている紐状の物が足へと繋がっている。

 

?「貴方、勇儀達に会いたいの?」

 

雪「っ!? ⋯⋯何故、それを?」

 

?「えっとね、ずっと貴方の事を見てたから。この山に入った時から、ずっと」

 

雪「何?」

 

 そんな視線など感じなかったが⋯⋯何かの能力だろうか。そんな事を考えていると件の少女に手を引かれる。

 

?「勇儀達はこっちだよ。早く行こっ!」

 

雪「お、おい」

 

 そうして俺は謎の少女に手を引かれ、妖怪の山の奥に進む事となった。

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