東方 白狐伝   作:蛸夜鬼の分身

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第八話 幻想郷巡り 地底

?「到着ー!」

 

 謎の少女に連れられてきた俺は、妖怪の山の山中にある巨大な穴の前にやって来ていた。

 

?「勇儀達はこの先だよ。早く行こっ!」

 

雪「待て。まずお前は誰だ? 何でここに連れてきた?」

 

?「んー? 私は『古明地(こめいじ) こいし』だよ。何度も言ってるけど、勇儀達に会わせたいから連れてきたの」

 

雪「何で勇儀達に「貴方のお名前は?」⋯⋯狐塚 雪だ。何で勇儀達に会わせようとするんだ?」

 

?「う~ん、面白そうだからかな?」

 

 ⋯⋯何なんだこの掴み所の無い少女は。それに気配に気付けなかった事もまったく分からん。一応警戒はしておくか⋯⋯何の妖怪か分からない以上、少女でも気は許せないからな。

 

 そして俺はこいしに手を引かれながら底が見えない穴の中に降りていく。穴の側面に階段とも言えなくはない坂があり、そこを伝っていく。

 

 暫く降りていくと、何やら蜘蛛の巣が多くなってきた。異様に大きいが、何だろうかこれは。

 

こいし「この蜘蛛の巣、大きいでしょ。この巣はね~、ヤマメが作ったものなんだよ!」

 

雪「ヤマメ?」

 

こいし「うん! 土蜘蛛っていう妖怪で~、私の友達なんだ!」

 

雪「土蜘蛛⋯⋯」

 

?「おや、こいしじゃんか! 久しぶりだね!」

 

?「⋯⋯誰?」

 

 すると壁に所々空いている穴の一つから二人程の少女の声が聞こえてくる。穴の中を覗くとそこには金髪で茶色い服を着た少女と、何故か桶に入った緑髪の少女がいた。

 

こいし「あっヤマメ、キスメ! 久しぶり~!」

 

 こいしはヤマメと呼んだ金髪の少女に勢いよく抱き付く。少女は微笑んでこいしの頭を撫でていたが、俺に気付いたのか首を傾げた。

 

?「あれ、見たことない人だね。狐⋯⋯なのかな?」

 

?「地底に何か用⋯⋯?」

 

雪「いや、本当は妖怪の山に用があって、それを済ましたから帰ろうとしてたんだが⋯⋯こいしに連れてこられてな。何でも勇儀に会わせてくれるそうなんだが⋯⋯」

 

 そう言うと二人はピクリと反応し、俺を見定める様に見た。

 

?「ふ~ん⋯⋯勇儀と何の関係?」

 

雪「昔、喧嘩してそのまま友人となった仲だ」

 

?「驚き⋯⋯」

 

?「勇儀達は嘘が嫌いなのは承知してる? 会わせても良いけど⋯⋯」

 

雪「俺は嘘は好かん。それに、勇儀達が嘘嫌いなのは重々承知してるさ」

 

こいし「天狗さんと話してた時に聞いてたけど、本当に知ってるみたいだったよ?」

 

 するとこいしがフォローを入れてくれる。流石にそれで信じたのか二人は顔を見合わせて頷く。そして金髪の少女が手を叩くとガシャン! という音と共に突如として巨大な桶が降りてきた。

 

?「はいは~い、この昇降機にお乗りくださーい。旧都までご案内しますってね! あ、そういえばあんたの名前は? 私は地底のアイドル『黒谷(くろたに) ヤマメ』ちゃんだよ!」

 

?「『キスメ』⋯⋯」

 

雪「狐塚 雪だ。よろしく頼む」

 

 そして昇降機(巨大桶)に乗るとそのまま下に降りていく。やはり歩いて行くよりもよっぽど速い。

 

ヤマメ「ねえねえ。そういえば雪は旧都はどんな所か知ってるのかな?」

 

雪「いや、全くだな。最近幻想郷に来たばかりだから家の土地を探すがてら色々な場所を巡ってるだけだ」

 

ヤマメ「ふ~ん、そうなんだ。じゃあ私が教えてしんぜよう!」

 

 ヤマメはそう言うと得意気に語り出す。

 

 地底⋯⋯もとい旧都は人間に忌み嫌われた妖怪、人付き合いが苦手な妖怪が集まり、独自の社会を築き上げた場所。それ故に地上の妖怪とは永久不可侵の条約を結んでおり、地上に出る、または来る事は御法度となっているそうだ。

 

ヤマメ「って事だから、本当は雪が来るのはいけないんだけど⋯⋯」

 

雪「いや、別に問題ないぞ」

 

こいし「ん~、何で?」

 

雪「それは妖怪同士の条約であって、俺は妖怪じゃないからな」

 

キスメ「⋯⋯屁理屈」

 

雪「どうとでも言うが良いさ」

 

 暫くして一番下まで来ると昇降機を降りる。そしてこいしの案内で先に向かうと一本の橋と、一人の少女が立っていた。

 

こいし「やっほ~パルスィ! 久しぶり~!」

 

?「あら、こいし。久しぶりね。周りの心配も気にせずに放浪する貴方が妬ましいわ」

 

雪「⋯⋯彼女は?」

 

?「あら見ない顔ね。女を(はべ)らせてるなんて、本当妬ましいわ」

 

 そう言った少女はギリギリと爪を噛みながら睨んでくる。何だろうかこの少女は。

 

こいし「このパルパルしてるのは橋姫のパルスィだよ。地上と地底を結ぶこの橋で番人をしているの」

 

 橋姫⋯⋯橋を守る女神か。最も有名なものだと宇治の橋姫が有名だな。他の女に夫を奪われ、その嫉妬心から生きながらに鬼となりその恨みを晴らしたという話だ。しかし⋯⋯

 

雪「パルパル⋯⋯とは?」

 

?「こいし、そのパルパルは止めなさいって言ってるでしょ。そこの白いの、気にしないで。もし少しでも気にしたら妬み殺すわ」

 

雪「殺されるのは勘弁だな。自己紹介しておこう、俺は狐塚 雪だ。お前はパルスィで良いんだな?」

 

?「ええ。『水橋(みずはし) パルスィ』よ。もしかして、貴方が勇儀の言っていた狐?」

 

 おや、勇儀の事を知っているようだ。勇儀の言っていた、という言葉から推測するに勇儀が俺の事を話したのだろうか。

 

雪「ああ。俺の事を知っているのか?」

 

パルスィ「勇儀に無理矢理飲みに付き合わされたときにね。何度も聞かされて耳にタコが出来るくらいよ」

 

雪「そうか、勇儀がな⋯⋯」

 

パルスィ「⋯⋯その幸せそうな顔、凄い妬ましいわ。勇儀ならこの先の旧都で花見でも飲んでると思うわよ。通るなら早く通りなさい」

 

雪「パルスィは一緒に行かないのか? 折角だし少し話をしたいと思ってたんだが」

 

パルスィ「⋯⋯そんな言葉がサラッとでるのが妬ましいわ。良いわよ、着いていってあげる」

 

ヤマメ「あれれ、パルスィが素直なんて珍しい。明日は雪でも降るのかな?」

 

パルスィ「あ゛?」

 

 そしてパルスィと一緒に俺達は先にある旧都とやらに向かう。しかし彼女の言っていた花見とは何だろうか。この地底にも桜があるのか? だが今は夏。桜が咲く季節じゃないだろう。

 

 途中、こいしとヤマメに旧都について説明してもらったがこの地底、というより旧都は地獄が経費削減の為にスリム化を行った際に切り捨てられた、元々は地獄の鬼が住んでいた場所。その場所を妖怪が住み始めたらしい。

 

 中央には灼熱地獄跡と呼ばれる場所があり、そこにはこいしの家である地霊殿があると言う。地霊殿へのアクセスは『旧都の中央に向かうだけ』。成る程、分かりやすい。

 

 暫く歩いて行くと提灯やらが仄明るい街道に出る。上空からは何なのか分からないが桜吹雪の様な結晶片が美しく舞い降りている。

 

雪「美しいな⋯⋯」

 

こいし「でしょー! 今は石桜が舞い散る時期だから一段と綺麗なんだー」

 

 石桜⋯⋯成る程、パルスィの言っていた花見の花はこれの事か。地上の花見とは違う美しさがあるな。

 

 石桜を眺めながら先に進むと、騒がしい旧都の中でも更に騒がしい場所を見つける。

 

勇儀「ほらほら、もっと飲みな!」

 

鬼「ま、待ってくださいよ姐さん! 姐さんのペースに合わせたら俺達が酔い潰れるって!」

 

 すると、その中から懐かしい声が聞こえてくる。俺は自然とその声の方に歩いて行った。

 

こいし「勇儀ー!」

 

勇儀「ん? うわっ!」

 

こいし「勇儀、久しぶり~!」

 

勇儀「おお、こいしじゃないか! 久しぶりだね、最近はどこに行ってたんだい?」

 

ヤマメ「お~、やってるやってる」

 

キスメ「こんにちは⋯⋯」

 

パルスィ「ちょっと勇儀、飲み過ぎじゃないの?」

 

勇儀「おや、何だ何だ勢揃いじゃないか。一体どうし⋯⋯」

 

 勇儀は俺の姿を見ると手に持っていた杯を落としかける。周りの鬼は俺の事を知ってる者と知ってない者で様々だが、知ってる鬼は勇儀と同じ様な反応をしている。

 

雪「勇儀、久しいな」

 

勇儀「雪じゃないか、久しぶりだね! いつ幻想郷に来ていたんだい?」

 

雪「吸血鬼異変の時だな。妖怪の山にいないと聞いてどこに行ったかと思ったが、地底に居たんだな」

 

勇儀「ハハハッ、まあ色々あったのさ。所で雪、一つ提案なんだが⋯⋯」

 

 勇儀はグイと酒を飲み干すと俺の肩に手を乗せる。鬼の力で押さえられたせいでズシリと身体に力が掛かる。

 

勇儀「久しぶりに、ちょっと手合わせしないかい?」

 

雪「⋯⋯断っても無理矢理やろうとするんだろう?」

 

勇儀「ハハハッ! 分かってるじゃないか!」

 

雪「笑い事じゃないんだが⋯⋯はぁ⋯⋯」

 

 俺は勇儀の様子を見ていため息を吐く⋯⋯幽香といい、血の気の多い友人だ。結局、俺と勇儀は手合わせする事となった。

 

 

~白狐戦闘中~

 

 

雪「ハァッ!」

 

勇儀「ぐぅっ⋯⋯!」

 

 俺の放った蹴りが勇儀の腹に直撃する。勇儀は腹を押さえると膝を付く。

 

雪「ハァ⋯⋯ハァ⋯⋯俺の勝ちだな」

 

勇儀「あ~、また負けちまっねぇ⋯⋯」

 

こいし「わ~、雪って強かったんだね!」

 

ヤマメ「⋯⋯もしかして雪ってかなり強い方?」

 

キスメ「勇儀倒したから多分⋯⋯」

 

パルスィ「まったく、周りの迷惑も関係無しに暴れ回るなんて⋯⋯本当妬ましい」

 

雪「ほら」

 

勇儀「ああ、すまないね」

 

 勇儀は俺の手を取ると立ち上がる。ああ、身体中が痛い。手合わせと言ったのに勇儀は手加減の一つもしないから、少し油断して攻撃を受けてしまったな⋯⋯。

 

?「何の騒ぎですか?」

 

 すると、少し気怠そうな声が聞こえてくる。声の方を向くと桃色の癖毛をした⋯⋯こいしと似た眼の様なものがある少女が歩いてきた。

 

こいし「あ、お姉ちゃん!」

 

?「こいし! いつの間に帰ってきたの? 心配したのよ?」

 

こいし「えへへ~、ごめんなさい」

 

 ふむ、こいしの姉か。道理で顔が似てるわけだ。しかしあの眼の様なものは何なのだろうか?

 

?「⋯⋯成る程。勇儀、お客人に少々手荒な真似をした様ですね」

 

勇儀「ハハハッ! これが鬼の流儀だって分かってるだろう、さとり?」

 

雪「さとり⋯⋯」

 

 ⋯⋯もしや彼女らは覚妖怪、なのだろうか。飛騨や美濃の山奥に住まうとされる、人間の心を読む妖怪だ。気まぐれや無意識には弱いとされ、また一部では非常に気弱とされている。

 

?「⋯⋯どうやら私達の事をご存知の様ですね、雪さん」

 

雪「⋯⋯心を読んだのか」

 

?「はい。私は『古明地(こめいじ) さとり』。この地底の管理を任されている覚妖怪です。どうでしょう、我が屋敷で少々お話でも」

 

雪「ふむ⋯⋯」

 

 俺は少し考えると頷く。さとりは少し嬉しそうに微笑むとこいしの手を引いてその屋敷とやらに案内を始めた。

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