東方 白狐伝   作:蛸夜鬼の分身

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第十二話 マイホームと博麗神社

 魔法の森に行ってから数カ月。俺は今、人里から少し離れた丘にいる。というのも⋯⋯

 

雪「要望通りの家を造ってくれるとは。素晴らしい腕前をお持ちだ」

 

大工「へっ! この道何十年の俺らに掛かりゃあこんなもんでさぁ!」

 

 人里の大工に頼み、遂に自分の家を作って貰ったんだ。と言っても一人暮らしの家なのだからそんなに大きくはない。だが大人一人が住むには十分の平屋だ。

 

 そして大工達を人里まで見送ると、俺は早速家の中に霖之助に作って貰った家具や人里で買ってきた物を入れていく。因みにこの家具は家の完成が分かった日から少しずつ持ってきた物だ。どうやら劣化防止の魔法を掛けてくれている様で、かなり長い間使っても問題ないらしい。まあ、それなりに値は張ったが⋯⋯。

 

雪「⋯⋯こんなものか」

 

 家具を置き終わった俺は縁側に行く。家の周りは柵で囲まれていて、縁側には多少の庭もある。ここには何か植えるとしようか。

 

紫「へぇ、ここが雪の家なのね。結構良いじゃない」

 

 するといつの間にか俺の後ろにスキマが開いており、そこから紫と藍、橙が出てきた。橙の手には饅頭らしき菓子の箱がある。

 

雪「不法侵入だぞ」

 

紫「まあまあ、お菓子も持ってきたし良いでしょ?」

 

藍「すまないな雪。詫びとしてはなんだが饅頭を持ってきた」

 

橙「雪しゃま、お饅頭です。どうぞ!」

 

雪「ありがとう。まったく、お前の式神はしっかりしているのに主のお前がそんな調子でどうする?」

 

紫「これが私のスタイルなのよ」

 

 俺は紫の調子にため息を吐くと、適当に座ってもらって台所から買ってきたばかりのお茶を淹れる。橙は猫舌だから温めの茶だ。

 

雪「で、今日はどうした?」

 

紫「雪の家が出来たって聞いてお祝いに来ただけよ。後は、貴方に行ってもらいたい場所があってね」

 

雪「行ってもらいたい場所?」

 

 紫に聞き返すと彼女は頷く。ふむ、もう殆どの場所は巡ったと思うが⋯⋯一体どこなのだろうか?

 

紫「確か地図持ってたでしょ? 出してくれるかしら」

 

雪「分かった」

 

 俺は近くにある小物入れから地図を取り出し、卓袱台に広げる。すると紫は地図の一カ所にスキマから取り出した筆で丸を付ける。

 

紫「また今度、近い内に時間があったらここに来て頂戴。貴方に説明する事があるの」

 

雪「ふむ⋯⋯分かった。では明日の昼、一四時頃に行くとする」

 

紫「明日の一四時ね。じゃ、頼むわよ」

 

 そう言って紫は家を出て行く⋯⋯と、思いきや暢気にお茶を飲み饅頭を食っている。どうやら暫くゆっくりしていく様だな。

 

雪「⋯⋯折角だ、昼飯を食べていくか?」

 

紫「あら、良いの? じゃあご馳走になっていくわ」

 

藍「雪、何か手伝おうか?」

 

雪「いや、座っててくれ。そんなに手間も掛からないからな」

 

 そうして俺は台所に行くと昼飯を作る。あり合わせの物で作ったのだが、どうやら好評だった様だな。

 

 その翌日⋯⋯約束していた時間に、俺は地図を見ながら紫の言っていた場所までやって来ていた。どうやら小さな山の上に立っている様で、無駄に長い階段があったが⋯⋯まあ、律儀に上る必要も無い。いつも通りの飛行法で飛んできた。

 

 そして山の頂上にやってくると、どうやら神社の様で『博麗』とある朱の鳥居と、石畳の向こうには社が見える。社の前には紫と、もう一人⋯⋯咲夜や魔理沙と同じくらいの少女が立っていた。

 

紫「あら、来たようね」

 

?「この人が⋯⋯」

 

雪「遅くなったな。紫、その子は?」

 

紫「紹介するわね。この子は『博麗(はくれい) 霊夢(れいむ)』。幻想郷と外界を隔てる博麗大結界を見守る役目を持つ、博麗の巫女よ」

 

 博麗の巫女⋯⋯初めて聞いたな。幻想郷の結界を見守る役目か。確かに結界が無くなれば一大事所の話じゃない。常に監視する役目も必要と言うことだろう。

 

雪「霊夢か。俺は狐塚 雪だ。よろしく頼む」

 

霊夢「アンタが雪ね。紫がよく貴方の事を話してるわよ。愚痴が主だけどね」

 

雪「⋯⋯紫?」

 

紫「れ、霊夢! 何を変な事を言ってるの!」

 

 ⋯⋯まあ、良い。俺も愚痴を言われない生き方はしてないからな。愚痴の一つや二つはしょうがない。

 

雪「それで俺を呼んだのは何故だ? 霊夢に会わせるだけじゃないんだろう?」

 

紫「ええ、勿論よ。今回はこの間話していた、妖怪の無気力化を防ぐための『遊び』の試用をしたいの」

 

雪「遊び⋯⋯?」

 

霊夢「はい、コレ」

 

 すると霊夢が一枚の紙を手渡してくる。どうやら紫の言った『遊び』とやらの概要をまとめたものらしい。

 

 遊びの名称は“スペルカードルール”。力持つ妖怪や神が過剰な力で戦えば、幻想郷が崩壊する恐れがあり、しかし闘争のない世界では妖怪はその力を失ってしまう。

 

 そこで霊夢と紫が考えたのが、擬似的に命をかけた戦いができ、同時に持ち得る力を衰えさせない為の、この遊びだ。

 

 これにより、もしまた外界から新たに力のある妖怪が現れたとしても、力で捻じ伏せられるということが無くなるとの事だ。

 

 他にも色々とルールが書かれている。一通り目は通したが、確かにこれなら人間と妖怪が対等になり、更に遊戯特有の遊び心も追加出来るだろう。ルールが明確に決まってる辺り、スポーツに近いだろうか?

 

雪「⋯⋯一応目は通したが、試用と言っていたが実際にやるのか?」

 

霊夢「ええ。私とアンタでね」

 

雪「⋯⋯紫でも良いんじゃないか?」

 

紫「私はルールに穴が無いか等の確認をするから、霊夢と雪にやってもらいたいのよ。今詳しく知ってるのは私と霊夢だけだからね」

 

雪「分かった。だがこのスペルカードというのは?」

 

霊夢「これの事ね。はい、取り敢えず三枚程渡しておくわ」

 

 すると霊夢は三枚の札の様な物を渡してくる。スペルカードと名が付けられているくらいだから何か特別な力でもあるのかと思ったが、変哲の無い紙の様だな。

 

雪「これは? ただの紙の様だが」

 

霊夢「ええ。ただの紙よ。あらかじめ技の名前と技名を体現した技を幾つか考えておくの。で、技名を契約書形式にその紙に記すの。ま、このスペルカードに記したもの以外は遊びに使わない、って事ね。逆に言えばその紙に記せばどんなものでも使えるのよ」

 

紫「でも完全な実力主義は否定する、とルールにあるから絶対に避けられないスペルカードは作っちゃだめよ? あと、美しさを重視することね」

 

 ふむ、このスペルカードルール理念というものか。

 

・一つ、妖怪が異変を起こし易くする。

・一つ、人間が異変を解決し易くする。

・一つ、完全な実力主義を否定する。

・一つ、美しさと思念に勝るものなし。

 

雪「取り敢えず、最強のスペルカードではなく美しいスペルカードを作れば良いんだな?」

 

紫「そういう事ね。さ、早く三枚作って頂戴」

 

雪「そう急かすな。少し時間をくれ」

 

 俺は紫に急かされながらも、何とか三枚のスペルカードを記す。その後、実戦での簡単な説明を受けた。

 

 攻撃はスペルカードで行い、カードを使用するときは「カード宣言」を必要とする。攻撃を全て攻略⋯⋯つまり回避された場合は負けとなる。

 

 他のルールとしては

 

・意味の無い攻撃はしてはいけない。

・事前に使用回数を宣言をする。

・このルールで戦い、負けた場合はちゃんと認める。余力があってもスペルカードルール以外の別の方法で倒してはいけない。

 

 ⋯⋯だそうだ。取り敢えずやってみれば分かるな。

 

紫「まあ今回はお試しって事で、カードの回数はそれぞれ三回。相手が再起不能にならない程度の戦いをお願いね」

 

雪「分かった。それでは始めようか、霊夢」

 

霊夢「ええ。よろしく」

 

 俺と霊夢は少し離れ、立体的な戦いが出来る様にと宙に浮く。そして紫が手を上げ⋯⋯

 

紫「それじゃあ⋯⋯始め!」

 

 振り下ろすと同時に、スペルカードルールに乗っ取った決闘がスタートした。

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