深い眠りに落ちたはずの新が意識を覚醒させると、そこは病院のベッドの上ではなく、霧が立ち込める静かな山頂だった
目の前には、簡素な平屋と、その前にある小さな道場
「おや、目覚めたかね。案外、魂の座がしっかりしておるな」
振り返ると、そこには長い白髭を蓄え、古びた武道着を纏った小柄な老人が、縁側に腰掛けて茶を啜っていた
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「夢の中の道場(コチョウノユメ)…ですか?」
「うむ、これがこのワシ…夢仙人の発にして肉体と呼ぶべきモノじゃな」
困惑する新に、老人は穏やかに語りかける
夢仙人と名乗る彼は、かつて異世界(HUNTER×HUNTERの世界)で「念」を極めようとした武芸者…死の間際、己の技を後世に遺すため、自身の発(能力)として『夢の中の道場(コチョウノユメ)』を完成させたという…
この前、ヒーローを目指しているという弟子が巣立ち、色んな人達の夢を周りながら弟子を作ろうとしていたという
「わしは夢を渡る旅人。そして、お主をこちらへ送った『御方』から、お主に手解きをしてほしいと頼まれましてな」
それを聞いた新は驚く…
神様のような存在が、念能力の知識だけでなく「師匠」まで手配してくれていたのだと…
「念は諸刃の剣。悪意に当てられれば死に至る…夢を介して聞いておったがお主、あの小娘の言葉のトゲに、心が死にかけておったろう…?」
いや、前世の記憶が無い中良く耐えておったのぉ…
と、同情する様に話す老人の言葉に、新はセラの前世を思い出す前からの暴言を思い出し、胸が疼くのを感じる。しかし、今はもう逃げるつもりはなかった
「……はい。もう二度と、あんな言葉で心が折れるような自分には戻りたくありません。…思い出した今ならなおさら…これから先、自分の人生に後悔しないために、力をつけたいです」
新の真っ直ぐな瞳を見て、夢仙人は満足げに頷く
「よろしい。夢の中の時間は現実とは異なる。ここで死ぬほど鍛えても、朝には体は回復しておる。……もっとも、精神の疲労までは誤魔化せんがの?」
立ち上がり、指先から陽炎のようなオーラを立ち昇らせた夢仙人
「まずは『纏(テン)』からじゃ。お主の体内から漏れ出す生命エネルギーを、逃がさぬよう体表に留めるんじゃ…本来、長い年月をかけて覚醒させるものなのじゃが……折角なので、ワシのオーラでお主の『精孔(せいこう)』を抉じ開ける」
新の前に立ち、心臓に当たる部分にデコピンをする構えをとる
「イメージせよ、お主の輪郭をなぞる温かな膜を――いくぞ?」
その言葉と共に、放たれるデコピン…
-バチュンッ!!
と、叩かれる感覚とともに、せき止めていたダムが決壊したかのように、体中から「熱」が吹き出した
「これがオーラ…凄い、漫画で読んでしってたけど、まるで蒸気を纏ってるような感覚がする…!」
「ほれ、感心してないではやく留めなさい…放っておけば尽き果てて死ぬぞ?」
夢仙人の言葉に、新は慌てて目を閉じ、集中する…
瞬間、特典でもらった「才能」が牙を剥く
通常なら数ヶ月かかる瞑想による開花が、夢の中という特殊な環境と老人の導きによって、驚くべき速さで形を成していく
体の内側から、かつて感じたことのない活力が溢れ出す感覚
「(これが……念。俺の、新しい力……!)」
霧の晴れた道場で、少年と老人の奇妙な修行が始まった
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「さて、修行を始めるが……まずはその『心』の汚れを落とさねばならんの」
夢仙人は新の前に立つと、軽く手掌をかざした…
その瞬間、新は全身を凍り付くようなプレッシャーに襲われる
「う、ぐ……っ!?」
「これが『発』……っというより悪意を込めたオーラじゃな
お主は長年、あの娘からこれに似た精神的暴力を受け続け、心の孔(あな)が開きっぱなしになっておる…
まずはそれを塞ぎ、己を護る術を身につけなさい」
修行の第一段階は、漏れ出すエネルギーを体表に留める『纏』
通常は椅子に座っての瞑想から始まるが、この道場では一味違った
「この針山の上に立って、瞑想しなされ」
「……はい!?」
道場の床の一部が反転し、鋭い針がびっしりと並ぶ
新はその上に裸足で立たされた。痛みと恐怖でオーラが乱れ、体から激しく霧のように噴き出す
「痛みに意識を向けてはならぬ。オーラを膜に変え、足裏を保護するイメージを持て。特典として与えられた知識があるはずじゃ。脳ではなく、魂で思い出せ」
-因みに、お主の兄弟子はこれに夢の中で僅か一年しかかかっておらぬぞ?
それを聞いた新は必死に歯を食いしばり、前世の知識を総動員する
「(……そうだ、オーラは血液のように全身を巡っている。それをせき止め、包み込む……!)」
数時間の格闘の末、新の体から漏れていたオーラが、薄く、しかし均一に彼を包み込んだ
「ほう?…特典による影響と考えてもはやいのぉ…?もとから才能があったのか?」
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次に教えられたのは、オーラを完全に断つ『絶』
疲労が限界に達した時、老人は命じた
「次は全ての精孔(しょうこう)を閉じよ。気配を消し、空気に漂う塵になったつもりでな」
『絶』を行うと、通常よりも疲労回復が早まる…
新は胃の痛みや精神的な疲れが、オーラを内に閉じ込めることで急速に癒えていくのを感じた
「(すごい……あんなに重かった体が、どんどん軽くなっていく)」
現実の病室で眠る肉体にも、この『絶』の効果がフィードバックされ、彼の胃潰瘍は驚異的な速度で完治へと向かっていた…
修行の中盤、老人は新の成長速度に目を見張った
「ほう……よもや、数日で『練』の端に触れるとはな…やはり元からあった才能が、特典による才能で上がってるようじゃの?」
新が「おぉぉお!」と気合を入れると、体表のオーラが爆発的に膨れ上がる…
特典により嵩増しされた、新の「念の才能」は本物だった
通常の念能力者が1年かけて到達するオーラ量を、新は夢の中の数日間(現実では一晩)で引き出せるようになっていた…
後は現実で肉体を鍛えるだけである
「新よ。お主の心には、大きな『穴』が空いておるな」
そんな中、夢の中の道場で夢仙人はそう言うと、新の胸元を指差した
それは病気の胃のことではなく、成宮セラによって長年削り取られ続けた、彼自身の自尊心のことだった…
「奪われ、否定され続けた魂は、何かでその空白を埋めようと強く渇望するもの。……前世の記憶を取り戻しても、じゃ…
お主の念は、その『穴』を埋めるための形を成すモノとなるじゃろう」
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