修行も終盤に差し掛かった頃…夢仙人はどこからともなく、水の入ったコップとその上に浮かぶ一枚の葉を取り出した
「さて、新よ。仕上げに『水見式』を行うぞ。これでお主の資質……念の系統が判明する」
新はゴクリと唾を飲み込んだ
前世の知識で知っている。強化、変化、具現化、放出、操作……そして、そのいずれにも属さない特殊な力、特質系…
-俺の系統はなにになるんだろう…?
そう思いながら、新はコップの両脇に手をかざし、修行で練り上げたオーラを込めた
「『練』ッ!!」
すると、変化はすぐに現れた
水の色が変わるわけでも、葉が動くわけでもない…
コップの表面に、じわり……と「結露」が生じ始めたのだ…
それもただの水滴ではない。その滴は意志を持っているかのように、重力に逆らってコップの表面を這い、新の手のひらへと近付いていく…
「……水が、外側に滲み出して……俺の方に寄ってくる?」
「ほう、やはり『特質』の反応じゃな。内側の欠落(あな)を満たそうとする収集と代用の性質……お主、何かイメージするものがあるのではないか?」
その言葉に、新はふと自分の「今世」のことを思い出した
今の自分の誕生日は、10月31日。前世でも親しまれていた、死者と生者が交差する祭りの日
「……ハロウィン」
「ほほう、南瓜の祭りか」
「はい、正確には少し違いますが…
今までの俺の心は、あいつに削られて空っぽでした。でも、その空っぽな所に、何かを詰め込んで未来への灯りを灯したい。……暗闇で迷う者を導いて、悪い化け物を追い払う、ジャック・オー・ランタンみたいに」
新のイメージが具現化の光を放つ
あいつ(セラ)に奪われた自尊心の代わりに、自分で集めた力や思い出を詰め込むための「器」…
「だから、俺の能力は……**『空っぽのカボチャ(カボチャノランタン)』**だ」
新がそう念じた瞬間、彼の掌の上に、不気味ながらもどこか愛嬌のある顔が彫られた、濃いオレンジ色のカボチャが現れた…
その中身は空洞だが、新がオーラを流し込むと、内側から温かな、しかし凄まじい密度の光が溢れ出す
「このランタンの中に、俺のオーラ、もしくは周りの人や生き物が垂れ流しているオーラを回収して蓄えて、使う際は使いきりの発として自身の肉体強化以外の能力として使う…あいつに言われた『使えない』なんて言葉が入る隙間もないくらい、全部埋めてやる…!!」
「……カカッ! 面白い。欠落と無駄に捨てられている周りのオーラを逆手に取った『収集』と『貯蔵』の力か…。お主の誕生日に相応しい、業の深い能力になりそうじゃな?」
-それに、具現化系の発とガンダールゥの相性も良いしの?
夢仙人は愉快そうに笑い、新の肩を叩いた
「さあ、夜明けじゃ。現実(あちら)に戻り、その器に詰めたもので何をなすか……ゆっくりと考えなさい」
夢仙人の姿が朝霧に溶けていく
最後に聞こえた「達者での、二番弟子」という声を合図に、新の意識は現実へと急速に引き戻された
パチリ、と目が開く
視界に入るのは、見慣れた病院の天井…
だが、昨日までの「絶望で重い体」ではない。
『絶』による急速回復のおかげで、胃の痛みは完全に消え去り、細胞の一つ一つが活性化している
「(……夢じゃなかった)」
新はベッドの上で、自分の内側に「空っぽのカボチャ」という概念が根付いているのを確信する
そこへ、静寂を切り裂くようにドアが乱暴に開いた
「ちょっと新! いつまで寝てるのよ、このグズ! 私がお見舞いに来てあげたんだから、さっさと起きなさいよ!」
キンキンと響く、セラの罵声…
昨日までなら、反射的に心臓が縮み上がり、胃がキリキリと痛んだはずの声
しかし今の新は、ゆっくりと上体を起こし、まるで路傍の石ころを見るような冷ややかな目でセラを見据えた
「……あぁ、おはよう。朝から相変わらずうるさいな、お前」
「はぁ!? 何よその態度は! あんた、私に逆らうつもり――」
セラの言葉が止まる
新が発したわずかな「威圧(オーラ)」に、彼女の本能が「獲物」ではなく「捕食者」を前にしたような戦慄を感じたからだ
「もういいよ、成宮…
お前の汚い言葉も、なにもかも全て俺の魂(ランタン)には一滴も入れてやらないから」
新は静かに、しかし絶対的な拒絶を込めて、再び彼女との決別を告げるのだった…
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