RE:LyricalxHunter   作:ティファールは邪道

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4話:退院と来店

「……新、本当に大丈夫なの?」

 

退院の日、病院のロビーで母が心配そうに新の顔を覗き込んだ。その横では父が、新の荷物が入ったバッグをしっかりと持っていた

 

「うん。もう、心も体もすっきりしてるよ。二人とも、本当に心配かけてごめん」

 

新は穏やかに笑って答えた

昨夜、病室に乗り込んできた成宮セラを冷徹に追い返した後、新は改めて両親にすべてを打ち明けていた

 

彼女にどんな言葉を投げかけられ、どんな風に心を削られてきたのか。そして、もう二度と彼女の言いなりにはならないという決心も

 

「あの子……成宮さんのことは、お父さんたちからも学校やあちらのご両親に話をしようと思っている。新、無理をして同じ学校に通わなくてもいいんだぞ。転校だって……」

 

父が気遣わしげに言葉を繋ぐが、新は静かに首を振った

 

「ううん。転校はしなくていいよ。あいつと同じ空間にいるのは確かに不愉快だけど、あいつのために俺が逃げ出すのは、もう違うと思うんだ。あいつが何を言ってきても、今の俺にはもう届かない。関わりさえ持たなければ、それでいいから」

 

新の瞳には、以前のような怯えは微塵もなかった…

『空っぽのカボチャ(カボチャノランタン)』。その器を手に入れた新にとって、セラの罵詈雑言は、もはやランタンに溜める価値すらない「ただのノイズ」に過ぎない

 

「……新がそう決めたなら、私たちは全力であなたを支えるわ。何かあったら、すぐに言うのよ?」

 

母の言葉に、新は力強く頷いた

病院を出ると、初夏の陽光が新を包み込んだ。公立校へ通う新にとって、制服のない自由な私服での登校は、今の解放感にぴったりだった

 

「(さあ、始めよう。俺の新しい人生を)」

 

新は両親と共に歩き出しながら、無意識にオーラを周囲に広げた

道ゆく人々から漏れ出る、無駄な、それでいて生命力に満ちたオーラ。それらが新の意志に従い、隠によって姿を消しているランタンへと吸い寄せられていく…

 

「(……溜まっていく。これが俺の力、俺の灯火になるんだ)」

 

新の足取りは軽く、その背中はかつてないほど頼もしく見えた

 

セラという呪縛を断ち切り、家族の愛に守られながら、彼は自らの「器」を満たすための第一歩を踏み出したのだった

 

「ただいま」

 

玄関の扉を開けた瞬間、突風のような勢いで人影が飛び出してきた

 

「おかえり、新! もう、心配したんだから!」

 

「うわっ……。姉さん、苦しいって」

 

高校生の姉、早妃(さき)だった

彼女は新に力いっぱい抱き着くと、その頬をすりすりと寄せてくる。新にとって早妃は、セラに心を削られていた時期も変わらずに明るく接してくれた、数少ない救いの一つだった

 

「顔色、良くなったわね! よーし、今日は快復祝いよ。私のバイト先、美味しいんだから。今から一緒に行くわよ!」

 

「今から? ……まぁ、いいけど」

 

早妃に強引に腕を引かれ、新が連れていかれたのは、海鳴の街でも評判の喫茶店『翠屋(みどりや)』だった

カランカラン、と小気味よいベルの音が鳴る

 

「いらっしゃいませー! ……あ、早妃さん!」

 

店内に足を踏み入れると、元気な声が響いた

そこには、白いエプロンをつけた栗色のツインテールの少女がおり、先程まで座っていたであろうテーブル席には、育ちの良さを感じさせるおっとりとした雰囲気の少女、そして気の強そうな金髪の美少女がいた

 

高町なのは。月村すずか。アリサ・バニングス…

 

前世の知識を持つ新には、彼女たちが誰であるかすぐに分かった。だが、今の新は「公立小学校に通う、彼女たちとは別の学区の少年」に過ぎないし、向こうにとっても初対面のはずだ…

 

「なのはちゃん、お疲れ様! 今日は私の弟の快復祝いで来たの」

 

早妃が親しげに手を振ると、三人は興味津々といった様子で新の方を見た

 

「早妃さんの弟さん? 初めまして! 私、高町なのはです!」

 

「月村すずかです。よろしくね」

 

「アリサよ。あんた、そんなに体悪かったの? 随分ピンピンしてるじゃない」

 

三者三様の挨拶に、新も少し気恥ずかしさを覚えながら、自分を紹介した

 

「……初めまして。固導新(こどうあらた)です。姉がいつもお世話になってます」

 

丁寧ながらも、どこか凛とした響きのある新の声

その名前が耳に届いた瞬間

なのはの動きが、凍り付いたように止まった

 

「……え?」

 

なのはは、まるで信じられない奇跡でも目の当たりにしたかのように、大きく目を見開いた。彼女の視線が新の顔のパーツ一つ一つを必死に確認するように彷徨い、やがて確信に満ちた熱を帯びる

 

「新くん……なの……? あーくん、なの……!?」

 

驚きと、弾けるような喜びが混じり合った、震える声

 

「へ? ……俺のこと、知ってるの?」

 

新は不意に呼ばれた聴いたことがあるようなないようなその愛称に、虚を突かれたように目を丸くした

 

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