翌朝、新は少し重い足取りで登校した
新の通う海鳴小学校は公立小で、全校生徒数は約350人である…
以前の自分なら、校門をくぐるだけで胃を締め付けられるような感覚に陥っていただかったが、今の彼を包む『纏』のオーラは、不快な視線さえも穏やかに弾き飛ばす…
しかし、教室の入り口には、案の定「呪い」のような執着心を纏った成宮セラが待ち構えていた
「ちょっと新! 昨日休んだ理由、ちゃんと説明しなさいよ! 私に黙って休むなんて、どれだけ生意気になったの!?」
キンキンと響く罵声…
緊急入院していたというのは、既に学校から伝えられているはずだ…
ましてや、自分も見舞い…?に来ていたので知ってるはずなのだ…
クラスメイトの視線が突き刺さる
だが、新は彼女の横を、まるで動かない石像の脇を通り過ぎるかのように無関心に歩いた
「……無視!? ちょ、ちょっと待ちなさいよ! あんた、私に構ってもらえなくなったら本当に一人ぼっちになるんだからね!?」
「成宮さん」
新が足を止め、冷ややかな視線を向けた
「言ったはずだ。連絡事項以外で話しかけるなって。君に削らせる心は、もう一欠片も残ってない。……二度と言わせないでくれ」
そういって離れる新に驚きの視線を向ける周りの生徒達…
一方で、セラの顔が屈辱で真っ赤に染まる…
かつての「獲物」が放つ、捕食者のような冷徹な威圧…
その圧倒的な差に、彼女は言葉を失い、震える拳を握りしめることしかできなかった
_________
時が経ち、放課後…
新は原作知識を頭のなかで思い出しながら、成宮に絡まれるのを防ぐ為少し遠回りをして帰路についていた
「(確か、無印編ではジュエルシードって物を巡るんだよな…)」
ジュエルシード…
アニメ魔法少女リリカルなのはの中心になる、ロストロギア…
いわばオーパーツであるそれは、青く輝く、美しい宝石。
魔法科学で生み出された結晶体で、手にしたものに幸運を呼び、さらに持ち主の「望み」を限定的にかなえる力がある。
が、かなえる望みに比例して、使用者はいろいろなものを失ってしまう危険性がある。
正しい使い方を知らないものが使用すると非常に危険。
特に、急いで望みをかなえようとしすぎると「オーバーロード」状態になり、正気を失い、時にその容姿さえ変化させてしまうことがある。こうなった者を元に戻すには、正しい「魔法」の力が必要とされている…
「正しいってなんだよ…ん?」
昔見た資料で書かれていたのを思い出し、そう呟く新…
ふと、空っぽのカボチャ(カボチャノランタン)のオーラ回収にノイズが掛かる…
そちらに目を向けると、『凝』を凝らすまでもなく、路地裏のゴミ捨て場近くから、異質で、それでいて強大な魔力の波動が漏れ出しているのが視えた…
いや、気付いたと言うべきだろうか?
目を『凝』らすまでもなく見えたものを今さら気付いたということは、恐らく認識阻害でもついていたのだろう…
「……何でちょうど良く見つけるのかな、俺は……」
-フラグ回収器か何かか?俺は?
そう想いながら、手にオーラを纏わせて遮断した状態で手に取る
それは、青く輝く、美しい宝石…
ジュエルシードだった…
本来なら暴走を始めるはずの代物だが、新のオーラを纏わせているためか大人しい…
「(…魔力は吸収できないみたいだし、どうしよう…)」
空っぽのカボチャ(カボチャノランタン)は自他問わずオーラを回収して溜め込むための発である。
そのためジュエルシードを始めとした魔力を吸収することは出来ない…
-なのはに渡すか?でもなぁ…
と悩む新…
その時だった
「すみません。それを私にくれませんか?」
そこには、ちょうどなのはと同い年くらいの金髪の女の子がいた…
-な、ん、でこんなピンポイントで出会うんだよぉぉぉぉっ!!!!!!???
原作知識を持つ新は、その子を見て内心叫ぶ…
それはそうだろう…
だってその子は、魔法少女リリカルなのはに出てくる原作キャラ…
フェイト·テスタロッサ(後にハラオウンの姓も追加される)だったのだから…
「お願いします。その石を私に譲ってくれませんか?」
そう言いながら、新に言いよってくるフェイト…
「えーと、これを君のなの?」
「え、えっと……私のではないんですけど、どうしてもその石が必要なんです」
新の質問にそう答えるフェイト…
私のなんです。っとウソをつかない辺りホントに純粋な性格である…
「(…なんでだろう、自分の心が汚れてる気がしてきた…)」
「あの…?」
何故か自己嫌悪に陥ってしまう新に、困惑したような顔を見せるフェイト…
「!あぁ…ごめん…えっと、君はこれが必要と?」
「は、はい」
「えっとね?知ってると思うんだけど、落とし物を勝手に持って帰ったりすると、一応犯罪なんだよ、それは解るよね?」
「えっと…それは解ります…」
「で、流石に犯罪行為は見過ごせません。例えそれがあなたにとって必要なものだと言われても、それは変わりません…。わかる?」
「……それは解ります……」
俯き、消え入りそうな声で答えるフェイト…
その姿に、新の『カボチャノランタン』が微かに反応した
彼女から漏れ出しているのは、強大な魔力……ではなく、それを覆い隠すほどの「深い悲しみと、縋るような渇望」のオーラの揺らぎ…
-…仕方がない…
新は内心でため息をつき、手に持っていたジュエルシードを彼女の目の前に差し出した
「え……?」
「これ、変わりに交番にいって預けてきてくれる?…そろそろ行かないと門限過ぎちゃうから」
「ど、どうして……? 泥棒だって言ったのに……」
戸惑うフェイトに、新は少しだけ前世の記憶にある「お兄さん」らしい苦笑いを浮かべた
「代わりに交番に届けて欲しいって言っただけで、あげるとは言ってないもん……あ、でも一応名前は聴いておくか?…君の名前、教えてくれる? 俺は新。固導新」
「……フェイト。フェイト・テスタロッサです」
「よし、フェイトね?…じゃあフェイト、さっきも言ったように、それを代わりに交番に届けて欲しいんだ、どこの交番でも良いし、何時までにとかって制限もしないから」
つまり、言外にこう言ってるのだ…
-ジュエルシードを譲るから好きにして良いよ、と…
普通ならダメだが、原作知識を持つ新からすれば問題はない…と、思いたい
「じゃあ、お願いね」
そう言って離れていく新のに、フェイトはジュエルシードを受け取ったまま、呆然と彼を見送ることしかできなかった
「……友達じゃないのに、どうして」
受け取ったジュエルシードの重み以上に、フェイトはその場に立ち去る新の背中に、不思議な温かさを感じていた…
本来、ジュエルシードは手にする者にどす黒い欲望を呼びかけ、精神を汚染する。しかし、新が手渡したその石には、彼の『纏』による柔らかなオーラが残留しており、フェイトの荒んだ心を一時的に凪がせていた
-……不思議な人。母さん以外の誰かに、何かを託されるなんて……
彼女は、新が言った「交番に届けて」という言葉が、自分を罪悪感から救うための優しい嘘であることを理解していた
「……ありがとう、アラタ」
フェイトは小さく呟くと、新の歩いていった方向とは逆の方向に歩いていくのであった…
何方の投稿ほうがいい?
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