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やり直したい人生なんていくらでもある。
人生をやりなおしたいと幾度思ったかわからない。
きっとこうのは人間の道理なのだろう。
例にももれず自分自身もそうだった。
やりなおしたい。できることなら学生時代から。
いや、入学する前のあの、出会いから。
けれど、そんなことは不可能で、人生は進んでいく。
元死喰い人として、一人の父親として。
昔スコーピウスに人生をやりなおしたいと思ったことはないか、と聞いた。するとあの子は笑って「なんで?」と問い返してきた。「昔は思っていたけど、やりなおしたいと思う今じゃないし、未来じゃないよ。アルバスがいて父さんがいて…。それに僕は失う怖さを知ってる。」だから、人生に「ああすればよかった」「こうすればよかった」なんて思わない。その結果が今だし。これが僕の生きる人生だよ。
眩しい。と素直に思った。あのハリー・ポッターの息子と大冒険をしてきたからこその、捉えかたで、彼の真理なのだろうと思った。
きっと、自分にはきっと理解できる日はこないだろう。いや、理解は出来ている。それを認められる日はこない。自分自身はこの20数年間ずっと後悔してきたのだ。
あのとき、もうすこし違う態度をとっていたら。
あのとき、ちゃんと名乗っていたら。
あのとき、凝り固まった純血主義に惑わされていなければ。
思い出すのは、いつもダイアゴン横丁でのマダムマルキンの洋装店での場面だった。
あの場面さえやり直せれば、ハリーポッターと友人になれていたかもしれない。
寮が違っていても、もうすこし、多少はましなものになっていたかもしれない。
彼らの背負ってきた人生を一緒に背負うことができたかもしれない。
スリザリンだからこそ、マルフォイに生まれたからこその手伝いが、フォロー出来たかもしれない「あなたはいつもその話ね」。と、いつもアストリアに笑われていた。それぐらいの、胸の内に秘めておくことすらできなかった僕の最大の後悔だ。
「ドラコと一緒にいると意外と楽しくて、楽なんだよね。」
ハリーがいつかの夜そうつぶやいていた。息子同士が親友のおかげで二人で晩酌をするほどの仲になっていた。
「どういう意味だそれは。」
「そのまんまの意味だよー。なんだろう。窮屈さがない!」
「ほう英雄殿。それは多分に解釈できるがよろしいか?」
「うっわ。卑屈やろうだ。素直に『嬉しい。僕もだ』って言えばいいのにー」
「嬉しい。僕もだ」
「白々しい。ここまで白々しいセリフ僕初めて聞いたよ。」
「奇遇だな。僕もだ」
ニヤリと二人で笑って声をだして爆笑する。こんな日が来るなんて。こんな日が来るなんてアステリアが知ったら「良かったわね」と息子を見るときと同じ微笑みで僕のことを見るに違いない。
ふと、ハリーが真剣な顔をしてこちらを見ていう。「本当に、アルバスたちのおかげだね。僕は君と友達になれて今は本当に良かったと思っているよ。当時からそんなだったらよかったのに」
「当時から?当時から僕はこんなだが」
「は?うそだね。本当にあのころの君といったら…」
「なんだ」
「いけ好かなくて偉そ気で、ほんっとーに大嫌いだった!」
かなりショックを受けた。それを言い放ったハリーは、特段変わった様子もなく違う話にうつっていったこともショックだった。やはり自分は嫌われている。今の自分は嫌われていないとは断言できない。あんなことをしたのだ。あんな子だったのだ。状況が変わったといっても過去が消えるわけではない。過去を消し去りたい。変えたい。
ハリーに嫌悪感を抱かれている自分の存在を抹消したい。しかし、そんなことできるはずもない。自分は、今手にいれた関係を大切にしていくべきで、いかなければならない。それを固く、かたく決心した。
***
ここは、どこだ。?
私は誰で、ここはどこだ?
記憶喪失者お決まりの文言でめざめれば、そこは旧マルフォイ邸であった。しかも、非常にみなれた元自分の部屋。
「いやいやいやいやどういうことだ。」
壁に掛かっていた鏡に向く。そこにうつる姿は…スコーピウス!?いやいや自分だ。パニックで状況がうまくつかめない。うーんうーんと頭を悩ませていると、徐に扉がひらき、母のナルシッサが現れる。
「あら。目が覚めましたか?熱は…」
そういいながら額に手をあてる。
懐かしい母の姿に涙腺が緩む。うるうると涙が自然とでてきてしまい涙がポタリと落ちた。
「まだお熱がありますね。まぁ涙を流して、そんなに辛いのですね。横になっておやすみなさい。しっかりなおすのですよ」
そういいながら僕をベットに横たわらせ、布団をかけ直してくれる。そうか、熱があるのか、どうりでぼーっとするし、涙もでてくる…ほんのり冷たい母の手に心地よさを感じながら、僕は再び眠りに就いた。
状況を確認しよう。
逆行ものには状況整理がセオリーだ。
5歳児の体で腕組みをし、庭でドラコ・マルフォイこと私ドラコ・マルフォイは考える。
この場合メタ発言は許されるやつだ。とりあえずわかったことは。自分の体が5歳であること。そして、自分が知りうる当時の状況と、何も違わずほぼほぼ同じ世界、状況であること。だ。
確かに自分は死んだ記憶がある。急なことだったけれどもあのあとの記憶がないということはやはりあれば僕の死だったのだろう。でも僕には記憶があるし、生まれ変わったとかではない。なにせ過去の自分自身に戻っているのだ。
…両腕でガッツポーズをする。つまり、まさかの僕は僕の人生をやり直せる…ということか。そういうことだろポッター!失敬。そういうことだろ神様!
これほどまで神に感謝したことがあっただろうか。ありがとう神様。ありがとう。僕はこの第二の人生(?)を謳歌します。ハリーポッターと素敵な出会いをして。友人関係を築き上げ、そしてハリーの、あいつの不幸を一緒に背負っていきます。
かならず、必ず約束します。
僕は決して不幸にならないし。
あいつも決して不幸にならない。
ということで、まずやるべきことは父上の意識改革!何度妄想したかわからない。もしやり直せたとしても、父上が変わっていなければ十分な活動ができない。きっとどこの世界線のドラコでも逆行してしまえばやっているに違いないと断言できる。父上の意識改革。
といっても、やはりじゅんけつでそれなりに立場や地位のあるスリザリンのマルフォイ家が、例のあの方から目をつけられないわけもない。しかも、正直言って死喰い人になることは、免れない運命だったと思う。悔しいが。
だから、「やめてほしい」とか「どうなんだ」というのは私から言うのはやめておいたほうがいいだろうという結論になった。自然と、父上の意識や考えが変わればいいのだ。人は体験や経験、関わってきた人で変わる。事実自分自身がそうだった。
ということで、三つほど目標を立てる。
①「英雄大好き。ハリーポッターすごい。僕お友達になりたい」 をアピールする。
②「マグルグッズが気になる」 をアピールする。
そして、③「人の死が恐ろしい。怖い。傷つけて何かを手に入れるのはダメだ」というのを子どもらしく呟く訴える。僕には理解できないと、絵本をよんで父上と母上に報告する
これでどうなるとも言えないが、両親は僕のことを可愛がってくれていたから、僕のために少しでも変わってくれることを期待する。
いいのだ。もし父上が抜け出せなくても。
僕はもう流されないと決めているのだから。
さて、まずは作戦②
これは、割とおおきな計画である。
***
「父上。母上。お願いがあるのですが。」
「ドラコ。なんだい改まって」
僕はギュッと抱えていた絵本を抱きしめる。ちなみにこの本、僕が大好き(ということになっている)絵本だ。何度も繰り返し読み、父上にも母上にも預けたことはない。二人は微笑ましくその光景を見ていたからきっと効果があるはずだ。
「この絵本に書かれているマグルの使う万年筆とルーズリーフというものが欲しいのです!」
言ってやったぞ。ちなみにこの本にマグルの使う万年筆とルーズリーフなんてものは書かれていない。ただ単に本当に僕が欲しいだけだ。羽ペンと羊皮紙で勉強なんてやってられない。
おずおずと顔をあげて父上の顔をみる。
非常に険しい顔をしていた。しかし、僕だって簡単に諦められない。
「あの、万年筆というのは、インクが筒の中に入っていて、そのインクがなくならない限り使えるペンらしいのです。あと、実はしゃーぷぺんしるというものは、消しゴムというものでセットで使うと簡単に消せるらしいのです……!」
どうだ。すばらしいだろう。と僕は興奮した顔で伝える。「ほう」と父上が少し興味をもった様子が聞こえる。
「僕。お勉強がたくさんしたいと思っています。これがあれば、勉強がはかどるのではと考えています…!」
「……知り合いに。グリフィンドールなのだが、本当に名前を知っているぐらいの間柄なのだが、マグル製品に詳しい知り合いが居る。しかし、あまり関わり合いがなくてな。『息子が興味あるといっている』という言い方しかできんが、それでもいいなら頼んでみよう。」
「はい…!ありがとうございます!」
父上が、おそらく連絡を取るためだろう。席をたち部屋を出るのを見届ける。知り合いって父上。ウィーズリーとは知り合いレベルではないだろう。確かもうこのときには二人は不仲だったはずだ。それにもかかわらず僕のお願いのために、あのロンの父上に「頼み」に行くとは、甘すぎやしないか。まぁ、結果良かったのだが。
そこまで考えてふと、スコーピウスのことが頭によぎった。…そうだな、父上。僕ももしあの宝物に頼まれたなら、多少は我慢してでもその願いを叶えようとするだろう。
父上の僕を思う愛がくすぐったくなって、年甲斐もなく、いや見た目相応に顔を赤らめた。
***
「うわぁ…!すごいですね!」
というわけでin隠れ穴。
思ったよりも簡単に約束は取り付けられた。やはり人がいいな。ウィーズリー家は自分とは全く違う環境ですこし照れる。全く違いすぎて自分にとっては居心地が悪いが、しかし、世間ではこれは素敵な家族像なのだろうと、今の僕は知っていたし。そういうロンが幼いなりにも愛されていることも知っていた。そういうところにグレンジャー嬢も惚れたのだろうな。
次々と紹介されるマグルグッズに、感動の反応を示していると、いつまでも終わりそうにないことに気づいた。
「あ、あのウィーズリーさん」
「アーサーでいいぞ」
「あっありがとうございます。では、アーサーさん。あのアーサーさんには、僕と同い年の息子がいらっしゃるとお伺いしたのですが」
チラリと隣で無心に努める父を伺う。何も反応を示さないとなると、もうなににも触れない。無心でいつづけるという意思表示か。
「あぁ。ロナウドのことかな。さっきからチラリチラリとこちらを伺っているよ。こっちにおいでロナウド!ロン!あっ逃げた!」
後ろを振り向くと、確かに自分と同じぐらいの男の子がパタパタと走り去っていくのが見えた。
「あの、僕彼のとこに行ってきてもいいでしょうか」
アーサーは一瞬固まったが、いってらっしゃいと言ってくれた。そんなにも父上と二人きりになるのが嫌か。まぁ、ここに来て最初の挨拶をしたきり一言もしゃべらない父上と話したいひともいないだろうな。二人の気持ちはなんとなく伝わってきたが、僕には僕の作戦がある。お言葉に甘えて、とロンを追いかけた。
「やぁ。フィフィ・フィズビー食べるかい?」
僕は、ロンにそう声をかけた。この言葉は用意していたものだ。スコーピウスが初めてアルバスに声をかけたときにいった言葉らしい。「スイーツがあれば、きっと友達になれる」アステリアとスコーピスの可愛いまじないだ。ついそれを思い出して顔がゆるんでしまう。これで友達になれなければ恨むぞスコーピウス。
「……食べる」
単純かよ。ロンらしいな。いや、子供はそんなものか。現に息子たちはそうだったのだから。「はい。」と渡しながら隣に座る。間違えない。練習だ。
「僕の名前はドラコ・マルフォイ。君は?」
「ロン。ロナウド・ウィーズリー」
「ロナウド。君のことはロンって呼んだほうがいい?それどもロナウド?僕のことはドラコと呼んでくれ…ると嬉しい」
危ない。不遜な態度がいまだ抜けきらない。
「ドラコ。わかった。僕のことはロンでいいよ。」
「あぁ。ロン。僕たち友達にならないか?」
彼の前に右手をだす、しかし彼はその手を凝視するだけで、なにもアクションを起こさない。ミスをしたか。間違えたか。と何を間違えたか考えていると向こうから言葉が返ってきた。
「君。マルフォイだろ。純血のスリザリンの」
「…あぁ…」
「僕、ウィーズリーだよ!グリフィンドールの」
「…あぁ‥!」
何が言いたいのか合点がいき、目の前のロンを抱きしめる。そうかそうだった、こいつも純血だった。僕とはスリザリンとグリフィントールという「組み分け」の「カテゴリ」が違うだけで以外と純血に囚われていたのはお互い同じらしい。その「同じ」であることにすこし安心し、つい抱きしめるなんてことをしてしまった。
「なんだ、そんなこと。僕は君と友達になりたいんだ。ダメかい?」
「…ダメなんかじゃない!」