1-1
一話
ホグワーツ魔法学校一年生。
前の世でさんざんに聞かされた(読まされた)彼らの大冒険の一部を体験した。一部というのが癪であるが(現にノーバート事件は仲間はずれにされたし)まぁ、そういうことだろう。例の…いや、ヴォルデモートにも遭遇し、これから僕たち、もといハリーが戦っていく理不尽さを痛感したところだ。
それにしても、とドラコはため息を落とす。
彼が僕の知っている彼だったなんて…。夏休みにはいって一度もあっていないし連絡も取れていないが、ふとしたとき思い出すのはハリーのことばかりだった。あのハリーじゃないと思っていたから甘えてみせたし、甘やかしたのに。思い出すたびに羞恥でいっぱいになる。向こうもむこうで、恥ずかしいはずだろうと思ってみても、ハリー自身はそれをそれとして楽しんでいるからまた腹が立つ。理解できない。
ドラコは夏休みの宿題を始まって五日でおわらせていた。残りの時間は、色々と研究やら準備やらにあてようと思っていたのだ。というわけでinウィーズリー家。
「ドラコ…。ノート写させてください」
「断る」
目の前で、うんうん唸っている友人様にちらりと目をやるが、すぐに自分の作業に戻る。
「わかんないんだよ!」
「わからないわけあるか。お前のそれは面倒くさくなっているだけだ。教えてください。ではなく写させてと懇願しているところが、証拠だ。まだまだ夏休みはある。ギリギリまでは努力するんだな」
「だって、せっかくドラコ遊びに来てるのに、学校では寮が違うから一緒にいれないのに。僕だって早く終わらせて、ドラコと遊びたい」
ロンは、わざと「ドラコと」を強調してお願いする。この友人様が「友達」に弱いことはこの一年間で重々に知った。半分本当で半分嘘だ。さっさと宿題を終わらせて遊びたい。海に行きたい山に行きたい箒に乗りたい!そうおもいながら、うなだれてみせる。
「はー」と盛大なため息が聞こえたかと思うと、ロンに教科書の束が投げつけられた。
「宿題に関わるところに付箋を貼っている。探す手間が省けるだろう。ないよりかは早く宿題が終わるはずだ」
「いったあああああああ。痛い!いたいけどありがとうドラコ!」
ふん。と鼻を鳴らし、また作業に戻る。大概自分も甘い。クラッブとゴイルほど手がかあらないせいか、逆に甘やかしてしまう。ロンにこんなにしてやる僕なんて以前の自分がいたら泣きながら気絶してしまうかもしれない。「違い」というのは恐ろしいものだ。
「そういえばドラコ。一生懸命に何してるの」
「ん?これか。携帯電話をもっと使いやすくならないかなと思って試しているんだ」
「あぁ!これとても便利だったよね!寮が違ってても連絡取り合えるし」
「そうなんだが、ハリーがいいなぁと言っていてな。もともとマグルが使用する携帯電話を活用しているとはいえ、ホグワーツではマグルとしての携帯は使えない。さらに言うと僕の家でも君の家でも、そういう用途としては使えない。ハーマイオニーとハリー間では使えるだろうがな。」
「うん。それでドラコが魔法界でも使えるように、なんだったっけ『でんぱ』がなくても使えるように改良したんだよね」
ロンは言い慣れない単語を一生懸命に絞りだす。
「改良したというか、機能を追加した。が正確だな。一方が打ち込んだものをペアとなる機会に表すという魔法を応用したんだ。マグルのこの機械のおかげでストックができるのが、今までとは違う良さだな。まぁ、それでだ。一体一だけでなく複数でやり取りができるようにして、僕たちがそれぞれ持てば連絡が取りやすいんじゃないかな。と思っているんだ」
「すごいね!さすがドラコ!」
素直に感心する。目の前の友人はとても賢い。
「それが、うまくいかない。親になる人が、ほかの人にいっぺんに伝える。というふうに、機能をひとつに固定することはできるが、ううむ。」
やはり、マグルのつかう「電波」とは、不可思議だ。見えないくせに繋がっている。両面鏡も遠くにいる人と確認ができるが、持ち運ぶ「ポータブル」には即さない。我々は、「なんでも」でにるかわりに「簡単に」を求めてこなかった。しかし、マグルは「なんでも」できないからこそ、目の前の事象を「簡単に」「効率よく」していく方法を身につけてきたんだろう。本当に実感する。ちなみに「なんでも」という言葉選びについては笑うところである。
「そういえば、ハリーに手紙送っても一枚も返ってきてない」
あぁ。とドラコは適当な返事をする。「ドラコはハリーが心配じゃないの!」と声が聞こえるが、心配もなにもどうせあの糞みたいな一家に止められているか、どっかの屋敷しもべ妖精に邪魔されているかだろう。
屋敷しもべ妖精といえば、ドビーには一応「あのハリーポッターに余計なことをするな。あいつはホグワーツにいる時が一番の幸せらしい」というようなことを色んな角度・言い方で伝えておいた。これでとりあえず僕のできることはしたし、ハリーに怒られる筋合いはない。というとりあえずのアクションだ。
むしろ「坊ちゃんは何を言っておられるので?」と怪訝な顔をされた。「だよな。」
僕が僕でなく僕であることがなによりもの証拠だろう。
どんまいハリー。うちのドビーじゃないどっかの屋敷しもべ妖精に今頃邪魔されているんだろうな。エイブリーの家のしもべ妖精かな。これに関しては助ける必要はないと無視を決めている。命に関するわけじゃないし。どうせなんとかするんだ。あいつなら。
「それに、今日はハリーの誕生日だろ。ドラコプレゼント何送った?」
「送ってない」
「は!?何で!こわい気持ち悪い!」
「何で送ってないことが、『こわい』『気持ち悪い』になるんだ!」
ドラコは作業した手をとめてロンに向く!「心外だ」とばかりに声を荒らげてしまった」
「君がハリーに送っていないなんて、僕知ってるんだからな君がクリスマスに何を送ったかなんて。いい加減にしろよ。ハリーをそっちの道に引き込むな!」
「そっちの道とはなんだ。そっちとは!ただ僕はあいつにとっての完璧な友人でいたいだけだ!」
「ああああああもおおおおおそういうところおおおおお」
ロンは髪をぐしゃぐしゃとかき乱す。そういうとこだよそういうところ!
「プレゼントは手渡ししようと思っているだけだ。」
どうせ送ったとこでスムーズにあいつの手には届かない。だったら当日よりも直接渡してやろうと思っただけだ。いまだぶつぶつつぶやくロンに「さっさと宿題を終わらせろ」と放ち作業をはじめる。
階下でバタバタと騒がしい音が聞こえる。
あぁ、この家の主が帰ってきたのだな。
父上とアーサーは未だに仲が悪い。僕がここに遊びに来ることも文句を言わないし、ロンがマルフォイのお屋敷に遊びに来ることにも文句を言わないから、まぁ子どもにまで自分たちの不仲を押し付けるつもりはないのだろう。と思って好き勝手させてもらっている。まぁ好き勝手といっても、父上が「許す」であろう範囲内と「許さない」のラインはきっちりと見分けているつもりだ。
それこそ、こんなロンなんかに心配されるようなことはないのだ。
「やあ!ドラコ」
「うちのロンの面倒を見るのは大変だろう!」
『ご苦労!』
夕方、宿題を隅におき、二人でおやつタイムを楽しんでいたら後ろから声をかけられる。フレッドとジョージだ。
「いや、まぁもうずっとなんで。大丈夫です」
「ドラコ!そこは謙遜するところだぞ!」
「君相手に謙遜…全く不似合いな言葉の組み合わせだな」
「ひどい!」
フレッドとジョージはニタニタと笑っている。おや、これはいつものお二人とは違う。度をすぎたいたずらを考えている時のお二人だ。「ふふふ」と気持ち悪い笑みを携えたままフレッドはドラコの右に、ジョージはドラコの左に構えて顔を突き合わせた。
「なぁ。ドラコ、今夜面白いことをするんだけど」
「面白い?最高では?兄弟。」
「そうさな最高なことさ兄弟」
『ともに来ないか』
「兄さん!ドラコは参加しないよ!そう話しただろ!」
二人がドラコをけしかけているのにきづきロンは叫ぶ。だからこいつをそういうのに巻き込みたくないんだって!
「そうはいってもロニー。こんな楽しいことは共有しなくちゃ!」
「そうそう!というより、ドラコがいたら、何か起きてももみ消してくれそう!」
二人はサムズアップをしながらいい顔で答える。やはりまたよろしくないことを企んでいたな。とドラコはあきれるも、誘われたことが、ちょっとした冒険心と嬉しさを感じた。
「お兄様方、うれしいお誘いですが。僕は今晩夕食前に母上と父上の待つ家にかえらなければなりません。こちらにお邪魔している間毎日のように母上から手紙が届くのですよ。もともと今日帰る予定にしておりましたし、それを伸ばすのは…」
とても残念だ。というふうに見せる。
こういう表情回しが大切なのだ。今後のためにも。