第三話
それから、夏休みはすぐに終わった。何度か遊びに行ったが、その度に彼らの宿題を見ていただけだった。ハリーは教科書類を保護者殿たちに没収されていたから仕方がないと言い張っていたが、あんなの中身はいい大人であるハリーならすぐに終わる内容である。つまり、彼らは「僕がいないとき」に「全力で遊び」,「僕が顔をだしたとき」に「全力で僕を頼った」というだけの話である。ていのいい家庭教師扱いだった。
なんだか腹が立ったので、あの二人には内緒でハーマイオニーと勉強会をしておいた。家には呼べないので、まぁそれなりの裏ワザを使って。なかなかずるいことをしている自覚はあったが、そっちがその気ならこっちは。という思いである。それについてはなかなか有意義な時間だった。(ギロルデイトークを除けば)(彼女がこんなにもあいつのことが好きなどいうことは、前の世では知らなかった。あの魔法大臣に上り詰めたハーマイオニーもそうだったのだろうか)
それ以外の日は、薬を作ったり勉強(マグルの本をハーマイオニーに頼んでおいた)を進めたりしてすごした。先日ハリーには「マンドレイク回復薬」を作っているといったが、実は大量には作れていない。なにせマンドレイクを手に入れるのが困難なのだ。伝手はないわけではないし、個人で動かせるお金もないわけでもない。しかし、限界がある。そしてつい、せっかく手に入れたマンドレイク。別の薬を作るために使ってしまったのだ。「被害は最小限に抑えたほうがいい」といった自分が言えることではないが、まちさえすれば、どうせスプラウト先生が育てて、スネイプ教授が作るのである。僕が作っておくのはあくまでも「保険」だ。僕らの大切な「誰か」が石になってしまったときのために。
さて、と僕はちらりと時計を見る。
予定調和はそう簡単に崩れてくれないか。
先ほどロンから、「遅刻ギリギリ。やばい」という焦った様子もない能天気な連絡がきていた。これはハリーから聞いていたとおりの情報だった。このままいくと、本当ギリギリについて”なぜか”開いていない”ただの柱”に激突して学校に来れなくなるだろう。
僕は目の前にすわる弟に「サジーのところのしもべ妖精。ビビをここによんでくれ」と頼んだ。
「何故でしょうか。私が呼んだところでこんなところまでこないと思いますけど」
「質問には答えない。ビビはくる。とりあえずよんでみてくれ」
サジーは首をかしげなから「ビビ。出てこれるか。」と呟いた。その瞬間,目の前によく知ったしもべ妖精のビビが現れ、こちらを訝しげに見つめていた。ビビはいつもこうだ。なぜか僕に少しの悪意をもっている。
サジーの方をむき「なんでしょうかサジッタ様」と恭しく頭をさげた。
「君、こんなところまで来れるんだね。兄様がビビに用があるんだって」
「ドラコ様が…」
「急に呼びたててすまない。そして説明も割愛するが、君が今”独断でしている行為”を全てやめてくれ」
「質問の意図がわかりかねます。そしてビビがドラコ様のご指示を聞くいわれはないのではと思います。」
「エイブリーのハウスエルフだからか」
「そうでございます。ドラコ様は、ドラコ様の家のしもべ妖精にお願いされれば良いのではないかと」
無駄に自分の意見を持つしもべ妖精だな。と、内心イライラする。しかし、こんなことでイライラしていては、ハーマイオニー魔法大臣に叱られてしまう。そんな難しい注文してないだろう。だれも「カバの汗は本当にピンクなのか確かめてこい」とかそういう話はしていない。まぁ、「嫌だ」という意思表示なのだろうな。まぁ、アプローチの方法を帰るまでだ。
「サジー。そこのしもべ妖精に『ドラコが言っている通りにしろ』と命令しろ」
「えっなぜです」
「なぜでもだ。お前が被害を被ることはない。兄様の言うとおりにしておけ」
サジーは、「えっでも」と悩んでみせたが、二度目の説得で「そういうことでしたら」とビビに命令をしてくれる。サジー。そういうとこだぞお前。
ビビが「わかりましたサジッタ様」と返事すると同時に携帯が震える。みると「ホームには入れない!」という内容だった。
今、解除したから大丈夫だ。と送るよりも(なによりも誤解を招きそうだ)行ったほうが早いと判断し、二人に「ありがとう」と述べていそいで向かう。まだ時間はある。
「ドラコおおおおおおお!!入れないんだ!数回チャレンジしたけど!」
「おちつけロン。僕はこっちにこれたんだ。入れるはずだ」
「ハリーなんて一回ぶつかったら『あぁ、あきらめようロン』とかわけわかんない悟り開いちゃって挑戦してくれないし、僕は何度も挑戦するから奇異の目で見られるし。」
あ、なんかその時のハリー想像できる。と思ってちらりと見る。あいつの顔は「だってそうでしょ」という顔をしていた。
「行きはよいよい帰りはこわい。だよ。ドラコ。たぶん向こう側にはいけないんじゃない?」
「あのくそ妖精が、僕のいうことを聞いてなかったらな。」
そう言いながら、ロンに再挑戦させる、
が、それは空振りに終わった。
勢いよく壁にぶち当たり中身はばらばら、カゴの名から飛び出してしまっていた。
隣でハリーが「君って意外と正直ものだよね」とつぶやいているのが聞こえた。かくして、僕たち三人は、9と4分の3番線から出発するホグワーツいき汽車に乗りそびれたのである。糞が…!あのくそ妖精めが……!
駅のホームでは目立つ、ということで、ウィーズリー家の車の前。
ちなみに先程まで「空飛ぶ車でいけばいいんじゃない!?」というロンのとんでも論を「馬鹿か」と一蹴し説き伏せたところである。
「とりあえず、ハリー。君の素敵なフクロウでホグワーツまで手紙を頼めるかい?」
「オーケイ?誰宛にする?」
「お好きにどうぞ」
ダンブルドア一択だろう馬鹿者。という返事はグッと飲み込み大人の対応をする。こいつこの状況楽しんでるな。ひとまず、ここで待っておけば、この車を取りにロンのご両親が戻られるだろう。そのとき事情を説明して、そのあとは大人の対応に任せればいい。
「ドラコ。僕はお腹がすきました」
ウィンクすなウィンクを
「僕もお腹すいた…安心したらダメだね」
いやいや。さっき朝ごはん食べてきたんじゃないのか!
仕方ない。そういって駅の構内にあるカフェに三人で向かう。ベーグルを二つとコーヒーを三つ。ロンが「苦いのは無理!」と叫ぶからひとつだけホットミルクに変更。「君って本当甘やかし体質だよね。ごちになります!ウィンク!」
くそう。かわいい腹が立つ。わかっててやってるハリーに腹が立つ。それに気づいたロンも寄ってきて二人で「ウィーンク!ウィンク!」とパチリパチリとアピールしてきた。あぁ、もうわかった!それは全部僕の奢りだ!覚えとけよ!
ベーグルと飲み物を携えて、車のあった場所に戻ると、すでにそこには車がありませんでしたとさ。わかってたけどな!!!!過去の僕のバカ野郎!
***
「ということなんです先生」
「何一つ吾輩には伝わってこなかったぞマルフォイ」
目の前にはセルブススネイプ教授。両隣にはロンとハリー。
あのあと結局僕たちは駅の外にある大きな木の下のベンチで時間を潰すことにした。ここで、どれぐらいまたなけらばならないのか想像するだけでもため息しかでてこなかったがこればっかりは仕方がない。
三人でベンチに腰掛け、飲み物を口にするふたりにベーグルを渡す。こぼすなよとと焼きたくもない世話をやいていたら目の前に影ができた。顔をあげるとそこには全身を黒に包んだスリザリン寮の寮監であるセブルス・スネイプ教授が立っていた。
「先生!はやい!さすが!ありがとう!」
ハリーがスネイプ先生にかけよる。ベーグルを左手に、右手にコーヒーを持ったまま。スネイプ先生は鬱陶しそうにハリーから逃げていた。まじかよハリー。スネイプ先生にふくろう飛ばしたのか!?ロンがそこで固まっているぞ。
「指定された汽車にのらず、ブランチとはいいご身分ですな。」
誤解だ!誤解なんだ!「コーヒー飲みます?」じゃないハリー!空気を読め!
「ここが学校で、なおかつ新学期が始まっていたなら。吾輩は涙を浮かべながら自寮からも減点をしてしまったいたのでしょうな。全く。不幸中の幸いである。」
興奮するハリーの首根っこを掴み(ロンは固まっているのでここでは無害だ)僕の隣にたたせる。ハリーがどんな文面で彼に「ヘルプ」を求めたのかしらないが、一応説明をさせて欲しい。口を開きかけると大きなため息が聞こえてて「詳しくは私の研究室で聞く」と言われた。目は「姿表しができる森までいくからはやく掴まれ」と訴えていた。
とまぁそんなこんなでスネイプ先生の部屋inホグワーツなのである。ちなみに、汽車の旅とくらべたら一瞬で移動してしまった僕たちは、誰もまだいないホグワーツにいる。フライングだ。誰もいないホグワーツの静けさに不安を抱えながらまた、地下室のその奥の教授の部屋…不安感しかない。そのなかで、この状況をハリーは説明する気なし。ロンは相変わらず触らぬ神に祟りなし固まっているだけだ。もうここは自分が説明するしかない。とやんわりと、曖昧に、適当に、事実だけ伝えたら「何一つ伝わってこない」である。
そりゃそうだ。僕でもそう思う。
どうしたものか、と隣をみるとギョッとした。
ハリーがポロポロと涙をこぼしていたのだ。
「先生。僕たちはホグワーツにいてもいいんですよね?ホームに入れなくて、ホグワーツに拒否されたのかと不安になって…。焦って。退学とかじゃないですよね。なぜ入れなかったのでしょう。僕はここにいてもいいのでしょうか。本当はダメなんじゃないんですか。僕たち荷物をまとめたほうがいいんでしょうか」
ぎゅっとローブを握り締め涙声でハリーはつぶやいていた。おいおいまてまて別に僕たち何も悪いことしていないだろう!と先生のほうをみると、狼狽えていた。それはもうわかりやすく顔に「どうしよう」とかかれていた。わたわたとソファから立ち上がり隣の部屋に消えていく。
ハリーが僕の方に顔を向けてウィンクをした。
この役者め。
隣の部屋から出てきたスネイプ先生は高級そうな茶菓子を籠に入れて「食べなさい。ルシウス先輩からいただいたものだが」と僕たちに差し出した。甘いな?ウィーズリーにも食べなさいと促している。そうとうテンパっているな?
「そんなことにはならない」「大丈夫だ」「事情は吾輩からダンブルドアに伝えておく」「お前たちが汽車に載っていないことは話題になっているかもしれないから、色んなことがおわるまでここにいなさい」などなど、饒舌に慰めてくれた。
しばらくたったあと。ドアのむこうからハーマイオニーとマクゴナガル先生がロンを迎えに来た。「心配したのよ」と言いながらもハーマイオニーは「男の子って仕方がない生き物なんだわ」と呆れたため息をついているのが聞こえた。
「結局僕たちはお咎めなしってことなのかな。」
「特に何も言われなかったということはそういうことだろう。」
「僕たち前回罰則があったのに!ということはやはりマグルに見られてしまったことと暴れ柳につっこんだことが問題だったんだな。」
ハリーは顎に手をあてて、ふんふんと頷く。
「なんの話をしているんだ。」
「ん?だって重要だろ?どこからどこまで許されるのか把握しておくのは」
「なるほど。それもそうだ。」
深くは考えず、首肯しておく。まあ知っておくにこしたことはないな。
それにしても、今日は疲れた。明日から授業が始まる。勉強は好きだが、新学期初日からこんな問題に巻き込まれてしまうとなんだか先が思いやられてしまう。しっかり寝て明日に備えなければ。家で作ってきていたラベンダーの香りのアトマイザーをベッドにひとふりする。少し、気持ちを落ち着かせてくれる薬だ。ハリーからもらったクリスマスプレゼントを参考にパフュームとは違うそれをつくってみたのだが…
「で、なぜそこにいる。」
「ん?」
「ここは僕のベッドで、君のベッドはあっちだが」
「え?」
「心底不思議そうな顔をするな!」
そこにハリーがいることはわかっていた。寝支度をしたあと、人のベッドに入り込んで本を読んでいたことにも気づいていた。気づいていて存在を無視し、そこにいると知っていて吹き付けたのだが…。その男は一向に自分のベッドに戻る気配を出さなかったのだ。
この男のせいで、自分が遠慮するのも癪なので、ため息だけついてそのままベッドに入る。「今日は疲れたから、ひとりで寝たくないんだよね。」と呟いたあと「ノックス」と部屋を消灯する。「お休み」という声にお休みという声を返した。
部屋を出る前にスネイプ先生から渡された時間割。
変身学や薬草学、そしてDADAの授業も明日だった。
僕は隣で眠るハリーの体温を感じながら当初の目標を思い出す。
今年も変わらない。相手が僕の知っていたハリーならなおさらだ。
後悔しない。
「なぁ。ハリー」
「なに」と、すでに眠たそうな声が隣から聞こえて来る。
「ジニーは、君の、未来の奥方は相変わらず可愛らしいな
「まぁ、『相変わらず』という表現はおかしいが
「『かわいい』と思ったことは、前回はないからな
「今回は近くで、見ていてその魅力が、というか君が彼女を選んだ気持ちがわかったきがする
「彼女が被害にあわないように、辛い目にあわないようにしよう
この休みのあだずっと考えていたことだった。ジニーとは幼い頃から顔見しりだ。前回は、彼女が入学したとき、つまりはこの年に「リドルの日記」に翻弄し、被害者にも加害者にもなったらしい。
ハリーの愛する奥方。もしこれがアステリアだとおもうと、自分は耐えられない。未来を知っているのならなんつぃてでも先回りして、被害が及ばないようにしたい。だから、お前が傷つかなくてもいいように、僕も惜しみなく協力してやる。
そんな決意を、ハリーに伝えてみたのだが、反応はなかった。
寝てしまったのか、と恥ずかしいような。でも、聞かれてなくてよかったのかもしれないなと、まぶたを閉じ僕は、眠ろうとする。
「未来の奥さんじゃなくて、前の僕の奥さんだし、彼女を守るのは、君にとっても当然のことだろう」
ハリーのその返事に「なるほど、それもそうだ」と思いながら、そのまま眠りについた。