第四話
あのあと、ハーマイオニーは「気にしていない」と言ってくれた。けれどもハリーもロンのハグリッドも「気にするべきことだ」と憤慨していた。
「だって私、その言葉が『私』を侮蔑する言葉だなんて思わなかったんだもの、言われた本人が傷ついていないんだもの。いいのよ。それに、みんなが私の代わりに怒ってくれて傷ついた顔してるから、もう私は怒れないわ」
にこりと。本当に何も気にしてません。というような顔でハーマイオニーは笑った。
僕は、すこしそれに救われた気がした。自分が言ってしまったあの言葉を、サジーを通してだけれども謝罪できた気がした。相手はあのグレンジャーではないが。それでも、ほんとすこしだけ、後悔している過ちが軽くなった気がした。
「そんなことより、彼はそういう周りの言葉におどらされていないか私不安だわ。」
そのハーマイオニーの言葉が、彼女の鋭さが僕の心を痛めた。隣のハリーもぼくを見ていた。言葉の意味もわからずに、周りが言っているから、信頼している大人が言っているからと、使用したことで相手を傷つける言葉たち。その言葉の本来持つ意味もたいして理解せず、その行為にどんな意味があるのかを理解せず、彼らがやっているから「正しい」ことなんだと疑わなかった浅はかな青年時代。それが「もしかしたら違うのかもしれない」と気づけたのは、目の前の彼らのおかげだった。そして違っていたのだと自分が信じてきた現実を認めたのはアステリアとすこーピウスの存在だった。
サジッタは僕と同じなのだろう。以前の僕と。いや、賢く、自分の考えをもっているあたり彼のほうが強いかも知れない。その考え方は大人に示された、用意された範囲内であるとも気づかず。中途半端に自分の考えがあるから、またそれに気づきにくい。
サジッタにも、それに気づかせてくれる仲間がいてくれたらと思うのだが。僕が学生中に手に入れることのできなかった仲間を。そういう仲間を作らなければならない。そうして新しい生活を築いていかなければならないのだ。
僕のように失敗してはほしくない。
今回は、失敗しない。
***
「はあい。ドラコ。楽しくない話と楽しくない話どっちが聞きたい?」
「つまりは一択だな?」
「一択じゃないよ!楽しくない話と楽しくない話は内容が違うんだから!」
心外だ!とばかりにハリーがぷりぷりと怒る。さっきまでむこうでパンジーたちにいいように遊ばれていたはずだが、もう終わったのだろうか。読んでいた本を机におき、ハリーがいる後ろを振り返る。談話室にいる生徒の数もまばらになり、もうそんな時間か。と時計をみた。寝室に向かおうとハリーに声をかける。
「今日の僕の髪はストレートです!パンジーたちが髪乾かしてくれたらこんなにサラストになるのに、朝にはまた元に戻ってるんだもんなぁ。癖強すぎない?僕の髪」
「淑女たちの技術はすごいよな。まぁ時間があったら直毛薬ぐらい作ってやる」
「そんなのちょちょいのちょいでしょ。」
「優先度が低くてな」
「はい?」
「優先度が低くてな」
なにそれひっどーい!と聞こえるが無視が一番だ。
「面白くない話。重い方から聞こうか」
部屋に戻り、寝支度をすませて二人は向き合った。ちなみにハリーの要望により、二人のベッドはよせて、間を狭くしてある。ベッドに腰掛けると二人の足は触れ合う距離にあった。「じゃぁ。」とハリーはキョロキョロして、部屋での話が漏れないように術を施していく。もうこの作業も手馴れたものだな、とたったの一年間を懐かしんでしまった。
「では、重い方の面白くない話です。
「先日、ふらふらと学校を散策していたのですが、
「やはり、聞こえちゃったよねー
「バジリスクの声
「やっぱこの学校にあるわ。
「リドルの日記。
にこにこと笑顔で言う話ではないだろう。話では!
「それで、日記の在り処は…わかってないよな。思ったより早かったな。」
「それなんだよね。」
「ハリー、お前秘密の部屋の開け方知ってるならさっさといって殺してくるとかできないのか。被害は抑えたいし、必要なのはバジリスクの毒とリドルの日記だが、同時に入手しなきゃいけないわけじゃない。バジリスク殺して毒を手に入れて、そのあとゆっくりリドルの日記回収すればよくないか」
「それな」
両の手の人差し指をあげて僕を指差す。その顔やめろ。
「って、僕がバジリスクの目みちゃって死んだらどうすんのさ!簡単にいいすぎでしょ!」
「それくらい対処しろよ。できるだろう闇祓い様」
「それな」
だからやめろ。イラっとしてハリーの右手をギュッと握る。それではご唱和ください。せーのってくそう。逃げられた。
「いや。実はね。一年生の時秘密の部屋一回開けてるんだよねー。けどバジリスクに無視されて。気配はするし、いるのはわかるんだけど、何度声かけても無視するの。会話してくれないの、現れてすらくれないわけ。」
聞いていない。そんなことしていたなんて聞いていない。「言ってないもん」じゃない。危ないだろう!さっき僕が「殺してこいよ」とか言ったけど、僕が言うのと、知らないところで勝手に危険な目にあっているのはわけが違うだろう。無事でよかったな!?無事でよかった。
「まぁ、僕継承者じゃないってことなんだろうな。ってことで納得したわけですよそのときは。まぁ、純血じゃないし」「で、今回声が聞こえたから『秘密の部屋』が開いたんだなって思って行ってきたわけです」
「どこへ」
「秘密の部屋」
ダメだこいつ。危険すぎる。早死するぞ。いやさせないけどな!
だがしかし、ほうれんそう!報告・連絡・相談は怠るな!これは絶対だ!
「まぁ行ってみたんだけど、また無視されたんだよね。」
そういう子嫌われるって言われなかったのかな。言われなかったんだろうな。だって今までの主人がサラザールとリドルだもんな。ハリーは手をあごにあてて「うんうん」と一人頷く。
「もう何様なの!?って感じなわけです。だから今選択できるのはやはり『リドル』を利用してあの部屋でお互いに対峙をすることか、秘密の部屋をエクスパルソかコンフリンゴ…悪霊の火あたりであの部屋の存在を抹消…?しちゃうかなんだよね。」
「抹消…?しちゃうかなんだよね。じゃないだろう!どんな二択だ!前者のほうがマシだと思えてしまうのがなんだか腹立たしいな!?」
いやいや、僕真面目に言ったんですけどっていうその顔やめろ。
頭に血が上る。興奮で、軽くお茶でも入れてくるんだった、今からでも遅くないか。幸い茶器はこの部屋にもあるし…。額に手をあて、「はぁ」とおおげさに息を吐いた。
「で、最初の被害っていつだったか。」
「あぁ、そうその話なんだよ。もうひとつの面白くない話って」
「うむ」
「絶命日パーティに興味ある?ちなみに僕は二度と行きたくないんだけど」
それは、聞けば聞くほど最悪なパーティだった。ハーマイオニーとロン,そしてネビルと一緒にいた時に声をかけられたらしく自分以外の人は「行く」と返事をしていたらしい。「僕はドラコと相談して決めるよ」と、その場での回答からは逃れてきたからできればこのままボイコットしようと思っていると。「ドラコが学校のパーティに参加するっていうからそっちいくね」って返事できるだろう?って、人を理由にするな人を
「まぁそれはそれでいいんだけど、その日なんだよ。覚えてるだろう君。ミセスノリスが石になってぶらさがってたあの日だよ」
「あぁ」
「『継承者の敵よ、気を付けよ!次はおまえたちの番だぞ、『穢れた血』め!』
「一字一句覚えてるのか。一周回って怖いぞ。執念深いな」
「記憶力がいいといってくれ。君が僕に言った言葉は何度も繰り返した、全部覚えている」
「…喜んでいいのか?」
「君、怖いな。僕が言うのもなんだけどここは気持ち悪がるところだよ」
今回そのセリフをいいそうな人物思い当たるよねー。一字一句一緒だったら、君たち兄弟に「同一人物なんじゃない賞」をプレゼントしよう。嬉しそうに言うハリーが腹立たしくなり足を一発蹴り上げる。
「まぁ、正直なところロンたちがその現場にでくわすのはさけたいな。」
「そうなんだよね。えー、行く?さっさといってなかったことにする?マンドレイク回復薬つかって元通りにして第二の被害が起きる前にリドルの日記見つける?」
「いやいや気持ちはわかるがおちつけ。マンドレイク回復薬はひとつしかないんだ。これは彼女のためにとっておこう。」
「へぇ。ハーマイオニーが被害にあったことは覚えてるんだ。」
なにがいいたい何が。
とりあえずこの日は、そこでお開きになった。
ハロウィンの日は学校のパーティに行ってから、ロンたちが三階に向かう前に自分たちがいこうということになった。僕たちが第一発見者だ。それでいい。僕たちは僕たちがリドルの日記をもっている犯人ではないことをしっている。そして継承者が誰なのかもしっている。後ろ指を指されようと何ら問題はないのだ。
その夜。ドアが閉まる音が聞こえた。
寝返りをうつ振りをして隣をみるとそこにハリーの姿は見えなかった。
僕と話すとき、ふざけたり、おどけたりして軽い調子で今回の話をしているが、やはり心惑わせているのはハリーだ。前回、ジニーとハーマイオニーが被害者の中にいた。そして彼自身もよくわからないことに巻き込まれていたのだ。それを思い出すのだろう。
仕方ない。彼が、早くに解決したいと思うことは仕方ないだろう。今度は僕も連れて行ってくれ。そう言えばいいのだ。その前に暗視ゴーグルを取り寄せておこう。あすの予定を決め、そしてハリーの安心を願いながら次の日を迎えた。