第五話
さて、と
とうとうこの日が来たか。と、いつもどおり朝寝坊をしそうな勢いのハリーをたたき起こす。僕たちのクィディッチの初戦。つまりは先輩方に「僕たちは勝ちます」と啖呵を切り,「連携プレーを見せてやる」といった舞台だった。
顔を洗い、ユニフォームへと着替える。真紅ではない深緑のユニフォーム姿のハリーをみて、なんだか優越感でいっぱいになっていた。二人して朝食に移動する。その途中ハリーが「前回は本気でスリザリンを負かしてやりたかったのに、いまはスリザリンとして負けたくないって思ってるよ。」とつぶやいていた。何に対するフォローだ、と内心思ったが、どっちにしろ君はクィディッチからは逃げられないよ。と声をかけておいた。それにたいしてハリーがため息をついたのか、笑ったのが僕は知らない。
広間では、ロンたちが朝食をとっていた。「おはよう」と視線だけを合わせてこの日の会話は終了だ。試合前に戦う寮の生徒同士が必要以上に馴れ合うべきではない。ましてはグリフィンドールとスリザリンなのだ。ちなみに昨晩ロンからは、またまた長いメールがきていた。要約すると「勝つのはグリフィンドールだけど、ドラコとハリーの活躍も期待してる」というものだった。その優しいロンの気遣いに昨晩はハリーと心温まらせた。なんだかそれだけでも百人力の力を手に入れた気分になる。
本来ならば、このあと更衣室に行って着替えるのだが、すでに着替えを済ませていた僕たちは、着替えだけを置き、すでにフィールドに出ていた。絶好のクィディッチ日和だ。
「ハリー、当たり前だが勝つ気でいくぞ」
「ドラコ、寝ぼけてるの?勿論だ」
僕たちは競技場を見据えてお互いの決意を言う。ちなみに、とこのあと言葉を続けたのは僕だ。
「ハリー、君はヒッグスが試合でスニッチをとれると思うか?」
「さあ、どうだろう。グリフィンドールのシーカーはハリー・ポッターではないようだし。その可能性は五分五分では?」
「はっ確かにな。噂によるとグリフィンドールのシーカーはハリーポッターではないようだな。」
クスクスと二人で笑い合う。
クィディッチに関してこんな冗談を二人で言い合うとは、シーカー姿のハリーをまたみることができるのではと歓喜していた気持ちも嘘ではないが、ともにチェイサーとして連携できるなんて夢のような話である。
「まあ、きっと来年はジニーがシーカーだな。」
「まじで。それはやばい。未来はプロ入りの本物だ」
「おやおや、未来の話ですでに負けごしか」
「まさか。ヒッグスの心配だ。まぁなんにしても問題ないさドラコ。僕たちが最低でも150点。相手チームより150点多く入れればいい話だ。」
そうだな。と返すとハリーはウィンクをして歩き進める。フリントたちが更衣室から出てきたのだ。試合前の作戦会議である。そうそう、ちなみにハリーと僕の箒は最新型である。別に最新型でなくても良かったのだが、父上がせっかくなら、といって送ってくださった。ちなみに二本も。ハリーに渡したら「そういうとこだよ!ありがとう!」と叫ばれた。そういうとこだよとかいいつつ貰う気マンマンじゃないか。そう笑うと「やるからにはコテンパンにしたいからね」という大人げない言葉が返ってくる。この場合の相手が誰かは聞かないでおいた。
ちなみに、この時点では、僕はこの試合で起きることを聞かされていない。
だから!報告・連絡・相談はしろといっていただろうが!
マダム・フーチの笛の合図で試合はスタートする。
まずはハリー、誰も寄せ付けず誰にも追いつかれず、スピードにものを言わせて1ゴール。この調子でもう一本とでもいうかのように、フィールドを旋回しながら振り切っていく。あいつの急降下・急上昇はえぐいんだよな。
さてと、このままでは僕の出番がなくなってしまう。ある程度、彼一人単独で点数を入れたところで僕はフィールドの真ん中あたりに移動する。あぁもうお前の実力はわかったから、そんな箒パフォーマンスしなくていいからさっさとこっちにこい!暇過ぎて腕組をしていた僕に気づいたのか彼はこちらに向かってくる。ぶつかるかというところで二人で息を合わせて上昇する。そして二手に別れる。僕は右に。あいつは左に。さきほどまでハリーを追っていたグリフィンドールの選手は、そのままハリーを追っかけた。だからそういうところだぞっと。やっと僕も1ゴール。
ある程度点数を稼いだか。とハリーをみるとあいつは絡まれていた。そう、ブラッジャーに。おうおう。かわいそうにと思ってじっと見ていると、割と本気で絡まれている。執拗に。あぁ、もう!と悪態をついているのが聴こえてくるようだ。というより、ビーター仕事しろよ。ハリーはスピードにものを言わせて、残りの時間逃げることに決めたようだった。ものすごいスピードでこっちに来るのでこちらも、彼のスピードと並走できるくらいに箒を泳がす。並んだ彼ば僕に「残りの点数一人で稼いで!」と叫んで急降下していった。
心配だったが、変に手を貸しても邪魔になるだけだろうと判断し、僕は頼まれた通りに(決して指示ではない)点数を入れていった。まぁ、もうひとりチェイサーはいるわけだしな。
スニッチを捕まえたのは、グリフィンドールだった。けれども点差は160点。グリフィンドールがスニッチを手に入れたところで勝利は、スリザリンのものだった。
試合終了の合図とともに、みんなセンターラインに集まる。スニッチを取ったシーカーもうちのシーカーもこの世の終わりのような顔をしていた。まぁ、気持ちはわかるよ。スニッチをとったにも関わらず、チェイサーが取った点数で負けてしまったんだものな。屈辱に近いものがあるのだろう。
ハリーは左腕をだらんと力なく垂らしながら降りてきた。
「ハリー!腕!」
「あの、くそブラッジャー…!」
みんながハリーに駆け寄らんとする。のをハリーが止めた。
「大丈夫、骨が折れただけだ。ついでに足も。マダム・ポンフリーの所に行っても?」と許可をとり、医務室に向かう。僕は彼の腕をささえ、つきそう。フィールドを出たところで、待ち構えていたのはロックハートだった。まさに待ち構えていたというのが正しいだろう。「私が君の腕を直してやろう」とかなんとか言っているのが聞こえたが何も聞こえないふりしてその場を通り過ぎる。カシャというシャッター音も聞こえ正直「イラッ」としたが、それに関してはハリーに制止された。
「コリン。僕とドラコのツーショット。スリザリンの名チェイサー160点決めるっていうメモ付きでしっかり保存しておいてね」
そういってウィンクしながら、後にした。なるほど、コリンに関しては受け止めて緩衝させる作戦でいくわけか。了解。
医務室に運ぶのは途中僕が疲れたのでハリーに許可をもらって浮遊呪文では込ませてもらった。一応誰かに見られたらいけないから、担いでいるふりをして。
「さて、ブラッジャーにオモテになられていましたが気分は?」
「はっ最高だね。さすが僕。無機物にもモテモテになるんだから。嫉妬するなよ?」
「いやぁ。ポッター様はレベルが違う。僕にはとてもとても」
「ってそんなことより!スリザリンのシーカーなにあれ!あんな無能さっさとやめさせろ!」
おおう、ハリーが火を噴いた。「僕がブラッジャーを振り切ろうと逃げている間に何回スニッチを見かけたと思う!?4回だよ、4回!しかも最後は自分の近くにいたスニッチを見つけられずおめおめとグリフィンドールにとらせて!」
と、愚痴・冗談をいっているうちに医務室についてしまった。今回の出来事について心当たりをききだそうと思っていたのに。マダム・ポンフリーはハリーの怪我をみて、「まぁ、これなら大丈夫でしょう」と応急処理と薬だけだして仕事に戻っていった。
「あ。ロンからメールきてる。『ハリー大丈夫?お見舞いいっても良さそう?スリザリンの人たちいる?』だって」
「スリザリンの人はいないけど、ひどく疲れたから遠慮するっていっておいて」
「『ありがとう。ハリーは大丈夫だ。薬のおかげか、すこし眠たいみたいだからまた時間をあけてきてくれ』っと」
ハリーはすでに目をつむり寝る体勢にはいっていた。僕も疲れた。後半はなんだかんだでひとりで点数を稼いでいた気がする。「カタン」と誰かがベッドに近づく音がして、そちらに目をやるとパンジーたちが立っていた。「お疲れのようね。他の選手は、勝利に盛り上がっているわ」そういいながら、着替えを手渡してくれる。「ありがとう。僕たちはここで一休みしてからもどるよ」「そうね。また暖かいティーを入れて待ってるわ」
***
目が覚めたらすでにハリーは起きてその身を起こしていた。「起きたのか」と声をかけるとハリーは軽く微笑んだあとに真剣な表情で僕に質問をした。
「起きてすぐでごめん。ビビはサジッタのとこのハウスエルフで間違いない?」
「あ、あぁ。むしろハウスというよりサジッタ専属のエルフみたいなものだ。」
「サジッタの?ハウスエルフなのに?」
どういうことだ。とハリーは頭を唸らす。
「ちなみに、ドビーはマルフォイのハウスエルフなんだよね」
「あぁ。…それがどうしたんだ」
「ううん。別に」
ううん別に。じゃない。僕は報告しろと相談しろと連絡しろとあと何回言えば気が済むんだ!と叫びかけたところでバタバタと人が医務室に入ってくるのを感じた。ハリーが「このタイミングだと。コリンクリービーだ」と僕に耳打ちする。
そしてそのとおり被害は前回同様コリンクリービーだった。
またしても秘密の部屋は開けられたのだった。
コリンクリービーが襲われ、いまは死んだように横たわっているというニュースは瞬く間に広がった。それとともに、僕たち二人が医務室にいたということ、とそれを証明するものはないということも。運命はどうやっても僕たちを(有力なのは僕だそうだが)を後継者扱いにしたいようだった。
みんながそう噂をしている時に、クリスマス休暇の確認が行われた。特に学校に残る予定もなかったので、ハリーを誘って僕の家に遊びにおいでと誘おうと思ったのだが、そういうわけにもいかなくなった。クリスマスに学校に残るメンバーになんとハーマイオニーとロン。そしてサジッタの名前が連なっていたのだ。サジッタ…?それはクリスマスに行われる一種の挨拶回りを断ってまでのことなのか?
それをみて、僕とハリーは残るか残らないかを一旦保留にすることにした。
そういえば、あの医務室でのハリーでのわけのわからない質問についてはその夜きちんと問いただした。待っていてはダメだということに今更ながら気づいたからだ。「ハウスエルフが、君が寝ている時に現れたんだ。僕にその時いった内容は前回と変わらなかったんだけど。その…それを言ったハウスエルフも前と同じだった。」
「は?ドビーか」
「そう。」
「君の、おばさまの家に来たハウスエルフはビビだって名乗ったんだろう?」
「うん。」
つまり、なんだ。
この騒動を巻き起こしているハウスエルフは二匹(二人?)ということなのか?
彼らは僕たちと常識をともにしてなければ、魔法のルールもともにしていない。彼らの動きを予測するのは困難だ。「どうしようもない」とついつぶやいてしまった。ハリーは苦笑しながらも「まぁ、彼等が求めていることは前回と同じだし、そんな懸念するほどのことでもないでしょ」と僕をなだめていた。逆だろう。僕が君をなだめる役のはずなのに。
そんなこんなで、各寮の皆様から後ろ指をさされながらもどうどうと、「なにもやましいことはありません」と魔法薬学の授業に出ていた時のひと騒動。
ゴイルの薬が爆発した。
咄嗟に杖をだして傘をつくる。隣のハリーも表情を変えず傘差しをしていた。もうすこしはっきりこの出来事があったことを覚えていたら、もう何人か回避させることができたのかもしれないが、とっさのことでできなかった。
なぜ今回もこれが起きる。不必要な一コマだろうと思うが、まぁ学校生活には必要な一コマなのかもしれないなと思い、かなり怒っているスネイプ先生を心からいたわった。学校の先生って大変ですね。
「手がまだうまく使えなーい」とかなんといって腕をつっているハリーの口元に、お昼ごはんを突っ込む。お肉と野菜が偏らないように考えて運ぶ。スリザリンのみんながくすくすと笑いながら「まるで彼女ね」と言っていた。「こんな恋人手がかかりすぎて……甘やかしてしまいます」と冗談でがえしたら「冗談に聞こえないのよ」と後ろでダフネにつぶやかれた。「大好きだよドラコ!糖蜜パイが食べたい!」と調子に乗るハリーに「はいはい」と与えていたら。「恋人をダメにする系の彼氏ね。」「いや、あれはお母さんでは」と囁かれていた。
隣にすわったパンジーは「私もはもう知らないわよ」とハリーに言っていた。「これでいいんだ」とハリーが返しているのを僕は「なんのことだ」と思いながら聞いていた。
「さてドラコ。ここで面白いお話です。」
ほう。さきほどの茶番よりもおもしろい話か?と聞くと「あれは、僕を甘やかす君がわるいんでしょー」と返ってきた。自覚はある、自覚はあるからやめてくれ。
「さきほどの魔法薬学でのひと騒動なのですが、あれはハーマイオニー達がスネイプ教授の薬草を盗むためにおこした出来事なのでしたー」
「…は!?」
聞くと、前回は自分たちがポリジュースを作るためにあの騒動を起こしたのだそうだ。まじか。まじか。かわいそうなゴイル。そして僕。つまり、また起きたということは同様のことが起きたというわけで、ハリーはその時のハーマイオニーの動きを見逃さなかったそうだ。「ま、いっかなーって思って」
「あいつら作る気か。危険だぞ?」
「もうさー、良くない?ハーマイオニー前回も成功させてるし大丈夫だって。獣の毛と髪を間違えなければ」
「そんな簡単に…」
「だって僕たち、というより君が真剣にとめたのにやっちゃってるんだもん。もうあの子たちの経験ってことで僕たちが見守ればよくない?勝手にやらせるほうが危なくない気がしてきたんだよね僕」
なるほど。それも一理あるかも知れない。
「…むしろ僕がポリジュース薬つくるのに加担した方が良くないか。なんかそのほうが確かなものができる気がする」
「そゆこと~。さすがドラコちゃん。今日の夕飯と夜のしたく手伝う権利を君に与える~」
「いらん。」
その足で、彼等が調合しているであろうマートルのいるトイレに向かう。そこには作成途中のポリジュース薬があり、バレたとばかりに顔面蒼白のグリフィンドール三人衆をみつけた。後ろで「ほんとだ、ネビルのパーティに加わってる」という能天気なハリーは無視して、やはり一応、一応中身年長者として彼等を叱りつけておいた。
そのあとは、「やりたいのならやらせてやる。ただし僕が居る前でやること」と約束させ「何様?」と笑っているハリーを引き続き無視して、薬の作成に取り掛かった。これにより、僕たちのクリスマス休暇はホグワーツで過ごすことが決定した。
***