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ジャスティンと首なしニックが襲われたというのか僕たちの耳に入ったのはそれからすぐのことだった。
「もう、あなたたち二人でだけで行動するのやめなさい」
パンジーは家から送られてきたチョコレートと暖かい紅茶を入れてくれた。「別に誰が後継者でもいいんだけどね。日々憔悴していくハリーを見るのが耐えられないわ」そういったのはダフネだった。
そう、別に僕自身は本当に辛くもなんともないのだ。後ろ指さされるのなんて慣れになれている。が、隣にいるハリーはそうでもないらしく、僕をみて逃げる下級生をみては、怒りを顕にしていた。「おや、グリーングラス。ハリーのそれは憔悴ではなく『憤怒』だ。そうだろうドラコ」通りがかったスリザリン生が話に入ってくる。「そうだな。」とだけ返す。「なににしても、ハリーはドラコに執着しすぎ」「執着!?」僕はパンジーのいった言葉がおかしすぎて、つい聞き返してしまう。
「えぇ、そうよ。ハリーはドラコに執着してる。まぁそうさせた原因はわからないでもないけど」
「どうせ、僕のせいだと言いたいんだろう。この間決闘クラブでもロンと話していただろう」
「あら、聞こえていたの。でもダメね。あの赤毛は気づいてないわ。」
「何に?」
「あなたと同じことに」
僕と同じ?その「こと」は何にかかった?僕が頭をひねらせているとハリーが「パンジー」と諌めていた。「あら、失礼」と、反省をしていない様子で口を閉じた。なんだ、僕の知らない共通のひみつでもあるのか。面白くなくてすこし不機嫌になると(わざとだ)目の前のダフネとミリセントもくすくす笑っていた。
ポケットの中で携帯がふるえる。彼等からすこし距離をとって内容を確認するとロンからの呼び出しだった。ハリーに声をかけ出かけようとするが、さきほど言われた「二人だけで行動する」がいかに危険かにも納得していたので、部屋に連れ戻して透明マントを使って移動をすることにした。
「そういえばハリー。今回のことで、多くの生徒がクリスマスは実家に帰るらしい」
「あぁ、らしいね。前回と同じだ。」
「それで、今回僕たちにも、父上から帰ってこいというお達しがきた。秘密の部屋のこともあるし、サジッタのこともあるしで『今年は帰りません』といったら、厳しめな内容の手紙と脅しが書いてあった。」
「脅し?」
「帰ってこなければ、婚約者を勝手に決める。と卒業するまでは待ってくれると約束したのに!僕に選ばせて下さるとおっしゃったのにだ!」
ロンたちのもとに向かっていた足が止まる。「ハリー」と声をかけると彼は、はっとして僕の顔を見つめた。「さすが貴族さまだね。」「嫌味か」「いいえ、嫌なら帰ったほうがいい。何もおこらないさ。君が、婚約者がほしいというのなら別だけど」「だがポリジュースやあいつらはどうするんだ。」
「ドラコ。きっとそういう話にはならない。なったとしても大丈夫だ」
「わかった。じゃぁクリスマスは帰る。その方向で彼等に話そう。ちなみにハリー、君も僕の家に帰るからな。そこまで入れての脅しだ」
「…そのほうがいい。ルシウスさんたちが僕を歓迎してくれるというのであれば、お邪魔させてもらうよ。何より、僕の知らないところで君に何かあったら、僕は死ぬ」
「ほんと度がすぎるな」
ちなみに、ハリーも一緒に連れて帰れといわれたのも本当だし、ひとりで帰ってきたら帰ってこなかったとき同様婚約者をあてがうといわれたのも本当だ。父上は、わりとハリーの動向を伺っている節がある。といっても見張るとかではなく、「仲良くしているか」程度ではあるが。手紙にはできればサジッタにもこっちに帰ってくること。そして不本意なのだろうが、ウィーズリーにもご実家に帰るように伝えておけ。というものだった。父の優先度が明らかなのにすこしため息が出る。
「ごきげんいかが。後継者候補筆頭のドラコ、次席のハリー」
「笑える冗談だね。さすがだよハーマイオニー」
「ドラコ大丈夫か。なにかあったらいえよ」
「何もできないと思うけど、話ぐらいなら聞けるよ」
「ありがとう。ロン・ネビル」
僕たちはマートルに挨拶をして、簡単な椅子を出してそこにすわる。さすがに地べたには座れない。さて、どこから話したものかと思っていると一番に気に出したのはハリーだった。
「聞くけど。ハーマイオニー。ポリジュース薬をつくる必要性あるの?」
「あら、ドラコの潔白を知りたいという意味では作る必要はあるし、サジッタの状況を知りたいという意味では意味をなさなくなったわね」
「僕もそう思う。このあいだの決闘クラブで蛇はサジッタを攻撃しようとした。」
「そう。あれがかれの自作自演だというのであれば、話は変わってくるでしょうけど」
そうなんだよねぇ。と二人は頷き合う。
ロンとネビルはその話を先にハーマイオニーから聞いていたのだろう。二人の会話の成り行きを見守っている。
「それに、もしサジッタが後継者であったとしても、彼は離さないと思うよ。あの子は、なんというかある意味完璧だ。漏れがない。君がドラコが後継者じゃないといった理由のひとつにあんなやり方はしないといったけど、それはサジッタもだ。ねぇドラコ」
「あ、あぁ。そうだな。僕より倍は賢いだろうな。立ち回るという意味で、なんというか常に抜け目がない。兄である僕にも幼い頃から本音を話さない子だ」
「僕はここ最近透明マントをつかってサジッタの回りに張り付いてたんだ。無理だ。びっくりするくらい当たり障りのない会話しかしないんだよ」
ハリーはハーマイオニーに告げるように集まったメンバーにいった。当のハーマイオニーは表情を変えずに鍋の中をかき混ぜていた。
だれも何も言わず沈黙が続く。ハリーは立ち上がってハーマイオニーのそばにすわった。
「これは、必要ないことだよハーマイオニー」
「それを決めるのはあなたじゃないわ。私たちよ」
いや、今のハリー結構おそろしかったぞ。ほらみろ、僕の隣のネビルとロンがおびえているじゃないか。
「えぇ、確かにあなたの言うとおりだわ。私もそれにきづいていました。サジッタは漏らさないでしょうね。あの子は可愛らしいし、賢いわ。けれども、それは憶測なの。私たちはね、必死なのよ。ハリー。あなた顔色が悪いわね。ドラコが後継者扱いされてそんなに心配?私たちもよ。同じだわ。ロンなんて、いつも『大丈夫かな』ってウロウロしてるの。それで文章にもなっていない文章をいつもドラコにおくっているのよ。あなたには私たちには見えていないものが見えているのでしょうけど、それは私たちには教えてもらえないし見せても貰えない。だったら私たちは私たちのできることで、友の潔白を探すわ。それとも、あなたは私たちに、あなたのひみつを教えてくれるのかしら?」
ハーマイオニーのハリーを見つめる目は厳しかった。友を断罪するような。ひどく冷酷だった。このレディスリザリン向きではと一瞬頭をかすめる。ありがたい、ありがたいけど、君たちがそう思っているだけで僕は助かっている。そう言おうと思った。
「わかった。」
ハリーが、ハーマイオニーの目から視線を離さずに言う。
「君を侮っていた。わかった。君たちに協力を願うよ」
ハーマイオニーの手がとまる。嬉しそうに体ごとハリーに向き直った。
「探して欲しいものがある。」
「ハリー!」「ドラコは黙ってて」
「探して欲しいもの、それは日記なんだ。みためは黒くて古い。表紙を一枚めくると『T・M・リドル』という署名がある。情報はそれだけ。」
「それは、なんなの」
「後継者の証」
「ハリー!そんな危険なものを、ロンたちに探させる気か!」
「ドラコ。手を杖からはなして、オブリビエイトでもするき?」
ネビルとロンは僕たちの話をキョロキョロしながら聞いていた。
「ドラコが思わず、忘却呪文をかけようとするぐらい危険なものだ。正直君たちを巻き込みたくないと思っている。だけでも手伝ってくれるならたすかる。けれど、何度も繰り返すが、本当に危険なんだ。みつけたらすぐ僕たちの所にもってきてほしい」
「わかったわ。じゃ、このポリジュースは色んな寮に侵入するためにつかいましょう。」
はなしが、どんどん進んでいく。何が起こっているのかわからず、ただわかるのは彼らが危険に一歩足を踏み入れたと
いうことだった。「ドラコ。大丈夫か」隣でロンが僕に声をかけた。いつのまに流れていた涙を拭き取り、抱き寄せ背中をとんとんとされる。「懐かしいなこの感じ。寮が別れてからお前を慰める役もなくなってた。大丈夫だから」
大丈夫だなんて、そんな保証はないじゃないか。
僕は立ち上がり、寮に戻ろうとする。
後ろで「お前ら一年に一回は大喧嘩するっていうタスクつくろうとしてんの?」とロンがいっていたのがきこえてきた。
行きは透明マントを利用して出て行ったことも忘れ、そして涙を流した顔だったことも忘れ、寮に戻る。談話室にいたのは、いつもの2年女子メンバーだった。「あら。ハリーと喧嘩でもした?」とパンジーが聞いてくるので「僕の心配なんて、あの男は必要ないんだ」とつぶやいておいた。「男の子って大人げないのよね」って聞こえているぞミリセント!
といっても、冷静にはなっていた。だけれども、あれはいささか巻き込み過ぎでは?危険だとわかっていて、させるのは大人のやり方ではないだろう。ふと脳裏に「過保護」と前のグレンジャーの声が響いた。心配のしすぎ、なのだろうか。でも、僕は誰にももう傷ついてほしくないんだ。
ガチャリとハリーが戻ってくる音が聞こえてきて「おかえり」と声をかけた。「ただいま」とすこし無理した声が返ってくる。
「自分が心配性で過保護だってわかっている。泣いてしまって申し訳ない」
「いいや。何も相談せずに話をすすめちゃったから。びっくりさせたよね。」
「僕にとっては、あいつら。特にロンだが、子供のように可愛がってる。それに危険が及ぶと思ったら、不安で、びっくりした」
「それでロンになぐさめてもらってたら意味ないけど」
「父上にハリーはクリスマスプレゼントはいらないといっていたと伝えておく」
「わー!ごめんなさい!」ハリーはわーわー叫びながら僕に抱きつく。除けようとするが、がっちり掴まれていて抜け出すことができなかった。正直ハリーの考えに納得は言ってないし理解もできていなかった。けれども、僕は他の世界線(があるのかどうかは知らないけど)と違って賢いのは「学問」のなかだけだ。頼られたらなんでもできる自信はあるが、先回りして準備をしておくとか、貴族特権フル活用とかそんなことはできない。確かに、ことヴォルデモートに関してはハリーとハーマイオニーに任せておくほうが適任なのだろう。僕はこうやってハリーが帰ってくる場所であれたらいい、そして頼まれたらなんでもしてやろう。邪魔だけはすまい。
そう決めてクリスマス休暇を迎えた。