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アステリアが死んだ日。覚悟はしていたけれど、とてつもない孤独感に襲われた。ずっと保存してあったウイスキーを出し、ストレートで飲む。溢れてくる涙を止める気にもならなかった。「先に、新しい人生を楽しんでまいりますわ」といったアステリア。底抜けにポジティブで明るくていつも私の陰鬱な心を慰めてくれた。「心残りなんてないですけど、しいていうならスコーピウスの将来の伴侶となるかたに会えなかったことですかね」といってコロコロと笑っていた。愛しいアステリア。「ハリー様と今からでもお友達になってくださいな。トリアの最後のお願いです」と私の身を最後まで案じた愛しいアステリア。彼女がいなくなった世界に、馴染めなくなるのではないかと意味がわからない不安感に襲われていた。
ギィとドアのあく音がする。「お父さん。」とスコーピウスが僕の隣にすわった。「僕が、まだお酒が飲めないのが悔しくて仕方がありません。ココアですが、お父さんの隣にいてもいいですか」と天使のように寄り添ってくれた。
この子が、悲しみに負けていないのに私が負けていてはと、新たな決意を日でもあった。
あの子が強い理由は直ぐにわかった。私がいて、アステリアとの思い出があって、親友のアルバスがいたからだ。なるほど。自分にはアステリアしかいなかった。彼女がいなくなった穴を埋めてくれる存在が、あの子より自分の方にかけているからだ。
それから以前以上に、私は友人になれなかったハリーとの過去を思っては悔やんだ。あのときああしていれば、こうしていれば。無駄なたられば話をきいてくすくすと笑ってくれる愛しい妻はもういない。
あるときから、ハリーが僕の家を訪ねてくるようになる。それは、魔法界からだったり、ロンドンからだったり、姿表しだったり、交通機関をつかってだったり。様々な方法で私のところを訪ねては息子たちを眺めて、ともに酒を飲んでたわいのない話をするようになった。きっと、スコーピウスの配慮だったのだろう。日頃から、アステリアに「お父様はハリー・ポッター愛をこじらせているの。あの愛は特殊だから、気にすることはないのよ」と言われていたのを知っている、最初の頃は否定をしていたが、その話をしている二人がなんだか楽しそうだったので後半はもう、放置をしていた。
もう二度と手放したくないと思ったんだ。
私は、私が間違っていて、正確に難ありだったと自覚をしていても、じゃぁどうすればよかったのかなんて知らない。友達の作り方はあの二人を参考にしたけど、どう親密になっていったかなんて知らないんだ。ロンとハリーは違う。本当に、私はハリーポッター愛をこじらせていたのだなぁと今になって感じる。何が友達かわからない。どうすれば彼が僕のそばにいてくれるのかわからない。
だから、そんなに笑ってくれるなよ。パンジー、ダフネ、ミリセント
ゆっくりとうっすらと、目が覚める。いつもならパチリと目が覚めるのだが、疲れがたまっていたのかなと思って体を伸ばそうとするが、四肢が自由に動かない。椅子のようなソファのようなものに座らされていた。
「おはよう。ドラコ・マルフォイくん」
目の前には見覚えのない美少年が微笑んでいました。
「君本当にあのハリーポッターが好きなんだねぇ。アステリアというのは誰?浮気?」
ゆっくりと覚醒する。目の前の美少年を見たことがある。この少年は誰だったか……。
「トム・マールヴォロ・リドル!?」
そうだ。この美少年は未来のヴォルデモートトム・リドルだ。つまり、ここは。と周りを見回す。石で囲まれたじめじめとした空間は、いつも彼が言っていた「秘密の部屋」そのものに違いなかった。初めて来たのに、ここがどこかわかる。それくらい奇妙な、それでいて不愉快な場所だった。
「まさか。フルーネームでその名を叫ばれるとはな。それにしても本当にアブラクサスにそっくりだな。君の父親も彼に似ていると聞いたが、本当か?それにしても動くと本当に似ている。きれいなブロンドだ。羨ましいね。うん」
僕は彼の言葉に耳を傾ける。何をしようとしている。何が目的なんだ。
おや。というように彼は、こちらを振り向く、そして目の前まで歩いてきて「目的を、聞くのか。君が?マルフォイの嫡子の君が?」とせせら笑うように聞いてきた。
「君は、穢れた血は必要だと思うかい?」
僕は黙って彼を睨みつける。
「お前が操った人間は、誰だ。」
「操った?」
「日記の犠牲者だ」
ああ、と彼は僕の質問におおげさに相槌をうつ。
「そうだなぁ。犠牲者という定義が多少不安定であるが、強いて言うなら、ジニー・ウィーズリーとロン・ウィーズリー、ハリーポッターと君。かな」
予想外の面々に僕は息を飲む。ジニーはなんとなく予感はしてたが、ロン?そしてハリー?
「ハリー!?ハリーに貴様なにかしたのか。」
「まだ、してないよ。まだ。ね」
「してないけど、君たちの魔力と魂を、ほんの少しもらったかな」
まぁまぁ、紅茶でもいっぱいのむ?と空気にそぐわない彼の行動と発言に「何がしたいんだ」という感情でいっぱいになる。
「最初はジニーだった。僕はね9月からずっと彼女の不安や悩みを聞いてきた。勿論恋の悩みもだ。ジニーが僕に相談するたび、僕は彼女の魔力を頂き魂をもらった。もともともっていた魔力と足したらすぐに僕は自由になったよ。そうして、彼女より強くなったとき、僕の魂を彼女に少し注いだんだ。そうしてバジリスクを使って穢れた血を襲った。こういう場合は僕が襲ったことになるのかな。ジニーになるのかな。」
リドルはうーんと悩むふりをする。
まぁそんなこんなで正直暇だなあと思っていた時に持ち主が変わるんだ。
「ここで、ロン・ウィーズリーだよ。彼は、自分の妹から日記を見つけ出す。クリスマスぐらいだったかな。そうして僕はしばらくかれのトランクのなかにいた。いつ使ってくれるかなとわくわくしていたんだけど、彼は結局使ってくれなかった。きづいたら、僕はジニーの手の中にあって、トイレの中に『ぽい』だ。」
ただの記憶といってもかわいそうな僕。まさかトイレに捨てられるなんて。
「そうしていたら、すぐに君たちが現れた。気配ですぐにわかったよ。嬉しかったなぁ。特に君たち二人のことはずっと見ていたからね。それからは、君たちから魔力と魂をいただくことにした。あぁそうそうあのチェスト。本当に居心地が悪かったよ。せっかく貯めた魔力が持っていかれるのがよくわかった。そうそう、君たちの会話も盗み聞きさせてもらったよ。本当に驚くことばかりで有意義だったよ。」
僕は、彼の話をききながら彼の自由度に驚く。
「ハーマイオニーは、どうやって…」
「あぁ、それは僕さ。本当にありがとう。チェストの中に日記がある状態でもぼくは外で実体化ができるほどだったよ。ちょっと寮のそとにでて、バジリスクにお願いしたんだ。彼女は邪魔だったからね。ほぼ、僕たちの真実にたどり着いていた。そうして、部屋に戻って、君の持ち物から『マンドレイク薬』だけを抜かせてもらった。ただそれだけだよ」
記憶に、ただの記憶に本当にそこまでのことができるのか不思議だった。そんなの無双じゃないか。彼は一番初めに作った分霊箱だろう。それで、ここまでのことができるのか。ふと見上げると、彼の手には二本の杖があることにきづいた。一本は僕のサンザシの杖でもう一本は……。
僕の視線に気付いたようで、彼は嬉しそうに説明をする。
「だって、僕は魔法使いなのに杖がないのは不便じゃないか。杖がないと魔法がままならない。バジリスクにお願いして石化させることはできても、それ以上はできないもの。これ?これはね。僕の友人、いわば協力者にもらったんだ」
そうして彼は、杖をひとふりして、僕が座っている椅子と同じ椅子を出し、ゆっくりとすわった。友人?協力者?それは、ジニーに出会う以前か?「その質問については、答えない。僕は身内にはとても優しいんだ。」さて、本題について話をしよう。
「君が気になっていることは、こんな世間話のことじゃぁないんだろう。ハリーポッターとも話していて気づいている。なぜ僕が、君を『スリザリンの後継者』としての足跡をなぞらせたか、だ。あぁ足跡というより、条件に当てはめさせたか。のほうが状況にあっているのか。
「それは至極簡単だ。話す必要もないくらいにね。
「君を『スリザリンの後継者』にしたかっただけだ。
「申し分ないだろう。マルフォイ家の嫡子。どうせ、ゴーントは僕の代で終わっている。ブラック家も噂に聞くともう跡取りがいないそうじゃないか。そうなったら『後継者』としてふさわしいのは『君』だろう。
「さて、平和的解決と比較的平和的解決。君はどちらがいい?
「とりあえず、平和的解決から聞こうか。」
いい顔で、にっこりとリドルが微笑む。
「僕が全力で君を手助けするよ。スリザリンの継承者殿。僕と一緒にサラザール・スリザリンの崇高な仕事を成し遂げようじゃないか」
「断る」
僕は間髪入れずにそう答えた。
サラザールの崇高な仕事がいったいなんなのか考えたくもない。いや、きっと崇高な考えだったのだろう。でも、こいつらは、それを曲解し、自分の都合のいいように捉えている。そんな仕事に手を貸すつもりもなければ、この身をかしてやるつもりもない。
そうしなければ僕が死んでしまうとしても。僕は自分の身ではなく愛する者たちの安全を守りたい。前回選べなかったことを、こんかいは選び続けてやるんだ。
「それは、非常に残念だよ」
リドルが、杖をひとふりするのが見えた。
前回目が覚めたときは医務室の中だった。
あぁ、今回も不甲斐ない働きしかできなかった。
目が覚めたら、また医務室かも知れない。いや、死後の世界でもありうるのか。
ぼやっとして脳みそがうまく働かない。混濁した意識の中で、誰かが会話をしている声が聞こえる。何とかして、目を薄く開くと目の前にはハリーが立っていた。周りは薄い光で包まれていて、彼の守りの呪文であることにきづく。あぁ、また僕は彼に守られている。とっさに「ハリー」と叫ぼうとするが、うまく声をだすことができない。四肢も微動だにしなかった。
「よく考えろ。バジリスク。お前の真の主は誰であるのかを。ここでお前が守るべきは誰で、誰がそれを害なす存在なのか。」
ハリーの、怒りを孕んだ冷静な声が聞こえてくる。
「こいつは、純血だ。お前が主人だというその男は、混血だ。ゴーントの。サラザールの血が流れているといえども、お前たちが言うところの『マグル』の血が流れている。どちらの意思がと尊いのか、お前の真の主はどちらの願いを尊ぶんだ。」
彼の声が、君は聴こえてくるだろう。
ハリーの姿は後ろ向きで表情はわからない。しかし、ニヤリと不敵な笑みを浮かべただろうなと思った。
「何を言うんだ。蛇語もあやつれないただの純血が、スリザリンの後継者たる僕よりも尊敬される存在だと?」
リドルの声が響く。
ハリーは、そのリドルの声が聞こえていないかのように、淡々とバジリスクに言葉を紡いだ。
「バジリスク
「僕は君に、何を守るべきなのかと問うてる。」
その瞬間。周りが真っ赤な炎でいっぱいになる。その炎はバジリスクと同じぐらい大きな蛇の形を模していて、ハリーとバジリスクを囲うように、ぐるりと円を描いた。僕とリドルは、彼らから分断される。
そして、リドルとバジリスクが怯んだすきに、美しい所作で、それは無駄のない動きでバジリスクに縮みの呪文をかけ、所持していた小瓶に収めていた。
「バジリスク。君には時間をあげる。
サラザールの意思とは何か。君の役割とは何か。
この中でゆっくりと考えるといい。
まぁ、ドラコに害をなそうとした大罪については、君がどんな結論を導こうと絶対に許さない。」
悪霊の火が、ぐるぐると回転し、円を作り続ける。それに、近づくこともできないリドルに向かって、まっすぐにハリーは杖を掲げた。「お前の犯したついについて、言い訳ぐらいは聞いてやるよ。」
そういうとともに悪霊の火が消える。すかさずリドルがハリーに向かって杖をふるが、そこはハリーのほうが早かった。「エクスぺリアームス」で武装解除をし、リドルの杖を奪う。からの繰り出される「ペトリフィカス・トルタス」に、リドルはもう一本の杖を手から落としていた。
その落ちた杖をハリーは拾い、ローブの中に収める。
「あらいざらい、吐いてもらおうか」
そういってハリーは、自分自身のでもリドルのでもない、また違う杖を取り出した。そしてリドルに喉杖のピタリと抑える。
「ああ、これ?DADAの素敵な先生から、あずかったんだ。まぁあれだよ。念には念をいれておこうかなって」そう思ってね。さあて、話し合いの時間だ。
そこまで聞いたところでまた、意識が遠のく。
耳の奥でハリーが許されざる呪文「磔の呪文」を唱える声が聞こえた。