「さて、そろそろ時間かな。」
「あぁ吸魂鬼が現れるんだったな。」
一瞬だけのマフリアートで僕たちは会話する。
今日この汽車の時間をどうすごすかについては事前に二人で決めていた。ハリーのできればルーピン先生に汽車であっておきたいな。に基づいて、ロンとハーマイオニーと一緒にコンパートメントを最初からとっていた。
コンパートメントを覗くと、そこには先客が。ひとり、ルーピン先生だった。目ざとくハーマイオニーがカバンにかいてある名前をみつけ、身元が判明する。そしてあれよあれよと、次の闇の魔術の防衛術の先生だろうということまで、突き止められていた。ハリーをみると、泣きそうな、それでいてひどく安心したような表情をしていた。
昨日一晩だけでは尽きない夏休みの話をしていたところで、ネビルがひょっこりと顔をだす。タイミングを見計らったかのように、汽車が速度を落とし始めた。
最初に異変に気づいたのはハーマイオニーだ。外の雨音がコンパートメント内の不穏な空気を助長していた。すると、電気が一斉にきれ、汽車の中が生徒の混乱でいっぱいになる。ハリーに「自分の杖握っててよ」と耳打ちをされ、僕は僕の杖をギュッと握り直した。
「静かに!動かないで!」
ようやく目をさました先生は手の平いっぱいに炎を灯し、コンパートメント内を照らす。そうしてドアがゆっくりとあき、明かりで照らされる。そこには、吸魂鬼が立っていた。寒い、もう二度と味わいたくないと思わされる冷気だ。ぐらり、と視界が歪むような感覚を覚える。椅子から倒れそうになる自分を横にいたハリーが腰から支える。バランスを崩し、からだ全体をハリーに預ける形になった。
「先生。どけてください。僕のドラコが怖がっているので」
そういいながら、ハリーは杖を掲げ、『エクスペクトパトローナム』と静かに唱える。その杖先からは、銀色の光がとびだし、吸魂鬼に向かっていった。吸魂鬼は、スーっとどこかへ消えていった。
「おどろいた。君は、その年で守護霊の呪文が使えるのかい」
「スネイプ先生が、教えてくれたんです。何かあった時のためにと」
そういってハリーは、僕をギュッと抱きしめてから「大丈夫?」と椅子に座らせる。ロンたちも怖かったくせに、僕の心配をしてくれる。
「君は、本当に、マルフォイの子息と友人で、そして、スリザリンなんだね。」
その発言に、コンパートメント内の人間全員がルーピン先生を見つめた。最初に先生に向けて発言したのはハーマイオニーだった。「先生は、ハリーがスリザリンなのがいけないと、私たちグリフィンドールが仲良くしているのはいけない、とおっしゃるのですか」
その彼女の言葉の意味にきづけたのは、それでもルーピン先生だったからだろう。すぐに「すまない、誤解を招くような発言をしてしまった。違うんだよ。つい、ジェームズを思い出してしまっただけだ。彼が、それこそ君の言うスネイプ先生と一緒に過ごすなんてことありえなかったからね。」と、自分の発言の弁明をした。そうして、僕たち全員にチョコレートを配り、「運転手と話をしてこなければ」といって部屋を後にした。
その後、少しだけ、あの先生はハリーのお父さんのことを知っているのだろうか、という話題になったが、あの吸魂鬼のせいで、すぐに話は途切れてしまった。
学校についてから、ハーマイオニーはマクゴナガル先生によびされた。そのタイミングで僕たちもロンとネビルと離れてからスリザリンの集団へと混じっていく。
「ドラコ、本当にもう大丈夫?」
「正直大丈夫じゃない。この学校にあいつらがいると思うだけで気持ちが重い」
「守護霊使えないんだっけ」
「こっちに来てから一応練習はしているが、まだ成功はしてない。銀色のもやもやはでるんだけどな」
「使えるようになったら、気持ちだけでもすこし楽になるのにね」
そういいながら背中をさすってくれるのを甘んじて受けた。
「吸魂鬼ってほんと。見直すべきだと思う。情状酌量の余地なしって感じで納得いかないし、ドラコをこんなふうにして、僕は本当に許せないんだけど」
今回の校長の話は、当時と変わらず吸魂鬼のことと、新任の先生の話だった。ちらりとスネイプ先生の方を伺うと、不機嫌そうな顔で座っていた。不機嫌そうというか、あれは不機嫌だな。まぁ毎月脱狼約薬を作るとなると、億劫にもなる気持ちはわからないでもない。しかもあそこには、因縁があると聞くし。
「ハグリットが先生になるのはいいんだけど、もう少しちゃんとした規約があればいいのにって思うよ」
「この事実をリドルが知ったら、怒りで建物崩壊するんじゃないのか?」
「確かに、自分は先生になるの拒否られているからねぇ」
***
翌朝、朝食の時間はそれぞれの時間割を見せ合っていた。
「あら、占い学はドラコだけがとったのね。二人が同じ教室にいないなんて大丈夫なの?」
「それどういう意味。パンジー。僕は占い学だけは取らないって決めてるから。生まれた時から。選択授業はほどほどでいいんだ。」
「まぁ、ドラコは取れる限りの最大をとったのね。ハリーが寂しく泣いちゃうんじゃない?」
「大丈夫だ。僕が授業でいない間、君たちがハリーを可愛がってくれ。」
「必要ない!スネイプ先生のところに入り浸ってやる!」
とまぁこんな感じで、騒々しい朝を終えた。
占い学は北棟だったなぁ。と思いながら向かっていると、キョロキョロしているグリフィンドール三人組を見つけて声をかける。シビルトレローニ先生の教室で、四人で一緒になって座った。そこではまさかの僕が「グリム」の話を受けることになった。ただ、前回と違うのは「あなた、もしくはあなたの身近なひとが死神犬にとりつかれています」といったことだった。その瞬間、クラスで「ハリー・ポッター」という呟きが広がっていった。
変身学のクラスの前で、ハリーが僕たちを待っている。
待っていたハリーに挨拶よりまず先にロンが「君最近黒い犬にあってないよね!?」と詰めよる。「え?ドラコの家で見たけど?」と無遠慮な返事にロンは顔を真っ青にしていた。ハリーが「まさか」という顔をして僕をみたので、たっぷり頷いておいた。
「ロン。ここで待っている時に色々噂を聞いたけど、トレローニー先生は毎年だれかの死の宣告をするんだって。彼女なりのジョークなんだよ。それに、ドラコは僕が死なせやしないし、きっと僕のことはドラコ含む君たちが殺させやしないだろう。大丈夫だって」そういって、ロンの背中をドンと叩き教室に連れて行った。
授業が終わったあとも、おびえているロンをみてハーマイオニーがなだめる。「大丈夫よ」というが、彼の耳には入っていないようだ。「あんな不正確なものも魔術なのね。理解できないわ。」その後、また魔法生物飼育学でと、彼らと別れた。
「で、あのくそ教員は生徒を怖がらせてなにが正しいんだろうねぇ」
「トレローニー先生だ。」
「しかも、今回はドラコだって?僕だって?ふざけるのも大概にして欲しいよね!」
「まぁ、彼女の予言は本物だからなぁ。ただ、トランス状態でないときの予言については心理テストレベルでしか、受け取らないけど」
そういいながら、僕たちは、目の前のお菓子をもそもそと食べる。勉強したあとは、やはりおいしいお菓子に限るよな。
「マルフォイ、ポッター。それで、なぜ吾輩の研究室でくつろいでいるのかね?理由を十文字以内で答ええもらおうか」
「『先生がスキだから』はい10文字ぴった!いぇい」
「すみません。ハリーが先生に会いたいって聞かなくて」
そういいながら、母上からあずかった手作りのケーキを先生の前に差し出す。このタイミングで渡すのただの賄賂だな。
「はぁ。次の魔法生物飼育学いきたくなさすぎる。このままサボりたいな」
「諦めろハリー」
そうしていま目の前にはハグリッドご自慢のヒッポグリフが繋がれていた。
なんと、拍手をしよう。今回の授業は、特別何も事件はおきなかったし、誰も怪我をしなかった。なんだ、つまり前回僕がちょっかいかけなければ、初回の授業は何とかなっていたということか?よし、考えるのはやめよう。
と、思っていたその日の僕を殴ってやりたい。
ヒッポグリフのイベントはそうまでしてこなさなければならないイベントか?神様。
夕方、コミュニティルームで話をしていると。僕たちのもとへ一人のグリフィンドール生がかけこんできた。「マ・マルフォイ先輩」と声をかけた彼は、僕にすこし怯えているようで、でも、しっかりとした口調で「早く医務室へ来てください。サジッタ・エイブリーが怪我をして、ジニーがマフォイ先輩をよんでこいって」
ジニー、もし僕が談話室にいたらどうするつもりだったんだ。この子には荷が重すぎるぞ。
「ドラコ。あ、ロンたちも来たのね」
そういって、ジニーは、医務室の前で僕たちを招いた。
「サジッタは何も悪くないのよ。スリザリン生の子達が新しい魔法生物の先生に会いに行こうって話をしていたらしくて。多分冷やかしね。そうしたら、ハッフルパフの先輩の何人かが、あの大きな鳥?みたいなのと遊んでたの。そこに、そのスリザリン生の子達が突入して、びっくりしてその鳥がびっくりして攻撃しようとしちゃって」
それで、そばで様子を見ていたサジッタが飛び出して、その馬鹿なスリザリン生の代わりに怪我を負ったということだった。
「サジッタは彼らを助けようとしただけだし、あの鳥もびっくりしただけなんだけど。」
そう話をしながら、僕たちはサジッタのベッドにむかった。
サジッタは包帯を巻いた手にローブを着て、もう寮へもどるところだった。
「具合はどうだ。」
「兄様!僕を見舞いに来てくださったのですか?大丈夫ですよ。マダムポンフリーの処置は完璧ですし、こんな些細なことなんの問題もありません。」
にこにことサジッタは僕を見上げていう。
「けれども、兄様のその『具合』というのが僕の気持ちのことであれば『最悪』です。謝罪の一言もない馬鹿な先輩たち。悪意はもっと上手に扱うべきです。何をしようとしてあそこに行ったのかは知りませんけどね。」
「父上には?」
「さあ。僕は連絡していませんけど。ええ、してはいませんけれども、もし僕があの先輩たちであれば、連絡をしていると思いますよ。あの森番のことをうんと悪くいってね。」
まぁ、そこまであの先輩が頭回っているかわかりませんけど、ただ、僕の後ろはエイブリーだけではなくその奥にマルフォイが控えていることも忘れているおバカな先輩たちですから、そこまでの考えには至ってはいないかもしれません。
***
久しぶり魔法薬学の授業では、スネイプ先生のグリフィンドールいびりが爆発していた。今度ネビルを呼んで、授業の復習を提案しようと誓った。ネビルのあれは、どう考えても、スネイプ先生にたいする恐れだ。それを聞いてハリーは「いい考えだね。彼はボガートでスネイプ先生の姿を現したくらいだからね」と笑っていた。
そうだ、次の授業は、ルーピン先生による「闇の魔術に対する防衛術」の授業だ。やっとか。
「ドラコ。ちゃんと『本物』には蓋しておいてね」
「わかってる。それもせずに行くと、僕はヴォルデモートになりそうだ。」
「僕はどうだろう,深層心理はわからないけど、ガッチガチに固めておこうと思うよ」
そうして、ルーピン先生のまね妖怪の授業が始まった。さきほど、グリフィンドールとレイブンクローの授業だったらしく、最初から僕たちは「職員室」集合といわれていた。すれ違ったロンたちは「最高だったぜ」と非常にいい顔をしていた。
そうして、僕たちもまね妖怪の説明を一通りうけてから「リディクラス」の呪文を練習する。
「順番に呼ぶから一人づつ前に来てね」と言われ、一人一人挑戦していった。テンポよく、ころころとみんなの怖いものとおもしろいものが入れ替わっていく。ハリーよりさきに僕の名前が呼ばれた。
目の前に、たつ。
怖いものなんてたくさんある。ヴォルデモートも怖ければ吸魂鬼も怖い。さらにいうとトム・リドルだって恐ろしい。けれども、そんなものを授業中のまね妖怪に変身させるわけにはいかない。
パチン!
そういって目の前に現れたのは、愛しいアステリアの姿だった。そう、ベッドに横たわる。
あぁ、君を失った日のことを今でも覚えているよ。あの時の孤独感。たしかにあれは僕にとって恐ろしいものだろう。
「誰?」という声が聞こえるが、横たわり眠っている乙女の姿は、知らないものからすれば、特定するのは難しい。あれはな、僕の愛した、奥方だよ。
「リディクラス」
そうしてボガートは、きれいな花嫁姿に変えた。すると、僕の前にハリーが現れる。先生が「ハリー!?」と声をかけているから、勝手に出てきたのだろう。「前回は、先生の気遣いで、僕中途半端に終わったんだよね」といっていたから、そのためだろうか。
パチン!と姿を変えたボガートは、僕と同じくアストリアの姿をしていた。しかも、今の、11歳のアステリアの姿だ。「お前、なぜ…」
クラスのみんなも「え?ダフネ?」「いや、あれは妹のアストリアじゃない」「どういうこと?」
と呟いてハリーの顔をみると、本人が一番焦った顔をしていた。「リディクラス」と、そうして、彼は、僕の時と同様にし、花嫁姿にして次の人にバトンタッチした。
勿論。そのあとダフネたちに、彼が取り囲まれたのはあえて言う事でもない。ほかの生徒たちも、気になるようで聞き耳をたてていた。
「いや、この間誕生日パーティで会った時に、すごい可愛いなって。思っちゃたんだよね」
「それでなんでアストリアになるのよ!」
「だから、可愛いから。」
「可愛いから?」
「ドラコがとられるかもって思っちゃったの……!!!!!!」
シーンと静まり返る教室。こっそりと聞き耳をたてていただろうリーマス先生が最初に吹き出していた。みんなも「いつもの理由か」「ハリーはハリーでしかなかった。そうつぶやきながら解散していった。「みんな吹聴しないでよ!恥ずかしいから!」
「で、ハリー、本当のところどうなんだ?」
「本当って」
「アストリアになった理由」
「だからさっき言ったじゃん」
「あの理由を、僕が信じると思ったのか?」
「んべ。君には教えない。浮気者。ばーか」
そういって、ベロをだし、あっかんべの仕草をする。
向こうにロンたちをみつけ、ハリーはいつの間にか走り出していた。
なんなんだ。あいつは。