僕は家から持ってきたお菓子を分ける。
ハリーがロイヤルミルクティーが飲みたいというから、先日母上に方法を聞いたら思った以上に面倒くさかった。そのレシピとともに茶菓子が添えられていたので、せっかくならみんなで食べようと思って、ロンに連絡をした。結局来たのは彼一人だったが。
「ルーピン先生の授業、最高におもしろいよな」
「こっちでも、人気だよ。スリザリンにもグリフィンドールにも人気ってなかなかすごいね。彼」
と、新しい教授たちの話に盛り上がったり、次のクィディッチの話で盛り上がったりと、彼らの話は尽きなかった。といってもハグリッドの授業については、誰も触れなかったが。つまりはルーピン先生と、選択授業の先生についての話である。
「ハーマイオニーのあの猫が、僕のスキャバーズをいじめるんだ。いや、あれはいじめどころじゃない。捕らえて食べようとしている!」
とまぁ、フラグも見事回収していってくれた。
「そういえば、ドラコたちは月末のホグズミードには行くんだろ。一生に回ろうよ。シェーマスたちもドラコとハリーと友人になりたいって」
と、一瞬の沈黙が流れる。あー、そう。ロン。君は知らないんだったな。
「嬉しいんだけど、ロン。僕、許可証にサインもらえてなくて、いけないんだよね」
「えっそうなのか!ドラコは…ハリーが行かないなら……行くわけないよな」
「流石だな。もちろんだ」
サジッタや、アストリアにお土産をねだられたが、最初から行く気はない。別の先輩方に頼んでくれ、と先日いったばかりだ。
「はぁ。ドラコが気持ちわるいのはいつものことだからどうでもいいんだけどさ。ハリーのとこの保護者って、なんていうか、”保護者”じゃないじゃん。校長先生とか誰かに頼んだら?直談判ってやつ。」
「そう言ってもらえるのは嬉しいけど、たぶん。無理かな。ほら…」
「シリウス・ブラックか?」
ハリーが濁そうとしていたのを、ロンが突っ込む。そう、シリウス・ブラックだ。彼にしては、なかなか冴えてる。と関心していると、なかなか冴えているのは、グリフィンドールの才媛のほうだった。「ハーマイオニーが、ハリーとシリウスが接触するのを、大人は避けてるの。本当失礼な話だわ。そんなことないのに。結局自分たちの考えのことしか考えられないの。彼は大人のわがままに巻き込まれているのよ」と談話室でぼやいていたらしい。
ロンは、ハリーにたくさんお土産を買ってくると約束していた。僕にはないのか。と尋ねると「ドラコは自分の意志で行かないんだからいらないだろ。おうちから最高級お菓子でも送ってもらえよ」とだけ言われた。なんだよ。「ロンからのお土産に価値があるんじゃないのか」といったら、真っ赤になっていた。なぜかハリーに足を蹴られたのは納得いっていないが。
ハロウィーンの朝、玄関に集まる三年生以上の学生を僕たちは、階段の上から見つめていた。「当時は本当に行きたかったんだよね」と、隣でハリーは漏らす。「今は行きたいと思わないのか」と尋ねると「前ほどの必死さはないかな。」と帰ってきた。なんだ、僕と一緒にホグズミードに行きたいっていってたくせに。
その気持ちが伝わったのかわからないが、ハリーはくすりと笑って僕の手をとる。「下級生しかいない。ある意味やりたい放題の休日だよ」と。
「そういえばさ、ドラコ。昨日思い返してて気づいたんだけど、このままいくと『忍びの地図』イベントが発生しない。」
「『忍びの地図』…あぁ、あの悪趣味極まりないストーカー地図のことか」
「ドラコ、いいかた!あれ、双子からもらうんだよね。ホグズミードにいけない僕を見かねて二人がくれるの。今回、このままだとそのイベント発生しないよ。」
なるほど、確かに今回のハリーは「みかねる」ほどホグズミードにいけないことに落胆しているわけではない。それに、そんな貴重なものをあの双子が手放すほど、ハリーとの友情が育まれていないのも事実だった。いや、一応言っておくと仲はいい、ロンの家に泊まりに行っているし、双子が僕らにちょっかいかけたり、互いにWinwinの関係を築いてきたりしてはいる。ただ、『忍びの地図』を手放すほどかというと、なるほど。発生しそうにないな。
なくてもいいんじゃないか?というとハリーはそれじゃダメなんだと唸った。
「あの忍びの地図がリーマスのところに手渡って、それによって、彼がスキャバーズの名前を捉えるんだ。そうしてあの暴れ柳のイベントが全員集合の形になるんだよ」ということだった。
「ダメもとで言うけど、ドラコ『忍びの地図』作れちゃったりしないよね」
「僕の専門は、ものづくりではないということをあえて言った上で、だ。今、人狼薬のことで、忙しいということもあえて主張した上で、だ。その上でいうなれば。本物を参考にさせていただけたら作れる気がするが、何もないところからは骨が折れるだろうな。正直やりたくない。というより、校内の精密な復元はできないぞ。」
「本物かぁ。…うーん。ちょっと方法考える。」
というより、この男。自分でやってみようという意欲はないのか。意欲は。当時ならまだしも僕たちは一応知識は大人レベルだぞ。と冷ややかな視線で見れば「僕がこんな精密なことできると思う?」と逆ギレされた。はいはい。
「ということで、スネイプ先生遊びに来ましたー!!!!」
「なにが『ということで』かわからん。帰れ!」
スネイプ先生の叫びを華麗にむしして、ハリーは勝手しったる研究室。とばかりに中央のソファに腰掛けた。僕は、「すみません。先生」とあたまをさげながら。二人のマイコップをなぜか教授の棚から取り、紅茶を注いで運んだ。
ホグズミードには行かないのか。という先生の質問にハリーは明るく「はい!そんなとこにいくよりも、ドラコと先生とまったりおしゃべりしているほうが好きです!」と答える。先生は、大きなため息をついて、自分のコップを片手に、ソファに腰掛けた。
「まぁ、変な噂が立つよりはましか」
「あー、シリウス・ブラックのことです?」
ハリーは、なんてことないように彼の名を口に出した。スネイプ先生は一瞬ハリーの顔みるが、そのまま「そうだ」とだけ頷く。「僕のお父さんの親友ですよね。どんなひとだったんだろうなぁ」と呟いて、ハリーがハッとした顔をする。その顔はわかるぞ「こんなことをスネイプ先生に聞くつもりはなかったのに。」の顔だ。まぁ、出たものは仕方ないハリー、先生の苦い過去を思い出させてしまい不機嫌にさせてしまったらその時だ。
そう、覚悟して先生を見上げると「その質問については、吾輩ではなくルーピン先生とやらに聞くのがよかろう」とだけ、答えていた。なんと、ハリー、先生がお優しい日だ!
ハリーは安心したように、一口紅茶を飲むと、別の質問を繰り出していた。
「その鍋に調合されているものは、人狼薬でしょうか」
「ほう、ポッター。それがわかるのかね?」
「いえ、当てずっぽうです。ドラコが入学してからずっと人狼症について調べていて、この夏もずっとお屋敷で色々調合していたので、わかっただけです。
「そうなのか、マルフォイ。非常にややこしい薬だが……。」
不思議そうな表情で、僕を見つめる先生になんと答えたものか、と逡巡する。するが、ハリーが持ち出した話題ということは、意味が有ることなのだろうと思って、話すことにした。
「はい。ずっと気になっていたので、調べていたんです。けれど調べるうちに、脱狼薬のそのややこしさといいますか、得られるもののわりに複雑なことに、すこし、僕の研究心をそそられまして、自分のわがままが許される立場を存分に生かして、子供ながらに色々と実験・研究などをさせていただきました。」
「そうなの!ドラコめっちゃすごいんだよ先生!でね、ドラコのその研究の成果?を先生に見てもらえないかなって思ったんです!」
あぁ、そういうことか。と僕は納得する。確かに、成功させるにしろなんにしろ誰かの後ろ盾は必要な案件であった。確かに彼の助言や立場をお借りできるのならば、心強いことはない。僕は、ローブのポケットに腕をつっこみ、その空間に無造作に入れておいた一冊のルーズリーフを取り出した。
先生は、マグル式の紙であったことに一瞬驚いたが「見ておこう」といって、その紙を受け取った。
「それでね、先生。もしそれ読んで『ドラコすごーい!』ってなったら、ドラコに実験する場所を提供して欲しいです!」
ハリー、君は気づいているのだろうか。先生のまえではひどく幼くなっていることを、本当にすきなんだなぁ…先生のこと。と、目頭が若干熱くなるのを感じる。
先生は「見てみないとわからない。たかだか13歳の子どもの書いた研究を読むほど吾輩は暇ではない。ただ、ドラコの成績が優秀なことは吾輩も認めているところだ。目を通すことは約束しよう」と言ってくださった。
前の世では脱狼薬は完成していた。研究論文も読んだし、なぜそうなったのかの理論も理解していた。が、自分が発案者ではない以上目の前に書物がないのに、脱狼薬(完成品)を作れというのは酷な話だった。ただ、自分自信が覚えていたのは、マグルの知恵や漢方などを使えばもっと簡単に様々なものが代用品になるのではないか。と思ったことだった。そのことを必死に思い出しながら、また、リドルに助けられながらいくつかの試作品をつくっていた。
先生。結構僕、マグルの材料使っているけど大丈夫だろうか…。
そんな話をしていると、教授の部屋をノックする音が聞こえてきた。「入れ」というスネイプ先生の声で、ドアはゆっくりとあく。入ってきたのはルーピン先生だった。ソファに僕たちがいることにきづくと、はたと足をとめ。おどろいた表情をしていた。
「こんにちはルーピン先生。」
「やあ、ハリーにドラコ。こんなところで何をしているんだい。」
リーマスは、ゆっくりと僕たちに尋ねる。スネイプ先生は「ここで待っていろ。積もる話もあるだろう。」といって隣の部屋に消えていった。おそらくルーピン先生は、スネイプ先生に脱狼薬を貰いに来たのだろう。しかし、さすgない目の前の鍋から直接すくって渡すようなまねは先生はされなかった。
「どうしたんだろう。今日のスネイプ先生は機嫌がいいと思わないかい?」
とひそひそと僕たちに話しかける。
ハリーはどうぞ。と目の前の椅子をルーピン先生に差し出しながら、「いつもあんな感じですよ。不器用なので勘違いされちゃいますけど、誰よりも僕のことを理解してくれようと受け入れてくださいます。」と微笑んだ。それを聞き、ルーピン先生は驚いた顔をさらに驚かせ、そのあとは大爆笑だった。
「そのセリフ。ジェームズたちが聞いたら気絶しそうだな。」
ハリーは、ちらりとスネイプ先生が出て行ったドアをみやりながら、リーマス先生に小さな声で聞く。「ジェームズたちって、僕のお父さん以外に誰ですか?」と。聞かなくてもわかっていることをわざわざ聞くハリーも、意地が悪いなと心の中で呆れる。案の定リーマス先生は濁すように笑っただけだった。
「スネイプ先生のことが好きかい?」
「はい、勿論です。グリフィンドールに対する仕打ちはさすがに見遣るものがありますけど、まぁ、完全に差別ですよね。あれは、ただ、そのことと本質は違いますから。そうなった理由があると思うんです。その理由を知らずに、僕はスネイプ先生のことを色々言いたくない。
「そうか。ドラコ、君も?」
「そうですね。スネイプ先生は好かれようとしないので好きです。嫌われるところにとまどいがないのが、一周回って僕は尊敬します。きっと、そういうところにスネイプ先生人生の重きを置いていないのでしょう。そういう煩わしさについてはなんとなくわかる気がします。好きなものが好き、嫌いなものが嫌い。それだけでしょう。」
そろそろ、スネイプ先生が戻ってきてはいけない、とその後はみんなして話題を変えた。ウィーズリーの双子のことや、この学校の秘密。禁じられた森にあるきまったルートで行けば、きれいな泉が現れるとか、学校の地下のどこかに、泉が湧いていてその水は体力回復などの効果があるのだとか…どこのRPGだ。
いつの間にか、部屋に戻ってきた先生に追い出されるルーピン先生を笑っていたら、「お前たちもだ」と追い出された。「ハロウィンパーティまではまだ時間があるのに」とぶつぶつハリーが言っていたので、じゃぁ箒に乗ってクィディッチの練習でもするか。と提案しておいた。忘れていたけど、このままいけばグリフィンドール戦だった。
パーティは、相変わらず最高だった。帰ってきたロンたちが楽しそうに話すのも聞いていて幸せな気持ちになる。だから、このあとのことを忘れていた。というより、当事者ではない僕が覚えているわけがないだろうとも思う。
それは、シリウズ・ブラックが現れた。というものだった。