すでに集合していたグリフィンドール生とともに、他の寮の生徒も大広間に集められ一晩そこで眠るように指示をされる。僕たちは、こそこそとロンたちに何があったのかを聴きに行った。まぁ事の流れは全く同じだった。太ったレディは消えさり、めったぎりにされていたのだという。そしてピーブスがそれはシリウス・ブラックだった。と言ったのだ。生徒たちのひそひそ声は、ひそひそごえと形容するのは難しいぐらいは大きくなっていた。
「そもそもどうやって侵入したんだ」
「姿表しはできないはずよ」
「本当に、あのブラックなの」
「怖いわ」
「一体全体何のために」
「そんなの、きまっているだろう」
そこで一瞬の沈黙が流れる。
「そもそもハリーはグリフィンドールじゃないわ」
「けれども、ポッター家は代々グリフィンドールだ。」
「あいつは、ずっとアズカバンにいたんだ。知っているはずもない」
好き勝手言いやがって、と僕は頭に血が上っていくのを感じた。ハリーが僕の手を握り、「あっちに戻ろう」と笑ったので「あぁ」と返事をした。
ハリーがマフリアートをかけながら僕に話しかける。
「ドラコ。いちいち怒ってちゃ身が持たないよ。君がぼくのことを心配してくれているのはわかっているけど、今は世論の見方が『そう』だと教えてくれたのは君だろう。」
「わかっていはいるが、友人を悪人扱いされて、黙っていられるわけ無いだろう。」
「優しいね。前の時からそうだったけ」
「うるさい」
「あはは、とにかく、シリウスは僕を狙っているのでもなければ、タッグを組みたいわけじゃない。今のシリウスは、スキャバーズを狙っているだけだ。僕たちを脅かすつもりもない。もちろん生徒のみんなもね。彼らは周りに惑わされているだけだ。」
「ああ」
「だから、ドラコ。君も流されないで、不安にならないで、そばにいる僕の暖かさだけを感じていて」
***
それからは、シリウスブラックの話でもちきりだった。
久しぶりにあったハーマイオニーはDADAの授業がスネイプ先生で、横暴な授業展開に腹をたてていた。羊皮紙二巻分のレポートにまとめなきゃいけないの!といって、すこし話をしたらそうそうに図書室へ出かけて行った。ロンは罰則を命じられたそうだ。「あの猫は相変わらずスキャバーズを殺そうとするし、おまる掃除をマグル式でやれっていわれるし、色々とイライラするよ!」
僕はネビルに声をかけ、魔法薬学の復習をする。ハリーは「じゃぁ僕は学校散策して泉でもみつけてこよう」っとといって逃げていった。そこまで勉強がいやか。
寮の部屋で、週末のクィディッチの話になる。ハリーは「ディメンターが来る奴だ。」と呟いて「出場したくない」とぼやいていた。「ダンブルドアの守護霊待つべきだろ思う?自分でやっちゃってもいいと思う?」と本来悩むところではない部分であたまを悩ましていた。そうして、大雨の中行われたスリザリンとグリフィンドールの試合で、ディメンターは現れたのだ。当時は観客席でそれを見ていたが、フィールドでみるそれは、明らかに異常で異質だった。あきらかにハリーに彼らは集まっていた。
僕は杖をだし、守護霊の呪文を唱えようとするが、やはり上手くいかない。そうこうしているうちに、牡鹿が二匹と不死鳥の姿をした守護霊が、そのディメンターを払うかのように優しく回った。その瞬間、グリフィンドールのシーカー、ジニーウィーズリーがスニッチを捕まえホイッスルが鳴った。
今回の結論からいうと、ハリーはシーカーでもなければ、箒から落下するということもなかった。ディメンターが競技場に現れた事実は確かにあり、それがハリーを狙ったという時点でフェアではないがその試合は有効試合と結論づけられた。
それは、ハリーが「気にしていない。結果は結果だと言い張ったからである。」ジニーがスニッチをとって負けはしたが、そもそも点差はそんなに開いていない。僕たちのマーカスを無視した二人ぐみチェイサーのやりたいほうだいで、今回の試合もグリフィンドールにクァッフルを一度も譲っていないのだから。
一応大事をとって医務室に連れて行かれる。ダンブルドアが怒っているのを見てハリーが「今の状況でもあんな風に怒るんだ。なぜだと思う?僕を心配して?それとも」と自嘲気味に笑うので、「あまり考えるな」と頭を小突いた。
ハリーはケロリとしたもので、その日の晩には、寮に戻ってきた。みんなが「ハリーのメンタルまじでドラゴン並」といってからかうと、ハリーは「いや、きっと今まね妖怪目の前にしたらディメンターに違いないね」としたり顔で言っていて、みんなに「んなわけあるか」と総ツッコミをくらっていた。
スネイプ先生が、僕に脱狼薬を実際に作ってみたことがあるか、自分の考えに基づいた脱狼薬の試作品を作ったことがあるかと聞いてきたのはそのあとしばらくしてからだった。僕は実際に作ってみたものを手渡す。先生はそれをしげしげと眺めたあと、「きたまえ」といって教室に連れて行かれた。
時間割を渡され、授業が入っていないときは自由にこの教室を使っても良いという許可が下りる。いくつかあった薬のうち、有効そうなものから準備並べられたそれを渡され「マグルの材料の効果について、もう少し、魔法界のものでもわかるように記述したまえ。もちろんその時に、資料の添えることを忘れるな。」と、助言をいただいた。それからは、部屋でリドルと、理論についてあたまを突き合わせ悩み、実際にこっちに来て比較検討してみるという日々を繰り返していた。
ちなみにリドルの日記は棚の中に入っている。僕たちといないときはどうしてるんだとハリーに聞くと「自由に動き回ってるよ」と返ってきた。僕は脱狼薬関係でしか関わろうと思わなかったので、何も考えまいと「そうか。」とだけ答えた。
それと同時に僕は、ルーピン先生のところを訪れる。
僕一人できたことに、彼は驚いていたが快く部屋に向かえ入れてくれた。ここを訪れたのには理由がある。それは守護霊の呪文をどうしてもマスターしたかったからだ。
「僕は、守護霊の呪文をマスターしたいんです。一応、銀色のがぼやぁっとは出てくるのですが。形にはならなくて」
「ドラコ、焦らなくてもいいんじゃないかな。この呪文はそもそもふくろうレベルを越えるレベルのものなんだ」
「存じています。ですが、この短い期間で二度も彼らに遭遇しました。その度に僕は何もできない。汽車のときのように、彼に守られるのも嫌だ。試合の時のように彼を守れないのもいやなんです。あいつを守ってくれる人はたくさんいるかもしれない。けれども僕もそのための手段が欲しい」
恥ずかしいことをいっていることは、わかっていた。けれども、方法を選ぶほど余裕もなかった。それでなくても僕は、前の世でパトローナスを出せるような立場でも状況でもなかったのだ。それが、僕にとっての足かせになっていることは十分に承知している。だからこそ荒療治にでも取得しなければならないのだ。
ルーピン先生は僕の様子をみて「わかった。」と呟いた。
「ハリーはいい友人を持ったね。わかったよ。そだね。けれども、準備がいる。来学期にはじめよう。それでなくても今君は、自分のことで忙しいと聞いているし」
「自分のこと…ですか」
「そうだよ。僕は君の魔法薬学の成績を聞いてびっくりしたんだ」
そんな忙しくも充実した日々を過ごしていると、ハリーが僕に一枚の羊皮紙を渡してきた。「忍びの地図。本物。あんがい簡単に手に入りました。」と目の前でニンマリ笑顔をする。
「といっても、借りただけ。双子がいたから『なにそれ、いいものもってるね』」っていったら貸してくれたんだ!」
疑わしすぎる。脅したとかじゃないだろうな。とジト目で見ていたら「なんだよその目は!」と怒られた。「あれだよ。水薬のハンドクリームの制作譲ったじゃん。あれのお礼だって。結構売れ行きいらしいよ。なんと香りが今は5種類に増えてるんだって」そういいながら、ハリーはベッドに腰掛けた。
「二枚あるが、」
「あぁ。そうそう!で、もうぶっちゃけた。これドラコに複製させたいんだけどって、そしたら、彼らが途中まで作って頓挫した奴があるから有効に使ってくれよって」
「ドラコに複製させたいんだってところに力関係を感じる」
「だって事実だろう。」
「はぁ、なるほど。結構最後まで作ってあるじゃないか。これならすぐだぞ。あの双子流石だな。ただものじゃない」
「そりゃそうだよ!お兄ちゃん二人は首席で、一人はクィディッチの名選手。悪戯好きなだけで本当頭はいいんだよねー。ただ、飽きたらしいよ。目の前に本物があるのに、複製品
をつくりきる意欲が持続しなかったって。」「それもそれであのふたりらしい」
そいうことで、宿題が一つ増えた。
色々とうまいこと利用されている気がしたけど、そんな気持ちにはそっと蓋をしておいた。
よし、年内目標でこっちはさっさと終わらせるか。
***
その日の変身術の授業ハリーは姿を現さなかった。「ミスターマルフォイ何かご存知ですか」とマクゴナガル教授に聞かれてとっさに「今朝、ディメンターの不安が、急に押し寄せてきたと言っていたので、それで体調がずぐれないのだと思います。」と答えた。これは大嘘だ。朝元気に、ご飯を大盛り食べていた。三時間目には現れるだろうと待っていたが、そのあとの授業も現れず、心配になって部屋に戻るとそこにハリーはベッドの中で丸まっていた。
「どうしたんだ」と声をかけるが、返事がない。
ベッドのそばまでよって、再び声をかけても返事がないのでそっとシーツをめくるとそこにはひどい顔をしたハリーがいた。びっくりして、「何があったんだ!?」と尋ねると、拗ねたように「何でもない」とだけいうのだった。
「何でもない」なんていう様子じゃないだろう。と理由を問いただそうとすると、目の前にリドルが現れる。『老婆心でお伝えすると、彼は一時間目が終わったあと駆け込んでからずっとこのままだ』と言う。ハリーは「うるさい、余計なことを!」と起き出しリドルに叫ぶ。『怖い怖い』といってリドルは消えていった。
「ハリー、どうしたんだ。なにがあったんだ」
すっかり落ち込んでいるハリーをゆっくりとなだめる。何十分なだめただろうか。ハリーが、僕に寄り添ってくる。そうして静かに「ドラコは、どこにもいっちゃダメだよ」と呟いた。
「どこにもいかない。」
「本当だね。」
「ずっと一緒にいるじゃないか。なにを心配している。」
「ずっとなんて、不確かだ」
「それは、君のお父上たちのことを言っているのか。ならば、僕は僕の知っているずっと一緒にいた仲良し三人組のことを君に話して聞かせてあげるまでだ。」
そういいながら、目の前の癖のある髪をといてやる。女子力の高い、彼女たちにケアしてもらっている髪は、とてもふわふわしていた。
「ドラコの一番は僕でないと、嫌だ。
「僕が悲しい時に一番に駆けつけてくれるのは君じゃないと、嫌だ。
「ドラコが悲しいときに一番に駆けつけるのは僕じゃないと、嫌だ。
「そばにいてほしいときに、僕のそばにいて、僕を誰よりも大切にして
「君のことを一番に大切にしているのは、僕だよ。君のことを一番に思っているのは僕だよ。
だんだんと泣きそうになるハリーを、思わず抱きしめる。不安と悲しみでいっぱいになっているハリーをどうにかしてやりたいと思った。辛そうな、世の中の、世界の孤独を集めたようなその様子に、僕は何も言ってやることができなかった。やはり、ディメンターの引きだす恐怖は、何かを思い出させてしまうのだろうか。ケロリとしていたのは、気丈に振舞おうとしていただけで、実はこんなにもダメージを受けていたのだろうか。それに気付かなかった自分に、腹が立った。
「僕だけを信用してといったのは、ハリーだ。他の物は信用するなと。その中で、一体ハリー以外の誰が僕の一番になると言うんだ。安心しろ。一緒にいてやる。」
ふと、耳に『そういうところだよ』と呆れ返ったリドルの声かした気がした。
***
ハリーは僕に前以上にひっつくようになった。パンジーたちが「アステリアに取られたらこまるものね」と笑うものだから、その度にハリーは僕に対する態度をあからさまにしていった。さすがに見かねた三人衆が、色々ハリーに言っていたが、彼の態度は変わることはなかった。「別に僕は気にしていないし、ハリーがこれで安心するならかまわないんだ」と僕が言ったことで、とりあえず、この状況については、見て見ぬふりをすることになった。
僕はといえば、相変わらず脱狼薬の研究は続けていた。今までは僕が行ったり来たりしてリドルとしていたが、ハリーが参加することになった。ただ彼は見つめていただけだったが。忍びの地図についてはハリーも協力してくれて、思ったより早く完成した。最後にすこし細工をしてあの双子に返しにいったら、その細工を気に入ってくれて、複製の方を彼らは持って帰った。ちなみに彼らには伝えてない細工も施してあるが、特別いうことでもないので話題としては流していこうと思う。
そうして学期の最後のホグズミードも、僕たちは行かなかった。
そこで、聞いてきたシリウス・ブラックとジェームズ・ポッターの噂についてロンとハーマイオニーは僕たちに話して聞かせてくれた。ひどく興奮したようすで、それをなだめるのが大変だった。そこにルーピン先生の名前がでないことに、「うまいことできてるなぁ」とついつぶやかないではいられなかった。
彼らはこの休暇はホグワーツに残るという。お互い忙しくて一緒に過ごすこともなかったから、クリスマス休暇には、いろんなことをして遊ぼうとロンと計画していた。母上たちには寂しがられたが、「一度ぐらいホグワーツで過ごすのも経験ですね」と返ってきた。ちなみにサジッタが帰宅しているから、このクリスマスはあいつが、母上の餌食となることだろう。