refrain regretシリーズ   作:りづ

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クリスマス休暇に入って、最初にしたことはあの森番。つまりはハグリッドのところに遊びに行くことだった。そういえば、最近授業以外で会っていないなという話になり、四人で行こうと、休暇前から話をしていた。ちなみに、この休暇にホグワーツに残った生徒はたったの六人である。

 

 

あれから、やたらと引っ付いていたハリーは少し落ち着いた。他の生徒が家に帰ったことで、色々と思うことや安心することがあったのかもしれない。やはり特定の「何か」原因があったのだろうと、僕は推察した。けれども、本人が僕に教える気もないので、その具体についてはわからないままだが。

 

 

 

 

 

 

ハグリッドの小屋を覗くと、ハグリッドが真っ赤な、泣きはらした目をして突ったっていた。ロンとハーマイニーが「どうしたの」と心配そうに駆け寄っていた。ハリーは、机の上にある公式の手紙に目をやり、「やはりこうなったか」とその手紙を手に取る。

 

 

 

 

そこには、以前起きたヒッポグリフの傷害事件についての処遇について、が書かれていた。

 

 

 

「ハグリッドの管轄におけるヒッポグリフが生徒を攻撃した件については、授業外において生じた事件であること、また、聞き取りやダンブルドアの貴殿にはなんら責任はないと『保証』することを我々は受け入れることにしました。」

「よかったね!ハグリッド!」

 

 

 

「しかしながら、ヒッポグリフはM.O.M分類XXXに指定されていることを鑑み、学校教育での学びに適しているか、それを貴殿が飼育し教育に活かすことができるのかということについて懸念を表明せざるを得ません。」

 

 

 

だから、この件は「危険生物処理委員会」に付託されること。事情聴取を行うこと、そしてヒッポグリフを隔離し、つないでおかなければならないことなどが、その手紙には書かれていた。

 

 

 

 

僕たちは顔を見合わせる。

 

「ハグリッド、しっかりした弁護を打ち出さないといけないわ。あなたが『安全』を証明しないと」とハーマイオニーがごもっともなことを述べた。しかし、悲しみでいっぱいになっているハグリットは素直にハーマイオニーの言葉を聞くことができなかった。

 

 

「やつら、処理屋の悪魔め、連中はルシウス・マルフォイの手の内だ。やつを怖がっとる!もし俺が、」「ハグリッド!」

 

 

ハグリッドが最後まで言い切らないうちにハリーが叫ぶ。「うっ」と言葉を詰まらせた後、声を一層大にしてハグリッドはおいおいと泣いた。

 

 

ロンが「お茶でも入れようか」と声をかけ、ハーマイオニーが「過去の事件について色々と調べてあげる」と慰めていた。僕も調べるのを手伝うよ。と声をかけようと一歩前にでると、ハリーに腕をひかれる。「ホグワーツに戻ろう」と彼はいった。

 

 

 

 

「ロン、ハーマイオニー、ごめん僕たちは先に学校に戻るよ。このままドラコといてもハグリッドが動転するだけだろうし。」

「え、えぇ。そうね」

「ちょ、っと。ハリー、待てって、ハーマイオニー、ごめん。図書室行く時また連絡してくれ」

 

 

 

言いたいことをいって、先に外に出ていたハリーを急いで追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「君の父上は、ルシウスさんは損な役回りだ。どこにも彼が筆頭になってヒッポグリフの処遇について訴えているなんて書いていない。そう、思い込んでいるんだ。去年のバジリスクのときもそう。通達に来たのが、ルシウスさんであっただけで、僕たちもハグリッドも理事会でのやり取りをしっているわけではない。そうして、自分たちが槍玉にあがらないようにして、安穏と理事の椅子に座り、立場が悪くなると、誰かにそれを集中させる。そうなってるんだ。本当に嫌なシステムだ」

「僕の父上のことをそう言っている君を見ることになるなんてな」

「あのルシウス・マルフォイとルシウスさんは違う。僕は心の中で、ブラックルシウスとホワイトルシウスさんで区別している。」

「それはそれでややこしいな。でも、ハリー、僕は気にしていない。というより、なぜこんなことになってしまったのか。そればかりが不思議だ。サジーは、義父には学校から話はいっただろうが、自分は何も気にしていないといったんだ。」

 

 

 

そうして僕はハリーの隣に並ぶ。

 

 

 

「知っている。僕も話をきいた。『魔法生物は僕たちヒトと違い言語を持たない下等な生き物です。そんな生物に対して、僕たちヒトを理解しろという方が馬鹿な話しではないですか。彼らが理解できるはずもない。僕たちが彼らを上手く使役をする立場であるために、を考えたら、誰が何を間違えたのかは一目瞭然です』と、君の弟らしい、答えが返ってきたよ」

 

 

確かに、結果としては、こちら側が、魔法生物に寄り添う形だが、その理由がいかにもサジーらしいものだった。

 

 

「となると、そういった関係性を理解していない馬鹿が原因ということか」

「そう、それは理事メンバーも含めての話だ」

「ふうむ。ほかの理事メンバーに心当たりがあるな。サジーが問題に上げる気もなかったし、その時巻き込まれた生徒も理事会にパイプがあるわけではないから放置してしまっていた。」

 

 

 

無関係な生徒が、保護者に訴えるほどに、理事会が少しの噂を肥大させてしまうほどに、嫌がっているものは、嫌悪しているものは、ハグリッドなのか、ダンブルドアなのか。という話だな。

 

 

 

 

「まぁ、僕も正直、なるようになれって思ってたからね。けれども、結果、ルシウスさんに被害がいって、ドラコが非難されるのであれば、最初から手を打っておけばよかった」くそう。理事会システムめ、とハリーはひたすらに悪態をつく。

「非難?ハグリッドにか?」

 

 

思わず笑いがこみ上げる。あんなの些細なことだ、あんな小さなことで傷ついたり腹を立てたりしない。過保護がすぎるぞ、ハリーポッター。

 

 

「僕はそれが嫌なだけだよ。ドラコ。防げる痛みは防ぐにこしたことはない。しかも、ハグリッドは本気でそう思ってそうだ。」

 

 

 

 

 

 

そのあとは、結局いつもと同じだった。

ひたすらに脱狼薬の研究に時間を費やす。

ハリーは、理事会メンバーと学籍簿を持ってきて(学籍簿って普通、鍵のかかった金庫とかに収められているものではないか?と聞いたらウィンクされた)ぶつぶつと何かを整理していた。侵入者よけの呪文もかけ、リドルにもご参加いただいた。

そうこうしていたらロンから連絡がきて、図書室で事件について整理をすることになる。「ドラコに謝ったほうがいいっていったんだけど、マルフォイがっていって、頑固だったんだごめん」と彼ら二人に、謝られてしまった。

そうして、クリスマスの朝を迎える。

 

 

 

 

 

 

部屋にはたくさんのクリスマスプレゼントの小包で山ができていた。それを眺めていると後ろからハリーに「ドラコ」と声をかけられ、プレゼントをキャッチする。あけるとそこには、ブレスレットがあった。自分が以前ハリーに上げたブレスレットと同じ「緑」と「灰色」のカラーリングの細いブレスレットだった。細いがよく見ると、しっかりと編みこまれていていて形が崩れないぐらいしっかりしたものである。

 

 

 

 

「それ、僕の手作りだから。一編みひと編み、守りの思いを込めて作ったから、一回ぐらい爆破に巻き込まれても大丈夫なはず!」

「爆破に巻き込まれる想定!まあつまりはお守りみたいなものなんだな。ありがとう。嬉しいよ」

 

 

そういって僕は、ハリーのプレゼントの山にいき、自分のプレゼントを選んで手渡した。ハリーはありがとうといってそれを受け取って中をあける。「わあ」と声を漏らしてもらえたということは、喜んでもらえていると判断しても良いのだろうか。

 

 

 

「これ、フェリックス・フェリシスじゃないか!?きれいだな。いつの間に!?」

「実家で作っていたのを、完全に保存してこっちで作り続けていた。移動の時、どうにかなってしまうかなと不安だったが、無事に完成して良かった。」

「ありがとう。これこそ、お守りがわりにもっておくよ。」

 

 

 

 

思った以上に喜んでいる様子で僕はひと安心した。それから、ほかのプレゼントも二人であけて行く。父上からは大量の本をといくつかお願いしていた、貴重な材料たちを、母上からは香水といくつかの紅茶やお菓子などだった。ウィーズリー家からは、毎年恒例のセーターを。ロンからは、やわらかいブランケット、そしてハーマイオニーからはマグルの本が何冊か届いていた。サジーからはネクタイピンだった。

 

 

 

 

「やっぱりないかー。」

とハリーが、つぶやく。

 

 

 

「何がないんだ」

「え、ファイアボルト。前回はシリウスから、匿名で送られてきたんだけどさすがにないなって、なぜだと思う?」

「じぶんで『やっぱり』って言ったんだから予想ぐらいついてるだろ」

「僕がスリザリンだから。」

「どんまいハリー」

「少し心が憂鬱になった」

 

 

 

 

 

 

***

 

学期が始まる少し前にサジーが帰ってきた。「父上は、ヒッポグリフについて何か言っていたか」と問うと、「えぇ、『保守派の人間はいつみてもイライラする。とはいって革新派になるつもりもないが』とおっしゃっていました。エイブリーの父親は『極めて当然の処遇だ』とおっしゃっていましけどね。」と、なかなか、難しい問題のように感じた。

 

 

 

 

 

新学期がはじまり、それと同時にルーピン先生との守護霊の呪文の授業が始まった。学校がはじまったら、またハリーがひっついて回るかと思ったがそんなこともなかった。「魔法史の教室だよね。ルーピン先生ともお話したいしいつか行く」といっていたが、いまだに一度もきていない。

 

 

 

はじめの時、先生に今どれくれくらいできるのか見せてくれるかと聞かれ、パトローナスの呪文を唱える、ぼわあと銀色の光が杖から出ただけですぐにその光は消えてしまった。

 

 

 

 

「理論上は理解してるって感じだね。本当、あとは実践だ。」

 

 

 

そういって、実践を積み重ねる。が一向に何かしらの形になる気配はなかった。

 

 

 

守護霊の練習、魔法薬の開発、自分の勉強、クィディッチとある意味充実した生活を送っていた最中に、ロンから叫びの連絡がくる。それは「クルックシャンクスが、スキャバーズを食べた」という嘆きだった。その日は、ロンが落ち着くまでひたすら慰めた。次の日グリフィンドールのテーブルの方をみると、ハーマイオニーとロンが遠く離れたところに座っていたのがわかり、ハリーと二人で肩をすくめる。ハリーは「いやでも真実にたどりつく。そうしたら仲直りするよ」と、のんきなことをいっていた。

 

 

 

 

もうすでに二月だった。魔法薬のほうはうまくいくのに、この守護霊の呪文だけは思うように行かなかった。その日は一旦落ち着こう。といって、僕を椅子に座らせて用意していた紅茶を差し出してくださった。

 

 

 

 

「ドラコは、悲しいことがいっぱいあるんだね。それが、君が幸せを考えることを阻害してしまっているきがする。」

「そう、かもしれません。幸せな思い出をもうとうと思うと、それに付随する出来事がいっぱいくっついてきます。」

「ハリーは、君のことを心配していた。『ドラコは周りが思う以上に悲しみの引き出しが多いんです。しかも綺麗に整理されているから、その引き出しも開けやすい。彼のこと、よろしくお願いします』って。なにがそんなに悲しいんだい。もしよかったら聞かせてくれるかい。」

 

 

 

 

悲しいことは、数え切れないほどある。そもそも僕は後悔しつづける人生だったのだ。ホグワーツで過ごした学生時代は、幸せとはほど遠かったと大人になって改めて感じた。自分の意志とは違うところで、僕の人生は回っていた。「そうするしかなかった」と嘆く人生ほど悲しくつまらないものはない。

アストリアとの日々は幸福だったが、しかし、常に後ろ指に刺されながらの生活だった。妻に申し訳なかったし、スコーピウスにも申し訳なかった。アストリアとスコーピウスと過ごした日々を思い出すことは幸福な反面で、自分の後悔ばかりの灰色の人生を思い出すこととも同義だった。

 

 

 

ふと、自分が涙を流していることにきづく。

ここまで、13年間新しい人生をと望んできたけれども、僕の人生は何も新しくはなっていないのだ。ただ、積み重ね続けているだけなのだ。当たり前だが、どんな風に生きようと、どんな風に変化しようと、「過去」は変えられないし、許されるわけではない。

 

 

 

目の前にいる先生がびっくりして、ハンカチを探しているのがわかった。けれども、僕はその涙を止めることもせず、ただぽとぽとと涙を流していた。

 

 

 

 

 

「あああああ!ルーピン先生が僕のドラコ泣かした!」

 

 

 

びっくりして顔を上げると、たったいま教室に入ってきたであろうハリーが、少し怒った顔でこちらに向かってきていた。

 

 

 

「先生!僕ドラコのことお願いしましたよね!なんで泣いてるんですか!傷つけるようなこと言ったんですか!?」

「えっハリー!違うんだよ。誤解だ!」

「じゃぁ!」

 

 

 

「違うんだ。先生は、悪くない。ただ、守護霊の呪文ができない自分が悲しくて、やればやるほど、悲しいことばかり思い出されてしまってな。はずかしい」

 

 

 

ハリーは僕の隣の椅子にこしかける。「大丈夫だよ」といって僕の背中をさすってくれた。

 

 

 

 

「ドラコは幸せな思い出何を思い浮かぶ?」

「え?」

 

 

それは、アストリアとかスコーピウスとか。

そう言おうとするとハリーが笑って「僕はね」と続けた。

 

 

 

「僕はね、朝起きでドラコがそこにいることでしょ。そして一緒に大広間におりていくこと。朝ごはんを食べながら、野菜も食べろって怒られるのも幸せな思い出。ロンとドラコが楽しそうに話しているのをみるのも好きだし、談話室でパンジーたちと、どうでもいいことでおしゃべりするのも楽しい。ちゃんと髪乾かしなさいよってお母さんみたいだなーって思うのもいいよね。そして奥で君が、またやってるって笑うんだ。そんな時幸せだなって思う。夜、君とおやすみっていうときは少しさみしいけど、ときどきベッドに侵入するのに、君が気づかないで寝ているのみるのも幸せ。そうやって、あり得なかった今、ひとつひとつを僕は幸せだなって思って守護霊の呪文を出すんだ。君は」

 

 

 

ハリーから、繰り出される、平凡な日常に僕は驚く。でも、僕も同じだと思った。朝起きて、ハリーがそこにいる。一緒にご飯を食べて授業にでる。ロンやハーマイオニー、ネビルとおしゃべりをして、談話室にもどると、また楽しく会話をする。ぜんぶありえなかったことだ。確かに、それは、「幸せ」というほかに何もないぐらいの「幸福」だった。

 

 

 

「ハリー、守護霊を見せてくれるかい。」

「もちろん。いいよ」

 

 

そういって、ハリーは立ち上がって、一歩前にでる。ルーピン先生の横に立ち、僕と向かい合わせになった。ルーピン先生は、何も言わずに僕たちの会話を聞いているだけだった。

 

 

 

エクスペクトパトローナムと、ハリーが呟くと、きれいな銀色の光が杖から吹き出した。それは牡鹿の形になって、僕の側に寄る。そして、包むようにして消えていった。

 

 

 

「ハリー、そこで見ててくれるかい」

「もちろんだ。」

「僕の幸福も、君と同じだ。今この瞬間が、幸せに溢れている。エクスペクトパトローナム」

 

 

 

すると、杖から、するすると白銀色の光がでる。それは一つの塊になって、ぐるぐると円を描いていた。

 

 

 

「ドラコ!やったね!」

「あぁ…!けど、これはなんだ?」

背中をドンと叩いてくるハリーに、その嬉しさを悟られないように、冷静に返す。

まじまじと目の前の僕の守護霊を見つめるが、それが何かわからなかった。

 

 

 

「オカミーじゃないか?」

「オカミー?」

「あぁ、でも、オカミーには角はない。それは、角がある。ドラゴンのような見た目に羽が生えている。東洋のドラゴンのようにも見えるが、手足もないし、やはりオカミーのような気がする」

 

 

 

僕は、守護霊が出せた喜びと、何なのか特定できないその守護霊への不安感でどう言っていいのかわからなかった。けれども、守護霊が出せたことが嬉しかった。目の前のオカミー角アリは、くるりとすべるように僕の周りを一周して消えていった。

 

 

 

あのあと色々と調べたが、結局何か分からずじまいだった。先生が言ったとおり、オカミーには角はない。確かに東洋のドラゴンに似ていたけど、それにしては手足がなかった。その時、調べてわかったことだが、東洋の蛟と呼ばれるものに似ているそれは「時運に巡り会えずに実力を発揮できないでいる英雄」の例えとして使われることもあるそうだ。十分な皮肉だな。と失笑しながらも、それにしても手足がないのだから、なんとも言えないなとその時の調べ学習は終えたのだった。

 

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