グリフィンドールの寮内にまたもやブラックが現れたと聞いたのはその日の夜だった。ロンから連絡をもらったのだ。着々と物語が進んでいることを実感させられる。なぜ、僕なんだ!とロンは嘆き、なぜグリフィンドールにこだわるんだ!と生徒は考えていた。
「シリウスは、ハリーを探しているんじゃないのか」
「なぜ、ハリーを探す」
「そりゃあジェームズポッターの息子で例のあの人の敵だからだよ」
「それがどうして理由になる。」
「…わからない。けど、みんないうんだ。ブラックはハリーを仲間にしようとしているって、グリフィンドールだと思って殺そうと思ったけど、スリザリンだと知って、一緒に闇の魔法使いにって…」
「ロン。思ってもいないことをいうな。周りの意見は周りの意見であって、君の意見じゃない」
「でも…。ときどき僕はハリーがわからなくなる。全てを見透かしたような。僕たちの行動なんかすべてわかってます。みたいな。そういうとき、言いたくないけど、僕は怖くなるんだ。信じたいけど、そういう気持ちがときどきある。ごめんドラコはハリーの友人で一番なのに」
「何をいってるんだ。むしろ言ってくれて嬉しいよ。ロン。友情に一番なんてないんだ。そうやって不安なこといつでも言ってくれ」
「ありがとうドラコ」
友情に一番なんてないんだ。
そう。それはハリーも知っているはずなのに。
なぜ一番にこだわるんだろう。
友情に一番はない。じゃぁ、一番が存在するのは…?
ロンから、ヒッポグリフの裁判の日付の連絡がくる。ハグリッドに聞いたらしい。そしてそこでハーマイオニーと仲直りしろと説教をされたらしい。「あいつの猫が、僕のスキャバーズを食ったんだ!なんで僕が謝らなければならない!?」と、そのハグリッドの言葉には納得していないようだった。
ヒッポグリフの裁判の日は、ちょうどホグズミードへ外出日だった。シリウスブラックに丁寧にも合言葉を渡してしまったせいで、ネビルは外出を禁止されたようだ。ハーマイオニーも残るらしい。ハリーが「明日は、ちょっと行動しかけるよ」と言っていたので、彼らには会うことはないかもしれないな。と思いながら、談話室でお茶をのんでいた。
「ねぇ。ドラコ。ハリーはどこにいるの?」
「さあ、彼の動向をいちいち確認しているわけじゃないかな。」
ひそひそと、目の前の三人が話をする。
「別にね、私たちだってハリーがなにしてようが別にいいのだけど、最近ほら、あのグリフィンドールのマグルと一緒にいるところをよく見るから。」
「ハーマイオニー?」
「名前まで知らないわ。グレンジャーよ。」
「あぁ」
「いいの!?」
「いいもよくないも、好きにすればいいんじゃないのか。」
そう言うと、三人は泣きそうな顔になる。なんだ、どうしたんだ。僕たちがセットでいないことがそんなに不安か?
「わかったわ。」とミリセントが言う。
「じゃぁ質問を変えるわ、今のこの状況はハリーは知っているの?」
「この状況?」
「あなたが、トリアに勉強を教えていることよ!」
最後のダフネの叫びは、びっくりした。つい耳をふさいでしまった。
知っているか知らないかでいえば、「知らない」だろうなぁ。さっきトリアに声をかけられて教え始めたわけだし。
「知らないと思うが、トリアも特別言ってないよな」
「もちろんですわ。ドラコ兄様に話しかけるときに許可を取らなければならないとはきいておりませんもの」
ふわりと、トリアが笑う。そうして目の前に魔法薬学の教科書とノートを閉じた。「けれども、まぁ、察しましたわ。私も命は惜しいですから。ありがとうございましたお兄さま」そう言って、僕にではなくその奥に向かって会釈をしてその場を後にする。
パンジーとダフネとミリセントも、「知らない。」「ドラコが悪いわけじゃないのよ。悪いわけじゃないんだけど、申し訳ないけど、ドラコが悪い。」「ハリーはわかりやすいんだけどね。そういう意味では私もハリーの肩をもちたい。」そういって後ずさりしながら女子寮に向かって去っていった。
「ドラコ。楽しそうだね!」
「あぁ、おかえり。なんとかなりそうなのか。」
「まぁ、まずもって難しいだろうね。」
「そうか、手伝えなくてすまんな。」
「いいよ!ここでドラコもこっち手伝ったらロンが拗ねちゃうだろうし、君は君で忙しいんだからさ。」
そう話しながら部屋に向かう。若干距離が近いような気がしたが、それは気のせいではなかった。明日の打ち合わせをしたあと、当然のようにべくのベッドで横になり、嬉しそうに「ドラコはやくはやくー!と呼びつけたのだから。
***
「なぜ、君がこれを持っているのか、本当に知りたいのだが、教えてくれる気はあるかね」
そうハリーに尋ねるのはルーピン先生だった。
ハリーは、わざと、本当にわざと地図をもって、校舎内をうろついた。地図があるから、ルーピン先生がどこにいらっしゃるのかも手に取るようにわかる。それを偶然と言っていいのかわからないが、偶然を装って地図の使用についてルーピンにバレるようにしたのだ。
「拾ったんです。」
「拾った?これは、何年も前にフィルチさんが没収したものだ。それを僕は知っている。」
「それは、そこにあらわれるムーニーさんとプロングスさんとパッドフットさんと……ワームテールさんのものだったんですか?」
ハリーは酷なことを聞く。
「……そうだ。その四人が使い、それをフィルチさんが没収したんだ。なんだってこんな危険なものを……。もしも、これが、侵入者の手に渡ってしまったなら。」
「スネイプ先生に聞いたら、非常に嫌な顔をされました。きっとその四人のうち二人は、シリウスと僕の父ですね。スネイプ先生はあのふたりの話題のとき、嫌な顔を隠しませんから」
「ハリー!!」
「大丈夫です。その地図のことはいっていません。言ってはいけないような気がして。実はそれも、先生に渡そうと思ってきたんです。」
「僕に?なぜ、」
さぁ、とハリーは肩をすくめる。
「普通ならスネイプ先生でしょうけど、父が絡んでいるなら、それはスネイプ先生にふさわしくないと思っただけです。心労で倒れちゃったら僕、嫌ですもん。」
よく言うよ。と、思うが、まぁスネイプ先生大好きハリーが、ルーピン先生を頼る理由をつけるためなら、まぁ仕方がないのだろう。というほかない。ルーピン先生はしばし悩んだあと「ともかくこれは、没収だ。」といってハリーから取り上げた。
「さて、まだ夕刻までには時間があるのだけど、僕の部屋まできてチョコレートでも食べるかい?あったかい紅茶もいれよう」と誘ってくれたのでそれに乗じることにした。その帰り道、泣きそうな顔のハーマイオニーとロンに遭遇することになる。「ハリー…、ドラコ…」とかけよってきた彼女がもっていた手紙にはハグリッドが敗訴したという旨が書かれていた。
彼らは仲直りした。控訴をするのだといってロンは張り切っている。状況を知ったネビルも、「手伝うよ」と言ってくれたらしい。いまグリフィンドール側では、ヒッポグリフのために色々と動いているという。しかし、前回を知っているものからすれば、今回のこの騒動に悪役はいない。いるとなれば、誰かが裁判に圧力をかけていればだが、父上は、母上に誓って理事にそのようなことはないとおっしゃった。つまりは、ハグリッドに問題があるのだ。「信頼」という名の。そして「自信」という名の。ハーマイオニーは日に日に、疲れが出てきていた。「大丈夫なんだろうか」とハリーに聞いたら、「全教科とってるからねぇ。」と帰ってくる。
「全教科?とれるだけということだろう。僕も取れるだけとっているが」
「正真正銘全教科だよ。あぁ、今日占い学は辞めたんだっけ」
「そうだ、不吉なことばかりだし、トレローニー先生は彼女を目の敵にしているところがあったしな…って正真正銘全部!?どうやって!?」
ハリーは、リドルとチェスをしていた。
ハリーの連敗記録を更新中のチェスだ。
「君も思いつくものがあるだろう。人生をも変えうる中途半端な魔法道具。僕たちが今ここにいる運命ほどに完成されていない、中途半端なあの魔法道具が」
「まさか…ダイムターナーか!?」
「せいかーあっずるいぞリドル!いやいやいや」
タイムターナー…タイムターナー!?
あれを使って授業に全部…なる…ほど。だから、急にいなくなったり、現れたりしてロンがこんがらがっていたのか。そうか、もう二度とお目にあいたくない代物だな…。
『そんなことより、僕の新しい媒体は思いついたのか?』
「そう、それなんだけど、君が二つの媒体を行き来できるような道具にしようと思って。そうしたら僕とドラコで分けて所持できるし。」
「なるほど、それはいい考えだが、その道具はどうやって作るんだ?」
「……それを考えて頓挫しています。単純に記憶ごと分割することは簡単にできそうなんだけどさあああああ」
『道のりはながそうだねぇ。トムリドルによる謀反が起きないようにね』
と、話がずれたが、タイムターナーか。それで全教科の授業をハーマイオニーはとることが可能になっていたのか…。つまり試験も…。そこまで考えてぞっとした。自分は、限られたもので高得点高評価をえるほうが向いているような気がした。がむしゃらはあまり向いていない。
「ハリー、リドルと遊ぶのは結構だが、試験勉強は大丈夫なのか。」
「魔法史以外は問題ありません。赤点は取らないよ。」
「そうか、つまりまだ伸び代があるということだな。さて、なんの教科からいくか」
「やだよ!やだやだやだ、僕の平和な学校生活なのかに、勉強は予定にないんだ!」
「何をバカなことをいっているんだ。学生の本分は勉強だ。杖を降るだけが立派なまほうつかいじゃない」
「いーやーだー」
叫ぶハリーをおいかけ回し、机に座らせたのはその一時間後だった。そりゃあ三年生の授業なのだから、勉強せずとも出来て当たり前だろう。だからこそ、上をめざせるのだから、その努力を怠ろうとするのは、阿呆のすることなのではないのだろうか。
そうやって、談話室や部屋で勉強をしたり、ロンやネビルとコミュニティルームで待ち合わせをして勉強をしたりして試験日を迎える。その途中、ヒッポグリフの控訴日が六日であると連絡がくる。奇しくもそれは試験最終日だった。
朝からテストテストてすと三昧だったが、昼には終わりが見えてくる。ハリーと大広間に移動をしていると、父上がファッジといるのが目に見えた。ハリーが隣で「げっ」っというのが聞こえたが、気にせず二人で魔法大臣に挨拶をする。大臣たちと少し離れたところで父上と軽く会話を交わした。
「まぁ、残念なことになるだろうな」
「どうにもならないのですか。ここまでかんばってきたあの子達の努力が霧散してしまうのは、辛いです。」
「どうにもならないこともあるのだ。何が正しいとか、何が間違っているとか、それは、ひとつの視点からでは判断できない。だから、裁判や会議をして多面的に見る。」
「では、ルシウスさんは、これが多面的に、様々な考えが考慮された結果であると思いますか。」
「組織というのは、同じ色に染まっている。学校は、様々なカラーがある。日々学び、精進し、悩み成長するのだ。期待しているぞ。」
それから、少しの会話をして、父上とは離れた。
午後のテストについて話すふりをしながら今日このあとの動きを確認する。
「とりあえず、これでやれることはやったってかんじかな。」
「そうだな。あとはヒッポグリフの処刑のあと、あの叫びの屋敷で同窓会だ。」
「はは、同窓会。いいね。ロン、行くかなハグリッドのとこ。」
「行くだろう。あの三人はあのあとも頑張って調べていた。思い入れがあるはずだ。」
「うん。そして、スキャバーズは以前とおなじハグリッドのとこにいるのも確認済みだ」
そういってハリーは杖をひとふりした。
***
試験の全てが終わり、僕たちは叫びの屋敷の中にいた。
もちろん暴れ柳の根元に透明マントを置いておいた。それをロンたちが使うか、ルーピン先生がつかうか、スネイプ先生が使うかわからない。けれども、物語が変わっていないのであれば、それを使うのはスネイプ先生になるだろう。
屋敷を見渡しハリーは
「ここは、綺麗とはいれないよねぇ」といって杖をひとふりする。
ホコリやゴミは綺麗さっぱり片付られ、壊れていたものは綺麗に直されていく。
「せっかくの同窓会だし、きれいなとこで話に花をさせたいよね」
「はいはい」
「あっ飲み物とごはんもいるかな!?」
勝手にさせておくことにする。
「そのカバンはなんだ」
「これ?これはね、四次元ポケット~!」
「ぼくのローブのポケットみたいなものか」
「イエス!」
なんだか、今日のハリーは楽しそうだ。
鼻歌まで歌いながら、部屋を飾り立てていく。
僕はというと、少し緊張をしていた。よく考えたら、一年生のときも二年生のときも最終局面のときは、なんだかんだで気を失っていたのだ。そういう意味では、初の物語の最終場面だった。
『あの生物が、処刑されたぞ』
「ありがとう、リドル」
『それにしても、ハグリッドは何も変わらないな』
伝達係のリドルは鼻で笑って、消えた。