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あのあとについては、大人たちは大変だったようだ。ペティグリューの出現により、今まで考えられていたことがひっくり返るのだから。シリウスの身柄はアンドロメダさんが引き取ることになった。ブラック家から名は消えているが、そこしかなかったのだ。シリウスと関係が近いのはいま生存している人で行くと、ナルシッサさん・ベラトリクス・アンドロメダの三姉妹である。ベラトリクスはアズカバンだし、ナルシッサさんはマルフォイに嫁にいっている。
けれども、シシーさんの泣き落としで、ルシウスさんは裏でいろいろと動いてくださっていた。
「ルーピン先生。辞職なさるんですね」
「あぁ、その話か。君たちが汽車に乗ったのを見送ったらそこで僕の教員生活は終わりだ。楽しかったよありがとう」
ルーピン先生は最低限のものだけを残して、部屋を片付けていた。「ぼくは教師をしていて楽しかったけど、でも月に一回。しかもその前後も体調崩すなんて、生徒のみんなに申し訳なくてね」
「けれども、みんな先生の授業が大好きですよ。」
僕は本当のことを伝える。僕もずっとそう思っていた。
「そうだね。ありがとう。確かに、教師は僕に向いているなとは思ったよ。じゃぁ君の親友に頼んでおいてくれないかな。僕の将来のためにも脱狼薬の新薬期待しているよ。と」
「きっとドラコ頑張りますよ。守護霊の呪文もですけど、彼、先生のこと好きですから。」
ルーピン先生はそれは嬉しいねといって、机に腰掛けた。彼は、今回の本題はまだかな。と僕に促していた。
本題は特にない。けれども、聞いておかなければならないことがあるような気がしていた。「話があるのは先生の方でしょ。」と微笑んで返すと、彼は「そうだね」と肩をすくめていた。
「君がもってきたチョコレート美味しかったよ。あれは、僕のお気に入りなんだ。といっても僕がいつも人からもらっていたものなんだけどね。あれは、ドラコの母親から託けられたもの?」
「そうです。何もおっしゃいませんでしたが、あの人はチョコレートがお好きと学生時代から噂だったの。何かあったら持っていくといいわ。と。」
「そう。」
そう。やはりそこはつながっていたのですね。先生。
「ハリー。それは違う。つながっていったという言い方はお互いに誤解を招く。僕は卒業して一度も彼女にあったこともなければ、それこそルシウス・マルフォイにもあっていない。ただ。彼女たちは、僕が人狼であることを知っていた。」
「知っていた!?」
僕は、つい驚いて大きな声をだす。
「信じられないだろう。図書室でね。彼らはいつも図書室にいた。あの空間は宗教画のように美しくて、誰もが見とれ、足を止めるが近づけない。そんな空間だった。そんな彼らが、僕に声をかけたんだ。彼らは僕に『月に一度それではしんどいだろう』と言ってチョコレートをくれた。あのスリザリンのマルフォイのその婚約者が。だ、『黙っていて欲しい』と僕は真剣にお願いをしたよ。けれども彼らはね、「人の性質について、ベラベラいうつもりも何もない。シシーが、ルーピンを見ては、痛々しい、かわいそうと泣くものだからね」とだけいって去っていったよ。それから、月に一度チョコレートが届いてたんだ。」
そんな、さすが。
「ただそれだけだよ。だから僕は彼らが好きなんだ。お互いを想い合って、人に優しくできるあの人たちが、当時からグリフィンドールだとか、マグルだとか狼人間だとかで差別をしない人だったよ。」
だったらなぜ
「そう。だから僕もルシウスさんが死喰人になった理由がわからない。けれども、それは彼自身の本意ではない。立場と環境がそうさせたんだと思いたい。ドラコと仲のいい君だから、両親がグリフィンドールでスリザリンになった君だから、頼みたいんだ。マルフォイ家を助けてあげて欲しい」
ルシウスさんは、ドラコの父親だった。それはまぎれもない。優しくて、愛に溢れた人だ。けれども彼の抱える愛はグリフィンドールのような太陽のようににじみ出る愛じゃない。スリザリンの、うちに込める、心の中で炎を燃やすような愛だ。
寮にもどり、ドラコをみつけてうしろから抱きつく。
談話室で人がたくさんいるけど、きにしない。ぎゅうぎゅうとしがみついた。
「ハリー、どうしたんだ」
「どうもしないよ。ルーピン先生のところにいってきた」
そうか。といって、僕の頭をぽんぽんする。いつまでも子供扱いしていてほしい。そのままドラコに甘えてしまおう。部屋に戻ろう。声をかけると、ドラコは「いや、ちょうどう用があってハリーを探していたんだ。これを」
といって差し出されたのは何十回とみた、生成り色の上品な手紙だった。
「アストリアから君に。開封して中身をみるまで見守っておいてくださいませ。といわれたので今すぐあけて中身をよめ」
受けとりたくない。
「どうした?代わりに開けてやろうか?」
「いい。大丈夫!なんのことかな。いまさらもしかしてボガートでアストリアにしちゃたこと怒られるのかな」
「まさか」
二人でケラケラ笑いながら、開ける。そこには、「今夜、必要の部屋で」と書かれていた。
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「あら、来てくださったのですね。最初からドラコ兄様にたのめばよかったですわ」
そういいながら、彼女はどこかのカフェのように美しい真っ白な机と椅子の前でお茶を注いでいた。真ん中にはいくつかのお菓子。そしてお茶菓子としてスコーンがすでに取り分けられている。「ハリー様はスコーンにはなにか付けますか?いくつかジャムももってきましたわ」といってバケットからジャムを取り出し机の上に並べた。
「ハリー様。募る話もありますし、どうぞ椅子に」そういって彼女は、もう一方の椅子に丁寧に柔らかく座る。一つ一つの動作にぼくは、僕とは違う女性らしさを感じていた。
今日のお茶も渋かった。ガラスの透明なポットの中は綺麗な花が咲いていて、見る人が見たらスネイプ先生の研究室にありそう。というかも知れない。アストリアは「これは中国の茉莉花茶というんですのよ。最初はまあるいのですがお湯を注ぐとこのように花が咲きますの」と教えてくれた。お砂糖は?と差し出されたので、素直に受け取っておいた。
「さて、ハリー様。先日、そして連日私から逃げていることの弁明をお願いしても?」
「あの日は驚いてしまっただけで、別に逃げてはいない」
「私の手紙を一度も読んでいらっしゃらないくせに?」
ぼくは言い返せない。
「それを逃げというんですの。あなたにとって私は牽制しておかなければならない存在でしょうに。それもせず、私から逃げて隠れて、なかったことにしようとするのは、それは男がすたるのではなくって?」
本当に言い返せない。
「『私』が現れて驚いてしまったことについては仕方ないでしょう。けれども、ドラコ兄様が好きだと豪語して、自分が幸せにするんだ。とおっしゃるのであれば、私を睨む暇があれば私をどうにかしてみてほしいものです
「そもそも、あなたはドラコ兄様を独り占めして、独占するだけでほかに何もしていないではないですか。お姉さまたちにも伺いましたけど、あなたの恋心にはドラコ兄様は全くきづいていないようですし。本当に彼を幸せにする気はあるんですか?自分が不幸せにならないようにするのに精一杯なのでは?」
そんなこと言われたって。
自分が不幸せにならないようにするのに精一杯って、ドラコの幸せを願ってるよ。どうして君はそんなことをいうの。ドラコが幸せに笑ってくれていればいいと思う。そして、その理由が、原因が僕であればいいと思っているだけだ。なのに。僕がドラコのことを考えず、自分のためだけに生きているって、そういいたいのか?
そうだとして、そうだとしても。それを君に言われる筋合いはない。なぜ、君にそんなことを言われないといけないんだ。ドラコに話すときに僕の許可がいらないのと同じように、ドラコを幸せにするのに、君の許可が必要なわけじゃない。あくまでも君は、前の彼の奥さんで、今の彼の奥さんじゃぁない。
「君に、それを言われる筋合いはない。」
「そうですか?私だからいうんですのよ」
決壊した。涙腺が。涙が溢れてくる。
アストリアはぎょっとして、ポケットから綺麗なハンカチを取り出す。
叫ばなかっただけでも褒めて欲しい。怒らなかっただけでも褒めて欲しい。
アストリアが「ごめんなさい。言いすぎました。」といって僕にハンカチを渡す。それを受け取る気にもなれず、ただただ涙をながしていたら、彼女が優しく、ハンカチを目元によせてくれた。
「ごめんなさい。ハリーポッター。そんなつもりは、なかったのです。どうしましょう。お姉さまたちに怒られちゃう。泣くほどだったなんて。いいんです。いんですよ。ハリー様。それが恋というものです。相手のために自分のために、冷静になれなくて、ましてや『私』がいて、そんなの不安になって当然ですわ。我儘なものなのです。」
ひたすらに慰めようとしてくれる、焦っているのがよくわかってしまって、申し訳ない気持ちになる。ごめん。アストリア。君だってドラコが好きなのに。僕が泣くから、君の恋の邪魔をする。僕が癇癪を起こすから、恋のライバルにもなれやしないで、君の想いを僕が邪魔してるよね。
「違うんです。ハリー様。違うんですのよ。私は確かにドラコを愛しておりましたけれども、ドラコ兄様に恋をするつもりは、ないんです。」
なんだって。
「むしろ私はあなたを応援したいと思っているんです。」
「アストリア。それは、どういうことだ?」
あぁ、落ち着いてくれた。とアストリアはホッとして、ハンカチを僕に渡して自分の椅子にもどる。
「言葉の通りの意味です。私は、ドラコ兄様に恋するつもりも恋愛するつもりもないのです。あなたが、ドラコのためにここにるとおっしゃったように、私がここにいるのもドラコのためですが、同時にあなたのためでもあります。」
「私は、輪廻転生をしてここに来たわけではない。といえば、あなたはこの意味がお分かりになるでしょう?」
そういってアストリアは、悲しみを残した表情で笑った。輪廻転生の結果の記憶持ちではない?ということは、
「僕と一緒か。」
「えぇ。」
静かな沈黙が流れる。
ポットの中の茉莉花は桃色の花を咲かせていた。
「もし、今目の前にボガートが現れたとしたら、絶対スコーピウスになる自信がある。」
先に沈黙を破ったのは僕だった。
「スコーピウスは、僕のことをやはり応援していないということか。違うな。信用していない?」
「いいえ、それは違うと思います。先に伝言を一つお伝えしますと『ハリー、僕との約束。パパを幸せにする。を破ってないよね?』と言っていましたから。」
「じゃぁなぜ君を」
「簡単に申し上げると、あの子にとってドラコが幸せになれば、誰でもいいということかと。あなたが失敗した時に私が記憶を持っていたら、私がドラコのことを幸せにすると考えたのではないかと思っています。」
「君はなんと言われたの」
「とりあえずは、『ハリーがパパを不幸せにしないか、見守って欲しいんだよね』といっていました。」
そう、そういうことか、スコーピウス。そりゃぁそうだよね。君なら、そうする。たくさんの「場合」を想定して保険をかけるよね。その保険がアストリアってところがまた、君の性格の悪いところだよ。自分では気づいていないんだろうけど。
けれども、アストリアの言った言葉を信じるのであれば、僕がドラコを幸せにする権利を一番に頂いている。と考えられる。それは、僕の後悔を一番に見ていたからだろうか。アルバスとスコーピウス。
「でも、だったらというのはおかしいけど、アストリアは僕に譲らなくても、君がドラコを幸せにするという手もあるよね。いや正直想像するだけで涙出るけど。君がドラコと恋愛するつもりがないといってくれて、めちゃくちゃ安心したからいま平静取り戻してるだけだけど、もっとこう安心するための確信になるものが欲しい。」
本当、心の弱い方ですねぇ。といってアストリアは続ける。
「あなたたち夫婦が愛し合っていたという真実の上で課題があったのと同じように、私たち夫婦にも愛し合っていたと自信がありながらも課題があったといっておきましょうか」
「曖昧だな」
「そうでしょうか?自分たちのことを省みて考えたら結構な、安心がえられる情報だと思いますけど」
まぁ、いいけど。もう考えるのが辛いし。アストリアがドラコと恋愛をしないという事実だけを信じて安心しよう。
「君はアルバスとも会話したの?」
「えぇ、『母さんいわく、父さんはかなりの恋愛ベタだそうだから、迷惑かけるかもしれないけどよろしくお願いします』と言われました。可愛い子ですね。彼に頼まれたのもありますし、可愛い息子の願いでもありますので、私はドラコの幸せ、ひいてはあなたとドラコがくっつくように全力でアシストしますわ」
そんなことなら、もっと早く教えてよ。
ぼくのこの一年間のイライラとドキドキと悲しみの情緒不安定を返してよ!と叫ぶと、「ご自身が逃げ続けたのでしょう。」と冷たく言われてしまった。
そうして、しばらく話をする。
彼女は、会話も上手で僕の不安やら悩みを全部聞いてアドバイスもしてくれた。パンジー達もありがたかったけど、あの子達はひやかしが入っているので、やはり全然違う。ドラコの、僕を見て悲しそうな顔をするんだ。という言葉にも「させておけばいいのですよ。その代わりあなたがドラコのそばで笑ってそれを拭えばいいだけです。」といってもらうなどをした。手のひらを返すような僕の態度が申し訳ないなと思ったけれど、それにも彼女は「いいえ。あなたが私の立場であってもそうしますし。恋愛というのはいつの時代もそうなのです。」と優しく笑ってくれる。とても心が広くて、やはり、嫉妬してしまうのは僕の心の小ささだ。そして、僕のアストリアに対する誤解が解けてからずっと考えていたことを彼女に頼む。
「それは、いいですけど。それで私はドラコが幸せになるとは思いませんが」
「けど、そうしないと傷つく。それは嫌だ。」
「まぁ、それもそうですわね。後悔。絶対するでしょうからそのときは慰めてあげます。」
「後悔する前提?」
「絶対します。というよりこの計画で一番ダメージをくらうのはあなたですよ。」
それについては否定しない。
けれども、ぼくはもう決めていた。
結局どっちに転んでもダメージ食らうのだ。
だったら、いま「良し」と思っている方で、予定を進めていきた。
「あ、忘れるところでした。彼らから伝言はたくさん頂いてるのですが、アルバスが忘れないで伝えておいてといったことを一つ。『最終決戦のあと、蘇りの石を禁じられた森にわざと放置するのやめて、あんなちっさい石を、愛するスコーピウスの鬼に頼まれて探す作業、何度か自殺を考えるレベルでした。』」