「今日は飛行訓練だね!」
今日一番のいい笑顔でハリーがいう。「そうだな。」ハリーは一年生でシーカーを務めた。とても上手で、なにせ百年ぶりの最年少シーカーだったんだ。奥方なんて、クィディッチ選手だった。そんなことを昨晩から思い出して、うなだれる。あのきっかけを作ったのは自分だった。ネビルロングボトムに多少のいじわるをして…多少?多少まぁ多少だろ。それを取り返すハリーの技にマクゴナガル先生は感動したのだから。
なににうなだれているのかって。別に黒歴史に悲しんでいるわけでも恥じているわけでもない。やってしまったことはしょうがないからだ。むしろやってしまえないことにショックを受けている。
僕はハリーに嫌われたくないし、ロングボトムの未来の勇敢さを知っている。だからというわけでもなくただ単に僕が成長しただけのはなしだが、あいつをいじめることは当然ありえない。となると、だ。ハリーがハリーの飛行術を見せつける場面がなくなるということを示している。
つまり、だ。ハリーがクィディッチの選手に選ばれる可能性がない。ということだ。
まぁ、それでもその技術を買われて来年にはシーカーの座に収まるんだろうが。…そうなると、どうなる?僕がシーカーになれないではないか!!という問題に直面する。あぁ…どうする。僕がシーカー目指して努力をするか。でもハリーのシーカー姿をこの世でも見たい。くそう。なぜ一年後のことで悩まなければならないのか……!
「あと、グリフィンドールも一緒だからロンとハーマイオニーも一緒だね~。あ、あとネビルも!」
「そうだな。ってネビル?ネビルって魔法薬学でやらかした?」
「やらかしたって言わないの。いい子なんだよ。この間。教科書をなくしたっていって一緒に探したんだよ。」
あははと笑いながら、本当に楽しそうに正面階段から校庭に移動する。
そうか、すでにそこはつながったのか「さすが、はやいな。」と歴史のあり方に感心する。寮が違っていても、そこに関係性は持ち込んでくる…か。
「いいやつなら僕にも紹介してくれ。」
「えー。ドラコはなぁ。いじめそうだからダメ。」
「いじめない。」
「えー。」
「いじめるならロンがいるから、足りてる。」
「ちょっとそれ!ロンがかわいそう!」
「愛ゆえだ。あいつはいじられて怒っているときがかわいい」
「え、キモイ」
うるさい。何が嬉しくて二人ともに気持ち悪がられなきゃいけないんだ。
飛行訓練は問題なく始まり、経過していた。
僕とハリーの箒はすぐさま飛び上がって手におさまった。隣のロンもだ。二人で顔を見合わせてニヤリと笑う。まぁ、僕たちは幼い頃から、家にある箒を拝借して遊んでいたからな。ついでにいうとロンが「学校にいくまでに自分にも得意なことが作りたい」と言っていたため練習していたというのもある。「勉強に予習はつきものだろ!」ともっともらいしことをいってモリーを説得していたな。まぁその成果が出た。ということか。ハーマイオニーの箒はすこし動いたがネビルの箒は全く動かなかった。
練習がおわり、自由時間。決められた範囲を自由に飛んでいいらしくふわふわとハリーとロンと三人で空中散歩。ロンがいなければ二人きりだったのにと少し睨んだら、逆に向こうから「お前の好きにさせてたまるか変態。」と睨み返された。「変態。」の部分には自信がある。癪だけど。
前回は自由時間なんてなかったよなと頭をよぎるが、それは自分のせいだった気がしたから考えるのをやめた。いやいや。あれはネビルの箒が暴走したせいで決して僕のせいではない。あぁ決してだ。
グリフィンドールとスリザリンが同じ授業なのは魔法薬学だけだからなのか、ハリーとロンはここぞとばかりにおしゃべりに花を咲かせていた。なんだか悔しい。今度からは頻繁にコミュニティルームで落ち合おうと決心した。このことを夜、ロンに伝えるとまた「君たち寮でも授業でも一緒なんだろ?いいじゃないか!独占欲強すぎこわい。おまわりさんよぶよ!」と言われたので少しだけ反省した。少しだけ。
さて、時間になるし、と三人で集合場所に戻ってきたときに事件は起きた。
ネビルが戻ってこれなくなった。箒の暴走だ。
何をしたんだあいつは。
一度暴走した箒を扱えるほどネビルは冷静ではなかった。というより、冷静に戻るということが今の彼には不可能なのだ。どんどんパニックになり、みんなが「落ち着いて」「大丈夫」だよと声をかければかけるほどネビルは焦る。いやいや、まじで大丈夫か。未来は勇敢な男なのに、愚図なのは愚図のままか。とつい舌打ちしそうになる自分を飲みこむ。いやぁ成長するってすごい。
マダムフーチはと思って周りを見回すが、どこにもいない。怪我をした生徒を医務室に連れて行っているらしい。ふざけるなよまじで。監督不行届だろうが。マグルの教員だったら一発で上司に上がるぞ。
どうしたものかと考えていると隣のハリーが僕のローブを引っ張ってきた。
「ドラコ。箒乗れるよね。」
「は?いや。まぁ乗れるがそれはハリーもだろう」
「基礎的な技術は聞いてない。きみ、箒に乗りこなせるよね。ロンに聞いた」
ハリーの隣のロンを見れば、大げさに目を逸らされた。
「ねぇネビルを助けて。」
「無理だ。さすがにあんなに暴れているのをどうこうできない。」
そしてなにより目立ちたくない。
「大丈夫だよドラコなら。もしかなにかあっても僕が責任もって先生に言うし。」
「そして僕は医務室に連れてってやる」と後ろからひょっこり乱入してくるロナウドウィーズリー。くそ。お前は黙っとけ。
「もたもたしてる暇はない!さぁ乗って!いってらしゃい!」
嫌だ嫌だとだだをこねる僕に、ハリーは容赦なかった。そのままお空の世界へリターンズ。くそう。こうなったらヤケだ。それにハリーに頼まれたのだから仕方ない。いい友人ポジション維持のためだ。行ってやる。
あばれるネビルの元へ急ぐ。彼はもうすでに限界だった。自分にとってもフルスピードで。練習用の箒の限界なんてしれているけれど、そんなことを気にしていられない。彼の箒と並走して「掴まれ」と叫ぶが、箒にしがみつくばかりでこちらに意識を向ける余裕が彼にはない。あばれる箒の攻撃を避けながら、ならばと懐から杖を取り出そうとしたらネビル箒が真っ二つに割れた。それはもうとてもきれいに。
いやいやいや落ちる落ちる!
ふざけるな!と咄嗟に浮遊呪文をかけていた。距離も長いし、お世辞にもネビルは軽いとはいえない。浮遊呪文の力を借りて自分の箒に載せる。最初からこうしていれば良かったと思いながら、ロングボトムの箒にも「ウィンガーディアムレヴィオーサ」と浮遊呪文をかけておいた。
と思った矢先の後ろから聞こえる。間抜けな声。
「おばあちゃんから思い出し玉が!」考えるよりも先に体が動いていた。僕も人が良くなったもんだ。後ろにロングボトムを乗せたまま急降下していたーーー。
戻ってきたマダムフーチからスリザリンは10点加点していただいた。それよりも、ご自身の教師としてのあるまじき行為について自省なさるべきなのではないだろうか。とつい睨んでしまう。無事だったからよかったものの、僕だって11歳だぞ。一応。10点どころの加点ではすまない案件なのでは!?
父上に報告しよう、そうしてしまおう。と大きなため息をついたら両隣から方を叩かれた。「ナイスガッツ」「さっすがドラコ~」まあ、いいか。別に。ほんとうに甘くなったものだ。
そのあとロングボトムが、僕に謝罪と感謝をのべに来た。隣にハーマイオニーがいたからそういうことなのだろう。別に僕には怪我はなかったし、「別に問題ない。ネビルに怪我がないならよかった」と伝えておいた。ちなみにファーストネームで呼んだのはわざとだ。ハリーの友達とはそれなりの友好関係を築いておきたい。
ふと、ネビルの持っていた箒に目が止まった。不自然な折れ方だった。まるでディフィンドを使った時のような。ネビルが太いから(失礼)とか劣化による破壊には見えなかった。まぁ、僕は闇払いでもないし、そっちには詳しいわけではないので自信はないけど。
あ、そういえばさっきの浮遊呪文。ネビルを助けるときとっさに無言呪文を使ってしまっていた。ばれたかもしれないと思いながら周りを伺うが特に気になる視線はなかった。だから、まぁ大丈夫か。と思って安心しきっていた。