第五話
イースター休暇も終わり、試験勉強を進めていた。
ハーマイオニーなんて「もう一か月前からやっておくべきだったわ」とぶつぶつ言っていたので、やはり秀才というのはそのレベルで学習を積み重ねているのだな。と感心した。
まぁ、自分自身は人生二回目なので、適切に復習をしておけば、簡単なものだった。それよりも、もうすこし上級なレベルを今のうちに勉強しておこうと思う。
ハリーは魔法史のテストが大変そうだった。「別に大丈夫!」とかいってるが、たぶんそうは簡単にいかないだろう。なんていったってこいつは、魔法史のほぼ全ての授業を仮眠の時間に当てているのだ。テスト前に泣きつかれる前に、少しづつでも復習をしてやる。ついでにロンのテスト勉強に付き合っていたら、ハーマイオニーにも色々質問されて知らず知らずに小さなサロンと化していた。
「さすが、ドラコ・マルフォイ~。サンキューな!」
「別に問題ないですけど、一年生に教えてもらって恥ずかしくないですか。フレッド先輩・ジョージ先輩」
「え?何が?別に、わかっているひとがわからない人に教えてるだけだし、俺たちは君ならわかるとおもって聞いたまでだ!無駄な時間は過ごしたくない!」
まったく、本当に豪快なお人たちだ。
二人のおかげで、ちょこちょこ先輩方にも声をかけられることになった。
これは、自分の勉強にもなるからいいな。一石二鳥。
集まっていた人々が寮に戻り、いつもの四人のメンバーになる。
ロンが「もうダメ。まだ先じゃんか。」と机につっぷしてうなだれていた。かわいそうに。(ほぼ自分のせいだけれども)四人分の紅茶とお茶請け(今日はチョコレートだ)を机に並べる。
「そういえば、ニコラス・フラメルについてわかったの。錬金術師だったのよ。」
「賢者の石の想像に成功した唯一の錬金術師だったんだ。だから、彼女はあそこに隠されているのは『賢者の石』ではないかって考えてる」
「それでね。ロンが見ちゃったらしいの」
「何を」
「スネイプ先生がクィレル先生を脅してるところ」
そういって、ひそひそと、ここ数日でわかった事実を整理していく。スネイプ先生?いや、彼らはあの黒幕はスネイプと見せかけたクィレルだといっていた。となると、おもしろいぐらいに今回もスネイプ先生が黒幕であると世界が「ミスリード」しているということか。
「それは誤解だ」と言ってしまいたかった。けれども、僕がいったとこで「寮監」だから、とかなんとかで、僕の発言が危ぶまれるかもしれない。結局最後には「真実」がわかるのだ、今誤解してしまっていることは、未来に対して、そんなに大きな問題ではないか。と静観することに決める。
「あ、そういえばハリー。土曜零時な。」
「了解」
ん?
「土曜零時って、何かあるのか?」
「何もないよ。ただ、夜の散歩。透明マント使ってときどき散歩してるんだよね」
「は…君たちはそんなことを、ほどほどにしとけよ」
『はーい』
それからは、平穏に過ぎていった。
本当に忘れていたんだ。ロンが怪我をしていて、どんどん腫れていくのをみて「どうしたんだ」ときいても何も答えないし、答えたくないなら無理矢理聞いても意味がないとおもって黙って薬を渡しておいた。(手作り)「ありがとうドラコ」って言っていたしハーマイオニーも告げ口をするような様子もなかったから、本気で思い出さなかった。怪我が大事にいたらなくてよかったと安心していたぐらいだ。
そうしたら、このざまだ。
「どういうことだ。グリフィンドール150点?スリザリンも…?」
なにがなんだかわからない、「説明を求める」と彼らをみると、三人とも罰が悪そうに顔を背けただけだった。そうか、あのドラゴンか!
しどろもどろになりながら三人は僕に何があったかの一切を説明した。
きっとその間の僕の表情や態度は不遜極まりなかっただろう。説明している彼らがどんどん萎縮していくのがわかった。
「除け者か」出た言葉はそれだった。「無事で良かった」とか「退学にならなくてすんでよかったじゃないか」とかそういう優しい言葉は、僕の口から発せられることはなかった。ドラゴンのことも、それを外に出すことも全ての計画が僕には知らされていなかった。悔しい。寮は違えど、四人で仲良く出来ていたと思っていたのは自分だけだったのだ。恥ずかい。勘違いしたなドラコ・マルフォイ。
つつつー。
と、涙が頬に伝っていくのがわかった。すぐに拭おうとするが、それはすでに三人に見られていた。
「そんなつもりはなかった!」
「じゃぁどういうつもりだったんだ!」
あぁ、ロンに怒鳴ってしまった。嫌われる。
「言い訳でいいから話をさせて頂戴!」
「十分にわかっている」
ハーマイオニー。
「とりあえず落ち着こうよ。ドラコ」
するり、手を握ろうとするハリーの手をはじく。
「勝手にしろ。どうせ僕は邪魔者だろう。ハリーと僕は違う。どうせ生粋のスリザリンだ。仲間に入れたくないだろうよ。僕にしれたら、『父上』に話が行くかもしれないもんな。あぁ、ああおりこうなことだ。今回のことで、君たちが僕のことをどう思っているのか十分にしれたさ」
そして席をたつ、握られた腕を払い除け「触るな」と僕は一人でその部屋を後にした。
やってしまったとは思った。中身大人の自分があんな11才の子供みたいなことをしてしまった。けれど、あんなにわかりやすく古傷をえぐられて平気でいられるわけもなかったんだ。友達だと思っていたのは自分だけ。仲間だと思っていたのは自分だけ。
辛いし恥ずかしいし、なんなら死んでしまいたい。
友人たちに嫌われたかもしれない。ハリーにも。その夜戻ってきたハリーは僕に声を掛けることもなく静かに眠りについた。僕もハリーに声をかけなかったし、朝も一人で身支度して寮をでた。
それから数日間彼らに対するバッシングは続いた。
僕は、そんな様子を外から眺めているだけだった。
あれからもうずっと彼らとは話をしていない。
結局、この形か。と思うと悔しかった。
なんのための二度目の人生なんだ。このままじゃ、同じことになるだけだ。
頭ではそう分かっていても、何もできなかった。「仲直り」なんてしたことがないんだ。
「ねぇ。ドラコ」
先に声をかけてきたのはハリーだった。
部屋に戻って本を読んでいる時に声をかけてきたのだ。
なんて返したらいいかわからず、目線だけ彼におくる。
「僕たちは、君にも声をかけようっていったんだ。だけど、ロンか『あいつには知らせないでおこう』って」
「それは、自分は気にしてたけど、ロンのせいでという非難か?最悪だな。」
しょうもない。と本に目を戻す。
もう、自分の中でも「子供みたいなことをした。仲直りしたい」と思っているのに口をついて出てくるのは、ひどく否定的な言葉だ。
「そうじゃない!そうじゃなくて。なんでロンがそんなことをいったのか。君は知っておくべきだと思うんだ。ロンは、『これ以上ドラコの立場を危うくしたくない。』って」
「『それでなくても僕たちと一緒にいて色々言われているのに、もし何か起きて、それこそノーバートにことで問題が起きて、あいつに何かあったらお父様がなんとおっしゃるか。ドラコ優しいからわかりにくいけど、本当に貴族なんだよ。アッパークラスの人間なんだ。ルシウスさんもナルシッサさんも、子供のしていることの範疇ならわりと柔らかいけど、沽券に関わるレベルになると…そうもいってられないだろ』って」
「それを、あいつが言ったのか。」
「うん」
「そんな心配求めてない。僕は僕だ。僕のことは自分で決める。あいつはそういうところがある。純血だの、スリザリンだのグリフィンドールだの貴族だの。そういうカテゴライズをされて、一人除け者にされて、僕か喜ぶとでも思ったのか。」
「うん。思ったんだよ。思ったんだ。でも、それは間違いだったってロンも気づいてる。」
ロンもきづいてる。間違いは、誰しもある。自分だって、経験があるじゃないか。
「ごめんなさい。ドラコ。僕は君がそんなふうにショックを受けるなんておもってなかったんだ。浅はかだよね僕。」
ゆっくりと近づいてきて、僕の持っていた本をとりあげる。
はー、とため息をついて彼にとう。
「お前と僕は、友達か?」
「なにを言ってるの。友達じゃなかった時があるの?ロンと君も、ハーマイオニーと君も友達だよ」
目の前の手を握る「心配して伸ばしてくれたこの手を払い除けてごめん」と、やっと素直に謝ることができた。
「ねぇドラコ。僕、君と離れている期間に、ロンとハーマイオニーに理由を聞いたんだ。覚えてる?決闘するっていってトロフィー室いったやつ。」
徐にハリーは投げかけてくる。今回のことと関係はないだろうと、眉をひそめるとハリーは嬉しそうに笑った。
「あれはね。君の悪口を言われて腹が立ったんだって。君がグリフィンドール生の彼らと一緒にいるのをみてよく思わなかった先輩の仕業だよ」
「はっ馬鹿か。それこそ僕に告げ口すればいいのに、マルフォイの僕に害をなそうなんて、それこそお父上に訴えてやる。」
「ははは。わかってやってよ。照れくさいんだよ」
そのあとは、ケンカ中離れていた期間のそれぞれの近況を話した。といっても、僕は基本一人で行動していたし、面白いことはない。ときどきパンジーやミリセントに「何かあったの?」と心配されたことや、終いにはそこにダフネも追加した女子会ティーパーティーに無理矢理引っ張って行かれたことぐらいか。
「罰則は今日か?」
「そうだよ。まぁ大丈夫でしょ」
「お前は、罰則なのに反省の色がないな。減点されても堂々としているように見えたな」
「まぁやっちゃったもんは仕方ないしね」
「それもそうだ」
そういって、僕は彼に「透明マント」を貸してくれないか。と、真剣は表情でお願いをしたのだった。