以前ハーメルンで投稿していたものです
この作品が皆さまの暇つぶしになれば幸いです
それでは始まります
ある夜。
学校からの帰り道、いつもの変わらぬ日常、変わるはずのない毎日、将来の不安を持ちつつも今を楽しんでいる高校生、菊沢東真は突如輝きだした赤い月の下、人の心に潜む【悪心】と呼ばれる怪物に襲われる事になる。
命の危機に際して、彼は人知れず闇を切り裂く刃のビジョンを見る。
刀。鈍色の刃。黒い鞘。そして人を守る心。
誰が呼んだか、もしくは誰も呼ばないが、侍として彼は赤い月を相手に戦う事となる。
「不条理な悪を理不尽な斬撃で斬り抜ける新たなる物語、ここに開幕!!」
「居た…」
赤い月に照らされたアスファルトの一本道、その電柱のてっぺんに細身ででもいわゆる美人で、綺麗なショートヘアの少女、菊沢真希はそのてっぺんにて白銀の弓を携え、真下の道に佇むとある人を視界に入れる。
いや、それは人ではなく、かつて人であったモノだ。
それは人の心からの負のイメージや感情が溢れて気持ちが絶望している人が、破壊、殺人などの衝動に駆られて、どうしようも無くなった時に、今夜のような赤い月に魅入られると人の形を捨てて怪物に成り果て、【悪心】と呼ばれる。
怪物になれば暴れだして被害が出る前に、討伐しなくてはならない。
だから彼女はここに一人立っていた。
その怪物になってしまった人を本当の意味で救う為に。
「これは私の使命。だから戦うわ」
静かにつぶやくその言葉は冷たく吹いた風にかき消される。
「さぁ、行くわよ、【悪心】!」
一息に飛び降りると怪物の赤い目と真希の瞳が合い、死闘が始まった
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時は遡って午前。
「行ってきま~す」
と、気の抜けたような挨拶を家族に言うと扉を抜けて、ドアにかかった小さな看板をクローズからオープンにひっくり返して、喫茶・キクザワは開店する。それと同時に、菊沢東真はあくびをしながら、自分のかよう高校へと歩き出す。
「おいーっす」
バス停に向かう途中で後ろから同級生が声をかけてくれる。
「相変わらず朝はキツそうな顔してんな」
「うるせぇよりゅう。俺はいつでも眠いんだよ」
へらへらしているこの同級生は座間竜一。(ざまりゅういち)
中学のころからの友達で、家も近いし、話す事はゲームや彼女にするならこんな人と、ネタは尽きないため、二人が友達になるのは必然だった。
高校生になってからが竜一は髪も金髪に染めて華麗なデビューも果たしている。
「なぁなぁ、今日お前んとこの喫茶店行っていーか??おじさんいる?」
バス停の列に並び、竜一が話しかける。
「ああ、居るけど、お前の目当ては真希だろ?」
「さすが!真希ちゃんかわいいよな~」
竜一が鼻の下を伸ばしている横で、東真は「そうか?」と、小首を傾げる。
真希。学校ではそこそこ名の知れた弓道部の次期部長と噂されている東真の従妹で、彼女の両親が事故で亡くなってからは、実家の喫茶店で一緒に暮らしている。
「もはやあいつとはキョーダイみたいなモンだからな。可愛いとかそういうのはあんまりないな」
「じゃ~おれがもらってもいいなぁ??」
金髪を手櫛でオールバックにしてキメ顔で言うと、無駄に低い声で東真にアホと言われて二人でケタケタ笑う。
でも。
昔からそうだが、真希は夜中に家を抜け出し、どこかに出かけているようだ。
そういう年頃の時期だから、夜遊びもしたいのだろうが、家族はみんなそれに気づいていないようだった。
父親は何か知っているようだが別に問い詰める気にもならないし、このままいつも通りで良いのだが、でも自分の家族が「おーい、とうま!バス来てるぞ!早く乗れよ」
変に考えにふけっていると、後ろから軽く押される。
「あ、ああ悪い」
「ったく、いくら眠いからってだらだらするなよな。ほら、行こうぜ」
二人が通う高校は紅月(こうげつ)学園高等部という学校で、中学高校が一つになった巨大な学問施設で、二人はこの学園に高校から入学している。
「お、今日は空いてるぜ。人車では座ってようぜ」
こんなささいな事が幸運と、胸を躍らせて喜ぶ竜一。
「今日も変わらない日常を過ごすか」
バスに差し込む日差しを顔に浴びながら、東真は変わることのない日常の一部分に軽い溜息をつく。
「おいおい、変わらない日常じゃなくて、楽しい日常!だろ?」
竜一はとことん場を明るくしていくのが上手いやつだ。こういう人が世の中を上手に歩いていくんだろうな。
憂鬱な授業へ緩やかに向かうのがたまらなく嫌で少し、ほんの少しだけ現実逃避も兼ねて、居眠りすることにする。
「ついたら起こしてくれ」
「おう、ばっちり終点で目覚める呪いかけとくわ」
「やっぱ起きてよう」
二人を乗せてバスは学園へと向かう
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「理事長、失礼します」
凛とした声音で学園の清潔感ある部屋に、真希は丁寧に入室する。
「やあ、菊沢君。時間にぴったりだね」
丁寧な真希に逆に丁寧に応対するのは先ほども呼ばれた理事長・築根(つきね)だ。
ライトベージュのジャケットに毎日かかさず綺麗に拭いてる丸メガネが似合うナイスガイ、といった風体の清潔感ある人だ。
「呼び出されたからにはもう御察しだろうけど…」
「また、【悪心】が出るんですね?」
理事長に促されて、座り心地の良い来客用のソファに腰かけ姿勢の良く返事をする。
「そうなんんだよ。本当は荒巻君にお願いしたいんだけど、ほら、ケガしてるだろう」
「はい」
「だから連続で申し訳ないが、今夜も頼むよ。本当、部活に勉強に恋愛に大変だろうけど…」
「いいえ、解っていますから。私に任せてください。あと恋愛はしてません」
「そうなのかい?君ぐらいならいくらでも、ってこれはセクハラ発言になっちゃうね。失言だったね、申し訳ない」
心底申し訳なさそうな表情をする理事長を前に真希は気丈にふるまう。
「たしか、ご実家は喫茶店だったよね。僕もコーヒーは好きだからね、今度よらせてもらうよ。ご両親にも挨拶したいからね」
「はい、父にも伝えておきます。きっと喜んでくれます」
最後に失礼します、と添えて真希は理事長室をあとにする。
「ふーむ…僕も戦えればなぁ」
溜息をつきながら学園を見渡せる窓に向かう。
「本当に、申し訳ないよ」
自分が学生に強いている事、そして状況をとても悔しんでいる。
今夜、また【悪心】が出る。それに真希が敗北すればきっと、本当の意味での絶望が訪れるだろう。
そんな状況なのにも関わらず最後の希望と称して死地に生徒を向かわせているなんて、このような状況が本当に悔しかった。
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放課後の教室で竜一とだべっていると、教室のドアがスッと開き、東真はそのドアのほうに視線を向ける。
「おほっ!!これは真希さんじゃないですか!!」
竜一が飛びつきそうな体制で、教室に入ってきた真希に話しかける。
「うん、座間君、相変わらずだね」
「どうしたんだ?真希」
珍しそうに問いてみると、少しだけキツイ表情で真希は二人纏めて言う。
「今日は寄り道してもいいけど、夜までには帰って」
何か焦っているのか、それとも怖いのか分からないが、そう言われるとちょっとだけ反発したくなる。
けれど、何か言い返せるような雰囲気ではなく、竜一も東真もただ頷くしかなかった。
「本当はまっすぐ帰ってほしいけど、けど遊びたいもんね」
少し肩をすくめて鼻で笑う。
「真希さんも遊びにいこうぜ!!」
相変わらずの竜一の対応がその場にいた二人を笑わせる。
「うん、また今度遊びに行きたいな。座間君もトーマもね」
はにかんだような表情が余計に竜一のハートをつかんだのか、なんだかうれしい気持ちになった。
「でも早く帰れるにこしたことはないから本当、夜は出歩かないように早く帰ってね」
「ああ、わかったよ。でも、真希、お前は今日は早く帰らないのか?」
「ぶ、部活が終わったらソッコーで帰るヨ?」
「なんで疑問形なんだよ」
「ん、なんででしょうネ?」
なんだか隠し事してるみたな仕草がまたもやハートを掴んだのか、竜一がいよいよ我慢できない感じなっているので危険を予測したのか、真希は用事を思い出したかのような言い訳をして教室を出る。
「なぁ、おれもしかしたらちゃん真希好きかも」
「はぁ??」
本人がいないところで、竜一は真希のことを軽く呼ぶ。
「いうとおりにしようぜ!!な!」
「お、おう」
「さ!そうと決まれば、喫茶店に行くのは中止だ!」
「お、お、おう」
「予定を変更しておれの家でスマ〇ラやろうぜ!!」
「いや帰らせんのかい!!」
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結局あのまま真希の言いつけを守らず、竜一の家に遊びに行き、家を出たのは20時を回るころでもうすぐ夏になるのに少し季節は外れの冷たい風が吹いていた。
「なんか、寒いな」
いつもと変わらぬ日常、いつもと変わらないただ楽しく生きてるだけの毎日。
家庭環境は少々特殊だがありふれた生活だろう。
昔は憧れた非日常だが、そんなことあるはずもなく、東真はバス停まで歩く。
しかし、寒いので温まるように、距離は少しあるが、歩いて帰ることにした。
5分か15分かの違いしかない距離だし、車は通れない近道もあるので正確にはもう少し早く帰宅できるだろう。
「しかし、なんかいやだな」
この冷たい風もそうだが、なにより薄気味悪いのが
夜空に異様な存在感を示している、赤い月だ。
「ユーレイじゃ、あるまいし、さっさとぱっぱと帰ろう」
でも、なんだか幽霊より怖い気がした。
ふと、住宅街を歩いているとど真ん中に、人影を見る。
その人影は見た感じでは、人だ。
だが…
「ひっ」
両腕は明らかに人より長く、間接は三つぐらいはあるだろうか。ひざは骨が突き出ており、肌の色はもはや人の色とは思えないような気色悪い色をしていた。背中や、肩には矢と思わしきものが刺さっている。
「ゴるるるr」
「なっ…、はっ…」
目が合い、体が動かなくなる。
気が付いたら、その人?らしき者が目の前まで近づいており、腕を振り上げて想像した事が想像以上の威力でアスファルトに拳が叩きつけられる。
「はっ、なん…!!」
驚きで言葉がでない。
今のは威嚇射撃と言わんばかりに力を見せつける。
(なんだ、この、怪物は!!!)
初めて見るそれに、東真はビビッて動けなかった体がようやく動く。
「うわああああああ!!!」
近所迷惑も関係なく、走って叫んで逃げる。けれど逃げ出した瞬間だった。背中にハンマーで殴られたかのような重たい一撃が決まり東真は固い地面に倒れこむ。
この世は不条理とはよく言ったものだ。
(くそっ、息ができない!痛い!し、死ぬのは嫌だ…!!!)
化け物はノシっと背中に足をのせて踏みつぶそうとしていた。
「ぐっ、かはっ…!や、やめ」
死ぬのか。意味もわからず、訳も分からず。
「トーマ!!」
突如焦りに満ちた声が矢と共に放たれる。
矢は化け物に命中して、悲鳴をあげてい路地道へと逃げていく。
「トーマ!!どうしてここにいるの」
声の主は兄妹みたいな家族の真希だった。
「なっ、マキ?なんっで」
痛みに顔を引きつらせながらも東真はこの状況を必死に理解しようとするも、やはり追いつかない。
「ごめん、説明してる暇はないの。しばらくここにいて、決着つけてくるから」
言うと髪を翻して、走りだそうとするが、不意に横から伸びた拳を避けようとするが…
(こいつっ!!不意打ちを…!)
容易にアスファルトを砕くような威力を秘めた拳が真希の華奢な体に命中する。
「がはっ」
「なっ、マキ!!どうして避けなかったんだよ!」
よろよろと膝立ちになり、壁に叩きつけられた真希に問いかける。
「だって、避けたら…トーマに当たるから。ぐっ、なかなかやるわね。痛かったわよ」
強気な姿勢を崩さないが、体が動かない。
「おい、化け物!!やめろ!俺の家族に手を出すんじゃねぇ!!」
「!ダメ!!」
腰の入ってないパンチを繰り出すも化け物にはまるで効果がない。
邪魔だと言わんばかりに化け物は東真を殴り飛ばす。
「とーま!!!!」
だんだん意識が薄れていきそうな感覚に襲われて、東真は「死」という不条理を痛感する。
「くそっ…」
『聞こえるか』
突然頭に言葉が響く。
『貴様が心の奥底で望んでいた変わらない日常を変えるチャンスだぞ』
呼吸をととのえながら東真はこの理解できない状況に必死になじもうとする。そしてそのまま壁を背にゆっくり立ち上がる。
『さぁ、不条理に抗え。わが名を叫べ』
心が叫ぶ。ここで死んではならないと。そしてここで死んでしまえば変わらない日常は終わってしまう。
「来てくれ…」
「それ」の名前は脳内に出てきた。
『呼べ!引き抜け!我が理不尽の刃を!!』
「サムライ・アームズ!!!」
胸からまばゆい光を解き放ち、手を当てる。
中から引き抜くように、東真は刃を出現させた。
「そんな、覚醒したの?このタイミングで!?」
驚愕の視線を向ける真希を余所に、東真はその刃を構える。
さぁ、決めるぜ!!
赤い月の下、あらたな覚醒者が現れた瞬間だった。
つづく
はい、走り書きみたいな物語です
置いてけぼりにならないように頑張りたいです。
二話も少し話をさかのぼるような話なのでバトルが始まる直前で一話が終わるような構成にしております。
どうか暇つぶしになれば幸いです。それではまた次回で!