ヤンデレネタ箱   作:かにすけ

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バカと一途と優等生(木下優子)

 

 

「結婚してください!!!!!」

 

 

今日も彼女がドアを開けた瞬間に手を出す。

ニコッと笑った彼女はそのまま手を掴む……と、見せかけて容赦なく右腕を取り俺の後頭部側に回したと思ったら何が起きたか分からないうちに頸動脈が閉められて呼吸が、困難に。

 

 

「ギブギブギブギブ!!!」

 

「あれ、もう?」

 

「っ、はぁっ、げほっ」

 

 

今俺に技をかけてきた少女は木下優子。

マネークリップという体に密着する関節技のおかげで後頭部に微かなやわらかさといい匂いを堪能できたが、数秒後には呼吸も出来ずすぐさまギブアップしてしまった。

ここ、文月学園では学力によってクラスが振り分けられるのだが、トップである2年Aクラスに入るほどの学力であり、性格は少し高圧的だがその中でも優しさや可愛さが垣間見える美人で、趣味はちょっとおっかないが魅力的な少女である。(俺調べ)

 

 

「大丈夫?翡翠くんも懲りないね」

 

「あ、あぁ。すまん工藤。」

 

「優子のあれは照れ隠しだから、もっと押した方がいいよ!!」

 

「ありがとう」

 

「愛子??あんたが焚き付けてるの??」

 

「やばっ」

 

 

今、俺のことを心配してくれたのは同じクラスの工藤愛子。

ボーイッシュな女の子でありながら、保健体育の実技が得意だと言い男をからかうのが好きな点に関しては趣味が悪いがそれ以外はとても常識的で温厚な良い奴だ。

俺が木下の事を好きだと言うことを話したら色々相談に乗ってくれたりもしている。

ちなみに今日の登校した瞬間に大声でクラス中にも聞かせながら告白をするというのも彼女の発案である。恥ずかしいので数回断ったが押し切られて告白したのだが木下も案の定真っ赤になって怒ってる。

 

懲りないとか今日もとか、そういった言葉を使ったことで薄々勘づいているかもしれないが2年生に進学してから数日が経った今現在このクラスではこの光景が当たり前となっている。

というのも1年生の頃はあまり頭が良くなかった俺は馬鹿な友人たちとつるんでいる事が多かったのだが、その時に見かけた彼女に一目惚れした。

 

とても似ている彼女の弟とは仲が良かったし、奴から姉貴がいると話を聞いたことはあったが実際出会ったら顔が似ている弟とは全く別の魅力を感じてしまいすっかり魅了されてしまった。

それ以来どうにかお近付きになりたいと弟から情報をねだり、教師に頼んで勉強を頑張り、何とかビリっケツではありながらもAクラスへと入ることが出来た。

ただ同じクラスになれただけで行動しないのは勿体ないため、工藤に相談しつつ何とかお近付きになりたいとあのような行動を繰り返しているのだ。

 

ある日は校舎裏、ある日は屋上、ある日は真っ赤なバラを持って、そのまたある日は、、、と言った感じで毎日別の方法で告白をしてる。

話すことは出来るようになってきたがイマイチ男としては意識してもらえていない気がする。

 

そんな2人は追いかけっこを始めてしまったので今日アプローチするのはもう無理だなと思い肩を落としながら、席に座る。

 

 

「城峯」

 

「おっ、代表、おはよー」

 

「ん、今日も頑張るね」

 

「いやー、やっぱり押せ押せじゃないとね」

 

 

俺の席の隣は霧島翔子。

代表と呼んでいるのは彼女がAクラスの中で首席、つまり1番頭がいいためこのクラスの代表としてまとめ役として色々とやってくれてるのだ。

このクラスでビリだった俺の横に彼女がいるので分からないことをすぐに聞けるのでとても有難いし、少しでも学力の均等性を図るため教師の考えがあるのだろう。

 

 

「気持ちは分かる、多分優子も喜んでる」

 

「んー、そうだといいんだけどね。俺はちょっと実感無いかも」

 

「私も雄二にされたら嬉しいから、優子も」

 

 

雄二というのは俺の友人の坂本雄二。

1年生の頃に馬鹿やっていた頃の悪友であり、彼女の想い人である。

このクラスに来た時は代表と雄二が知り合いだということに驚いたものの、幼馴染だということを聞いて納得した。

話してるとなんというか愛が重い瞬間はあるものの、基本的に代表の恋を応援している&雄二の不幸を望む気持ちもあるので焚き付けてる。

その点では工藤も俺も同じ穴のムジナだろう。

 

 

「代表はちょっと例外な気もするけど」

 

「いや、目は同じ」

 

「そう?分かんないなー、俺には」

 

「ほら」

 

「?」

 

 

好きな人にされたらそりゃあ嬉しいだろう、とは思うが俺はまだそれ以前だからなーと少しらしくないことを考えつつ指を指す代表に少し何をしているのだろうと思ってしまう。

何かと思い目を向けるが、木下が机で次の授業の準備をしているようだった。

代表と目が同じとは言うが俺の席からは顔も見えずなのでよく分からない。

分かんねー、と思いながら代表に視線を戻すと少し苦笑いしていた。

彼女が苦笑いするって相当だぞ。でも分からんもんは分からん。

 

 

「城峯も苦労しそう」

 

「確かに苦労してるかも」

 

「そうじゃないけど、そろそろ授業」

 

「おっけー、ありがと代表」

 

「私も今度相談したい」

 

「もちろん」

 

 

そうしてそそくさと授業の準備を始めると先生も入ってきた。

今日も代表に迷惑かけつつ頑張ろう。

 

 

 

 

 

「ごめんなさい、FクラスとDクラスにて試験召喚戦争が始まったようですのでここからは自習でお願いします」

 

 

先生にいきなり電話がかかってきたと思ったら、そう言って教室を後にした。

試験召喚戦争は文月学園特有のクラス対抗戦のようなものであり、まぁ端的に言うと試験の点数を武器にして戦うものである。

実際にやった訳ではないので細かいことは知らないがこの学園では先生の許可の元、召喚獣という自分のデフォルメされたミニキャラみたいなのを操ることができ、それを用いて戦うらしい。

 

 

「代表」

 

「どうしたの?」

 

「ちょっと見てきていい?」

 

「ダメ」

 

「えー、雄二の写真撮ってきてあげる」

 

「試験召喚戦争のスパイをお願い」

 

「あいあいさー」

 

「あれ、代表。城峯は?」

 

「おしごと」

 

「ふーん」

 

 

許可も取れたので窓から抜け出して、Fクラスへ向かう。

後ろで愛しの声が聞こえた気もするが、気の所為だろう。

去年さんざん走り回った学校なので何処に何年何組があるかなぞ把握済みである。

窓の外にある足場を伝って何とかFクラスへたどり着いたので、木下優子そっくりな男に後ろから近づき声をかける。

 

 

「秀吉ー、おひさ」

 

「おぉ!翡翠か」

 

「召喚戦争始めたって聞いてな、早くないか?」

 

「あぁ、実はな」

 

「おい秀吉、何話してんだ。ってなんだ翡翠か」

 

「雄二もFクラスか、お前ならCクラスまでなら行けたんじゃないのか?」

 

「やりたいことがあってな、翡翠こそどうしてここに?Fクラスじゃあ無いよな?」

 

「あぁ、Aクラスだよ。お前の事だから調べてんだろ?」

 

「勿論。嘘つくかと思ったがあっさり言うんだな」

 

 

彼がさっきの代表との会話でもでてきた坂本雄二。

そして木下優子に似ている彼は弟である木下秀吉、ゆくゆく俺の義弟になる男でもある。

秀吉は中学の頃から付き合いもあり、出会いは忘れたが俺とは親友と言って差し支えない。

 

雄二に関しては知略家、まぁずる賢いの方が合ってるかな。こいつはそういう男なので勝てない勝負はしない男だ。

試験召喚戦争をおっぱじめるくらいだから他クラスに関して入念に下調べくらいしててもおかしくない。俺のクラスくらい知ってるだろう。

秀吉?ただの馬鹿。まぁ部活馬鹿だから成績悪いだけではあるんだが。おれも去年まではこいつくらいの点数しか取れてないのでおあいこだ。

 

 

「そんなんで嘘ついてどうすんだよ」

 

「わしも姉上から聞いとったしな」

 

「そうなん?因みにどんな話してるとか、、、??」

 

「残念ながら口止めされておってな、まぁ悪くは無い?か?」

 

「なんでそんな疑問形なんだよ」

 

「仮にもお前俺たちの敵なんだから帰った帰った」

 

 

雄二に冷たくあしらわれる。

悲しい。

 

 

「そんな冷たくされると秀吉と雄二がハグしてる写真を代表に渡しちゃうよ、、、」

 

「おい!なんでお前そんなん持ってんだよ!!」

 

「そんで?なんでいきなり戦争おっぱじめたのよ」

 

「無視か!?まぁどうせムッツリーニだろうが!」

 

「いや、これは普通にこないだ遊んでた時にテンション上がってたから撮っといた。なにかに使えっかなと」

 

「まさに打って付けのタイミングってことか」

 

 

ため息をつく雄二を尻目に秀吉に状況を聞いた。

姫路がFクラスにおり、彼女のために施設グレードをアップしたいというのが大まかな目的らしい。

それを提案した奴は馬車馬のように働いてるようで本陣にいるのは大将である雄二と護衛の秀吉、そして古典の竹原先生のみだ。

秀吉の古典は点数がいいためすぐにフィールドを展開できるようにだろう。

 

 

「ふーん、なんか違う考えもありそうだけど」

 

「まぁ否定しないが、それだけ喋ればもう良いだろ?」

 

「あぁ、とりあえず代表に報告しとくよ」

 

「帰れ帰れ、塩巻いとくわ」

 

「あっ、写真だけいい?」

 

「あ?」

 

「代表に撮っとくって言っちゃって、無理ならこれ渡すけど」

 

「とびきりの笑顔で写ってやるよ」

 

 

青筋が立ってはいるが写真も取れたのでお暇。

才女と名高い姫路瑞稀がいるってのは意外だったが、今日の戦争で出回る情報だから俺にもバラしたんだろう。

秀吉が知ってる情報なんて多分今日話された内容と以前までに出てきた内容のみ、つまり今日中に出回る情報だけだろうしな。

じゃあねーと挨拶を済ませつつ、同じルートで戻る。

窓からひょっこり顔を出して中の様子を伺うが何だか静かそうだ。

先生もいなそうなのであんしんして教室に入っていく。

 

 

「代表ー、戻りまし。あれ?」

 

「お疲れ様。なんで固まってるの?」

 

「いや、なんかみんな居ないから」

 

「もうお昼よ。そりゃあ居ないでしょ」

 

「あぁ、木下はなんでまだいるの?」

 

「誰もいなかったら寂しいでしょ?」

 

「優しいねー、じゃあ一緒にお弁当食べようよ」

 

「待たせたんだからジュースくらい奢ってよね」

 

「そりゃあ勿論、ジュースでもデートでも」

 

「デートはあんたがしたいだけでしょ」

 

 

少し初見だと気の強いところとかが目に付くが、彼女のこういう所が1番好きだなと改めて感じながら教室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

その後、FクラスはDクラスに勝利した後Bクラスにも勝利した。

Bクラスというと俺たちAクラスより、一つだけランクが低いクラス。

だが勝者特権でなんでも命令できる割に、Bクラスの設備を奪うことがなかったことからAクラスにも勝負を挑む気なのだろう。

AクラスもCクラスとの戦争を難なくこなしたこともあり、Fクラスが策を弄したとしても対して痛手ではない気がする。

全てがこの一週間以内に起こってるのだから流石だろう。

 

 

「俺達Fクラスは、Aクラスに代表同士の一騎打ちを申し込みたい」

 

「一騎打ち?」

 

 

そう言いに来たのは雄二と吉井明久。

明久というのは俺の悪友の1人であるバカの中のバカでありテストでもコロコロ鉛筆で点数を取るような男なので、交渉の場には相応しくない気がする。

俺はまぁ交渉役という柄でもないのでクラスの中で話を聞いてるだけのつもりだったのだが話し合いの場に立つ予定だった木下優子に耳を引っ張られ同席している。

それにしても代表同士の一騎打ち。

 

 

「一騎打ちでもいいが、うちの代表に勝つ算段があるってことか?」

 

「まぁな、そうじゃなきゃ挑まんだろ」

 

「そう言われてホイホイと受けられないわね。面倒な戦争をすぐに終わらせられるっていうのは魅力的だけどね」

 

「Cクラスとの戦争もあっただろうしな、そしてこのままだとBクラスとも立て続けにやり合うことになる」

 

「Bクラスって昨日の………」

 

 

昨日Bクラスの代表である根本という男がAクラスに来たのだ。

あろうことか、フリフリのゴスロリ姿で女装してである。

Aクラスの大半からは悲鳴が、少数からは爆笑の声が上がっていたがあれを思い出すと流石の木下も苦い顔になるだろう。

俺?俺はもちろん爆笑してカメラに収めたね。ムッツリーニが完璧な画像は持ってるだろうが、個人的に持ってればいつか脅迫に使える。

 

 

「Bクラスとは一応和平で解決なんだ。だから直ぐにAクラスへ戦争を仕掛けることは可能だしな」

 

「おーっ、あったまいいねぇ」

 

「おい、ちゃちゃ入れるだけならどいとけよ」

 

「だってよ明久」

 

「なんで僕!?お菓子食べてただけなのに!!」

 

「俺の机のお菓子で腹を満たそうとしてんじゃねぇよ」

 

「はぁ、なんか緊張感の無くなる交渉ね」

 

「で、話を戻すがBクラスとDクラスはどちらも和平で解決なんだ。どちらとも戦争をするのはAクラスとしても避けたいだろう」

 

「確かに、それなら5対5の対抗戦でどう?」

 

「姫路が出る可能性も考慮してってことか?」

 

「そ、代表が負けるとも思えないけど。姫路さんの調子が良くて代表の調子が悪ければもしもってことはあるかもしれないしね」

 

「俺が出る、とは言うが信じては貰えないか」

 

「まぁね」

 

「雄二の提案、受けてもいい」

 

 

俺と木下の座ってるソファの後ろから代表が声を上げる。

少しびっくりして木下の手を取ってしまったので、急いで離す。

 

 

「条件として、負けた方は何でも言う事をひとつ聞く」

 

「問題ない」

 

「じゃあ受ける」

 

「飲んでくれて嬉しいよ」

 

 

落とし所としては妥当だろう。

雄二もはなから1対1に出来ると思ってない節はありそうだし。

頭の良いふたりが話すと結局おなじ話になるのかもな。

 

 

「んじゃ、決まりってことで。何時から開戦にする?」

 

「10時からで」

 

「了解、戻るぞ明久」

 

「なんで僕あんま話に参加してないのに連れてきたの?」

 

「Fクラスの雑魚さを見せつける為だ」

 

「ひどい!!」

 

 

最後まで漫才みたいなやり取りだな。

俺も明久と同じ気持ちだが、菓子を取られたからなんなら俺のがマイナスなんだが?

 

 

「お疲れ、流石の落とし所だな」

 

「はぁ、でもまためんどくさいことになるわね。良かったの?代表」

 

「大丈夫。勝つから」

 

 

ここまで言い切られると安心もする。

その後一応誰がどのタイミングで出るかなどの話し合い自体はされたがFクラス相手ということもあって中々緊張感は無い。

まぁ危険視するとしたら姫路とムッツリーニくらいだろう。

ムッツリーニも悪友の1人だがエロい事に興味津々であり、保健体育のみで化け物みたいな点数をたたきだせる男である。

雄二が自信満々なのは気になるが、こういう時の代表は頼りになるし問題ないだろう。

 

グダグダと時をすごしていると開戦の時刻になった。

FクラスがAクラスへと入ってくる。

Aクラスの机等は片付けたものの、クラス広さに感嘆する声も聞こえる。

1度様子を見に行ったFクラスは普通の教室サイズだったからな、大学の講義室くらいあるらしいうちのクラスは物珍しいだろう。

まぁ空間をもてあましている気もするが。

 

さて先鋒戦。

Aクラスは手を抜かずどの教科でもバランスのいい点数の木下から向かう。

代表は雄二の考えてることもわかるだろうし、俺からの情報もあるので御茶の子さいさいだろう。

 

 

「きのしたー!がんばれー!」

 

 

気の抜けた応援に少し呆れたように視線を向けるが、軽く笑顔を向けてくれる。

えっ?いつもよりサービス精神旺盛じゃない?可愛いなこいつ。

Fクラスの先鋒は島田美波。

数学だけ得意な帰国子女で明久のことが好きな女の子だ。

まぁこいつも美人なんだが、ちょっと暴力的なところが玉に瑕というか……

 

 

「うちは数学ならBクラス並の実力なんだから!」

 

「そう、でも私は勿論Aクラスの実力よ?」

 

『試験召喚!!』

 

 

試験召喚という合図でお互いが同時に召喚獣を出し、鍔迫り合いが始まる。

召喚獣は武装しており点数によって実力が変わるようだ。

Cクラスとの戦争では代表の護衛をしており実際に戦うまでもなく完全勝利を収めたため、実物を見るのは初めてでワクワクしてる。

どちらの召喚獣もランスを装備しているが、少し服装は木下のが豪華な気もする。

 

数回の競り合いはあったものの点数をほとんど減らすことなく木下の勝利で終わる。

俺も出たかったけど役目ないのよなー、暇すぎる。

 

 

「おつかれさん、ゆっくり休んでくれ」

 

「疲れてないわ?でもありがと」

 

「2人はいっつもラブコメの波動みたいなのがあるね」

 

「おい、工藤」

 

「あれっ、違った?」

 

「みたいなじゃなく、俺たちはラブラブだからな」

 

「ちがうわよ」

 

 

そんなやり取りもつかの間、次鋒戦が始まろうとしてる。

Aクラスは佐藤美穂。Fクラスからは吉井明久が出る。

 

 

「さとー、がんばれよー」

 

 

声を掛けると少し恥ずかしそうに手を振り返してくれた。

まぁ明久相手なら心配など1ミリもしなくても……

と思ったのもつかの間、召喚の瞬間に速攻で明久の召喚獣は首を切り取られた。

鎖鎌だからこそできる芸当だが容赦ない。

戻ってきた佐藤にハイタッチする。

 

 

「いぇーい」

 

「い、いぇーい……」

 

 

これも恥ずかしそうではあるが応じてくれるあたり優しさの化身みたいな女の子だ。

そんなことを考えてると、横の木下に耳を引っ張られる。

 

 

「いててっ、なんだよ」

 

「べつに?鼻の下伸ばしてるから」

 

「安心しろって俺が愛してんのはお前だけだよ」

 

「きもい」

 

「それは残念」

 

 

お疲れーと佐藤に声を掛けて、次の中堅戦の応援。

こちらからは工藤。Fクラスはムッツリーニだ。

教科は勿論保健体育。

Fクラスの人間の総合科目くらいの点数をどちらもたたき出している。

あいつほんとにFクラスか?

必殺技を使われ、工藤の敗戦。

まぁ保体のテストで彼に対抗できる人間は居ないので全然した方だろう。

 

 

「あははー、負けちゃった。あとはよろしくね?」

 

「勿論」

 

「おつかれさん、工藤流石だよ。俺からしたらお前も充分すごい」

 

「そう言われると嬉しいけど、彼女さんまたまた睨んでるよ?」

 

「睨んでないし彼女じゃないわ、ほら久保くんの番よ」

 

 

バトンを渡されたのは久保利光。

Aクラスの次席であり、秀才という文字の生き写しのような男だ。

彼はちょっと良い奴なんだが、ちょっと変わってて端的に言うとちょっと苦手。

話してるとさりげなく最近の明久の話になる時があり、それさえ無ければ気のいいやつなんだが。

Fクラスからは姫路瑞稀、秀才でありAクラス首席になる実力すらある女の子である。

 

総合科目での勝負で点数はほぼ互角、姫路が代表並の点数を取っており少しリードしていたこともあり善戦したものの負けてしまった。

今日1番の熱戦と言っても過言ではない。

 

 

「おつかれさん、さすが次席だよ」

 

「負けたのにそんなこと言う?」

 

「慰めなんていらないだろ?」

 

「ふふ、そうかもね。ありがとう翡翠くん」

 

 

彼の背中を軽く叩いて声をかける。

次席でありながら努力を惜しまず、鼻につかないのは美徳だ。

ほんとに明久にさえ惚れてなければな……

 

そして2対2で迎える代表戦。

代表が負けるとは露ほども思えないので安心だ。

 

 

「Fクラス代表坂本雄二だ」

 

「Aクラス代表霧島翔子」

 

「では教科は?」

 

「日本史の限定テスト対決で、内容は小学生レベルの方式は100点満点の上限あり」

 

 

召喚獣での戦いではないとは、何か考えがあるのか?

しかもあの自信。何が目的なんだろうか。

 

 

「それではテストを作成しますので、お2人は別クラスに集まってください」

 

 

そう言われて部屋を後にする2人。

 

 

「坂本ってやつ、何が目的なの?」

 

「さぁ、でも代表が満点取れないってことあるか?」

 

「それはそうだけど」

 

「まぁ気楽に待とう」

 

「翡翠は呑気ね」

 

「まぁここで負けたら負けただしな」

 

「……それもそうね」

 

 

木下とグダグダ雑談しているとテストも終わったようだ。

緩みかかっていた教室内の雰囲気が戻る。まぁピリついた雰囲気という訳でもないんだが。

 

 

「それでは限定テストの点数発表になります」

 

「Aクラス代表、霧島翔子。97点」

 

 

おぉ、代表が100点を取れないとは。

雄二は多分種もわかってるんだろうが、そこを着いたのかもしれん。

Aクラスでは敗北の雰囲気が流れ出す。

佐藤に至っては涙を流していたのでハンカチを貸しといた。

 

 

「Fクラス代表、坂本雄二。53点」

 

 

は?

 

 

 

 

 

 

 

結局唯の勉強不足で敗北した雄二のせいでFクラスの設備は悪化。ちゃぶ台で勉強をしていた現状からみかん箱に格下げしたらしい。

設備も安泰で安心しきったみんなはもう帰ったようだ。

後片付けやら手続きやらを代表がやることになったので軽くお手伝いをしていたのだが気になったことがあり、声をかける。

 

 

「それにしても代表」

 

「なに?」

 

「テスト、わざと間違えたの?」

 

「いや……」

 

「ふーん」

 

「好きな人との思い出は、忘れないだけ」

 

「やっぱロマンチストだねー、代表は」

 

「そう?」

 

「あとはやっとくから、その人貰ってきな」

 

「ありがと、翡翠」

 

 

行ってらっしゃーい、と声をかけて教室から出てく代表を見送る。

雄二から教えてもらった勉強だから間違っててもそのままにしてるのだろう、そこに漬け込む奴も悪い男だが乗っておいて完勝する代表は良い女だ。

Aクラスの設備を落として困るのはクラスのみんなだ、雄二への愛が強いのは確かだが勝てると確信を持っていたため張り続けられたところがあるのは間違いないだろう。

 

クラスも守って、何でも言う事を聞く雄二を手に入れる。

彼女が今回の勝利者なのは間違いなさそうだ。

 

 

「終わった?」

 

「おぅ、木下。待ってたのか?」

 

「そう、待っててあげたのよ」

 

「そりゃあ嬉しい、じゃあ一緒に帰ろうぜ」

 

「その前に、今日の分。」

 

「ん?あぁ」

 

「いつものよ、ほら」

 

 

確かに朝イチからFクラスが乗り込んできたりとバタバタしてて、告白出来てなかった。

愛してるって言ってた?それは呼吸みたいなもんだから。

だが木下からそれを言うとは。

何だかんだこいつも俺をからかって楽しんでるのかもしれん。

まぁ木下の楽しさの一端になれるなら安いもんだが。

 

 

「木下、好きだ。付き合ってくれ!」

 

「ありがと、私も翡翠のこと好きよ?」

 

「ん?え!?まじ!?」

 

「なんで告白した側が驚いてるのよ?」

 

「そりゃあ、木下」

 

「優子」

 

「え?」

 

「優子、って呼んで?」

 

「まじ!?なんで!?そんな素振りなかったじゃん」

 

「んー、でもこんな毎日私のこと好きでいてくれて。悪いところも受け入れてくれるの、翡翠だけよ?」

 

「悪いところなんて」

 

「んふふっ、そう言うと思った。でも私がいちばん分かるの」

 

「俺が好きな人を悪くいうのは優子だろうとダメだ」

 

「好きよ、貴方のそういうとこも」

 

「おい、まじ?夢みたいだ」

 

「ほら、帰りましょ」

 

「あぁ、優子」

 

「ん?」

 

「好きだ」

 

 

そういうとはにかむ彼女。

どっちからともなく手を取って恋人繋ぎにする。

2人でいつも通りの話をしながら、いつもより距離をちかづけ夕日が照りつける校舎を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

「姉上、今日はご機嫌じゃな」

 

「そりゃあ、やーっと欲しかったものが手に入ったのよ?ご機嫌にもなるわ」

 

「ん?ということは」

 

「翡翠と付き合い始めたわ」

 

「おー、やっとOKしたんじゃな?」

 

「そうよ、秀吉にも手伝ってもらって悪かったわね」

 

「なんのこれしき、と言いたいところじゃが」

 

「?」

 

「中学の頃に翡翠と接点を作れと言われて頭を抱えたのは今でも忘れられん」

 

「あら、そうだったかしら?」

 

「中学の頃、翡翠に姉上が一目惚れしてワシに偵察させてたんじゃろ?一目惚れしたなら姉上が近づけば良いのに。ワシにナンパまがいのことをさせおって」

 

「まぁいいじゃない、結局仲良くなれたんだし」

 

「そりゃあ親友と気持ちよく呼べる存在になったのはありがたいんじゃが。それにしたってよくOKしたのう」

 

「ん?なんで?」

 

「なんたって、翡翠があんなに告白してたのに全くOKの返事を出してなかったんじゃろ?」

 

「それはそうだけど」

 

「翡翠も何だかんだダメージはおっとったしな」

 

「そうね、秀吉も散々言ってたものね」

 

「それでいきなりOKだしたのは不思議でな」

 

「あいつね、私には一線引いてたの」

 

「そんな風には見えんが」

 

「愛子とか美穂には結構ボディタッチとかもあるのに私には無いのよ?しかも美穂に関してはハイタッチやらハンカチで目元拭ってもらったりとか。私は私からいかないも触れ合うこともないのに」

 

「つまりは、嫉妬か?」

 

「まぁ、そうね」

 

「あっさり認めるんじゃな」

 

「まぁあんた相手に隠しても仕方ないしね。代表とずーっと喋ってて何だかんだ2人きりで話すタイミングとかもないし。実は代表が好きなんじゃないかって疑ったわよ」

 

「お、おぉ」

 

「それに」

 

「ま、まぁとにかく、わしは祝福するぞ」

 

「ありがと」

 

「それにしたって、どうしてこんな回りくどいことしたんじゃ?」

 

「なんで?」

 

「中学の頃から好きで、ワシまで使って射止めたのに告白には頑なに首を縦にふらんかったんじゃろ?」

 

「わたしね、欲しいものは必ず手に入れて離さないの」

 

「あぁ、そうじゃな」

 

「苦労して手に入れて、更に周りからの評価も固めておけば、もう翡翠からは離れられないでしょ?」

 

「あぁ、流石じゃな……執念というかなんというか」

 

「これからも秀吉には働いてもらうからね?」

 

「えっ、これ以上は騙してる感じもして罪悪感が凄いんじゃが……」

 

「働いてもらうからね?」

 

「はい」

 

「んふふっ、大好きよ。翡翠」

 

「翡翠。お主、まずい女に捕まったかもしれんの……」

 

「なに?」

 

「いや……」

 

 






純愛すぎん?

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