『早速上位4チーム見てみようか!
まずは1位! 1000万を見事に死守! 緑谷チーム!
続いて2位! 大量ハチマキゲットの轟チーム!
そして3位! 爆発暴君率いる爆豪チーム!
最後の4位! 鉄て、アレェ!? いつの間に逆転してた!? 心操チーム!
以上4組16人が最終種目へ進出だ! 1時間の昼休憩を挟んだら午後の部だぜ! じゃあな!』
プレゼントマイクのアナウンスに従い、観客も、生徒らもそれぞれに移動を開始する。
「飯田くん、あんな超必持ってたのズルいや!」
「ズルとはなんだ。あれはただの"誤った使用法"だ。それに、緑谷くんに対応もされてしまった……」
「射出した切島を回避する訓練をしていたからな。超スピードで人が突っ込んで来るのには慣れていたんだろう」
「何その訓練。ウチ絶対やりたくない」
それぞれに先程の戦いを振り返りながら、目指すは食堂。
「
「麗日のおかげだ。運ぶだけならまだしも、ああも動けたのはな。強化してのことでもあるし、素の身体能力で2人を背負った障子の方がとんでもない」
「こちらは峰田と蛙吹、共に軽いからな」
そう言葉を交わすのは、同様の戦術を採った2組のメンバーだ。共に人を乗せて走り回っていたというのに、
「私、そこまで軽くないと思うけれど」
「羽毛のようなものだ。なあ狐条」
「そうだな、女の子は軽すぎていかん。ちゃんとご飯食べなさい」
「ケロケロ。2人とも紳士ね」
「……チキショウ、障子はともかく狐条め、女子2人に抱きつかれやがってぇ……!」
「峰田ちゃんは2人を見習ったほうが良いわ」
「ハッ! 今ならまだ尻尾に残り香が!」
「それ以上近寄ると消し炭にするぞたわけ」
目をかっ開いて、なかなかに壮絶な表情となった峰田への反応は辛辣だった。
「峰田はもうチョイ真人間にならないとねえ」
「いやあ、ちょっとじゃ足りねーと思う」
芦戸と瀬呂の言葉など聞こえていないのか、峰田は血走った目を真っ直ぐに優幻の尻尾に向けていた。
「仕方ない、先制防御だ。……残念、でもないな。サヨナラ峰田」
一時的な強化を行い、優幻は右手で峰田の顔面を掴むと。
「オイちょっと待っオワァァァッ!」
力いっぱいブン投げる。峰田の小さな身体は綺麗な放物線を描き、林の中に消えた。
「惜し……くはねえな。峰田だし」
「まあ、峰田だしな」
自業自得、といった風に、誰も峰田を助けることは無かった。
◆ ◆ ◆
食堂は学生たちでごった返していた。
「起動の速さや推進力は申し分ないんだが、横軸への移動はもう少し応答が早くないとキツいな」
「ふむ、まだまだ操作は改善の余地アリですね」
とあるテーブル。一組の男女が向かい合って食事をしていたが、そこに甘い雰囲気は一切無かった。女性の側、カレーライスの横に置かれた、ゴツい機械に原因の一端がある。
「私の場合、なまじ自分で空中移動できてしまうからな。参考にしすぎん方が良いと思うが」
「何を言いますか、あの予選の動きができるようになるかもしれないのです! これはもう取り入れるしか!」
騎馬戦でチームを組んだ優幻と発目による反省会という名の、サポートアイテム改善会議であった。
「そうだ、最後に使っていた速乾セメントだが、アレ、安定供給は可能だろうか」
「もちろんです。アレは製造機械を弄って作ったものですので、いつでも大量生産可能ですよ。雄英にはセメントス先生がいるのであまり必要とされませんが」
「体育祭が終わってからになるが、パワーローダー先生に話を通しておこう。捕縛武器に使いたいのだが、空間操作の術式と組み合わせればなかなか凶悪なものができそうでな」
「ホホウ! 興味深いですね!」
「今は手元に無いが、式は今度持ってこよう。君なら面白、もとい、上手く扱えるかもしれん」
「ンフフフフ……」
共に発想の突飛な、開発者的性質の2人。
後日パワーローダーが胃痛を覚えるのは別の話だ。
「後、モバイルバッテリーなんだが、更に容量を増やすと電気系個性持ちに喜ばれそうだな」
「なるほど。単に私のデバイス用でしたが、そういう需要もありそうですね。いやあ、アナタと話していると色々参考になります、えーと、名前忘れましたが!」
「狐条な。いっそ清々しいよ、君は」
「恐縮です狐の人」
「覚える気すらないだろう」
名前すらあやふやで甘い空気などなるはずもない。
「捕縛ならこういったのもあるのですが」
「面白いコンセプトだな。ならばいっそこういうのはどうだろう」
「ふむふむ、ならばこちらに組み込んで、この際こちらを……」
ついでに言えば、パワーローダーからの苦情がイレイザーヘッドへ届けられる日も、そう遠くない。
◆ ◆ ◆
昼休憩が終わり、生徒も観客もスタジアムへ戻る。
『最終種目発表の前に、敗れた皆に朗報だ! あくまで体育祭! 全員参加のレクリエーション種目も用意してあるぞ! 本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ、ってアリャ? どーしたA組!?』
A組女子が横並びになっている姿に、誰もが微妙な視線をなげかける。「何やってんだコイツら」と。
それもそのはず、彼女たちが"チア衣装"を身に纏っているのだから。
「峰田さん上鳴さん! 騙しましたね!」
八百万の叫びに、2人を知る生徒はすぐに事情を察する。
あのエロ男子共か、と。
「眼福ではあるがな」
「おっ、わかるクチか狐じょイダダダダ!」
「もげる! 頭のじゃなくて首がもげる!」
「騙してというのはいただけん。ああいうのは当人了承の上でやるから良いのだ」
優幻の両手が、上鳴と峰田の顔を掴む。地味に強化済みの手で締め上げながら、峰田に至っては地に足がついていない。
「ナイス狐条。そのままホールドで」
「高さはこのくらいか、耳郎」
「「ギャアアアアアアアアッ!」」
腹に据えかねたらしい耳郎のイヤホンジャックにより、2人は撃沈した。
「……悪とは滅びる運命」
常闇の言葉に、誰もが頷くのみ。
「何なら上着貸そうか」
「あー、逆に恥ずいからやめとく。ありがとね」
「そうか。まあ可愛い女の子の可愛い格好が見れるからありがた、待て耳郎。謝るからイヤホンジャックを納めよう」
「アホ2人捕まえた功績がなかったら、撃ち込んでたよ」
『さあさあ皆楽しく競えよレクリエーション! それが終われば最終種目! 総勢16名からなる、1対1のガチバトルだ!』
ダウンした2名を無視したまま、進行していく体育祭。ミッドナイトが壇上に上がる頃には、気絶した上鳴と峰田は気遣いのできる障子が邪魔にならない位置に移動していた。
『それじゃあ先に、組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ。決まったらレクリエーションを挟んで開始になります。進出者16人はレクに参加するかは自由。息抜きしたい人、温存したい人それぞれね。じゃあ、1位チームから──』
「あの、俺、辞退します」
抽選が始まるタイミング。おもむろに手を上げたのは、尾白だった。突然の申し出にざわめきが起きる。
「騎馬戦の記憶、ほぼ終盤ギリギリまでぼんやりとしかないんだ。多分、ヤツの個性で。
チャンスの場だってのはわかってる。それをフイにするのが愚かなことだってのも。……でもさ、皆が力を出して争ってきた座に、こんなわけわかんないままそこに並ぶなんてことは、俺にはできない」
「僕も同様の理由から棄権したい。実力如何以前に、"何もしていない者"が上がるのは、この体育祭の趣旨と相反するのではないだろうか」
続くB組の庄田二連撃の言葉に対し、主審であるミッドナイトは許可を出した。"好み"を理由に。
繰り上がりとなった5位の拳藤チームは2人の意気を汲んで、終了直前まで上位に居た鉄哲チームに権利を譲渡。
こうして、多少の波乱を起こしつつも最終トーナメントの組み合わせが決まった。
◆ ◆ ◆
第一試合。
ヒーロー科A組、緑谷出久VS普通科C組、心操人使。
「あの時の……」
「あんただよな、緑谷って。よろしく」
「ダメだ、答えるな緑谷!」
尾白の尻尾に口を塞がれる緑谷を一瞥し、心操は不敵に笑い去っていく。
第二試合。
ヒーロー科A組、轟焦凍VSヒーロー科A組、瀬呂範太。
「うわっ、いきなりキチぃのが」
「……」
第三試合。
ヒーロー科B組、鉄哲徹鐵VSヒーロー科A組、切島鋭次郎。
「またダダ被りか!」
「狐条と緑谷に考えてもらったアレ、やってみるか……」
第四試合。
ヒーロー科A組、麗日お茶子VSヒーロー科A組、爆豪勝己。
「うわぁ、うわぁ……」
「……麗日ってどいつだ?」
「……うわー……」
第五試合。
ヒーロー科A組、狐条優幻VSヒーロー科A組、八百万百。
「いきなりしんどい相手だな」
「また厄介な……」
第六試合。
ヒーロー科A組、芦戸三奈VSヒーロー科A組、青山優雅。
「僕はやるからね☆」
「わ、勝ってもヤオモモか狐条じゃん」
第七試合。
サポート科H組、発目明VSヒーロー科A組、飯田天哉。
「飯田ってアナタですか?」
「いかにも、俺は飯田だ!」
「ひょー! よかった。実はですね……」
第八試合。
ヒーロー科A組、上鳴電気VSヒーロー科B組、塩崎茨。
「これもお導き……」
「……」(気絶中)