「皆……。土産話、ひぐっ。楽しみに、うう……。してる、がらぁ……」
演習試験を終えた教室では、クリア出来なかった4名が悲しみに満ちた表情であった。
「ま、まだわからないよ。どんでん返しがあるかも知れないし……」
「緑谷、それ口にしたら無くなるパターンだ……!」
緑谷の励ましも、瀬呂によって止められてしまう。
「試験で赤点とったら林間合宿行けずに補習地獄! そして俺らは実技クリアならず! これでまだわからんのなら、貴様らの偏差値は猿以下だ!」
「落ち着けよ、長え。わかんねえのは俺もさ。峰田のおかげでクリアしたけど寝てただけだ」
「安らかな寝顔だったな」
「死んだみてえな言い方やめてくれ
「同情すんなら何かもう色々くれ!」
上鳴の悲痛な叫びに紛れてチャイムが鳴った。
「予鈴が鳴ったら席につけ」
瞬間、扉を勢いよく開け放って相澤が現れる。
生徒たちも慣れたもので、瞬間移動かと思える速さで全員が自席に座った。
「おはよう。今回の期末テストだが、残念ながら赤点が出た。したがって、林間合宿は……。
全員行きます!」
「「どんでん返しだあぁっ!!」」
喜びのあまり、実技未クリア4名の拳が天高く掲げられる。
「筆記の方はゼロ。実技で芦戸、上鳴、切島、砂藤、あと瀬呂が赤点だ」
「……確かにクリアしたら合格とは言ってなかったもんなあ……。クリアできずの人より恥ずいぞコレ」
両手で顔を覆う瀬呂の姿に、席の近い数名がどう声をかけたものかと冷や汗を流したりはしたが。
「今回の試験、我々ヴィラン側は生徒に勝ち筋を残しつつ、どう課題と向き合うかを見るよう動いた。でないと、課題云々の前に詰む奴らばかりだったろうからな。
そもそも、強化合宿なんだ。赤点とったヤツこそ、ここで力をつけてもらわなきゃならん。合理的虚偽ってやつさ」
「「ゴーリテキキョギィィッ!」」
「またもしてやられた……! しかし先生! 2度も虚偽を重ねられると、信頼に揺らぎが生じるかと!」
「わあ、水差すね飯田くん」
「今日も飯田は飯田してるなあ」
「飯田くんて動詞やったっけ」
挙手し立ち上がる飯田の周囲、
「確かにな、省みるよ。だが、何も全部ウソってわけじゃない。赤点は赤点だ。お前らには別途に補習時間を設けている。ぶっちゃけ、学校に残っての補習よりキツいからな。
じゃあ、合宿のしおりを配るから」
◆ ◆ ◆
「まあ、何はともあれ皆で合宿行けて良かったね」
「とはいえ、相澤先生がわざわざ釘を刺すくらいだ。補習は想像以上にキツいかも知れんぞ」
「や、やめろよ狐条。怖えよ」
「それ以前に、雄英の強化合宿が生半可なわけもないので、全員キツいだろうが」
「苦難上等よ!」
気合充分といった雰囲気の切島に、頷き返す者が数名。
「1週間の合宿か……!」
「結構な荷物になるね」
「水着とか持ってねーや。色々買わねーとな」
「暗視ゴーグル」
「峰田は少し黙っていろ」
常闇のダークシャドウによって峰田が捕われても、誰もリアクションはしなかった。
「じゃあさ! 明日休みだし、テスト明けだし、ってことで、皆で買い物行こうよ!」
「おお良い! 何気にそういうの初じゃね?」
パン、と手を打ったらしい葉隠の言葉に、真っ先に賛成したのは上鳴だ。続くように、あちこちから賛同の意見が出る。
「おい爆豪! おめえも来い!」
「行ってたまるかかったりい」
爆豪勝己、安定の不参加。
続いて轟も母親の見舞いを理由に不参加。
「んだよノリ悪いぞKY男ども!」
「狐条くんは?」
「参加しよう。丁度、靴を買い替えたかったところでな」
高校生らしく楽しげに、予定は決まっていった。
しかし。
結論から言えば、A組の生徒らが行った買い物は、事件によって中断された。
ヴィラン連合、死柄木弔。
追われる立場であるはずの男が、人でごった返すショッピングモール内で緑谷に接触したのだ。
周囲の一般人を守るべく冷静に対処した緑谷と、通報した麗日のおかげで被害らしいものは無く、警官の出動によって多少の混乱が起きた程度で済んでいた。
あくまで、世間的には。
当事者となってしまった緑谷は聴取に多くの時間を取られてしまったし、他の生徒たちにとっても他人事ではない。
「……ってワケで、ヴィランの動きを警戒して例年使わせていただいている合宿先を急遽キャンセル。行き先は当日まで明かさない運びとなった」
なお、これを受けての爆豪による「骨折してでも殺しとけ」発言で教室内が騒がしくなり、教師相澤のこめかみがヒクついたのは余談である。