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人工移動都市"I・アイランド"では、個性技術博覧会と銘打たれたイベント"I・エキスポ"が行われる。
世界中の科学者、技術者が集まり、日々様々な事柄を研究しているI・アイランドだからこそ、その規模は大きく、そして発表される内容も最先端だ。
一般市民も楽しめるように、技術を応用して作られたアトラクションもあるが、やはりヒーローやその候補生、サポート企業などは、公開される情報や試作された実物に興味を持つ。あらゆる方面から注目を集めるイベントなのだ。
そんな、移動都市の名を冠する島の空港に、2人の少年の姿があった。
「空港からして、最新技術のオンパレードだな」
金色の狐耳と9本尻尾を持つ、個性"九尾狐"の
ハイテクノロジー溢れる場所にやや不釣り合いな、和服と中華風道士服をかけ合わせたようなコスチュームに身を包む少年と。
「一般開放されてからだと、混みすぎて見れないだろうね。ホントありがたいよ」
道着風のコスチュームを身に纏う、個性"尻尾"の尾白猿夫。
2人は、珍しい光景に素直に感嘆していた。
一般公開前のI・エキスポにこの2人がやって来た理由は、至ってシンプルだ。体育祭の優勝、準優勝の選手に招待状が送られ、優幻の同伴者として尾白が選ばれたのだ。
ちなみに、同伴者1名の枠を巡ってはアミダくじ大会が開かれ、非常に白熱したと添えておく。
「スーツケースはホテルの部屋まで運んで貰えるんだってさ」
「至れり尽くせりだな。まあ、管理側にもメリットもあるだろうが」
「検査とか時間かけられるしね。普通の空港なら、お客さん待たせるから大変だ」
「ともかく今は、ありがたく享受しておくとしよう。……おや?」
パンフレットから視線を上げた優幻の目に、見覚えのある色が映った。
「轟、お前さんも来ていたのか」
「……狐条に、尾白か。ああ、親父の代理でな。そっちは確か、体育祭ので招待されてたな」
「俺はおこぼれだけどね。ランキング入りするヒーローなら、そりゃ招待も来るか」
どうやら同じ飛行機に乗っていたようではあるのだが、到着まですれ違うことすらなかった奇妙な偶然に笑いあう。
「こちらの招待主への挨拶は夜のパーティーで、という話なんだか、そちらは?」
「同じだ。代理で学生の俺が行くって知らせたら、昼間はアチコチ見て回るといい、っつってくれてな」
「お、それじゃ、轟も一緒に回らないか?こういう所の勝手がわかんなくてさ」
「俺も慣れてねえんだがな……。まあ、いいか」
こうして、出来上がった即席グループで巡ることとなった。
◆ ◆ ◆
「あれ、緑谷? 爆豪に切島はわかるとしても、飯田に麗日、八百万に耳郎まで」
「わ、尾白くん!?」
"ヴィランアタック"と名付けられたアトラクションを囲む観客席。フィールドとの境界にある手すりで、かぶりつく一団に近寄るのは尾白1人だった。
「どうして尾白くんが?」
「あ、そういやあのアミダ大会の時、緑谷居なかったっけか。体育祭優勝の狐条が招待されて、その付き添い枠だよ。切島と同じさ」
「……その狐条はどこ行ったの?」
「ああ、それなら──」
『おーっと、記録14秒! またまたトップが入れ替わりましたぁっ!』
説明しようとした尾白の言葉が遮られ、興奮したスタッフの声が響き渡る。何事かとそちらを向けば。
「轟くん!」
「何でてめえが居やがる、半分野郎!」
氷山を作り出した轟に、驚く一同。そんな中で、爆豪だけはすぐさま飛び出して、クラスメイトの存在に少しばかり目を見開いた轟へと向かっていく。
「彼、とっても恐い顔ね」
「いえ、まだギリギリ放送できるレベルなので大丈夫かと。稀に、お子様に見せられなくなりますので」
「ふふ、楽しそうね」
「……退屈とは、無縁ですわね」
「「確かに……」」
八百万と親しげに話す女性の姿に、「紹介してもらうのは狐条と轟が合流してからの方がいいか」などと尾白が考えている間にも、事態は進む。
『あのう……。次の挑戦者が居ますので……』
『ああっ!? 知るか関係ねえ! 俺が半分野郎の記録塗り替えんだ!』
困惑するスタッフのマイクに、しっかりと爆豪の怒号が入っていた。流石にそろそろ止めないとまずいかと数名が動こうとした所で、新たに声が入る。
『お姉さん、構いませんよ。このまま始めてください』
『ええっ!? ま、まあ当人が言うなら……。では、続いてのチャレンジャー、スタート!』
怒鳴る爆豪も、残された氷も。意に介する様子を見せない優幻である。
このアトラクションは、フィールド内の仮想ヴィランを全て破壊するタイムを競うもの。そのルールにおいては。
「"索敵"、"照準"、"展開"、"射出"」
優幻の周囲に浮かび上がる、24個の光弾。全ての色に変化をつけたカラフルなそれが、高速で宙を駆けて軌跡に光の帯を残していく。その美しさに誰もが見惚れる僅か3秒の間に、光弾は機械仕掛けのヴィランに到達。呆気なく無力化してしまった。
『は、早ーい! 11秒! 文句無しの新トップです!』
「……続いて、"縛鎖"」
そして、記録に意識が向いている隙をつく。
優幻の袖口から放たれる3本の金色に輝く鎖が、爆豪の方へ。
瞬間的に反応した爆豪は、すぐさま回避行動に移ろうとし、しかし優幻の意を汲んだ切島が飛びかかることで失敗。簀巻きにされた上で背後から組み付かれる格好になってしまった。
だが、ここで終わるような男ではないと、特にクラスメイトは知っている。
「緑谷! 尾白! 手伝ってくれ!」
「飯田、引っ張り上げる。手を貸してくれ」
普段の訓練の成果を遺憾なく発揮し、迅速な対応を見せるのだが、しかしその相手が同じヒーロー志望のクラスメイトとあっては、何とも締まらないものだった。
いつも通りに目を釣り上げてがなる爆豪の姿に、女子3名が溜め息を吐いてしまうのも、仕方ないのかもしれない。
◆ ◆ ◆
「お。飯田からだ」
金髪の女性、メリッサ・シールドとしばし言葉を交わした後、どうやら緑谷たちとは逆順で回っていたらしい優幻たちは、そのまま別れてエキスポ巡りを行っていた。
一通り周り、休憩にと入ったカフェで、3人の持つスマートフォンが一斉に震える。
「レセプションパーティ、一緒に行かないかという誘いだが、断る理由も無いな。尾白、轟、返信してしまうが良いか?」
「異議なし。俺、こういうパーティー初めてだから不安だったけど、飯田とか慣れてるっぽいし助かる」
「俺も問題ねえ。……少なくとも、八百万は慣れてそうだな」
「狐条も轟も、普通に堂々としてるのにまったく未経験で驚いたよ」
「お前さんは気負いすぎだ。普段通りで良かろうに」
尾白としては、形式張ったパーティーなど初めて。右も左もわからないような状態だったので、やけに落ち着いている2人に聞けば良い、と考えていたのだが。
フタを開けてみれば、両者共にパーティーへの出席経験は無し。「なるようになる」スタンスの轟と、「学生のすることに目くじら立てるようなこともあるまい」と気にしていない優幻。
雄英の看板を背負っての出席にプレッシャーを感じている尾白からすれば、「ダメだコイツら……」と思わずにはいられなかった。
「しかし、緑谷もよくわからんヤツだ。かのデヴィット・シールドのご息女に案内されるとは、何があったのやら」
「突拍子がねえのが、緑谷だからな」
「授業中に空気イスやっちゃうようなね。でも、2人ともメリッサさんに随分質問攻めされてたね」
「どうやら緑谷同様、個性の考察に我を忘れるタイプのようだな」
「俺の半冷半燃はまだしも、狐条のは解明し甲斐があるからな。近くで見てても、よくわかんねえ」
個性の話に波及すると、やはりと言うか、クラスメイトたちにも全容が理解できない優幻のものへと移る。
「まあ、概念的な所がどうにも、感覚でしか把握出来んからなあ。私自身、上手く説明できんのだ。最近はコスチュームを作ってくれたサポート会社も、匙を投げつつある」
「汎用性のあることを羨めばいいのか、自分がシンプルな個性で良かったと思うべきなのか」
思わぬ所で苦労している様子に、尾白は自分の尻尾を撫でながら苦笑いだ。
「俺からすりゃあ、お前らや障子なんかが羨ましくもあるけどな。やれることが増える」
「隣の芝生は青く見えるものだ。シンプルに強い轟の個性が、私としては羨ましいさ」
「自分に出来ないことが出来るヤツ、ってなるとね。でも狐条、サポート会社がそういう状態なら、これからキツくないか? コス変の提案とかは来ないんだろ?」
ヒーロー科のコスチュームは、使用者自身からの要望を受けて変更がかけられる。しかし、同時にサポート会社から運用データを基にした改修提案も来る。
この辺りは、技術だけでなく知識もある各企業の方が優れている部分と言える。
デザインなどの軽微な所は、勝手にイジられることもあるが。
「その辺は発目に期待したいところだ」
「ああ、サポート科の。体育祭で組んでたっけ」
「私の術式を理解して、色々と考えてくれているのでな」
「……そのせいで、この間サポート科の工房ぶっ飛ばしてたろ」
「相澤先生がブチ切れて、パワーローダー先生が胃の辺り押さえてたヤツね。並んで正座させられてたよな」
「いやあ、空間ごと圧縮してみたらあのザマでなあ」
「何やってんだ」
ちなみに、元凶の2名は一切悪びれることなく、自分たちが考えていたアイテムのプレゼンを始めてしまい、相澤の手で逆さ吊りにされていた。
「立派な問題児だよね、狐条も」
「安心しろ、既に生活指導のハウンドドッグ先生は買収済みだ」
「何も安心できねえ。それで良いのかヒーロー志望」
「ほねっこは偉大だ」
「それで良いのかプロヒーロー」
実際には買収でも何でもなく、「硬いものをかじってると何故か落ち着く」という感じで、イヌ科の特徴を色濃く持つ2人が意気投合しただけでしかない。
「その辺は狐条も影響受けてるんだ」
「まあ、そうだな。たまに巣穴を掘りたい衝動に悩まされたりするとかしないとか」
「どっちだ」
「掘ったとしても、穴の中で暮らしたいとは思わんからなあ。落とし穴にするか」
「やめてくれ。何か無駄に高度な偽装とかしそうだし。他科の人が巻き込まれたらどうするんだ」
「そこはほれ、プレゼントマイク辺りをターゲットにだな。……トラップについての自習とすれば行けるのでは」
「何でそう、ホイホイと言い訳が出てくるんだ君は」
「対頭脳派ヴィランへの予行演習の成果ではないか? 知らないが」
「無責任!」
からからと笑う優幻に、「やりかねない」と気が気ではない尾白。
狐条優幻という男は時折、周囲の人間がまったく理解の及ばない奇行に走る時がある。つい最近だと、峰田の現代文の教科書を全て平安言葉で書いたものにすり替えたりしていた。わざわざ装丁ではバレないように偽装までして。
主に尾白や峰田をはじめ、上鳴、切島、砂藤、瀬呂辺りがターゲットである。リアクションの良い人間を狙う犯行だ。
「仲いいな」
「轟も最近は緑谷や飯田とよく話しているだろう? 苦難を共に乗り越えると、連帯感が生まれるものさ。なあ、尻尾の」
「だから尻尾は君もだろ。……その割には、葉隠さんはターゲットにしないよな」
「レディには優しくせんとな」
「この間、リカバリーガールにもそんなこと言ってなかったか」
「肩でも揉みましょうかと言ったらブン殴られたな。あの方には敵わん」
尾白と轟が揃って「確かに」と応えてしまい、笑いが起きる。
◆ ◆ ◆
18時30分。飯田から告げられた集合時間に、雄英高校1年A組の生徒たちは。
「何をしているんだ緑谷くん! 集合時間はとっくに過ぎているぞ!」
半分ほどしか集まっていなかった。
オーソドックスな紺色のスーツを、性格通りにキッチリと着こなす飯田は、電話越しに緑谷を呼び立てていた。
「とっくに、って言っても今31分だけどね」
「何を言うんだ尾白くん! 5分前行動は基本だろう!」
「まあ、そうなんだけどさ。むしろ問題は……」
こちらも無難な、ダークグレーのスーツ姿の尾白。彼の視線の先には、2人の少年。
「ふぬぐぐぐ」
「うぬぬぬぬ」
何やら壮絶な表情を浮かべる、峰田と上鳴が居た。
「落ち着けよ2人とも。爆豪と違うベクトルで放送出来ない顔になりつつあるぞ」
「うっせー! 何で、何だよぉ……!」
震える峰田の指先が向けられた先には。
「雄英体育祭、カッコ良かったよ轟くん!」
「実物もハンサム!」
「……どうも、ありがとうございます……?」
オフホワイトのスーツ姿で、いまひとつ状況がわかっていない表情の轟と。
「キュウビくん! あ、あの、サインお願いできますか!」
「私も!」
「勿論。お任せくださいお嬢様方」
淡いブルーのスーツをややラフにコーディネートした、如才なく笑顔で対応する優幻。
峰田が血涙を流さんばかりなのは単純。2人が数多くの女性陣、それもドレスアップした人たちに囲まれているからである。
「イケメンならここにも居ますよ〜……」
「上鳴は"残念なイケメン"だからね」
「ドチクショウ!」
涙を流して床を叩く上鳴と、今にも呪いのひとつも放ちそうな峰田には、当然ながら誰も近付いては来ない。
かく言う尾白も、先程までパーティーの参加者に声をかけられてはいた。相手が主に男性であり、体育祭最終種目を辞退したことへの「実直で良い」といった評価だったが。
「やっぱ、雄英の注目度って凄いんだなあ」
「だからこその時間厳守だというのに!」
「緑谷、何があったんだ?」
「いや、理由までは確認していない。彼も慌てていたようだしな。急ぐとは言っていたが」
「女子は!?」
「申し訳ないが遅れてしまう、という連絡があった。先に会場へと言っていたが……」
「折角だし待とう。招待してくれたトコへの挨拶は済ませてるし、置いてけぼりってのもね」
「うむ。そうしようか」
そうこうしている内に、パーティー開始の時間が迫る。会場へと向かう女性たちにそのまま連れられそうな轟を優幻が救出し、4人に合流した。
「……すまねえ、狐条。助かった」
「はっはっは。こういうのは慣れだ、轟。彼女らは若い分強引さが無いからなんとかなったが、ウチの近所の商店街を牛耳る婆様方が相手だと、こうは行かん」
「そんな鍛え方してんのか」
約2名の怨嗟の視線をスルーして、優幻は笑う。
「2人とも大人気だね」
「ありがたいことさ。プロになってガッカリされんよう気を付けんとな」
「……プロはすげえな」
「女の子に囲まれるんなら良いじゃねーか!」
「そうだそうだ!」
「お前さんらはいつか美人局とか引っかかりそうだな」
「美女に騙されんなら本望だ!」
「筋金入りかよ」
エントランスに気心の知れた者たちだけとなり、自覚なく緊張したのが解けて笑いが起きる。
「ううむ、しかし皆遅いな」
「そう言うな、飯田。女性の身支度に時間がかかるのは世の常だ。緑谷は……。うん、アレだ、メリッサさんと何かあったんじゃないか」
「何だとぅ!」
「ひと夏のアバンチュール的なアレか!?」
「さあ? 適当に言ってみただけだ。世の中、何が起きるかわからんからな」
「適当すぎんだろ。緑谷にそういうイメージは無いけどな」
「いやあ、実は野獣のような内面をひた隠していた、とかな」
当人が居ないのを良いことに好き勝手言っていると、軽快な電子音と共にエレベーターの扉が開く。
「ゴメン! 遅くなって……」
「緑谷ぁっ! てめえコノヤロー!」
「うわあっ!? 何、峰田くん怖いよ!」
慌てた様子の緑谷に、峰田が真っ先に詰め寄る。目をかっ開いた鬼気迫る表情は確かに怖い。
「……何故、峰田は信じているんだ」
「後で緑谷に謝っとけ」
「ああ、気を付けよう」
事情を聞かされた緑谷が、「元凶は狐条くんだけど、冗談めかして言ったのを峰田くんが真に受けちゃった事故だよ」とお人好しぶりを発揮し、逆に優幻の良心を攻撃する結果になったりはしたが。
ともかく誤解は解けた。
「ゴメンね、遅くなってしもた!」
次いでやって来たのは、麗日だ。薄い桜色の華やかに広がるスカートが、彼女によく似合っていた。
「「おお〜!」」
「こういうの、着たことないから何や、照れるなあ」
「よ、よよよ、よくに、ににに、似合ってるよ、麗日さん!」
「えへへ。デクくんもカッコいいね!」
薄っすらと頬を染めながらも笑う麗日に、純情少年である緑谷はもはや挙動不審のレベルであった。相手がその程度で動じたりはしない麗日だからこそ、会話になっているような状態だ。
そうしている間にも、更にもうひとつ、エレベーターの扉が開いた。
「申し訳ありません、遅くなってしまいました」
「「おおお〜!!」」
ライトグリーンのドレスに身を包む八百万と、照れてしまいその陰に隠れる耳郎であった。
「ウチこういうのは、その」
「馬子にも衣装ってやつだな!」
「女の暗殺者みてえ」
不用意な発言をした上鳴と峰田が、耳郎のイヤホンジャックに撃沈させられるのは、既にお約束と化しつつある。
「何でだよ、俺褒めたじゃんか!」
「褒めてない」
「もとは"みすぼらしい人が身なりを整えればそれなりに見える"という意味から来ているからな」
「……そーなの?」
「ああ、コイツそういや普段からアホだったわ……」
「耳郎の場合、素材から美少女だしな。当て嵌まらん諺だ」
「そーだよな。キレイ系っつーか、スタイリッシュっつーか」
「〜っ! うっさい!」
「ぎゃあああっ!」
今度は照れから赤くなった彼女が、上鳴と優幻にプラグを突き刺して爆音を届かせる。
「……何で効いてないの狐条」
「基本的に、クラスメイトの個性には対策を打っているよ。だが八百万は勘弁してくれ」
「ヤオモモやっちゃって!」
「ええ!?」
「いや、言っておいて何だが巻き込んでやるな」
飯田や轟と楽しげに話す八百万は、突然の指名に驚きの声を上げてしまう。
「狐条さんなら、私への対策もあるのでは……?」
「無茶を言わんでくれ。一体、何万パターンの対策を立てれば良いんだ」
「さ、流石にそこまでは」
「忘れているかもしれんが、私の戦い方は"事前準備"が必要なんだ。その場で戦術を創れる八百万とは、根本的に相性が悪い。体育祭の時のように、接近戦で考える時間を削るなどせねば勝てん」
「狐条って超強いイメージなんだけどなー」
「……正直に言えば、そう見せかけているに過ぎんよ。弱点なぞ、晒して良いこともないからな」
「その立ち回りの上手さは、A組でも群を抜いてると思うよ」
緑谷の言葉に、「これからもそう言われるようにしよう」と優幻が話を切った所で、再度、エレベーターの到着を知らせる電子音が鳴る。
「みんな! どうしたの、もうパーティー始まってるわよ?」
「「お、おおお〜!!!」」
青を基調とした、気品と美しさを引き立たせるドレスで現れたメリッサに、上鳴と峰田から邪な歓声が上がった。
「もう俺、どうにかなっちゃいそう」
「……どうにでもなれ」
「そら、己のことの前にすべきことがあるだろう」
「そ、そうだった! オイ峰田!」
2人並んでメリッサの前に立つと、同時に美しく90度に腰を曲げる。
「「ご招待いただき、ありがとうございます!」」
「え、ええ? もしかして、そのために待っていたの?」
「ウス! 招待状くれたメリッサさん置いて行くとか出来ねッス!」
「パパ宛てに来たチケットの余りだから、気にしなくても良いのに……。フフ、真面目ね」
微笑むメリッサに、2人がときめいたりしつつ。
さあ会場へ向かおうか、というところで、異変が起きる。
『I・アイランド管理システムよりお知らせします。警備システムにより、I・エキスポエリアに、爆発物が仕掛けられたとの情報を入手しました。I・アイランドは、現時刻をもって厳重警戒モードへと移行します』