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130階。その廊下で繰り広げられる戦いは、膠着状態に陥っていた。
「何なんだよぉっ!
涙を流して叫ぶ峰田の言葉通り、相対する女ヴィランに打つ手が無い状態だった。
赤黒い液体を撒き散らしながらも表情を変えることなく迫る姿は、そこらのホラー映画より恐ろしい。
「落ち着け峰田」
「むしろ何でオメーは落ち着いてられんだ!」
「平静を失えばやられるぞ。それに、あれは血じゃない」
「はあ!?」
「血の匂いがせん。些か、油臭い。油圧式の機構を組み込んだ義体か、そもそも身体自体が人形か」
優幻の推測に応えるように、またも老婆の笑い声が聞こえた。しかし、相変わらず目の前のヴィランは表情を変えない。
「ケダモノは鼻が良いねえ。でも、そいつがわかった所でどうなるんだい? アンタらの攻撃は通じやしないのさ!」
実際問題、有効な攻撃は何ひとつできていない。何か別の手をと考えても、多数の警備ロボットを捌きながらではロクに行動できない。
「瞬間火力は必要か。課題だなあ」
「言ってる場合かバッキャロー!」
「それでも、どうにかするしかあるまい。さあ来るぞ、気張れ峰田」
「どわあっ!」
警備ロボットとヴィランの同時襲撃に、慌てて散開して回避する2人。
「離せチキショウ!」
「峰田!」
何度か回避を続けてはいたが、遂に警備ロボットに内蔵された捕縛用のワイヤーが、峰田の右足に巻きついてしまう。
すぐに救けようと優幻が動いた瞬間。
「これだからヒーローってのは、甘い」
割り込むように現れたヴィランの拳が、深々と優幻の腹部に突き刺さる。
かろうじて放った1つの光弾が峰田を捕えるワイヤーを断ち切りはしたが、代わりに優幻の身体が壁に叩きつけられてしまう。
「あーあ、頼りになるオトモダチはやられちゃったねえ。さあ、どうする坊や?」
「……ウソだろ、おい……」
峰田の見つめる先には、倒れ伏してピクリとも動かない優幻の姿があるだけだ。
「イヒヒヒヒ。ちっこい方は元気が良いからねえ。いたぶり甲斐がありそうだ」
「う、うわあああっ!」
ゆっくりと近付いて来るヴィランに対して峰田がとった行動は、逃走だった。
涙を流し、声をあげ、足をもつれさせながら、走り出す。
「ひどいねえ。オトモダチを見捨てて逃げるなんて」
しかし、再度警備ロボットのワイヤーに足をとられてしまい、冷たい床に転がってしまう。
「あああああっ! 来るなっ! 来るなあっ!」
「ヒヒ、ああ、良いねえ。そうやって泣き叫ぶ子を嬲るから、楽しいのさ」
がむしゃらに投げられる"もぎもぎ"は、ヴィランに届く前に割って入った警備ロボットに当たるだけ。一歩一歩、ワザとゆっくり近寄ってくるヴィランを止めるには至らない。
「チキショウ! こうなったのも全部狐条のせいだっ!」
「おやおや、ヒドいこと言う子だね。救けてくれたオトモダチに。いや、ただのバカなのかねえ」
「バカはテメーだよこのスカタン!」
恐怖に染まった峰田の表情が消えた瞬間。突如として現れた金色のロープが警備ロボットたちに巻き付き、ヴィランへとぶつけられていく。
元より周囲を固めさせていたせいで、逃げる隙間など無い。硬質な音を立てて衝突したロボットたちは、そのまま、表面に貼り付いた"もぎもぎ"によってヴィランの身体にへばりついていく。
「もっとトンデモねー攻撃受けてもピンシャンしてんだよ、その狐! オイラが言ったのは、時間稼ぎで危ねえ目に合わせたことだっつの!」
「脳無のことを言っているなら、あの時の私はかなりダメージ受けてたぞ」
「細けーこと言うなよ!」
殴られた箇所をさすりながらも、大したダメージを受けた様子のない優幻と、拘束を解かれて先程までの表情をキレイさっぱり取り去った峰田が、軽く手を打ち合わせる。
「こ、このクソガキャアッ!」
そのヴィランは、長らく捕まることなく行動していた。少ない酸素で行動できるというだけの個性を、人型の機械に入り込むことで活かし、姿を偽っていた。
そんな彼女が見るモニターには、くっついてしまったロボットしか映っていない。動こうにも、腕にも、足にも、警備ロボットがへばりついて離れない。
ガコン、と何かを殴るような音が聞こえた。
「動き方から見て、操縦者は中に居るはずだ。さすがに、腕や足には入れまい。ボディをブチ壊せば、見つかるだろう」
聞こえてきた言葉に、ヴィランは察する。自分が籠もる人型を、破壊しようとしていると。
2度、3度と、大きな音と振動が響く。衝撃でどこかが壊れたのか、モニターは何も映さなくなり、完全な闇に変わる。
8度目。僅かながら、光が差し込む。ギギ、という音と共に、その光は大きくなり。
「見ぃつけた」
覗き込む爛々とした目と視線がぶつかり、ヴィランは意識を飛ばした。
◆ ◆ ◆
引きずり出したヴィラン──声の通りの小柄な老婆を、千切れ落ちたワイヤーで縛りあげたところで、閉ざされていた隔壁が開いていく。
「やってくれたか、皆」
それは、先に行った仲間たちが目的を達した証左。
「……なあ、狐条。お前、オイラがガチで逃げようとしたとは思わねえのかよ」
開けた光景を見つめながら呟く峰田に、優幻はよくわからないといった表情だ。
「オイラは、ぶっちゃけ弱い。お前もだけど、爆豪とか轟とか、比べもんになんねー。ビビって逃げるとか、思わなかったかよ」
「ハッ、何を言い出すかと思えば。……先程、USJの件を引き合いに出したな。私は、あの時見ていたよ。死柄木とやらの手が、梅雨ちゃんに伸びた時。お前さん、守ろうとしただろう。緑谷と私の攻撃が、脳無に防がれた直後だ」
「……覚えてねーよ。色々ありすぎて」
「咄嗟の行動は、その人の本質だという言葉もある。あの時の峰田は、間違いなくヒーローだったさ」
優幻が思い返すのは、ひとつの場面。倒れた優幻を救けようと、己を顧みず蛙吹が舌を伸ばし。その蛙吹目掛けて死柄木が手を伸ばし。
そして、死柄木に対して、峰田が手を伸ばした。
「さあ、状況がわからん以上、上と合流するぞ」
「マジかよ」
「ヴィランが残っている可能性もある。メリッサさんのピンチに颯爽と駆けつける、というのは、格好良いのではないか?」
「モタモタしてんじゃねえ! 行くぞ!」
「……本当、ブレんなあ」
頼りになる仲間がいる嬉しさに笑いながら、先を走る峰田を追って駆け出す。
◆ ◆ ◆
優幻が峰田と共に、制御を取り戻したエレベーターを使い200階へと辿り着いたところ、最初に出迎えたのは非常に暑苦しい存在だった。
「2人とも!無事だったか!」
「飯田、近い」
ズイと迫る飯田を両手で押し留め、どこまでもフルスロットルな男との再会を果たす。
「俺たちも今しがた到着したのだが、先行した緑谷くんと麗日くん、メリッサさんだけが見当たらん」
「……何かあったか、いずれにせよ、早めに探した方が良さそうだな。ひとまず、上鳴と八百万にプレゼントだ」
捜索に動き出す前に、優幻のジャケットから球形の物体と、小さな袋がそれぞれに手渡される。
「ウェ?」
「上鳴に渡した方は、体育祭でお前相手に使ったバッテリーだ。戦えはせずともマシにはなるだろうから、充電しておけ。八百万のは行動食だな。非常時に備えた私のオヤツだが、勘弁してくれ」
「……あの、なぜ油揚げ……。いえ、ありがたいのですけれど」
「甘めのタレに漬け込んでから干してある。案外美味いぞ」
「ええと、そうでなく……」
遠慮される前に押し付けて、既に音を使っての捜索に入っている耳郎の側へと近付いていく。
「そっちも無事で何より。……どうだ?」
「ダメ、ここのフロア、おかしな材質使ってるみたいで音が反響して訳わかんない。……待った、エレベーター動いてる」
耳郎が指さしたエレベーターの表示パネルは、刻々と数値を増やしていく。その事実に優幻は飯田と共に矢面に並び立った。
ちなみに、尾白も立ち上がりかけたが、疲労で動きが鈍いことを見抜いた優幻がすかさず蹴り倒している。
「……あ?」
万が一に備えていた面々の目の前でゆっくりと扉が開き、現れたのは爆豪勝己である。
「なんだハズレか」
「そんなにブチ殺されてえかクソ狐」
「皆! 無事で良かった」
「おお、麗日くん! 轟くんたちと合流していたのか!」
「ほれ、あれが正しい再会の作法だ」
「誰がやるか!」
優幻と爆豪の組み合わせに対して、飯田と麗日があまりにも真っ当に再会を喜ぶそのギャップに、つい笑いが起きる。
「って、デクくんとメリッサさんは?」
「それが見当たらないんだ。探そうにもどこから手をつけて良いか……」
沈んだ表情を浮かべた飯田が話す途中、ズンと重たい音と共に、フロア全体が揺れる。
「上、か?」
「……こういう建物って、屋上にヘリポートがあるのがお約束だよね」
「……逃走経路に空を行く、っていうのも、お約束だよな」
「……緑谷、ヴィランを追いかけたか?」
「……もしかして、メリッサさんを救けるため、とか?」
「いかん、急ごう!」
事情は不明だが、緑谷ならばとその場の面々が状況を予測し、弾かれたように動き出す。
◆ ◆ ◆
非常階段を上へと駆けて、目的の屋上へ辿り着いた瞬間、素早く事態を察知して動いた者たちが居た。
「チイッ!」
忌々しげに舌打ちひとつ、爆豪は両手の爆破で空を飛び。
「私のを使え、轟っ!」
「おお!」
彼らの目に写ったのは、巨大な異形としか呼べない何か。数多のワイヤーや鉄板で形作られた、奇妙な存在だった。
金属製の柱のような物が、何故か居るオールマイトへと殺到する状況に、優幻が手早く捕縛用の鎖を伸ばし。それぞれの柱へ接続すると、それを伝導して轟の氷結によって動きを止める。
「あんなクソダセえラスボスに、何やられてんだよ! ええっ、オールマイト!」
上空へと飛び出した爆豪が、異形の中心を狙って爆撃の雨を振らせ、叫んだ。その表情には、苦痛の色が混じる。
爆豪以外の面々も、既に疲労困憊だ。
しかし、それを理由に止まる者などいない。
「金属の塊は俺たちが引き受けます!」
「私と轟で止めていこうか」
「助かる。伝導するもんがねえとさすがにキツい。討ち漏らしは頼む」
「任されたよ。良いよな、飯田」
「ああ。八百万くん、この場を頼む!」
攻撃能力の高い者たちが、率先して動き出す。
優幻の鎖が伸び、轟が凍らせていく。それでもなお作り出される鈍い色をした柱は、爆豪が迎撃。ようやく掻い潜ろうとも、飯田と尾白が弾いて軌道を逸らし、切島が砕く。
「教え子にこうも発破をかけられては、限界だ何だと言ってられないな……!」
その姿に奮起せぬはずも無い。限界を超える時、それは心が燃え上がった時だと、オールマイトは知っている。
若者たちが、生徒たちが。未だヒヨコにもならない有精卵たちが奮戦している。その事実こそが、力を与えてくれる。
その想いに応えるように、オールマイトの肉体が少し肥大化したかのように見えるほど、力が籠もった。
「限界を超えて! 更に向こうへ!」
圧し潰さんとする金属の塊を押し返し、オールマイトが飛び出した。迎え撃たんとするヴィランの攻撃をその豪拳で粉砕しながら。
「っく、"多重展開"、"対物結界"」
ただでさえ止まる気配のないオールマイトだというのに、阻むために作り出した金属柱が、金色の壁によって止められてしまう。
「狐条少年!」
「行ってください、オールマイト!」
長期戦になれば、消耗も激しく未熟な自分たちが足手まといに変わる。そう考えた優幻が、残る力を振り絞って作り出した壁によって、道が出来上がる。
僅か数秒。限界の近い優幻に維持できる時間は短いが、No1ヒーローにはそれだけあれば充分。結界が砕け散る時には、ヴィランのすぐ側まで近付いていた。
「観念しろ、ヴィランよ! ──むっ!?」
固く拳を握り飛び込むオールマイトだったが、その身体を幾本ものワイヤーが絡め取り、その動きを封じる。
「この程度っ!」
「観念しろぉ? そりゃあ、こっちの台詞だ!」
ヴィランの腕が、オールマイトの首に。
そして、彼の古傷の残る脇腹へ。
「ぐあああああっ!」
夜闇の中、苦悶の声が木霊する。
◆ ◆ ◆
「デクくん、動いちゃダメよ!」
左肩を押さえて蹲り、それでもなお立ち上がろうとする緑谷に、メリッサの制止の声は届いていない。
「……まったく、無茶をするなあ、相変わらず」
「狐、条くん……」
痛みに表情を歪ませる緑谷に、ゆっくりと歩み寄る優幻。既に限界を迎えているのか、頭を左右に揺らしながら歩く姿はまるで病人のようであった。
「緑谷、お前が、適任でな」
「何、を……?」
「覚えているか、USJで相澤先生に使った札を。あれの、改良版だ」
ふらつきながら辿り着いた優幻が、1枚の呪符を緑谷の左手首に巻きつけるようにして貼る。
「使えるのは、2枚だけだ。これを、オールマイトに渡せ」
話しながら、痛みに喘ぐ緑谷の手に、もう1枚の呪符を握らせ、笑う。
「発動すれば最後、私はそいつの維持に精一杯。これが、今の私にできる最大限の援護だ。……頼んだ」
「……かな、らずっ!」
「……それでこそ。"発動"」
緑谷の目に迷いは無い。かの幼馴染や、職場体験の際に共闘した2人と同様に、目の前でふらつきながらも笑うクラスメイトの実力が確かであると知っている。
柔らかな光が札から発せられ、瞬間、痛みが消えたことに少しばかり驚きはしたが。
「マイトおじさま!」
しかし、構っている暇は無い。メリッサの悲鳴に、思わず顔を向けた緑谷と優幻が目にしたのは。
先程までオールマイトが居た場所に殺到し押し潰す金属の塊。そして、突き立てられた槍のような存在。
視認した瞬間には、緑谷は既に飛び出していた。
「DETROIT……SMASH!」
個性によって強化され、ガントレットに覆われた拳が叩き込まれる。そのパワーはしっかりと伝わり、様々なパーツを寄せ集めた塊は四散していく。
弾き飛ばされた瓦礫にぶつかりながら、緑谷とオールマイトは地面へと落ちた。
「緑谷少年! そんな身体で、何て無茶な!」
「だって、困っている人を救けるのが、ヒーローだから……!」
不器用ながらにも笑う姿に、オールマイトが抱いた感情は何だったのか。少しばかり、ポカンとしてしまっていた。
「……フフ、ハーハッハ! ありがとう、確かに今の私は、ほんの少しだけ困っている! ……手を貸してくれ、緑谷少年」
「はいっ! ……っと、そうだ、狐条くんから預かってるものがあります」
「狐条少年から?」
緑谷が握る1枚の札は、淡く金色に輝いていた。オールマイトの身体に近付けられると、ピタリと張り付く。
「これは……!」
途端に、身体の痛みは消え、奥底から力が湧き上がるような感覚。まるで全盛期の頃のようで。
「──行くぞ!」
「はいっ!」
決意に満ちた愛弟子と共に、オールマイトは地面を蹴る。しっかりと強化された彼らの脚力は、すぐにトップスピードに届く。
「……くたばり損ないのガキが……! ゴミの分際でぇ……! 往生際が、悪いんだよぉっ!」
「そりゃあ、テメエだろうがっ!」
「させねえ!」
駆け抜ける2人への攻撃は、爆豪が撃ち落とし、轟の氷壁に防がれる。
既に2人共に限界を超えている。爆豪らしからぬ痛みを堪えた表情も、炎熱が間に合わず霜の降りた身体で動く轟も。
「……ちと、無茶だったか、な」
そして、呪符を貼り付けた者のダメージを"肩代わり"し続けている優幻も、術式の制御に専念せねばならないほどに。
疾走するオールマイトと緑谷に迫る金属柱は、爆豪と轟によって数を減らされ、優幻によって全力を出せるようになった2人の拳によって粉砕されていく。
更に攻撃をとヴィランが行動するが、発生箇所となる地表付近では飯田が縦横無尽に駆け回り、尾白と切島がひとつひとつを潰していく。
「邪魔だぁっ!」
しかしヴィランとて黙ってやられはしない。迫り来るオールマイトと、直前までデヴィット博士を救けんと食い下がって来た緑谷を捨ておき、全ての金属柱を奮戦する生徒たちへと向ける。
「キャアッ!」
足場を崩しながら生徒たちを吹き飛ばす力の波は、当然のごとくメリッサも巻き込む。彼女の華奢な身体は簡単に飛ばされてしまうが。
「く、ご無事で、すか」
そのまま地面へと叩きつけられる寸前、無理矢理動いた優幻が抱き止め、自身をクッションにして庇う。
「あ、ありがとう狐条くん」
「お気に、なさらず。……戦況、は」
急いで下敷きにした状態から離れるメリッサと、かろうじてという言葉通りに上体を起こした優幻の目に写ったのは──
隆々とした背中を見せて駆けるNO1ヒーローと、並び走る緑谷出久。
「……あれ、は?」
ふと、視界に入った影に優幻の視線が取られる。
ヴィランの頭上。そこに浮かんでいるのは、一辺が20メートルはあろうかという、巨大な立方体。金属を集め、固めた超質量。
「タワーごと、潰れちまえぇっ!」
ヴィランの咆哮に押され、はじめはゆっくりと、徐々にその速度を増して、金属塊が落下をはじめる。
2人が、それを見過ごすはずがない。
「「DOUBLE DETROIT SMASH!」」
力強く踏み込み、共に握り込んだ拳を突き刺して。それぞれが圧倒的なパワーを持つ豪腕。
緑谷に関してのみ、全力を出せば自らをも破壊してしまうという難点がある。しかしそれは、1人の才媛が作り出した、赤いガントレットによって解消される。
膨大な破壊エネルギーは余すことなく伝わり、巨大な金属塊を砕き崩すことに成功した。
「行っけええっ!」
「「オールマイト!」」
「「緑谷ぁっ!」」
「緑谷くん!」
祈りのような声援に後押しされて、更に突き進む。
「「「ブチかませっ!」」」
声に勢いがあるならば、確かにそれは彼らの背中を押した。
「更に!」
「向こうへ!」
「「PLUS ULTRA!」」
吠えたてる声と共に想いを込めて、ヴィランを覆う金属の巨体へと、彼らの拳が突き刺さった。
ヴィランによって形作られていた様々なパーツが飛び散り、水平線から顔を覗かせていた朝日を浴びて輝く。
そんな中で拳を振り抜いた格好のまま笑ってみせる緑谷の姿に、"誰か"を重ねたとある人物の瞳を潤ませて。