ヒーロー志望のお狐さん   作:広瀬狐太郎

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36 林間合宿(3)

「……何コレ」

 

 ハードな特訓で疲れ果てた中での夕食を終え、入浴しようと風呂場にやって来たB組女子の目の前には、奇妙なオブジェが鎮座していた。

 直方体の箱。セメントで出来ているらしいそれは、間違い無く昨日は無かった。というか、通路のど真ん中にあるのでもの凄く邪魔だった。

 

「おっ、一佳ちゃんだ! B組の皆も今から?」

 

 さてどうしたものかと立ち止まった少女たちの背後から、声がかかる。葉隠だ。

 

 男子に関しては、人数の都合から厳密に入浴時間が決まっているが、女子は割と緩い。何せ2クラス合わせても、片クラスの男子より少ないのだから。

 

「ああ、そのつもりなんだけどさ。見慣れない妙なものがあるんだ」

 

 拳藤の言葉に、葉隠に続いていたA組女子も何事かとそこへと視線を向ける。

 

「箱?」

「箱だね」

「箱ですわね」

 

 他に言いようの無い箱である。のだが、彼女たちには正解へ辿り着く材料があった。

 

「これ、前に狐条(こじょう)ちゃんが言っていた、峰田ちゃん用のお仕置き道具じゃないかしら。先生方の間で使うかどうか意見が別れた、"控えめに言って拷問器具"とか言う仕掛け」

「何それ怖い」

 

 一応、本来の対策は別に存在していた。A組B組の男子が女湯を見た場合、風呂場に居る人間が"形容し難い冒涜的な外見の化物"に見えるようになるという仕掛けだ。説明のために見せられた教師陣や各クラス女子がドン引きするレベルの出来栄えである。

 デザインした発目だけが、平然としていたが。

 

「あの幻以上、なのですか」

「どうなんだろう。一応狐条に連絡したけど──って、返事きた。回収に来るからそのまま置いといてほしいってさ」

 

 耳郎が受け取った返信を読み上げてから十数秒。廊下の角から、A組B組両担任と、付き従うように金色の狐耳が現れた。

 

「いや早っ!」

「発動したことは感知していたのでな。先生方に知らせていたんだ」

「ううむ。まさか昨日の今日でか」

「だから言ったろ、性欲の権化だと」

 

 今回の性犯罪事前撲滅アイテムに対して、「何もそこまでしなくても」という反対派だったブラドキングと、「やるならとことんやる」と賛成派に回った相澤。この日は相澤の想像通りとなった。

 

「簡単に説明しておくと、この中に峰田が入っている。女湯に近付いた時点で発動する仕組みでな。外部からの音、光を遮断し、完全な闇になっているよ。空気だけは入れ替えているが」

「それ何かのコミックで見た。発狂するやつ」

「流石に一晩ではどうにもなるまいよ」

「……ふむ、力技で破壊できなくはなさそうだが、峰田にはキツいか。脱出できるならそれはそれで力をつけた証でもある。……良いぞ、狐条。外に捨ててこい」

「わかりました」

 

 念の為に状態を確認した相澤の命に従って、強化術式を発動させた優幻(ゆうま)が数十キロにもなる箱を持ち上げ、去っていく。

 

「と言うわけだ。脱出できたとしても時間はかかるだろうから、安心するように」

 

 ブラドキングの言葉に、女子一同は元気に返事を返して脱衣所へと向かっていく。

 乙女の敵に容赦は要らぬ。

 

   ◆   ◆   ◆

 

「何て言うか、A組の男子ってキワモノ多くない?」

 

 湯船につかる取蔭の言葉に、思い当たる所の多い面々は苦い顔だ。

 

「"暴君"爆豪、"性欲の権化"峰田、"ナンパ師"上鳴、"校舎爆発犯"狐条」

「何そのあだ名」

 

 指折り数える柳に、思わず芦戸がツッコミに回ってしまう。

 

「B組は物間1人くらいだから」

「その1人がキワモノすぎへん?」

「反論の余地ナイですネ」

 

 女3人寄ればかしましい、などと言うが、10人を超えれば拍車もかかる。

 

「でも他の科からあだ名つけられてるの、結構居るよ。"非常口"飯田は有名どころだね」

「あー、あの時の」

「そういう意味じゃ、やっぱA組は目立ってるよね。"オトコマエ"麗日、とかさ」

「あれえ!? 何それ小森さん! 異議申し立てたいんやけども!」

「体育祭の対爆豪戦見てたらそーなるでしょ」

「だからお茶子ちゃん、バトルヒーロー・ガンヘッドから指名来たんじゃないかしら」

 

 思わず立ち上がった麗日だが、耳郎と蛙吹に背後から撃たれ、あえなく湯の中へと沈んでしまった。

 

「有名、ということでしたら、拳藤さんと八百万さんでは? CMにも出ておりましたし」

「言わないで茨」

「言わないでください塩崎さん」

「えー、羨ましいけどなー。私なんてプロになってもCMの話来そうにないし」

「cosmeticsはどうデスカ? 『透明感ある肌』言ってマシタヨ」

「透明すぎる!」

 

 軽やかな声が響き渡る。

 ハードな訓練をこなしていても、やはり年頃の女の子。こうして詮無い話で盛り上がるのも、彼女たちには必要な時間だった。

 

   ◆   ◆   ◆

 

 ヒーロー科1年生たちが合宿に訪れている、"マタタビ荘"の正面玄関前。そこに立つ2人の人影に気付いたのは、B組に所属する角取だった。

 担任であるブラドキングから、昼間の訓練について注意とアドバイスを受けた帰りだった彼女は、同じ理由で共に歩いていた取蔭と小森を呼び止める。

 

「んー? あれ、ラグドールさんと狐条だ」

 

 その正体に気付いた小森の言葉に、しかし"ここに居る理由"まではわからない3人は首を傾げる。

 聞き及んでいる話では、男子は明日の夕食に使う肉の種類をかけて、腕相撲勝負が行われているはず。

 ともかく邪魔をしてしまうのも気が引けた3人は、こっそりと様子を伺おうとしたところで。

 

「ほいタッチ」

「うひゃいっ!?」

 

 そっと覗き見る3人の背後から忍び寄った人物が、手に持つ冷たいペットボトルを、そのうちの1人である取蔭の首筋に当てた瞬間、予期しない感覚に悲鳴があがる。

 すぐそばで唐突に悲鳴が聞こえれば、驚いてしまうのも無理からぬこと。続いて角取が、更に小森が驚いて声を出してしまう。

 

「む?」

「およ?」

 

 当然、大きな声を出せば気付かれる。何事かとやって来た優幻とラグドール、背後から忍び寄ったピクシーボブにとり囲まれる格好になってしまった。

 

「いやー……。何してるのかなー、って」

「Oh、ゴメンナサイですね……。盗み見る、になってしまいまシタ」

「別段、見られて困るものではないのだが」

「メンゴね。"雄英生、プロヒーローを口説く!"みたいな場面かと」

「訂正だ小森。お前さんはちょっと反省しなさい」

 

 ぽすん、と優幻の手刀が小森の頭頂部に振り下ろされる。勢いの無いそれが、彼が大して気にしていないことを示していた。

 

「気になるのもしょーがないけどね。でも端から見てたらわかんないかも。何せ、未だに解明しきれてない、幻想系個性の不思議パワー解析実験だし」

「何それチョー気になるんですけど」

「成功確率はあまり高くないぞ。解明のヒントを得るのが主目的だしな。先人が諸々試してダメだったのだから」

 

 優幻の言葉にしかし、3人娘は退くつもりはないらしい。期待に満ちた眼差しで優幻とラグドールを見つめていた。

 

「まあ、観測視点は多い方が発見に繋がりますし、よろしいですか?」

「ポジティブ! 主催は君だし良いけどね!」

「では改めて、よろしくお願いします」

 

 そうして、優幻は穏やかな輝きの光弾を作り出すと、自身の周りをゆっくりと旋回させていく。ラグドールが何やら身振りを混じえて指示するのに合わせるように、不規則な軌道を描きながら。

 

「昼間あれだけやって、まだ余裕あるのかな」

「体育祭優勝はダテじゃないのかねえ。どんなスタミナしてるのやら」

 

 個性強化のための限界突破特訓。天高く爆炎を上げていた爆豪と同じく、空中から色とりどりの光弾を降らせ続けていた優幻の姿は、遠くからでもよく見えていた。ほぼ休みなく放ち続けていたにも関わらず、まだやれるのかと3人は感心しきりだ。

 

「んー……。一応言っておくけど、彼、そこまで凄いスタミナしてるわけじゃないよ?」

 

 そこに待ったをかけたのは、並んで佇んでいたピクシーボブだ。

 

「生徒全員のデータは見せてもらってるし、実際に見たからわかるんだけどね。数値的なトコで言えば、彼はA組B組合わせた中でも、中の上くらいかな」

「ええっ!?」

「デモ、体育祭スゴかっタ、デスよ?」

「うん、そこが面白いね。足りないトコは上手く隠して、工夫して立ち回ってる。理論立ててやってるから、参考になる所も多いと思うよ」

 

 はたと気付いたのは、この場にいる生徒3人の中で唯一、空戦能力を持たない小森だった。

 

「頑張れば、私も空中ダッシュが可能……?」

「あー……アレねぇ……。イレイザーから、やり方まとめたレポートは貰ったけど、オススメはできないかなぁ。リアルタイムで空気の動きを予測していかないとできないし」

「何スかそれ」

「彼はあれだ、めちゃくちゃ頭の良いおバカだ。普通考えないって、あんなトンデモ理論。考えたとしてもやらないもの」

 

 苦笑いするピクシーボブが思い返すのは、今回の合宿が決まった際に送られた資料。生徒たちのデータと共に送られた、"空中歩行の解説書"と銘打たれた内容は、プッシーキャッツ全員が呆れ果て、「誰がやるんだこんなアホ理論!」とツッコミを入れたシロモノである。

 担任のイレイザーヘッドからは、「他にも"空間圧縮論・入門編"もありますが」などと言われ、興味本位で中身を見てあまりの難解さに頭を抱えた。ヒーローに知力面も求められるとはいえ、いくらなんでも行き過ぎだ。研究者でもあるまいし。

 

 中の上、と彼を評したが、それはあくまで身体面や個性そのものについての話。分析力や思考力、発想力という点では、群を抜いているというより、"異質"という表現がピッタリだ。

 先の2つ以外にも、彼が扱う"個性によらない技術"についてのレポートは、既に数十種が担任へと提出されている。そのどれもが難解で複雑ながら、理解して実践すれば、例え無個性であっても驚異的な働きが可能だ。特に、イレイザーヘッドやラグドール、マンダレイのようなタイプの個性でヒーローになった者を、更に上のレベルへ到達させられる可能性がある。

 

「それでも、参考にできる部分は多いよ。色々教わるか、盗むかすると良い」

 

 ピクシーボブの言葉に目を輝かせる少女たち。頼もしい後輩候補の姿に、彼女はそっと口角を上げた。

 

   ◆   ◆   ◆

 

「本日の"狐条弾幕地獄"は、A組は麗日、飯田、尾白、障子、葉隠。B組は庄田、円場、吹出、物間、柳。今日の物間は柳をコピーして迎撃訓練に参加だ」

「その名称に異議を申し立てたいのですが、ブラドキング先生」

「却下だ。今回は色分けした弾を使ってもらう。では狐条、説明を」

 

 早朝、今日も今日とて広場に集まった生徒たち。その一部が、円形の舞台側に集められていた。

 しかし中には、優幻と共に特訓に臨むわけではないメンツも含まれている。A組は耳郎、B組は泡瀬と拳藤だ。

 

「使う弾は3種類。ひとつはこの青いヤツで、尾白と庄田が叩き落とす対象だ。サッカーボール程度の弾力だな。ぶつかるとそこそこの衝撃が来る」

 

 説明しながら、フワフワと浮かんだ光弾を、ゆっくりとした速度で尾白の方向へと射出する。その意を汲んだ彼が尻尾で弾くと、軽々と空へと飛んでいった。打ち返した尾白も特に痛みを感じている様子はなく、優幻の説明に納得していた。

 

「もう1つが、こちらの赤いの。これは、触れた相手に幻覚の痛みを与えるもので、今回使うのは生爪を剥がされる感覚が来る」

「拷問か!」

「あかん、ぞわってした」

「そして、昨日と違いこの舞台の外に出た分は消さない。基本的には内部で旋回するように動かすんだが、柳と物間は足を止めての迎撃だからな。バリエーションを増やすため直線軌道も使う。

 舞台中央に私。柳たちの立ち位置はあそこ。……その直線上には」

「……俺ら居るじゃん!」

 

 舞台に上がる予定のない面々。耳郎、拳藤、そして泡瀬が特訓する場所が、指し示された先にあった。

 

「物間と柳が撃ち落としそびれた場合、その背後に居る者が危険に晒される。ヒーローならば! 守りきらねばならん!

 加えて、耳郎、泡瀬、拳藤は常に周囲に気を配れ!」

「マジすか」

 

 雄英が【ただのハードな特訓】で済ませるわけがないのだと、彼らは再認識するハメになる。

 

「で、最後の1種は疲労回復効果のあるものになる。……この紅色だ」

「……さっきのと同じ色じゃないのか?」

「いや、微妙に違、う……のか? わからん」

「あ、悪趣味ではないだろうか……?」

 

 優幻の左右の手から作り出され、漂う2つの光弾は、一見すると同じものに思えた。その意図を理解した庄田の「悪趣味」という評価に誰もが頷く。

 ハードな特訓中に、ほんの微妙な違いに気を付けろ、と言うのはとても厳しい。

 

「一応、違いはちゃんとあるぞ。写真に撮って解析すれば、多分わかる」

「肉眼でわからない、と言っているようなものだろう、それは」

「頑張れ障子。……別に全部避けるなりしてくれても構わんのだ、私にとっては対多戦闘訓練を兼ねているのでな。疲労の溜まった潰しやすいところから、各個撃破を実践するだけだ」

「昨日はそれで切島と鉄哲をズタボロにしてたろ」

「あれは……エゲツなかったな……」

 

 尾白と飯田が思い出すのは、前日の特訓。

 防御に秀でた個性を伸ばさんとする2人が、自分に向かってくる分以外の光弾を撃ち落としはじめ、そのせいで疲労が早まった所を狙い撃たれた。一度綻んでしまうと、後は酷い有様。

 実は限界が近かった優幻がハイになり、高笑いと共に追い討ちをかけたせいで、より絵面が酷くなったのだが。

 

「加減しては訓練にならんだろう。私は全員叩き潰すつもりで臨むさ」

「や、野蛮だねえ」

「物間。悪いこと言わねえから身体ほぐしとけ。昨日の柳も、最終的には走り回るハメになったから」

 

 円場の言葉に、柳だけでなく前日の特訓参加者全員が頷く。

 柳の"ポルターガイスト"は、動かせる物の大きさもさることながら、範囲に限界がある。残弾のあるうちは動けず、しかし限界残量という弱点を優幻が突かないはずもないので、今日もまた遅かれ早かれ用意された弾は撃ち尽くすことになるだろう。

 そうなれば、前日と同じ。回避しながら、迎撃に使えそうな物を探して駆け回ることになる。物間と共に。

 

「もう今回は始めから全力だ。"無差別攻撃を仕掛けるヴィラン"への対応訓練とでも考えよう」

「だな。鍛えるポイントに意識向けつつ、やれることをトコトンやっていこう」

 

 地面にフォーメーションを描きながら、各人がそれぞれに出来る事をと提案して連携を考えていく。向上心溢れる生徒たちの姿にブラドキングは頬が緩むのを抑えきれなかった。

 

「むう、そういう立ち回りか。……ふははー。ぜんぶはかいしてやるぞー」

「ちょっと狐条くん黙っとってくれるかな」

「その言い方スゴいイラッとするね!」

「ぶっ飛ばしたい」

「ブラド先生! 狐条への反撃はオッケーッスか!?」

 

 そして彼らのヤル気という炎には、優幻のまるで"子供のヒーローごっこに付き合うのだ"と言わんばかりの表情と、棒読みの声という油が注がれて燃え上がる。

 回避や迎撃を主眼に置いての個性使用だというのに、これでは全員が反撃に出ようと無茶な行動を採るだろう。普通ならば諌めて冷静さを取り戻させる場面かもしれない。

 だが、生憎と雄英教師に"普通"など無い。ただ言われた通りの訓練をこなすより糧になるだろうと考えたブラドキングは、これを受け入れる。

 

「許可する、叩き落とすつもりでやれ。ただ漫然と個性を使うのではなく、極限を超えて酷使することが成長へと繋がる。……流石に今のは俺も腹立ったしな」

「最後のが主な理由では」

「喧しいぞ、諸悪の根源。夜には肝試しも行われる、今のうちに狐退治は済ませておけ」

 

 生徒たちのヤル気──ごく一部は"殺る気"ともとれる、力強い返事と共に、今日もまた過酷な特訓が始まる。

 

   ◆   ◆   ◆

 

■ オマケ 特訓『狐条弾幕地獄』

 

 煌めく夏の日差しの下。雲ひとつ無い快晴な天気に普段なら爽やかな気持ちになるかもしれないが、今、彼らはそれどころではなかった。

 

「ぬおおおおおおおおおおっ!?」

 

 雄英高校ヒーロー科、1年A組の委員長である飯田天哉は駆けていた。力強く、大地を踏みしめて。

 前へ、右へ、左へ。一歩ずつ方向転換を余儀なくされる、過酷な急加速と急制動の繰り返し。それは全て、上空、そして周囲360度から襲いかかる光弾が原因だ。

 回避、回避、回避。稀に襲い来る回避不可能な全方位同時攻撃の時は、"青"だけを探し出して迎撃し、離脱。そしてまた駆ける。

 

「いかん! 吹出くん!」

 

 視界に捉えたのは、共に困難へと挑む者の姿。オノマトペを具現化するという個性を持つ、吹出漫我がその能力を生かして光弾を撃ち落とし続け、その周囲、地面スレスレを這うように襲いかかる"赤"の存在。

 既に飯田自身は2度ほど体験している、痛みと共に鳥肌の立つような感覚を思い出し、地を蹴る力を強める。

 

「助かっ、ケホッ」

「無理はいけない! 君は反撃の要──うおおおおおおっ!?」

 

 吹出を抱えて走る飯田であったが、2人まとまっているなら丁度良いと言わんばかりに大量の光弾が降り注ぎ、その場を離れるしかなくなる。

 脚を酷使する特訓は尚も続く。

 

 

 

 走り回る飯田からやや離れた位置では、別の死闘が繰り広げられていた。

 

「やー! 狐条くん完全に私の位置わかってるよね!?」

「葉隠さん! ──ってア痛っ! 地味に尻尾ばかり狙うなよ狐条!」

 

 本気モードの葉隠と、彼女を狙う青い光弾を叩き落とす尾白。

 雨あられと降り注ぐ弾幕に対し、駆け回りながら吹出の作ったオノマトペを個性"ポルターガイスト"で拾い上げ、迎撃に使う柳と物間。

 

「こっちだけやけに数多くないかなっ!?」

「いいから落とす。完全に後ろの3人狙ってる」

「まったく! 性格悪いね!」

「「「お前が言うな」」」

 

 肩を並べる柳だけでなく、背後に居る泡瀬と拳藤からもツッコミを入れられ、それでも物間は不敵な笑みを崩すことはなく──直後に顔面へと猛進する赤い光弾を慌てて躱す。

 

「リクエストに応え、性悪らしく軌道を変えよう!」

 

 中空から無数の光弾を放ち続けていた優幻の言葉通り、変化が現れる。

 速度に緩急が加わり、より細やかに動きを変え、露骨なまでに死角を狙いだす。背後から忍び寄り、足下へ這う様に近付き、直上からの急降下が混じる。

 

「物間くんのアホー!」

 

 葉隠の悲鳴が、青空の下に響き渡った。

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