竜帝と魔王の異世界冒険譚   作:桐谷 アキト

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実は最近、ポケモンスリープを始めたんですよ。それで友達から聞いたんですけど、フレンドが多いとアメを集めやすいらしいですね。
リア友は既に交換しているんですけど、せっかくですし読者さんともフレンドになりたいなと思いまして、気が向いたらでいいのでフレンド登録お願いします!
アカウント名は桐谷アキトまんまです!
こちらが、私のリサーチャーコードです。
1897-1244-2264、です。お願いします!


さて、話は変わりますが、今回は陽和を襲った襲撃者達とのご対面です。タイトルで察してください!

ではどうぞ!





54話 兄と兄

 

 

 

轟音と共に陽和を飲み込んだ二色の極光。

それは、そのままマグマ蛇を二体ごと飲み込んで灼熱の海に着弾すると、盛大に周囲を吹き飛ばしながら一時的に海の底を曝け出した。

 

「は、陽和っ‼︎いやぁぁっ‼︎‼︎」

 

恋人が破滅の極光に呑まれた光景に雫が悲鳴じみた絶叫をあげる。その悲痛な叫び声によって呆然としていたハジメ達がハッと我を取り戻し、飛び出そうとした雫をハジメとティオが慌てて止める。

 

「雫っ今あっちに行くなっ‼︎巻き込まれるぞっ‼︎」

「不用意に飛び込んではならんっ‼︎死ぬぞっ‼︎」

「離してっ‼︎陽和がっ、陽和がぁぁっ‼︎‼︎」

 

二人に左右から肩と腕を掴んで抑え込まれるが、雫はそれでも尚陽和の元へと行こうと必死に暴れる。

その間も極光は、しばらくマグマ海を穿ち続けていたが、次第に細くなっていき、遂にはスッと虚空の中へと溶け込むように消えて、宙には斜線に沿って紫に迸るプラズマの残滓が漂っていた。

 

 

そして、光が晴れた中に陽和の姿はなかった。

 

 

陽和の姿がないことに全員が思わず動きを止めて呆然としてしまう。

 

「そん、な……はる、と……」

「うそ、だろ……」

「マジかよ……」

 

陽和が消えたという現実を前に唖然とするハジメ達。雫は陽和がさっきまでいた場所から視線を逸らさずに、瞳から大粒の涙を流しながら崩れ落ちた。

 

「ぁ……あぁぁ……はる、と……」

 

突然の恋人の喪失に雫が現実を受け入れることができず、やがて悲鳴をあげようとした、その時だ。

 

 

「「「「ッッ⁉︎⁉︎」」」」

 

 

ドバァァァンン!とマグマ海の中から何かが飛沫を上げながら飛び出してくる。

 

「はぁ……はぁっ!……はぁっ!」

 

飛び出してきたのは、ボロボロになりながらも五体満足で荒い呼吸を繰り返す陽和だった。

だが、纏う鎧はおよそ半分ほどが亀裂が生じており、兜は一部が砕けており素顔が露出してしまっているほどだった。口の端からは血が垂れており、内臓も少なからずダメージを受けたのは明白だった。

 

彼の片手には赤に金の装飾が施され、中心に青緑の宝玉が嵌め込まれている大盾が握られていた。

あのとき、極光の直撃を防御が間に合わなかったがために受けてしまい、一気にマグマ海の底まで叩きつけられた陽和は、極光に鎧を半ば砕かれながらも体勢を変えて極光に正面を向き、マグマ海の底に背中を預けるようにすると、竜聖剣を大盾の形に変形させたのだ。

大盾によって途中から極光を防ぐことに成功し、消えるまで耐えていた陽和は、勢いが弱まった瞬間に重力魔法で真横に移動してマグマ海へと潜ることで回避して海上へと飛び出したのだ。

高い耐性値と頑強な防御力のおかげで内臓に幾らかのダメージと鎧の一部損傷に留めることができたのだが、他の者達では命が危うい者もいただろう。

 

「陽和っ‼︎‼︎」

 

ハジメ達が陽和の無事に安堵し肩の力を緩めた瞬間、雫は二人の拘束を振り切り竜翼を羽ばたかせながら陽和に近づこうとする。

陽和も近づいてくる雫に気づいたが、何かを感じてか焦燥を顕に叫ぶ。

 

「雫、上だっ‼︎避けろっ‼︎」

「えっ?」

 

陽和の警告と同時に、雫達の頭上で無数の閃光が瞬き、一瞬の後に無数の閃光が豪雨の如く降り注いだ。それは、縮小版の白銀の極光と、紫黒の魔弾だ。先程の融合した一撃に比べれば、威力は十分の一程度の規模だが、一発一発が破壊的な威力をこめているのは確かだ。

雫は、陽和の元へ向かうことに気を取られすぎて上空から降り注ぐ数多の閃光に気づくのが遅れて、警告に天を仰ぎ見たときには、もはや防御すら間に合わず、呑み込まれると思わざるを得なかった。

だが、

 

「ヘスティアァァッッ‼︎‼︎」

『任せてっ‼︎‼︎』

 

重力魔法と風属性魔法の複合による加速を一瞬で発動した陽和は、翼を大きく羽ばたかせながら間一髪で雫の元へと辿り着くと雫を強く抱きしめながら、重力魔法でその場に浮かび、片手の大盾を掲げて相棒の名を叫ぶ。

刹那、ヘスティアは主人の叫びに応えて燦然と輝く“浄火の大光盾”を展開し、陽和と雫を救状に包み込んだ。

直後、光炎の二重障壁に破滅の奔流が殺到する。

ドドドドドドドドドドドッッ!!!と大爆破の如き圧力が陽和達を消滅させんと間断なく襲いかかり、陽和の“浄火の大光盾”が少し軋み、大盾を構える腕に重い衝撃がのしかかる。

 

「うっ、ぐぅっ、おおぉぉっ‼︎‼︎」

 

陽和は想像以上の威力と咄嗟に展開したため魔力量が足りなかったことから、このままでは押し切られると判断して声を張り上げる。

 

「ドライ、グッ、譲渡しろっ!!」

『おうっ‼︎‼︎』

『BoostBoostBoost‼︎‼︎‼︎』

『Transfer‼︎‼︎』

 

陽和の言葉に応えすかさず倍加した力を大盾へと変形した竜聖剣へと譲渡する。直後、譲渡のおかげか障壁は輝きと頑丈さを増し、降り注ぐ破滅の奔流を確かに防ぐ。

 

「私も手伝うわ!“波城壁”ッ‼︎」

 

更に正気を取り戻した雫が光炎の二重障壁の上に傘のように自分達を覆えるサイズの水の障壁を展開して、彼のサポートを行う。

彼女の障壁のおかげで陽和の負担が幾分か軽くなり、彼は周囲を見渡す余裕ができた。

 

周囲は、小極光と小魔弾の余波で荒れ狂い破壊し尽くされ、足場は全て粉微塵にされていた。

 

(ティオ達は凌いでる。……いや、俺達に弾幕が集中してるのか)

 

視線を動かし一塊になっていたはずのティオ達を探す。すると、離れた足場にティオ達は一塊となっており、ユエの“聖絶”、ティオの風のシールド、セレリアの氷の盾の三重の防御により降り注ぐ豪雨を凌いでいた。

彼女達には足止め程度にしか降り注いでおらず、陽和達が受けているものに比べれば、幾分か威力が低いがそれでも彼女達が足止めを食らっているという事実が、威力も密度も高く、尋常ならざる攻撃だということが明らかだった。

 

「陽和っ‼︎雫っ‼︎」

「大丈夫じゃ、セレリア!見た限りでは、二人とも凌いでおるっ‼︎」

 

ティオもセレリアの気持ちは痛いほどにわかる。しかし、あの陽和の鎧を一部でも砕いたという事実が、ティオに最大限の警戒を齎し、必死に光の豪雨を逸らし続ける。

 

「チッ、急になんだってんだっ‼︎」

「わ、わかりません!何が何だかっ」

「……んっ、尋常じゃないのは確か」

 

ハジメ、シアも当然の事態に悪態をつき、ティオやセレリアと共に豪雨を障壁で凌ぐユエは尋常ならざる攻撃の奔流に警戒心を最大限にしている。

 

それから十秒か、それとも一分か。

永遠に続くかと思われた破滅の嵐は最後に一際激しく降り注いだ後、ようやく終わりを告げた。周囲は、見るも無惨な状態になっており、あちこちから白煙を上げている。

ユエやティオは魔力を使い切り、肩で息をしながら魔晶石にストックしてあった魔力を取り出して充填する。セレリアもユエ達ほどではないが、魔力を大幅に消費してしまったので、念の為補充を行なった。

 

「はぁ、はぁ……」

「陽和っ」

「大丈夫だ。死ぬような、傷じゃない」

 

破壊の嵐を凌ぎ切り、盾を構えた腕を力無く下ろしながら陽和は、雫に腕を肩に乗せられて支えられている。魔力はまだ半分以上残っているが、肉体の損傷が少し大きいため、“ディア・エイル”で傷を癒しながら心配そうに見上げてくる雫にそう返した。

と、その時、上空から感嘆半分呆れ半分の声が降ってきた。

 

「……看過できない実力だ。やはり、ここで待ち伏せていて正解だった。お前達は危険すぎる。特に、赤髪の男、貴様は……」

 

陽和達は、その声がした天井付近に視線を向けると驚愕に目を見開いた。

セレリアはその驚愕の中に明らかな動揺を混ぜて、体を小刻みに震わせており、冷や汗を流しながら彼らを見上げる。

 

「まさか……そんな……」

 

信じられないという様子で呟く彼女の視線の先には、夥しい数の竜と、それらの竜とは比べ物にならないくらいの巨体を誇る純白の竜と、それすらも上回る体躯の紫黒の竜が飛んでおり、白竜の背には赤髪で赤黒い肌の魔人族の男が、紫竜の背には()()()()()と赤黒い肌の魔人族の男がそれぞれいた。

 

「まさか、私のウラノスとディレイドのエレボスのブレスを直撃させても殺し切れんとは……。女共もだ。まさか総勢八十体の灰色と紫竜の掃射を耐え切るなどあり得んことだ。貴様ら、一体何者だ?いくつの神代魔法を習得している?なぜ、貴様らが、裏切り者の『銀狼』と共にいる?」

(ディレイド…‥じゃあ、紫髪の男が、セレリアの……)

 

赤髪の男がティオに似た黄金色の眼を剣呑に細めながら、上空より睥睨しながらそんな質問をしてくる。どうやら、陽和達の力がどこかの大迷宮の力をクリアして手に入れた神代魔法のおかげだと考えたようだ。

だが、そんなことよりも陽和は今確かに彼が『ディレイド』という名前を呟いていたのを確かに聞いていた。

その名前は、記憶が正しければ、セレリアを『獣魔兵』に変えた元凶にして、実の兄である男のものだ。それが意味するところは、つまり……

 

「兄さん……どうして、あなたが、ここに……」

「……久しいな、セレリア。よもや、施設を脱走した後、異教徒共と行動を共にしているとはな」

 

セレリアの呟きに紫髪の男はー彼女の実兄ディレイド・ベルグライスは、濃紺色の眼を鋭くしながら、セレリアへ冷酷な声音でそう返した。その瞳は、その声音はあまりにも冷たく、とてもではないが妹に向けるものではなかった。

それでその場にいた全員の眼差しに一気に剣呑さと怒りがが宿る。大切な仲間である彼女を傷つけた男だ。全員の心証は既に悪い上に、陽和なんかは凄まじい殺気を放っていた。

回復を完了して鎧を纏い直した陽和は、憤怒に表情を歪め、怒りを露わにしながら口を開く。

 

『フリード・バグアー。ディレイド・ベルグライス。まさか、魔人族の二大将軍が雁首揃えて登場するとはな。よっぽど大迷宮攻略に精を注いでいるらしい』

「いかにも。我らは貴様ら異教徒共に神罰を下す忠実なる神の使徒である」

「そういう貴様は、復活したと言われるかの邪竜、赤竜帝だな?その異常な力、先程の赤竜に転じた姿、貴様が赤竜帝である他ならぬ証拠だろう。バートとカトレアを殺したのも貴様か?」

「その通りだ。俺こそが赤竜帝紅咲陽和。神に抗う者だ。バートも、カトレアも俺がこの手で殺した」

 

ディレイドの言葉に素直に認め名乗りをあげた陽和の隣に、“空力”で駆け上がってきたハジメが並び立つ。

 

「で?神の使徒様が何の用で俺らを待ち伏せしていた?…まぁどうせ、障害になるから排除するってところか」

「その通りだ。我が主アルヴ様の望みを叶える為に己の全てをかけて貴様ら異教徒共をここで排除する。貴様らは既に危険因子だ。後々大きな障害になりかねん貴様らの存在を私は全力で否定する」

「ハッ、ほざけ。神の奴隷如きに俺らは止められねぇ。俺の前に立ちはだかったお前は敵だ。敵なら、ぶち殺してやる」

 

苛烈な物言いをするフリードにハジメは不敵に笑いながらドンナーを向けそう告げる。今にも一触即発な雰囲気の中、陽和が静かな声音でディレイドに質問を投げかけた。

 

『ディレイド・ベルグライス。俺はあんたにどうしても聞きたいことがある』

「ふん、異教徒の言葉に耳を貸す気はないが、まぁいいだろう。なんだ?」

『なぜセレリアを獣魔兵なんてものにした?妹じゃないのか?』

「…………」

 

陽和の問いかけに口を噤み黙り込んでしまうディレイド。だが、数秒の沈黙の後に彼は口を開くとさも当然であるかのように言い放つ。

 

「我が主アルヴ様からの神託があったからだ。我が妹の肉体を変成魔法で作り変え強力な戦士にすることで、人間族の戦争に勝利するための新たな英雄を生み出すのだと。そう仰せになられたからこそ、俺はセレリアを獣魔兵にした」

『実の妹を、唯一の家族を傷つけることに…‥何も、罪悪感を、感じなかったのか?』

「なぜ罪悪感を感じる?アルヴ様の神託を断る理由がどこにあると言うのだ?神の使徒としては誉れ高きことだろう。それに、国を守る為の英雄になれるのだ、何故躊躇するのか俺にはわからんな」

 

平然とそう返したディレイドに陽和は兜の下で怒りに眼を見開きながら、歯が剥き出しになるほどに噛み締めた。両手がギチギチとなるほどに強く握りしめられ、あまりの強さに震えてしまうほどの激情を全身から滲ませる。

 

『……お前ッ、それを、本気で言ってるのかっ?』

「本気も何も。それこそが神の使徒としての当然のあり方だ」

『……っっ‼︎‼︎』

 

どこまでも神の為にと言い家族を傷つけることを是とする彼に怒りが限界を迎え爆発しようとしたその瞬間、

 

「どう、して……」

『ッッ‼︎』

 

セレリアのか細い声が小さく響いた。

そちらへと視線を向ければ、セレリアが自分達を見上げ、正確にはディレイドに縋るような視線を向けていた。

 

「兄さんは、魔人族の為っていって氷雪洞窟を攻略したはずなのに、どうして神の為と、信仰に執着するようになったんだ?なんで、しなくてもいい戦いをして同胞を傷つけようとするんだっ⁉︎バートさんも、カトレアさんも、本当なら死ぬはずがなかったのにっ‼︎どうしてっ‼︎‼︎」

『セレリア……』

 

セレリアは同胞である魔人族を神の呪縛から解放する為に兄達と敵対し戦うことを選んだ。その覚悟を、実際にカトレア達の前で示したのだが、今この場での兄達との急な邂逅をしてしまい、その覚悟が揺らぎつつあったのだろう。

懇願するように叫ぶ彼女に、ディレイドはしばらく冷酷な眼差しで見下ろすと、

 

「それが我が主が望んだことだからだ」

 

そう淡々と告げた。実にあっさりとした返答にセレリアが眼を丸くし愕然とする中、ディレイドは彼女に冷たい言葉を投げかける。

 

「むしろ、分からんな。なぜお前はアルヴ様の御意志がわからない?獣魔兵なんていう奇跡の力を賜わっておきながら、なぜ我らに牙を向ける?」

「そ、それは、兄さん達が、間違って……」

「神の意志は全てにおいて優先される。同胞の未来も、家族であるお前のことも、その次に優先すべきものだ。アルヴ様の治める世界になれば、同胞も、お前も幸せになれるのだ。カトレアもバートも殉教したのだ。本望だろう」

「違うっ‼︎そんなのは幸せじゃないっ‼︎‼︎」

 

神の意思こそ全てと言い、神の意志に従うことこそ史上の幸福だと言い切るディレイドにセレリアは首を横に振りながら叫びそれを否定する。

 

「そんな世界に幸せなんてないっ‼︎家族も、同胞も犠牲にして得る未来に幸せなんてあるわけがないっ‼︎私は、私にとっての幸せは、兄さんと一緒に普通に生きることだったっ‼︎‼︎」

 

髪を振り乱し、瞳から大粒の涙を流しながら彼女は内に秘めた家族への愛情を言葉にして叫ぶ。

 

「私は、兄さんが誇りであり憧れだった‼︎お父さんとお母さんがいなくなって、私は兄さんしか頼れる人がいなかった‼︎兄さんは、私をいつも守ってくれた。将軍の地位についたことも私は嬉しかったっ‼︎あの日常が、私の幸せだった‼︎それ以上を私は望まなかったっ‼︎兄さんだって同じ気持ちのはずなのに、何で世界を狂わせてる元凶に従うんだっ‼︎‼︎」

 

想いの丈を叫んだセレリアは肩を上下させながら、キッとディレイドを睨む。その瞳の奥にはどうか気づいてほしいと言う妹の祈りが込められていた。

しかし、現実は非情で、そんな心優しき妹の祈りは、

 

「そんなことは瑣末な事だ」

 

変わってしまった兄には届かなかった。

 

「アルヴ様の御意志こそ全てだ。崇高な御意志を理解できんとは……どうやら、貴様は異端に堕ちたようだな」

「そん、な……」

 

実の兄に想いは届かず、異端に堕ちたと蔑まれた事実にセレリアは膝から崩れ落ちる。もはや、記憶の中にあった兄の姿は、なくなってしまったのだと思い知らされ、セレリアは悲しみに打ちひしがれて言葉を発することすらできなくなっていた。

 

「………裏切り者でも考え次第では温情を与えてやろうと思ったが…貴様は異端に堕ちてしまったのか。それならば、せめてもの情けとして兄である俺が直々に裁いてやろう。後悔の果てにし『黙れ』……」

 

その言葉を言い切る前に陽和の声が彼の言葉を遮る。

その声音は、雫が殺されかけた時の声と全く同じ冷たさで、底冷えするような憤怒を超えた殺気を全身から放っていた。既に“クリムゾン・アルマ”は発動されており、紅緋の炎雷が彼の全身を覆い怒りを体現するかのように勢いよく滾っている。

ディレイドはスッと口を閉ざすと、陽和へと視線を向ける。その瞳は明らかな警戒が宿っていた。

彼が従える紫竜のエレボスも牙を剥き出しにし、威嚇する中、陽和は静かに、だが明確な怒りを宿しながら口を開く。

 

『もういい、お前の考えはよく分かった。もしかしたらと思っていたが、お前は大事な家族を平然と傷つけるクソ野郎、それだけで十分だ。ならば、容赦はしない。ここで徹底的に叩き潰してやる』

「ほう、まだ若いだろうにその歳でそこまでの気迫を出せるか。やはり貴様は最高級の強者のようだな」

『そんなことはどうでもいい。とにかく、お前は俺を怒らせた。絶対に許さねぇ。ただで済むと思うなよ』

 

大盾から長剣へと戻した竜聖剣の鋒を向けながら、そう宣告する陽和。空間を歪ませるほどの莫大なまでの魔力の高まりと殺気が広がる中、ディレイドは獰猛に顔を歪め嗤う。

 

「ふっ、この殺気。やはり、強者との戦いほど楽しいものはない」

『御託はいい。俺はただ……お前を潰す』

 

その言葉が合図となり、戦いの火蓋は切って落とされた。ハジメがドンナーを発砲すると同時に、十字架型の兵器。重力で制御できるオールレンジ兵器のクロスバットを操作して突撃させて、ユエが“雷龍”を、ティオがブレスを、シアが炸裂スラッグ弾を放ち、雫が水刃を飛ばす。

陽和が翼を広げてディレイドへと一気に肉迫する中、ティオ達に向けて指示を出した。

 

『ティオ、シア、ユエ!セレリアを護りながら援護!奴らを近づけさせるな!』

「承知じゃ!」

「はいですぅ!」

「んっ!」

 

今のセレリアは心が不安定である為、まともに戦うことができない。それに先程のディレイドの発言から、彼女を狙う可能性だってある。故に、ティオ達に彼女を守らせつつ援護に徹させることを選んだのだ。

 

『ハジメ!お前はフリードをやれ!俺がディレイドを潰す!雫、俺の邪魔をさせるな!』

「おうっ!」

「ええっ!」

 

素早く指示を出した陽和は竜聖剣に雷炎を纏わせながらディレイドへと急接近し、紫黒竜エレボスに乗りながらこちらへと同じように接近するディレイドに容赦なく振り下ろす。

それに対し、ディレイドは防御で迎え撃つ。

 

「“冥雷黒壁”」

 

彼が翳した手の先から現れたのは、禍々しい紫黒に迸る障壁だ。それは、陽和の雷炎の剣と激突した瞬間、激しくスパークを散らす。

竜聖剣から伝わる手応えに陽和は、この障壁が雷と闇を複合させた最上級魔法クラスの障壁なのだと看破した。

 

(雷と闇の複合障壁かっ‼︎だがっ、この程度で止められるわけがねぇだろっ‼︎)

 

ユエの障壁並み、いや、おそらくはそれ以上の堅牢さの障壁に陽和は僅かに瞠目するものの、この程度では止まらない。

 

『オオオォォォォォォォッッ‼︎‼︎‼︎』

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼︎‼︎‼︎』

「なにっ⁉︎」

 

倍加の音声が連続で鳴り響き、雷炎剣の輝きが一層強まり威力そのものが上昇しほどなくして障壁に亀裂が生まれる。

ディレイドが驚愕の声を上げた次の瞬間、障壁は粉々に砕かれディレイドはエレボス共々吹き飛び宙を舞う。宙を舞うディレイド達に追撃を仕掛けようとした瞬間、彼の後ろに待機していた五メートルほどの紫竜達がひらりと彼らの前に躍り出ると、口を開き紫電の魔弾を無数に吐き出してくる。

 

「彼の邪魔はさせないわっ!」

 

陽和の真横から雫が飛び出し、無数の水の弾丸で魔弾を相殺していく。彼に指示された役割を全うしようとしている彼女は、陽和に肩越しに振り返りながら叫ぶ。

 

「陽和行って!」

『任せる!』

 

雫に一言そういうと翼を羽ばたかせながら重力魔法と風魔法で速度を大幅に上昇させて、紫竜の上を飛び越えてどうにか体勢を立て直したディレイドへと接近すると、今度はヘスティアを納刀し雷炎纏う拳を構えて振りかぶる。

それを迎え撃つべく、ディレイドはエレボスの背中から飛び出すと()()()()()に空中に闇色の障壁を展開し足場代わりにして宙を駆け上り、両手に雷闇を纏わせ同じように振りかぶった。

 

『BoostBoostBoostBoostBoost‼︎‼︎』

『オラァっ‼︎』

「がはっ⁉︎」

 

雷炎拳と雷闇拳が激突するものの、陽和は倍加を続けており、紫黒の拳は容易く紅緋の拳に打ち負けて、破った拳に腹部を穿たれ再び宙を吹っ飛ぶ。

血を吐きながら再び宙を舞うディレイドに陽和は容赦なく追い打ちを仕掛ける。

鞘から抜いた竜聖剣に雷炎を纏わせながら斬りかかる。ディレイドは空中に障壁を展開して強引に止まると、腰の剣を抜いて雷闇を纏わせて陽和の振り下ろしを受け止めた。

 

『セレリアは、お前をっ、お前達を救うために国を飛び出したっ‼︎いつか必ずかつての日常を取り戻せると信じてお前達と戦うことを選んだんだっ‼︎それなのに、お前は、お前はぁぁっ‼︎‼︎』

「っっ‼︎ぐっ、ぬぅっ‼︎」

『なんで妹を守らなかったっ⁉︎唯一の家族なんだろっ⁉︎誰よりも大切なはずなのに、お前が守らなくちゃいけないはずなのに、何故お前が彼女の手を取らなかったっ‼︎どうして他ならぬ兄であるお前が、妹を傷つけたんだっ‼︎‼︎』

 

怒りのままに言葉をぶつけながら、竜聖剣を振るう陽和にディレイドはその猛攻を辛うじてだが確実に捌けていた。

陽和の剣が怒りによってぶれているわけではない。怒りながらも冷静に戦っており、その剣技は普段以上の冴えを秘めているはずなのだ。だが、その剣技をディレイドはかろうじてだが捌いている。それはディレイド自身に武術の心得があると言うことだ。

 

(こいつっ、バートと同じ、いやそれ以上に武術に長けてるっ‼︎)

 

その技術の高さから陽和は彼はバートと同じく生粋の武人だと冷静に判断し、単純な技量だけならば自分よりも上。だが、ステータスの差がその技術の差を覆して彼を防戦一方にさせているのだ。

 

「グオォォォォ‼︎‼︎」

 

そして、五十合ほど撃ち合いをした時、横合いからエレボスが顎門を大きく開き陽和へと紫黒の雷の奔流を解き放った。

咆哮と共に放たれたそれは、真っ直ぐに陽和を狙っている。陽和は斬り合いを中断して回避を選択せざるを得ず、ディレイドに切りつけた反動を利用して後方へと退避することで奔流を回避した。

だが、あろうことかその奔流は途切れる前にエレボスはブレスの角度を変えて陽和を追撃してくる。

 

『チィっ、“浄火の大光盾”』

 

回避しても追撃されるのならばと陽和は、その場で光炎の障壁を展開して紫黒の奔流を完璧に防ぐ。

10秒ほどブレスに晒され続けたものの、完璧に防いだことでダメージゼロの陽和の様子に、エレボスの背中に移動していたディレイドは感嘆の声を上げる。

 

「やはり、エレボスのブレスを耐え切るか。万全な状態では倒しきれんようだな。それに、これが赤竜帝の力の一端か。なるほど、確かにこれは生半可な力では勝てないわけだ」

『彼我の実力差を分かっているのならば、潔く抵抗をやめろ。それならば、半殺しにおさえてやる』

「断る。それに、こちらの手札がないとは言ってないぞ?」

 

そう言うと、ディレイドは静かに呟いた。

 

 

 

「———“天魔転変・紫竜”」

『なっ⁉︎』

 

 

 

何らかの魔法名を呟いた次の瞬間、ディレイドの体に変化が起きた。

四肢の皮膚が硬質な音を立てながらエレボスと同じ紫黒色の竜鱗へと変わり、爪が伸びて赤黒い鉤爪へと変化していく。

耳や顔の半分、首も鱗に覆われ側頭部からは湾曲した紫に輝く角が生えて上方へと伸びる。

口から覗く歯は全てが鋭い牙へと変わり、瞳孔が縦に割れて収縮する。

背中からは藍色の皮膜の竜翼が、腰からは先端に棘が生えている尻尾が生えてきた。

自身の肉体に獣の要素を加えて変身していく姿。それはこれまで何度も見てきた仲間のソレと酷似しており、陽和だけでなく、ティオやセレリア達も目を見開いた。

 

「……兄さん……獣魔兵に?」

 

そう、それは、その変化はまさしく獣魔兵の肉体変化と全く同質の変化だ。ソレが意味するところはつまり、

 

『………お前、自分も獣魔兵に変えたのか」

『……妹だけでなく、自らも実験体にしたと言うのか』

『その結果、適合に成功したわけか。これは、中々に厳しいね』

 

彼自身もまた獣魔兵だと言うことだ。

しかも、ベースとなっているのがエレボスと同じ種類の竜だ。竜種の魔物は基本的にこの世界では上位に位置する強さ。だとするならば、強化倍率もソレ相応であり、セレリアやバートの強さを鑑みれば陽和の表情は自然と険しくなった。

紫黒の竜人へと姿を変えたディレイドは、体の調子を確かめるように首をゴキゴキと鳴らすと口を大きく開き咆哮を上げる。

 

 

「グゥオオオォォォォォォォォォォォォッッ‼︎‼︎‼︎」

 

 

空間全体に轟くほどの凄まじい咆哮に陽和は勿論のこと、ハジメ達ですら警戒心を最大限に滲ませる。アレは間違いなく強い、そう思わせるほどの威圧感を彼は放っていた。

咆哮を上げて自らの存在を示したディレイドは、牙を剥き出しにし獰猛に笑いながら改めて名乗る。

 

「我が名はディレイド・ベルグライス。魔人族の二大将軍が一人にして、『獣魔兵』部隊隊長。『獣魔兵』が5号個体『紫竜』だ。これより、赤竜帝の打倒を開始する」

 

打倒宣言をした直後、ディレイドは闇色の魔力を迸らせながら呟く。

 

「———“紫竜魔装・雷翼”」

 

紫黒の雷が迸り、彼の全身を包み込み鎧と化す。

まさしく竜を模った雷の闇鎧を纏った彼は、兜の奥で濃紺色の眼光を鋭くしながら翼を大きく広げる。

直後、その姿が消えた。

 

『っっ‼︎‼︎』

 

ディレイドが姿を消した瞬間、陽和は自身の真横に腕を掲げて防御の構えをとる。それと同時に陽和の左腕にディレイドの雷闇纏う拳が叩きつけられ、凄まじい衝撃波を轟かせた。

 

「ほう、今のに反応するか。これまでこの一撃を受け止た奴はいなかったのだがな」

『ぐっ、雷の、電気刺激による加速かっ‼︎』

「ご名答。雷を使う者同士、今の原理は見破れて当然か」

 

陽和は今の攻撃のカラクリを看破する。

それは地球での知識があったからだ。電気によって筋肉を刺激することで身体能力を上げたのだとすぐに判断することができた。

竜人化したことでのステータスの向上に加えて、雷電の加速が彼に超速移動を可能とさせたのだろう。

膂力だけでなく速度も乗せた拳から伝わる衝撃の重さに焦燥を露わにする中、ディレイドはチラリと今もなお紫竜の攻撃を受け止め続けている雫へと視線を向けるとエレボスに指示を出す。

 

「エレボス、お前は紫竜達と共にあの水使いの女をやれ。赤竜帝は俺が引き受ける」

「グゥルル」

『このっ行かせるわけがっ‼︎』

 

ディレイドの指示に従いエレボスは雫を相手にすべく方向転換し彼女の方へと向かう。それを陽和が当然許すはずもないのだが、ディレイドが彼の進路上に立ちはだかる。

 

「俺を無視しないでもらおうか」

『〜ッッディレイドォっ‼︎‼︎』

 

立ちはだかるディレイドに陽和は怒りに震えながら、口を大きく開き紅緋の輝きを集束・圧縮していく。対するディレイドも紫黒の輝きを集束・圧縮していった。

放たれる攻撃は共にブレスだ。そして、二人は同時に極光を解き放つ。

 

「『ガアアァァァァァァァッッ‼︎‼︎‼︎』」

 

咆哮と共に放たれた紅緋と紫黒の極光が両者の間で激突し、轟音と衝撃波を撒き散らす。直下のマグマの海は衝突地点を中心に盛大に荒れ狂った。

 

『BoostBoostBoostBoost‼︎‼︎‼︎』

 

最初こそ拮抗していたが、倍加の音声が鳴り響き紅緋の極光が太さを増していき次第に陽和のブレスが押し始めていた。

やがて完全に押し切られ、ディレイドを呑み込もうとした瞬間、

 

「———“界穿”ッッ‼︎」

 

ディレイドの前方に光り輝く膜のようなものが出現し、それに陽和のブレスが飲み込まれていったのだ。“界穿”、それは空間魔法の一つでゲートを繋げ膜に入ったものをもう一つの膜のゲートに空間転移させるものだ。

それならば呑み込まれたブレスは一体どこに?と考えた時、ティオの警告が響いた。

 

「主殿!上じゃっ‼︎」

 

ティオの警告に従い、頭上を見上げれば既に眼前に紅緋の閃光が迫っており、間一髪腕をクロスさせることは間に合ったが、極光は容易く陽和を呑み込んだ。

 

『ぐぅぅぁっ‼︎⁉︎』

 

炎は炎熱無効のおかげでダメージがないものの、雷は無効化できず、凄まじい雷撃に陽和の肉体が焼かれる。だが、元々のブレスの発射時間が短かったからか、数秒の後に紅緋の極光は消える。

中から現れた陽和は全身から煙を上げながら、自らの雷撃に焼かれた痛みに感嘆の笑みを浮かべる。

 

『まさか、自分の攻撃を、受けることになるとはな。我ながら、効くなぁ』

『相棒大丈夫かっ⁉︎』

『マスターっ、すぐに癒すよっ‼︎』

 

ヘスティアがすぐさま“ディア・エイル”で陽和の傷を癒す。その様子を見て殺しきれなかったと判断したディレイドはすぐさま次の手を打った。

 

「どうやら、これでも不足らしい。ならば、使わせてもらおう。———“限界突破”」

『なにっ⁉︎』

 

勇者限定の、あるいはハジメのように魔物を食らうことで偶然獲得した特殊技能の名を彼が呟いた瞬間、闇色の魔力が暴風の如き吹き荒れ、空間そのものを揺るがす。

あまりの力の奔流にハジメ達が戦闘の手を思わず止めてしまうほど。

 

「あれは……限界突破だとっ⁉︎」

「ほぉ、ディレイドが竜の力だけでなく限界突破も使わざるを得ないとは。魔人族最強が本気になるとは。流石は伝説に記されし邪竜と言ったところか」

「魔人族、最強だと?」

「そうだ。ディレイドは一対一の戦いでは我が国最強の戦士だ。赤竜帝も強いのは確かだが、見たところまだ若い。本気を出した奴には敵わんだろう」

 

ハジメが驚愕の声をあげ、フリードが誇らしげにそう返した。そう、ディレイド・ベルグライスは魔人族最強の戦士。彼以上に魔法や武術に卓越した戦士はおらず、彼こそが魔人族の盾にして剣なのだ。

そして、そんな男が本気を出した。それが意味するところは、さらなる激闘だ。

ディレイドは拳を構えながら告げる。

 

「行くぞ、赤竜帝」

 

そう告げた直後、再び彼の姿が消える。

鳴り響く警鐘に従い陽和は防御の構えを取ろうとしたが、それは間に合わず、

 

『ガハァッ⁉︎』

 

腹部に未曾有の衝撃を受け吹き飛ばされた。陽和がいた場所には、拳を前に突き出した姿勢のディレイドの姿が。

爆発的に上昇したステータスによって一瞬で陽和の懐に踏み込み腹部を殴ったのだ。

防御が間に合わずにモロに喰らってしまった陽和は、かろうじて空中で体勢を立て直したが、その動揺は大きかった。

 

(明らかに素のステータスは互角っ‼︎それに加え、雷の身体強化に、限界突破まで使うのかよっ⁉︎まずいっ、このままじゃ押し切られるっ‼︎)

 

ディレイドのステータスは、あのバートやセレリアをも凌ぐほどで全てのステータスが二万超えと陽和とほぼ並ぶほどの数値だ。それが、“限界突破”と“紫竜魔装・雷翼”を使ったことで爆発的に上昇し、今や平均八万〜九万前後。

今の状態では勝負にすらならずに押し切られて終わりだ。

 

『相棒っ‼︎こちらも使わなければ勝負にならんぞっ‼︎‼︎』

(わかってるっ‼︎‼︎)

 

故に、陽和はドライグに言われずとも決断する。

この状況で、出し惜しみなどできないと。だからこそ、こちらも当然発動する。

 

『“臨界突破”っ‼︎‼︎』

 

陽和の体を紅白の奔流が包み込み、全てのスペックを十万に引き上げる。

 

「お前も同種の技能を持っているのかっ‼︎だが、それでこそ戦い甲斐があると言うものだっ‼︎‼︎」

 

スペックを上昇させた陽和の威圧に驚くどころか、嬉々として獰猛に笑うディレイドは雷闇の拳を構えながら、陽和へと襲いかかる。

陽和もまた雷炎を拳に纏わせながらディレイドへと飛翔し、互いの距離をゼロにした瞬間、両者の拳は互いの顔面に突き刺さる。

そこから始まるのは、凄まじい拳撃の応酬だ。

一撃一撃が凄まじい威力を込めたの殴り合い。互いの頬を、肉体を殴る音が響き、お互いに一歩も引かずに殴り合い続ける。

その光景はバートの戦いとなんら相違はない。

ディレイドの雷の鎧が砕かれ宙に破片が舞っており、陽和の拳が彼の鎧を砕いていることがわかる。

しかし、以前と唯一違うのが、バートの攻撃では揺るがなかった陽和の鎧に亀裂が刻まれていると言うことだろう。

なんと、ディレイドは陽和の要塞が如き堅牢さを誇る竜鎧を砕いているのだ。その事実に兜の下で驚愕に目を見開く。

 

(こいつっ、同じ箇所に的確に打撃を撃ち込んで鎧を砕いてるのかっ⁉︎しかも、こっちの攻撃を見切ってやがるっ⁉︎どれだけ戦い慣れてんだっ⁉︎)

 

戦いながら気づいたのは彼は闇雲に殴っているのではなく、同じ箇所を連続で数度殴ることでダメージを蓄積させて鎧を砕いているのだ。

壮絶な殴り合いの中でピンポイントに同じ箇所を殴りながら、自分の攻撃を見切ると言う卓越した技術に陽和は敵ながら見事だと思わざるを得なかった。

そして、しばらく殴り合いを続けた時、唐突にディレイドは両腕をひねるように回転させ、陽和の両腕を左右に大きく弾いたのだ。

 

『っ、しまっー』

 

突然バチンと弾かれたことに陽和はしてやられたと失策を呪う中、ディレイドは彼の懐に再び潜り込み、両手を腹部に添えると叫ぶ。

 

「“空爆雷掌”ッッ‼︎‼︎」

『ぐふっ⁉︎』

 

直後、再び未曾有の衝撃と雷撃が腹部を起点に全身に響き、鎧の一部が完全に砕け散った。陽和は込み上げる血を吐き出しながら吹き飛ばされてしまう。

 

「陽和っ‼︎」

「グオォォ‼︎」

「このっ、邪魔よっ‼︎どきなさいっ‼︎」

 

吹き飛んだ陽和を助けようと、雫が向かおうとしたものの、エレボスと紫竜達はそれを読んでいたかのように彼女の進路上に立ちはだかり、その場に釘付けにしてしまう。

ハジメとユエはフリードとウラノス達の相手で手一杯であり、ティオとシアも灰竜からの掃射によってその場から動けないでいた。

吹き飛ばされた陽和はマグマ海に飛沫を上げながら墜落する。マグマ海に浮かんだ陽和は何度も咳き込みながら血の塊を吐く。

 

『ゴホッ、ゲホっ……くそっ、今のは、空間と雷の複合魔法か。タチ悪い魔法作りやがって…』

 

陽和は腹部を撫でながら忌々しげに悪態をつく。

 

空間・雷複合魔法“空爆雷掌”。

 

彼の指摘通り、今ディレイドが使用した魔法は、空間を圧縮して、それを解放することで凄まじい衝撃を発生させる“震天”と雷属性魔法“雷槌”を複合し、小型化・圧縮することで一対一の戦いで敵の人体を破壊することに特化させた武術と絡めた対人魔法である。

炸裂する衝撃と雷撃が対象の全身に響き、肉体を内側から破壊する危険極まりない代物である。陽和の強靭な肉体だからこそ、五体満足なだけで、並大抵のものならば今ので肉体が内側から破壊されるだろう。

つまり、対象によっては即死級の魔法なのである。

 

『奴め、相棒以上の武術の使い手か。それに加え、積み重ねた戦闘経験による戦術眼。……認めざるを得ないな。奴は、相棒より強いぞ』

『………正直今のマスターより強い存在なんて、神以外いないと思ってたけど……ここまでの相手がいたとはね』

 

ドライグもヘスティアも素直にディレイドの強さを認めており、陽和よりも格上の手合いだと判断する。それは、陽和も同意であり、特に異論を挟むことはなく、傷を癒すと体を起こしマグマ海の上に立ち上がるが、悪寒を感じて真横に飛び退く。

直後、陽和がいた場所のマグマ海にスパッと亀裂が生じた。

 

『っっ、空間魔法の斬撃かっ‼︎』

 

見ればディレイドが手を手刀の形にして横に振り抜いていた。どうやら、空間魔法で空間に斬線を刻むことでその進路上にあるものを切り裂いたようだ。

 

「“千空刃”“雷光・千刃”」

 

間一髪で回避することができた陽和に雷刃と空間斬撃が降り注ぐ。雷刃はともかく空間斬撃は障壁では防げない。その為、翼を羽ばたかせて勘頼りで回避していくしかないのだが、遂には回避しきれずに陽和の右肩から左脇腹にかけて一筋の斬線が刻まれた。

 

『ぐぅっ‼︎』

 

空間ごと切り裂いたが故に、鎧の防御は紙細工に等しくなり、鎧がひび割れ隙間から血が噴き出す。距離があったからか、それとも魔力での防御が功を奏したか、両断こそされなかったものの、深くまで切り裂かれてしまい、陽和の口からも堪えきれず血が溢れる。

 

『がぁっ⁉︎』

 

激痛に悶えてしまったことで翼の制御を誤り雷刃の集中砲火を受けてしまい、再びマグマの海に墜落する。

 

「これで終わらせてやる」

 

トドメを指す気なのか翼を羽ばたかせて急降下してくるディレイドを、治癒しながら睥睨し迎え撃とうと再度飛ぼうとした時だ。

 

『そうはさせんよっ‼︎』

 

突如、空間全体に響くような不可思議な声が届き、同時に、咆哮が響き渡るとディレイドに漆黒の閃光が迫った。

ディレイドはそれを危なげなく躱すと、元凶へと視線を向けると眉を顰める。

 

「黒竜……なるほど、竜人族か。よもや、生き残りがいたとはな」

『よくも主殿を傷つけおったな!お主は妾が焼き尽くしてやるのじゃ‼︎』

 

ディレイドの言葉通り、閃光を放ったのは竜化したティオだ。

竜人族であることを魔人族に知られることによるリスクを承知の上で、その姿をあらわにしたのだ。白竜ウラノスよりも一回り小さいサイズではあるが、纏う威圧感はウラノスやエレボスを遥かに凌ぐ。

彼女が、陽和達の旅に同行する決断をしたのは、何より赤竜帝の力を受け継いだ陽和に敬愛の念をいだいたからであるが、その他にも異世界からやってきたもの達の確認と、その行く末を確かめると言う理由もあった。その前提として、陽和と同様に己の正体は極力隠していくつもりだった。

それは一族を守るための掟であり、五百年前の迫害で身をもって知ったからこそこれまで守っていた。

だが、無敵だと、傷つくはずがないと思い込んでいた陽和が何度も傷を負っていた。天より降り注ぐ極光に焼かれ、ディレイドに何度も吹き飛ばされた陽和の姿を見ていると、ティオの胸中は激しいほどの動揺と不安に襲われた。

自分達の始祖の力を受け継ぐ彼ならば、どんな障害も乗り越えられると、どこか別次元の存在だと思って神聖視していたが、それは勘違いだった。

陽和は無敵の存在ではない。彼とて心のある人だ。誰かのために怒り、笑い、愛するどこにでもいるような人間で、ただ他よりも優れ、運命を背負っただけに過ぎないのだ。

そんな当たり前のことをようやく思い出したティオは、長く生きておきながら常識を忘れるほどに陽和を盲目的に愛しているのだと、明確に自覚した。

ティオにとって陽和は一人の女として失いたくないと思えるほどに愛する“男”であり、かけがえのない仲間なのだ。

 

故に、人前での竜化を決断した。

仲間の危機に、何より惚れた男の窮地に出し惜しみをするのであれば、それはもう守護者としての誇りを胸に生きる一族に、この先二度と顔向できないし、彼らの隣を歩むこともできない。

なにより、竜人族ティオ・クラルスの魂にかけて、保身と大切な者達の命を天秤にかけるような真似は、断じて許せるはずがなかった。

 

『紛い物の分際でよくもやってくれおったな!この借りは高くつくぞ‼︎』

 

憤怒に燃える黄金色の竜眼をディレイドに向けながら、顎門に閃光を収束させブレスを放とうとした時、陽和がそれを止める。

 

『待て、ティオ』

『ッッ、なぜ止めるのじゃ、主殿』

 

攻撃を中断させられたことに非難の眼差しを向けてくるティオに陽和は彼女の横に飛び上がりながら、ディレイドを睨み告げる。

 

『奴は、俺が相手する。お前は雫の援護に行ってくれ』

『……じゃが、奴は主殿より強かろう。ならば、妾も加勢して……』

『お前の言葉は正しい。確かに奴は俺より強い。だが、だとしてもだ、あいつだけは俺がやらなくちゃいけないんだ』

 

陽和はチラリと自分達から少し離れたところに浮かぶ小島の上で仁王立ちするシアの背後で座り込んだままのセレリアへと視線を向ける。

涙を流しながら、自分達を見上げる彼女の表情は痛々しいほどに哀しげなものであり、やはり戦闘に参加できるような精神状態ではなかった。

ユエが近くにはいないようで、周囲を探すとハジメの援護に徹しているのが見えた。どうやら、ティオはシアに護りを任せて自分の援護に来てくれたようだ。視線をティオに戻すと優しく微笑む。

 

『……すまない、これは俺の我儘だ。だから、ティオは雫の援護に向かってくれ、雫の方が危ない。あの紫黒竜の相手をして欲しいんだ。頼めるな?』

 

陽和は彼女の頭を優しく撫でながら、そう頼み込む。陽和に頼られたティオはしばらく陽和をじっと見ていたが、やがてそれに応えた。

 

『……承知した。じゃが、負けたら許さんぞ、主殿』

『ああ』

 

そうしてティオは向きを変えると雫の援護へと向かうべく陽和から離れていった。

 

「……仲間を頼らなくてよかったのか?不利なのはわかっているだろうに」

『ああ、そうだな。あんたが俺よりも強いのは認めるよ。だがな、そう言う次元の話じゃないんだよ。これは』

 

ディレイドの冷ややかな問いかけに陽和はそう答えると、拳を握りしめて全身に纏う紅白の輝きを一層強くしながら、翡翠の眼光をも輝かせる。

 

『………前にセレリアと約束したんだよ。妹を泣かせるクソ兄貴なんざ、同じ兄貴としてぶん殴ってやるってな』

「他所の家族に口出しされたくはないのだがな」

『お前が家族を語るな。俺にも妹や弟がいるが、お前のように傷つけるなんてことはしない。俺にとってあの子達は愛し、守るべき存在だ。お前もセレリアに対してはそうあるべきはずだ。それこそが兄なんだ』

「……随分と、セレリアを気にかけているようだが、お前は彼女のなんなんだ?異種族だろう?」

 

ディレイドにしては何故ここまでセレリアのために怒るのかがわからずに、思わずと言った様子でそんな質問を投げかけた。

陽和はその質問に、少し沈黙すると不敵に笑いながら拳を構える。

 

『………彼女は俺の仲間で背中を預けて共に戦った仲だ。種族なんて関係ねぇ。あいつはもう俺にとって家族同然の大切な存在だ。俺は、あいつの泣く姿を見たくない。だから、お前をここでぶっ飛ばして正気に戻してやる‼︎‼︎』

 

高まる気炎のままにそう吼える陽和に、ディレイドは兜の下でわずかに目を細めると、全身から紫黒の雷を迸らせながら拳を構え静かに告げる。

 

「ならば、やってみろ。お前の叶わぬ願い、ここで摘んでやる」

『ハッ、お前なんかにやられるほど、俺は弱くねぇぞっ‼︎‼︎』

 

ディレイドにそう吐き捨てると、陽和は翼を広げて飛び出し、再び激突した。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

場所は変わり、雫は陽和とディレイドが再び殴り合いを繰り広げていた時、紫竜の群れとエレボスの相手を引き受けていた。

 

「“流穿・水礫波”ッ、“水刃・乱れ咲き”ッッ‼︎‼︎」

 

天を駆けて襲いかかる紫の小魔弾の雨を水の弾丸と水刃の乱れ撃ちで相殺していく。

彼女は竜翼での飛翔のほかに、“水天海廊”による水のアーチを無数に展開することで目まぐるしい速度で移動しながら紫竜の群れを自分に釘付けにさせる。

フリードと白竜の周囲にいた灰竜達の背には亀の魔物が張り付いて障壁を発していたのだが、魔法の連射と斬撃により障壁を破り、三十体の内、十体は撃ち落とせたのだが、状況は逆に悪くなっていた。

 

(あの紫黒の竜が厄介ねっ‼︎ブレスの威力が尋常じゃないっ‼︎)

 

加勢してきたエレボスの存在が彼女を追い込み始めていたのだ。何せ、白竜ウラノスと力を合わせたとはいえ陽和にダメージを与えるほどの極光を放てる存在だ。それはそこにいるだけでも警戒し続けなければならず、しかもエレボスが放つ魔弾の数は一体で紫竜達の掃射とほぼ同数。だが、威力は小魔弾よりも上であり、雫の方がこの場に釘付けにされてしまっていたのだ。

ただでさえ、陽和が何度も吹き飛ぶ光景を見て彼の元に行きたいのに、それを邪魔されていて苛立ちつつあった。

そして、その苛立ちが致命的な隙を生んだ。

 

「グゥオオオォォォッッ‼︎‼︎」

「しまっー」

 

雫の真下からエレボスが顎門を開いて、噛み砕こうと雄叫びを上げながら迫ってきていたのだ。

本来ならば気づけたのだが、苛立っていて視野が狭まっていたが故に起きてしまったミス。回避も今からでは間に合わず、このままではエレボスに喰われる。そう思った時だ、別の咆哮が響き、エレボスが横合いから受けた衝撃に襲われ吹き飛ばされた。

 

『雫っ!無事かえ?』

 

吹き飛ばしたのは黒竜と化したティオだ。真横から頭突きをしてエレボスを吹き飛ばしたのだ。

雫は助かったことに素直に感謝を示す。

 

「ティオ、ありがとう!助かったわ」

『無事で何よりじゃ。これより妾は援護に入ろう。妾の背に乗れ』

「ええ」

 

ティオの背中に乗った雫は、周囲の警戒を続けたままティオに尋ねる。

 

「ティオ、陽和は?さっきあなたが援護に向かったように見えたのだけど」

『そうなのじゃがな、主殿は奴だけはどうしても自分がやると言ってのぅ、妾はお主の援護を頼まれたのじゃ』

「そう…陽和は、大丈夫、よね?」

 

陽和の相手は間違いなく強く、最強だと信じて疑わなかった陽和が何度も吹き飛ばされた光景を思い出して少し不安になる雫。それにティオは少しの不安を宿しながらも気丈に返した。

 

『……多少不安ではあるが、主殿を信じるのじゃ。元より、負ければおわりの戦いじゃ。ならば勝つことを信じて妾達も奮闘するほかあるまい』

「……そう、ね。今は彼を信じて私達は私達の役割を全うするしかないわね」

『その通りじゃ、さて、あの若いのや取り巻き共も中々に侮れぬ敵じゃ。気を引き締めて行こうぞ』

 

ティオの言葉に周囲を見れば、体勢を立て直したエレボスがティオと雫を睥睨しながら唸り声をあげていた。邪魔されて怒っているのか、全身から紫のプラズマを迸らせていた。

雫はティオの背の上で改めて薄明を構えながら気丈に叫ぶ。

 

「行くわよ!ティオ!」

『応とも!本物の竜を見せてやろうではないかっ!』

 

雫の気合いに満ちた叫びに応えたティオが咆哮を上げながらエレボスへと襲いかかった頃、第二ラウンドへと突入した陽和とディレイドの戦いは、ただの殴り合いの応酬から、魔法をも多用した複合戦闘へと変わっていた。

 

『“浄火の大光盾”“極大・雷炎槍”“緋槍・千輪””ファイア・ボルト”“アストラル・ウインド”』

「“冥雷黒壁”“雷槌”“雷弾驟雨”“雷光・千刃”積乱・雷光””天灼”」

 

互いに障壁を展開してからの雷炎の槍、炎の槍群、雷炎と風光の星々、雷の鉄槌、雷弾の雨、雷刃の嵐、雷の砲撃、雷の球体が宙を駆け抜けては二人の間で激突し、空間を揺らし赤と黒に染め上げる。

飛翔能力を互いに有しているからこそ、その場にとどまるわけもなく目まぐるしい速度で場所を変えながら時には魔法の打ち合いを、時には近接での応酬を状況に応じて変えていき鍔迫り合いを繰り返す。

マグマに照らされた赤い空間を、紅白と紫黒の流星が飛び交い何度も激突を繰り返していく。

だが、やはり武術の腕はディレイドの方が高く、魔法戦闘では陽和が有利であっても、近接戦闘では陽和が不利だった。空間魔法での転移により距離を詰められた陽和はディレイドと剣での斬り合いをし鍔迫り合いをしている時に、声を張り上げる。

 

『そこまでの力がありながら、どうしてお前は神に従う道を選んだっ⁉︎妹を連れて逃げる方法もあったはずだろっ‼︎』

「何故逃げる必要がある?神の御意志に従うことこそ至上の幸福。貴様こそなぜそれが分からん」

『それはっ‼︎兄妹の絆よりも優先すべきことなのかっ⁉︎』

「そうだ。何よりも優先されるのが、神の御意志というものだ」

『っっ、ふざけるなぁっ‼︎‼︎』

 

陽和は激昂し叫ぶとディレイドの剣を強引に弾いてかち上げさせて露わになった胴体に重力加速した蹴りを叩き込む。

 

「ぐぅっ⁉︎」

 

ドゴンと重い衝撃が響き、思わず呻き声を上げるディレイドに陽和は竜聖剣を叩きつけながら、真上からの超重力場でマグマ海に叩き落とそうとする。

ディレイドは空間魔法で空間に足場を作り固定化させることで踏ん張り耐え凌ぐ。

 

『神の意志が兄妹の絆より上なんざ認められるかっ‼︎人を人とも思わない信仰よりも、家族の絆の方がずっと価値があるっ‼︎いいや、そんな信仰に価値なんてあるわけがねぇっ‼︎何故それがわからないっ‼︎‼︎』

「……っ、“界穿”っ‼︎」

 

尚も増大していく重力にこのままでは押し潰されると判断したのだろう。足元に界穿のゲートを生み出して空間転移で逃れ、陽和から距離を取る。

だが、怒り狂う陽和が彼を逃すわけがなく、重力加速を以てディレイドをすかさず追撃する。

 

『逃すかぁっ‼︎‼︎』

『Boost‼︎』

「チィッ‼︎」

 

自分が持ち歩く加速方法全てを使って距離を一気に詰めた陽和に舌打ちをしながら迎え撃つ。片手に紫黒の雷盾を生み出しながら、もう片手で剣を持ち迎え撃った。

双剣形態へと変えた竜聖剣を構えて、風光と雷炎を纏わせながら陽和は凄まじい勢いで連撃を叩き込む。

 

『お前は氷雪洞窟を攻略したんだろうっ‼︎それならば、自分の弱さを乗り越えたはずだっ‼︎世界の真実を知ったはずだっ‼︎なのに、何故神の側につくっ⁉︎』

『BoostBoostBoostBoostBoost‼︎‼︎』

(なんだっ⁉︎こいつ、さっきよりも力が増しているっ⁉︎)

 

鳴り響く音声に合わせて加速度的に上昇していく速度と膂力にディレイドは困惑を隠せない。怒りという感情の爆発によって力を更に上昇させていく陽和は、攻撃を捌かれ反撃を受けるものの、決して怯むことはなく前進し攻撃を続ける。

 

『兄貴なら守れよっ‼︎妹を守るのが兄貴の役目だろうがっ‼︎それなのに、どうしてお前はセレリアを傷つけたっ‼︎どうして神託なんかで妹の心を踏み躙ったんだぁっ‼︎‼︎』

「ぐっ、ぉっ、ぬぅっ‼︎」

 

上昇していく陽和の連撃にディレイドは技術でどうにかできる範囲を超え対処が追いつかなくなり、防戦一方になる。

 

『妹を泣かせるような奴がっ、未来をっ!幸福をっ!語るなっ!!!!』

「ぐぁっ⁉︎」

 

そして、ついに盾が砕かれ、剣を持つ手が大きく弾かれディレイドは後ろに大きくのけ反り、がら空きの胴体に×字の斬撃が刻まれ血が噴き出す。

痛みに呻くディレイドを前に陽和は片方の剣を籠手へと変えて右腕の太さを2回りほど分厚くしながら雷炎を纏わせ、それを重力で圧縮し集束させる。

 

『Explotion‼︎‼︎』

 

解放の音声が鳴り響き、込められた力が爆発的に上昇する。

 

「くっ!」

 

ディレイドはそこに込められる魔力に背筋に悪寒が走るのを感じたのか、眼前に紫黒の障壁と空間魔法での障壁を数枚瞬時に展開した。

 

(っっ、くそっ、このままだと相殺されるっ‼︎‼︎)

 

確かな硬度を有する障壁が連なり、このままでは防がれてしまう。防がれなくても、障壁によって大分威力が減衰されるだろう。瞬時にそう判断した陽和はこめてた魔力を重力魔法での移動にシフトしようとした時、ドライグの声が内で響く。

 

『相棒そのまま行けっ‼︎俺が相棒の拳を届かせるっ‼︎‼︎』

(っっ、信じるぞ、ドライグっ‼︎‼︎)

『ああ、ぶちかませっ‼︎』

 

ドライグの言葉を信じて更にもう一歩踏み込んだ陽和は怒りのままに吼えながら躊躇なく拳を振り抜く。

 

『このっクソ野郎ぉぉぉぉっ‼︎‼︎』

『Penetrate‼︎‼︎』

「〜〜〜ッッ⁉︎⁉︎」

 

新しい音声が宝玉から鳴り響いた瞬間、陽和の拳はディレイドが展開した障壁を全てすり抜けて、ディレイドの胸部を確かに捉えて後方に勢いよく殴り飛ばしたのだ。

水平に吹き飛び、遠く離れた壁面に叩きつけられるディレイド。あまりの衝撃に壁は彼を中心にクレーターのように凹み蜘蛛の巣状に罅が生まれる。

 

「ガハッ、ゴホッ」

 

壁に磔のように半ばめり込んだディレイドは血の塊を何度も吐きだす。拳が突き刺さった胸部は拳の形に凹んでおり、今の一撃が内臓にまで達したのは明白だ。

だが、そんなことよりも陽和は先程の謎の音声が気になっていた。

 

『今の音声は……なんだ?Penetrate?』

『俺の力の一つ、『透過』の音声だ。あらゆるものをすり抜け力をダイレクトに与える能力だ。タイミングがいいのか悪いかは別として、たった今新たに派生技能として目覚めたんだ』

『……なるほど。だから、拳がすり抜けたわけか』

 

この土壇場で開花した新たな技能。“赤竜帝の魂”の派生技能“透過”。それはドライグが言った通り、あらゆる物をすり抜け力をダイレクトに与えることが可能な力だ。

その技能によってディレイドの障壁を透過して、威力を落とさないまま彼に攻撃を届けることができたのだ

 

「グオオォォ‼︎‼︎」

「ディレイド!」

 

壁に磔にされているディレイドの元にエレボスと、ウラノスに乗るフリードが集まる。

エレボスは身体のあちこちに切り傷が刻まれたり、腹を焼かれたりなどし軽くはない傷を負っており、フリードは胸に横一文字の切創が刻まれ、ウラノスは全身に火傷のような跡がある。

どうやら、それぞれ闘っていた相手に手傷を負わせられていたようだ。更には従っていた灰竜と紫竜達もディレイド達を守るように集まる。

 

「「陽和っ‼︎」」

『主殿!』

「ハル兄!」

 

雫とティオ、ハジメ、ユエが陽和の元へと駆けつけてくる。ハジメとユエは陽和の近くにあった足場へ着地し、雫とティオが陽和の両サイドで滞空する。ハジメ達のそばにはセレリアとシアもいた。

 

「ディレイド、無事か?」

「ああ、なんとかな。そちらも手酷くやられたようだな」

「……ああ、恐るべき戦闘力だ。あの男達だけでなく侍らせている女共も尋常ではない。絶滅したと思われる竜人族に、無詠唱無陣の魔法の使い手、未来予知らしき人外の膂力を持つ兎人族。『銀狼』のセレリアは戦っていないが……よもや、神代の力を使ってなお、ここまで追い詰められるとはな」

「そうだな。最初の一撃を当ててなければ、もっと簡単に追い込まれていたことだろう」

 

悔しさや怒りを押し殺したような声音で会話する二人。エレボスによって壁から剥がされたディレイドは、エレボスの背にのると肩で息をしながら、凹んだ胸部を撫でている。

 

『まだ終わりじゃないぞ。俺達はまだまだ戦える』

 

ディレイドの言葉に視線を鋭くした陽和が、敵意に眼光を光らせながら戦闘続行を宣言する。ハジメ達もまだ火力十分だと武器を構え示した。

 

「……だろうな。貴様達から溢れ出る戦意の奔流は、微塵も衰えていない。その戦闘力もさることながら、敵を前に折れぬ覚悟の強さ……貴様自身の意志の強さこそ末恐ろしいな」

 

ディレイドは静謐さを湛えた眼差しを陽和に向けると、一度伏せ静かに開いた時に、何か覚悟を決めたような表情を浮かべながらフリードに声をかける。

 

「フリード、致し方ない。やってくれ」

「……わかった。本当なら使いたくはなかったが、貴様らほどの強敵を屠れるのなら必要な犠牲だと割り切ろう」

『なに?』

 

フリードはいつのまにか肩に止まっていた小鳥の魔物に何かを伝えるた。その直後、

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!ゴバッ!!ズドォン!!

 

空間全体、いや、【グリューエン大火山】全体に激震が走り、凄まじい轟音と共にマグマの海が荒れ狂い始めたのだ。

 

「うおっ⁉︎」

「んぁ⁉︎」

「きゃあ⁉︎」

「うぁっ⁉︎」

「何が起きてるのっ?」

『分からぬっ。空間が揺れるほどの何かが起きておるのは確かじゃが……』

 

足場の上にいる四人は、突然の下から突き上げてくる衝撃に見舞われ、悲鳴を上げながらなんとかバランスをとる。空を飛ぶ陽和達は今なお響く轟音に戸惑いを隠せない。

その間にも激震は刻一刻と激しさを増し、既に震度で言えば確実に七はあるだろう。マグマの海からは無数の火柱、いや、マグマ柱が噴き上がり始めている。

 

『これは……水位が上がっている?』

 

周囲を見渡せば、確かにマグマ海がせりあがってきていた。

 

『フリード、何をしたっ‼︎』

 

陽和がこの異常事態を引き起こした犯人であろうフリードに質問を投げかける。フリードは、中央の島の直上にある天井に移動しながら、その質問に答えた。

 

「要石を破壊しただけだ」

『要石?……っっ、お前、まさかっ‼︎‼︎』

「気づいたか。【グリューエン大火山】は明らかに活火山だ。にもかかわらず、今まで一度も噴火したという記録がない。それはつまり、地下のマグマ溜まりからの噴出をコントロールしている要因があるということだ。私はそのマグマ溜まりを鎮めている巨大な要石を破壊させてもらった。間も無く、この大迷宮は破壊される。神代魔法を同胞にも授けられないのは痛恨だが……貴様等をここで仕留められるなら惜しくない対価だ。大迷宮もろとも果てるがいい」

『チィっ、そこまでやるのかっ‼︎』

「やるとも。それが貴様達を屠れる唯一の手段なのだからな」

 

そう冷たく返すとフリードは、首に下げたペンダントを天井に掲げた。すると、天井に亀裂が走り左右に開き始め、円形の穴になる。その穴は頂上まで幾つかの扉を開いて直通していた。

どうやら、あのペンダントが【グリューエン大火山】の攻略の証であり、ショートカットにも使える鍵のようだ。フリードは最後にもう一度陽和達を睥睨すると、踵を返してウラノスと共に天井の通路へと消えていった。

 

「……………」

「兄さんっ!」

 

ディレイドも胸を抑えながら、陽和と彼の後ろにいるセレリアへと静かな眼差しを向けると、すぐに背を向けてエレボスに乗ってフリード達の後を追っていった。セレリアが慌てて呼び止めるも、その声に振り向く事もせず、そのまま行ってしまった。

 

直後、ディレイド達が出ていっても残っていた灰竜と紫竜達が一斉に小極光と小魔弾を放ち始めた。どうやら、何がなんでもここで殺したいようだ。

 

『“浄火の大光盾”』

 

陽和は自分達を覆えるほどに光炎の防壁を展開した陽和は、ティオに視線を向ける。

 

『ティオ、よく聞け。ハジメの静因石が入った宝物庫を持って、一人であの天井から地上へ脱出しろ』

 

一瞬、何を言われているのか分からないと言った表情で目を瞬かせるティオだったが、次の瞬間には傷ついたような眼差しを向け、悲しみと怒りの混ざり合った声音を響かせる。

それは、自分達を切り捨て生きろと言われてるように聞こえてしまったのだ。

 

『主殿よ。妾は、妾だけは、最後を共に過ごす価値がないというのか?妾に主殿達を切り捨て、一人生き延びろというのか?それはー』

『違う。何もここで死ぬつもりはない。神代魔法も手に入れるし、あいつらともいつか必ず決着をつける。そして、静因石を届けアンカジを救うという約束も守る。だが、今の状況で全てこなすのは厳しい。だからこそお前の力が必要なんだ。これは、お前にしかできないことだ。頼む、ティオ」

 

ティオの竜鱗に覆われた頬に手を添えながら、兜を解除して真剣な表情で頼み込む陽和に、ティオは彼の瞳をまっすぐに見つめる。

全ての望みを叶えるためには、ティオの協力がなければならないのだと、自分を信頼し託してくれた。それを理解した瞬間、彼女の心から悲しみや怒りが消え、代わりに歓喜に満ちる。本気で伴侶を意識する最高の男から、生死のかかった瀬戸際で大切な物を託されたのだ。これに答えられなければ、女ではない。

故に、ティオはただ一言、答えた。

 

『任せよ!』

「ありがとう。ハジメ、お前もそれでいいか?」

「ああ、構わねぇよ。全くもって異論なしだ」

 

ハジメも陽和の言葉に同意を示すと、宝物庫を手に持ちティオへと差し出す。ハジメに近づいたティオの鱗の内側へ宝物庫を入れる。そうすることで、竜の肉体を通して人状態のティオの手に渡るのだ。

身のうちに宝物庫が入ったことを確認したティオは、陽和に頭をそっと擦り付ける。陽和はティオの精一杯の愛情表現に、頬に額を当てながら優しく撫でてから離れる。

ティオは、雫達にも視線を向ける。ただ一人を除いて、諦めなど微塵も感じさせずに力強く頷いた。

 

「ティオ、香織とミュウに伝言を頼む。“あとで会おう”と」

「ティオ、香織達と合流して患者の処置が済んだらエリセンに向かってくれ。そこで落ち合おう」

『ふふ、委細承知じゃ。向こうで待っておるぞ』

 

ハジメの軽い伝言と、陽和の指示に、思わず笑い声を漏らしたティオは一拍の後、力強い風を纏って翼を大きく広げると一気に飛び立った。

小極光や小魔弾が彼女に襲いかかるが、遠隔で発動された陽和の“浄火の大光盾”が彼女の全身を球状に包んで完璧に防いだのだ。

 

『主殿、感謝するぞ!』

 

ティオは陽和の援護に頬を緩ませながら、一気に群れへと突っ込んで行く。流石に黒竜の特攻には危機感を抱いたのか、灰竜と紫竜の攻撃が苛烈となるが、下方から雷の龍、水の砲撃、炸裂スラッグ弾、紅の閃光が放たれ灰竜と紫竜達を消しとばしていく。

と、そのとき、ディレイド達が外に出たようで天井の扉が閉まり始める。時間がないと悟り、ティオは更なる加速を行った。

 

『ふん、主殿に守られてる妾は無敵じゃ!破れるものなら破ってみよ!』

 

陽和に守られている事実に若干興奮すらしているティオは昂る衝動のままに翼を羽ばたかせて、小極光と小魔弾の嵐を突破して閉まり切る寸前の扉を潜り抜ける。それからも幾つか扉があるらしく、順次閉まり始めていた。

ティオは、もう後先考えずに残りの魔力を“竜化”が維持できるギリギリを残して、全て使い切るつもりで風を操ることに注ぎ込んだ。

 

自分の長い生を思い出しても、ここまでの速度は出したことが無いと思えるほどの速度で、文字通り、疾風と化して飛翔し、一つ目、二つ目、三つ目と、扉をくぐり抜け、遂に最後の扉、地上へと繋がる分厚い扉のみを残すところまで上がってきた。紅白の障壁と黒い風を纏って一発の砲弾のごとく突き進むティオ。そんな彼女に、頭上から光弾と魔弾が襲いかかる。

どうやら、ティオの存在に気がついて足止めの攻撃を放ってきたらしい。扉は既に半分以上閉まりつつある陽和の防壁に防御を任せて速度を緩めず突き進むティオに、ウラノスとエレボスの極光が降り注ぐ。

 

魔力が尽きかけているのか当初ほどの威力はなく、精々半分程度の威力だ。しかし、それでも喰らえば看過できないダメージを受けるだろう。陽和の防壁もいつまで持つか分からない。かと言って回避しても迎撃して飛行速度は落ちる。そうなれば、扉を抜けるには間に合わないかもしれない。

 

『ええい、上等じゃ!』

 

ティオは覚悟を決めて、むしろ被弾した直後に受けたダメージを速度に変換して加速してやろうと突進したその時だ。ティオの両脇を巨大な何かが駆け抜け瞬く間に彼女を追い越して、ティオと迫り来る極光の間に割って入ったのだ。

 

キィィアアァァァァッッ‼︎‼︎

グォォガアァァァァッッ‼︎‼︎

 

凄まじい咆哮を上げるそれらはティオにとって見覚えのあるもの。紅蓮色に燃え盛る炎翼を羽ばたかせる巨鳥と青白色に滾り迸る水雷を纏う巨龍。そう、陽和の“朱雀”と“青龍”だ。

飛び出した二体の怪物は、ティオを守るように極光の前に飛び出るとその身で極光を受け止める。

極光の威力に、その身が削られつつあるがしっかりとティオを守り、彼女の道を確保する。

防ぎながらこちらへと顔だけを向ける二頭の怪物の橙と金の眼光が、心なしか「行け」と訴えているように感じた。

 

『ぬはぁー、たまらん!主殿よぉ、愛してるのじゃぁー!』

 

マグマ海が荒れて大変なはずなのに、防壁だけでなく最上級クラスの魔法を二つも使って地下からティオを守るために力を尽くしてくれる陽和に歓喜に打ち震え、天地に轟けと愛を叫ぶティオ。

竜人族の中でも特に強者であったティオを守る男など、未だかつていなかった。いつも彼女は守る側であり、守られるなんてことはなかった。

だからこそ、自身を打ち倒せるほどの強さを持つ男が、極めて困難な状況においても自分を守るために手を尽くしてくれるという事実に、今まで感じたことのない喜びが爆発した。

 

『グゥルゥアアア!!!』

 

竜の咆哮を響かせながら、遂に最後の扉を潜り抜けた。黒い風の塊と化したティオが紅白の輝きに包まれながら垂直に飛び出して、巨大な砂嵐に囲まれながらも太陽の光が降り注ぐ天空を舞い上がった。

 

「あの状況から脱出してきたのか!!?化け物揃いめっ。だが、いかに黒竜といえどすでに満身創痍。ここで仕留め———ッ⁉︎」

 

自分達の頭上を飛び越えたティオに、白竜に乗ったフリードが驚愕しながらも攻撃を加えようとしたが、ティオを守るように彼らの前に立ちはだかった朱雀と青龍にフリード達は息を呑む。

 

「なんだっ、この化け物共はっ⁉︎」

「魔法……なのか?」

 

先程の戦いでは見なかった謎の二体の怪物の襲来にフリードとディレイドが警戒心を最大限にして身構える中、朱雀と青龍はその身を巨大な塊へと変える。

 

それを目にしたディレイドとフリードの表情が凍りつき、すかさず退避の途中で連れてきた亀型の魔物に障壁を張らせたその直後、轟音と閃光が爆ぜた。

 

二つの巨大な塊が紅蓮と青白、それぞれ輝きを異常なまでに強めた次の瞬間、カッと一際強く輝き大爆発を引き起こしたのだ。

紅蓮の光炎と青白の水雷の奔流が弾け、嵐の如く放たれて障壁を易々と砕くとディレイド達に襲いかかった。

 

「ぐぅああ‼︎」

「グゥルオオオ‼︎」

「がぁああ‼︎」

「ルァアアアン‼︎」

 

爆発に呑まれ仲間、主従揃って悲鳴を上げながら盛大に吹き飛び、砂嵐の中まで吹き飛ばす。

陽和の防壁によって爆発の余波からも守られていたティオは、しばらくディレイド達が消えていった場所を観察し、変化がないことを確かめると視線を転じて、眼下の【グリューエン大火山】を静かな眼差しで見つめた。

 

『信じておるぞ。主殿、皆』

 

風に紛れるほど小さくとも、確かな強さを持った呟きを残して、ティオは踵を返した。

彼女が目指す先はアンカジだ。託されたものを届けるために、ティオは砂嵐の向こう側へと姿を消した。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

ティオが砂嵐の向こう側へと姿を消した数十分後。

 

【グリューエン大火山】を中心に激震が走った。

 

轟音というのも生温い、大気すら軋ませる大爆発が発生した一時的に砂嵐さえ吹き飛した。あらわになった【グリューエン大火山】はもうもうと黒煙を噴き上げ、赤熱化した岩石を弾き飛ばし、火山雷のスパークを撒き散らした。

 

現存する歴史書の中で、ただの一度も記録されていない【グリューエン大火山】の大噴火。

ある意味、貴重な歴史的瞬間は、どういう原理か数分後には復活した巨大な砂嵐のベールに包まれ、その偉容を瞬く間に隠してしまった。

 

それでも、まるで世界が上げた悲鳴の如き轟音も、噴き上がる黒煙も、アンカジの人々は確かに観測したのだ。

 

アンカジの人々の心に不安が募る。

 

それは、大切な人の帰りを待つ少女と幼子も同じだった。

 

 





はい、というわけで満を辞してセレリアの兄ディレイド・ベルグライスが登場しました!
しかも、セレリアと同じ獣魔兵かつ陽和と現状唯一殴り合える強キャラとしての登場です!

フリードの相棒ウラノスはヒュドラと同じく毒素を持つ極光のブレスを吐きますが、ディレイドの相棒エレボスはシンプルに雷のブレスを吐く竜です。
そして、そんなエレボスと同種の竜の魔石を移植したディレイドは、元々持っていた卓越した武術の腕に加えて竜の力も有し、更には偶発的に獲得した限界突破のおかげで、陽和とほぼ同等の強キャラとなりました。
これぐらいの強キャラを敵陣営に入れとかないとパワーバランスが崩壊してしまいますからねww

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