竜帝と魔王の異世界冒険譚   作:桐谷 アキト

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熱中症、気圧変化の頭痛、夏風邪の三連続で最近寝込んでた………。


皆さんも体調には本当に気をつけてお過ごしくださいっ。


68話 青華咲き誇る

 

 

『グオオオオッッ‼︎‼︎』

『無駄だ』

 

エレボスが放つ極光を、ドライグが業火の極光で迎え撃つ。

紅蓮と紫黒の極光が激突するが、陽和とディレイドの時とは違い拮抗はせずに容易く紅蓮が紫黒を突き破る。

そのままエレボス目掛けて紅蓮の極光が迫るが、エレボスはブレスが破られたとわかるやすぐさまブレスを中断し、身を翻してバレルロールで極光を回避したのだ。

 

『ほぉ、中々やるな』

 

ドライグが思わず感心するほどの身のこなしで極光を回避したエレボスは、ドライグを睨むと雷の槍を乱射しながらドライグの周りを旋回する。

それを炎の障壁で受け止めながら、凄まじい速度で周囲を旋回するエレボスを見ながらドライグは感心の声を上げた。

 

『ただの小僧だと思っていたが、その身のこなしは簡単に身につけられるものではない。貴様、どこぞの群れで長でもやっていたか?』

『グゥオオオッッ‼︎‼︎』

 

問いかけへの返事は咆哮と魔弾の連射だ。

それを先ほどと変わらず障壁で受け切るドライグ。攻撃が通用しない事実にエレボスはあからさまに苛立ち牙をむき出しに唸る。

ドライグの推測通りエレボスはディレイドの従魔になる前は飛竜の群れのボスだった。群れの長として群れを外敵から守り続けておりその経験値は並の竜のそれよりは豊富だ。そして、ディレイドに生涯初めての敗北を喫してからはディレイドの従魔になることを受け入れ、彼の相棒として戦い続けてきた。

その相棒としての絆が、群れの長としてのプライドが、敗北を許さない。

 

我らが竜族の始祖?———知ったことか。

 

伝説の邪竜?———どうでもいい。

 

神を相手に戦える存在?———それがなんだ。

 

『望みを叶える為に、俺と共に戦ってくれ』

 

あの日、そう言って手を差し伸べた彼の顔が脳裏に焼き付いている。

自らを犠牲にしてでも『群れ』を護らんと泥臭く抗い、全てを背負うことを決めた英雄の姿に魅せられた。

彼を英雄と認めたからこそ、エレボスは生まれて初めて誰かの下につくことを選んだのだ。

 

故に、如何なる存在が相手であろうとも、相棒たる彼の道を阻むものならば排除するまで。

 

かの英雄に従うと決めたあの日から、自分は彼の牙であることを望み、そうあるべく戦い続けてきた。

 

あらゆる障害を噛み砕き、相棒の願いを叶える為に戦う。

 

それでいい。それだけで十分だ。

 

相手が英雄だろうが、始祖だろうが……ましてや神であっても、彼の意志に従い撃砕しよう‼︎‼︎‼︎

 

『グゥオオオオオオッッッ‼︎‼︎‼︎』

 

エレボスは魔弾を連射しつつドライグへと襲いかかる。

しかも直線の突進ではなくまさしく稲妻の如きジグザグの軌道。向きを変えた瞬間大気が爆ぜる音が幾度と響く。それはエレボスの加速が音速へと到達した証だ。

それはエレボスが相棒たるディレイドと共に強くなっていることを示している証でもあった。相棒の戦いを見て学び、自らでも扱えるように再現したのだ。

だからこそ、エレボスのこの軌道はドライグの意表をついた。

 

『ッッ‼︎‼︎』

 

音速を以て稲妻の軌道を突き進むエレボスはドライグの障壁に激突する直前に九十度角度を変え、真横に飛び出しすぐさま反転すると、ドライグの胴体目掛け突っ込み彼の胴体に牙を突き立てた。

雷の牙は相手が炎の体だろうと関係なく、音速の勢いのまま炎の体を確かに抉り、炎の残滓が胴体から溢れる。

胴を抉った後急停止したエレボスは口の中に残っていた炎を吐き捨てると牙を剥いて挑発的な笑みを浮かべる。それはまるで、ざまぁみろと言いたげだった。

 

『ハハッ……』

 

だが、ドライグはそれに憤りを顕にはせず、むしろ抉られた腹部を見ながら大口をあげて哄笑をあげた。

もしも、今のドライグが生身の状態であるならば、きっと牙を剥き出しに獰猛な笑みを浮かべたことだろう。そう想像できるほどに彼の笑い声は獰猛だった。

 

『ハハハハハッ、これは侮っていたっ‼︎まさか、小僧如きに腹を抉られるとはなっ‼︎‼︎』

 

ドライグはエレボスの力を見誤っていた。

竜人族ですらないただの竜。変成魔法の強化を受けたとはいえ、それでもたかが竜。全ての竜族の頂点に君臨する始祖たる自分に傷をつけることなどあり得ないと驕っていた。

だが、蓋を開けてみたらどうだ?

ただの竜では思いつかないような雷を駆使した変幻自在な音速機動を以て自身の胴を抉ってみせたのだ。

 

『これは鈍っていたと認めざるを得んな』

 

数千年を超える長い間、自分は魂だけだった。

肉体を使った戦闘は本当に久しぶりであり、陽和と精神世界で竜体での戦闘訓練を重ねていたが、それでも本来の動きには程遠かったようだ。

自身の認識に加え、久しぶりの戦闘。

慢心と怠慢が合わさった結果、このザマだ。情けないと笑うしかない。

 

『………全く、これでは相棒達にどやされてしまう』

 

炎の体でダメージこそないが、竜の帝王が傷を負わされたという事実を知れば、陽和は驚き、ヘスティアは呆れてしまうかもしれない。

そんな光景を想像し、苦笑いを浮かべた彼は瞳を鋭くしエレボスを見据える。

 

『認識を改めよう、エレボスとやら。たった一度とはいえ、王の体に傷をつけたのだ。その強さを誇っていいぞ。故にだ』

 

そう言ってドライグは魔力を滾らせ全身から劫火を放つ。

まさしく地獄の劫火が如き獄炎が燃え滾る様は、荒々しく燃え盛る太陽だ。

 

『ここからは貴様を敵と認め叩き潰そう。心してかかってくるがいい』

『グゥオオオオオオォォォォォォォォォッッ‼︎‼︎』

 

ドライグの宣告にエレボスは吠えて、闇色のスパークを迸らせながらドライグへと襲いかかる。

それを迎え撃ちながらドライグは他のメンバーの状況を探る。

 

(さて、相棒は戦えているとしてあの二人は無事だろうか)

 

正直なところ、ドライグの見立てでは雫、セレリアの勝率はかなり低いと見ている。彼女達から発せられるオーラで戦力差を正確に測れていたからだ。

だからドライグは二人の身を案じ地上へと視線を向けた。

 

『あそこか』

 

二人はすぐに見つかった。なぜなら、地上の戦場の中で一際目立つ青と紫の輝きがここからでもはっきりと見えたからだ。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

「どうしたのっ‼︎あなたの力はその程度なのっ⁉︎」

「ぐぅっ⁉︎」

 

双剣に宿る蒼焔が、彼女の怒号に合わせて爆ぜ、セレリアの紫氷の鎧を幾度となく砕き、鮮血が溢れる。

戦況は変わらずクレアがセレリアを圧倒している。覚悟を決め、決意を露わに戦いに臨んだとしても、元々の実力差が歴然なのだから無理もない。

魔力をフル稼働して再生魔法を発動し続けることで、肉体的なダメージこそは先程よりも軽減されているが、それでもジリ貧だ。魔力が尽きれば終わる。

だというのに。

 

(………ああ、すごいなぁ)

 

追い詰められているセレリアの胸中にあるのは敗北の恐怖や力量差の絶望ではなく、純粋なまでの尊敬だった。

 

(………本当に、強い)

 

戦い方を覚え始め、己を鍛え始めたからこそ痛感する。

彼女の戦士としての強さがどれほどのものなのかを。

昔から彼女を知っていたが、それはあくまでディレイドの妻であり自分の義姉である家族としての姿だけ。

戦場で双剣を振るい炎とともに踊る戦士としての姿は、今日まで知らなかった。

彼女が金ランクに相当する冒険者で『戦姫』と呼ばれるほどに強いということは知っていた。だが、今日この日、彼女の戦う姿を知り、戦士として尊敬すら抱くほどとなった。

 

その強さに至るまでにどれだけの研鑽を積んだのだろうか。

どれだけの死線を潜り抜けてきたのだろうか。

きっと自分には推し量れないほどに重ねて来たのだろう。そうした積み重ねがあったからこそ、ここまで強いのだ。

彼女と相対したからこそ自分がいかに未熟なのかを痛感する。

 

昔から何度も死線を潜り抜けた確かな実力と、誰かを愛しその人の為に共に堕ちようとしている覚悟。

 

愛する人の為に戦う覚悟は自分にだってある。

愛情の差で優劣などつける気は毛頭ない。そんなもの優劣をつけれるようなものではないからだ。

だとするならば、この差は単純に実力の差だ。それははなからわかっている。戦う前からそんなことはわかりきっている。

なら、それほどまでに力量差のある彼女の悲壮な覚悟を打ち破るにはどうすればいい?

簡単なことだ。

 

(勝たなければ皆を止められないのなら………勝つしかないだろッッ‼︎‼︎)

 

それでも勝つことだ。

そんなこと、馬鹿でもわかる。

 

「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ‼︎‼︎‼︎」

 

何度血反吐を吐こうとも、何度鎧が砕かれようとも、何度体を焼かれようとも、彼女は膝をつくことを決してせず必死に拳を振るう。 

 

「甘いっ‼︎」

 

だが、黒虎の戦姫は冷静に対処する。振り抜かれた拳を余裕を持って見切ると一歩踏み込み、逆手に持った双剣で胴体を袈裟斬りで切り裂かんとする。

 

「っっ⁉︎」

 

次の瞬間、彼女は目を見開くと、袈裟斬りを中断して剣を持ち上げ顔の横で咄嗟に構えた。

直後、硬質な金属音が響いたのだ。

その発生源を見れば、クレアの剣とセレリアの籠手が火花を散らし鍔迫り合いをしていた。

 

(………反撃してきた)

 

これまで防戦一方だったのに、遂に反撃して来た。

されるがままだったのに、今確かに攻撃する瞬間の最も無防備な瞬間を狙って顔面を狙って殴打を放ったのだ。

 

(この戦いで成長しているっ)

 

クレアは確信した。

思えば昔から飲み込みが早い子だった。料理も家事も教えればすぐに覚えて、みるみるうちに上達していった。

兄と同じく天才と呼ぶに値し、地元ではとても賢い子で有名だった。

どうやら戦闘の才もそうだったらしい。戦い方を覚えてから一年も経過していない上に、戦法はステータスに任せたゴリ押し戦法なのにもかかわらず、長い研鑽を積んだ武人にして獣の力も得た自分に防御に転じさせた。

 

兄譲りの戦闘センス。

 

それが今、開花しつつあるのだ。

 

「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ‼︎‼︎」

 

防御されたと分かるやセレリアは手を開いて剣を掴むと、もう片方の手で顎目掛けてアッパーカットを繰り出す。しかし、それは容易く避けられ、鳩尾に膝蹴りを叩き込まれる。

よほど強かったのだろう。血を吐き苦悶に表情を歪めたがそれでも、セレリアは一歩も下がらなかった。

歯を食い縛り、拳を強く握り締め果敢に攻める。攻め続ける。紫氷を纏う白銀の籠手が、淡紫の魔力光を纏う。それは彼女の意志の強さを示すかのように、より鮮烈に輝いていた。

圧倒すらされるであろう莫大な魔力の輝き。それは、氷の強度上昇に加えて身体強化魔法をも発動した証。

セレリアは必死に己を強化し、クレアとの差を縮めようとしている。

だが、それでもーーー

 

「舐めるなッ‼︎」

「ぅっ……!」

 

拮抗は生じない。

蒼き獄焔が紫の麗氷を圧倒する。セレリアがどれだけ高めようと関係ない。彼女がギアを上げるのなら、こちらもギアを上げるだけだ。

そもそも、彼女はセレリアとの戦いにおいて本気を出していない。『戦姫』と呼ばれた強者の実力はこの程度ではないのだ。

だから、クレアはセレリアを圧倒できる。元々の彼我の実力差がある上に、積み重ねた経験値が違うから。

いくら獣魔兵になり自身と同等のステータスを得ようとも、属性相性や経験値で優っているクレアに負ける道理はない。

クレアは果敢に拳を振るうセレリアの攻撃を容易く見切り、両腕を弾いて腹部を貫こうと剣を突き出す。

閃光が如き鋭い一撃は、まっすぐ腹部に吸い込まれ、氷鎧を貫通する。

———その筈だった。

 

「ッッ———‼︎」

 

直後、クレアは瞠目の眼差しを浮かべた。

氷を容易く溶かす筈の炎剣が前に進まないのだ。

一体何故?そんな疑問が彼女の脳裏をよぎったその刹那、

 

「———ガァッ‼︎」

 

獣の雄叫びが響き、紫の閃光が刹那の拮抗に割り込みクレアへと襲いかかる。間一髪、クレアは後ろに飛び退くことでそれを回避した。

 

「…………………」

 

後退したクレアはちらりと己の左肩に視線を向ける。

見れば左肩部分は炎の鎧が剥がれ3本の斜めの線が入っていた。まさに鉤爪に切り裂かれたかのようなその痕からは、鮮やかな赤い液体が、血が僅かに滲んでいたのだ。

クレアは回避が間に合わず、それどころか炎の鎧を僅かだが破り擦り傷とはいえ傷を負ったのだ。

 

「……はっ」

 

セレリアの口からは思わず笑みが溢れる。

何度も致命傷を受け続けてようやくの一撃。これまでのダメージと比較すれば、あってないようなものだが、それでも傷を与えられたという事実にセレリアは興奮を抑えられなかった。

では、何故クレアの剣を防げたのか。そのカラクリは実にシンプルだ。

 

(………未来視、使ってみるものだな)

 

再生魔法“未来視”のおかげだ。それはシアの固有魔法“未来視”と同じものだ。再生魔法は過去を見ることができ、それは未来も然り。僅か数秒先の未来だが、それを見て攻撃が当たる箇所に空間遮断障壁を展開したのだ。

だからこそクレアの一撃を防ぐことができ、空間魔法の斬撃で彼女の肉体に直接傷を与えることができた。

だが、そこまでしてようやく一撃だ。

傷を与えられた興奮も束の間。その事実にすぐさま彼女は表情を引き締めた。

 

(とはいえ、たかが擦り傷だ。クレアさんには何の障害にもなっていない)

 

一撃与えたとはいえ、それは小さな擦り傷。

彼女ほどの戦士ならばその程度の傷、戦いの障害にはなり得ない。それを裏付けるかのように、さっきよりもむしろ加速し、クレアはセレリアに襲いかかった。

 

「僅かでも私に傷を与えたのは見事だわ‼︎でも、こんなもの、傷の内に入らないわよ‼︎‼︎」

「ぐっ‼︎」

 

蒼き煉獄の中で唯一存在する紫氷を焼き尽くさんと炎は一層猛り狂い、幾度と爆ぜる。

受け止める剣の重みが、炎の熱さが増した。

それは一流の武人たる自分が格下の相手に傷をつけられたことへの怒りか。大事な義妹が確かに成長しているという喜びか。真意はともかくとして今の彼女の胸中を表すかのように炎は激しく燃え盛る。

その炎に鎧を焼かれながら、セレリアは必死に思考する。

 

(考えろ‼︎勝つ方法をっ‼︎)

 

もうさっきのようなまぐれは起きない。

クレアはより一層気を引き締めて自分を倒そうとするだろう。確実に自分を倒して、この戦争に終止符を打つために。

それならば、さっきのようなまぐれではなく、確実に体勢を崩した上で戦闘不能にできるほどの一撃を叩き込まなければいけない。

その策を見出す為に思考しながら、クレアの猛攻を必死に凌ぐ。だが、先程の一撃により、クレアは攻防ともにギアを上げており、より撃ち込める隙がなくなっていた。

どれだけ神代魔法を駆使して裏をかこうとしても、まさしく獣の如き反射神経で対応し反撃されてしまう。

 

確かに、セレリアはこの戦いで間違いなく成長し、より戦い方が洗練されてきている。

だが、それでも、ギアを上げたクレアには届かなかった。

やがて、セレリアが突き出した拳を紙一重で避けられ腕ごとかちあげられる。クレアはバレリーナの如くくるりと軽やかに身を翻すと腕を上げられ無防備になった腹部目掛け、鋭い蹴りを叩き込んだ。

 

「がはっ⁉︎」

 

腹部に刺さった瞬間、足の炎が爆ぜてセレリアの氷鎧を砕き腹部を焼きながら、セレリアは大きく吹き飛ぶ。

何度も地面を跳ねて、炎に焼かれながら最後には地面を削りながら止まった。

腹部を焼き、全身を苛む激痛に悶え苦しむ。しかし、それでもと顔を上げた時、自分の背後からズザザッと地面を削る音が聞こえてきた。

姿を直接見ずとも、その気配、魔力、匂いで誰か気づき振り返りながら彼女の名を呼ぶ。

 

 

「………雫……」

 

 

自身のところまで吹き飛んできたのは、親友である雫だった。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

セレリアのところまで吹き飛ばされたのは、離れた場所で戦っているはずの雫だった。

今2人がいるのは、ちょうどお互いの戦場の中間地点に位置する場所であり、お互いに吹き飛ばされたようだ。違うのは、セレリアが地面を転がりながら吹き飛ばされたのに対し、両足で踏ん張り地面を削って後退したところか。

 

「セレリア、大丈夫?」

 

雫はすぐ後ろで倒れているセレリアの姿に気づき、心配そうに声をかける。その気遣いにセレリアは苦笑いを浮かべた。

 

「………なんとか、な。そっちは?」

「私も同じね」

 

雫も苦笑いを返す。見れば雫も服の至る所が裂かれて血が滲んでいた。再生魔法で肉体を癒しても、服まで直す余裕がないほど、苛烈な戦いなのだと窺える。

槍で貫かれたのか、腹に空いた風穴を再生魔法で治す雫は、脂汗を流しながら呻いた。

 

「………2人とも、強いわね。私達が、ここまで追い込まれるなんて思わなかったわ」

「………元々、金ランク相当の冒険者だったからな」

「納得の強さね」

 

雫はクスリと笑うと前を向く。

彼女の視線の先では槍を構える鮫女、シャルフィが緩やかな足取りでこちらへと歩いてきている。それはセレリアの方でも同じく、クレアが悠然とした足取りでこちらへと歩いてきていた。いずれもまだまだ余裕がある状態だ。

セレリアも再生魔法で傷を治しながら立ち上がり、雫と背中合わせで立ち構える。

 

「セレリア、勝率はある?」

「………ない。そっちは?」

「こっちもよ。完全にお手上げだわ」

 

雫は刀を構えながらもやれやれと首を振るう。

お互い勝機が見えない。戦ってる相手はどちらも格上であり、雫の方は単純な武術の技量で押し負け、セレリアの方は全てにおいて敵わない。

唯一の違いである神代魔法をお互い駆使しているが、それでも渡り合えないため、逆に魔力を大幅に消費してしまっている。

普通に考えるならばもう詰みだ。彼女達に挽回のチャンスはもうない。

 

「それでも」

「ええ」

 

だが、例え詰みであったとしても、2人は何がなんでも。

 

「「私達は負けるわけにはいかない」」

 

負けるわけにはいかないのだ。しかし、状況は以前悪いままだ。それをわかっているのは、クレア達も同じだ。

 

「決意は見事なものだわ。でも、私達には依然大きな隔たりがある」

「同感だな。決意が力になることもあるが、それで全ては覆らねぇぞ。どうやって私らに勝つつもりだ?」

 

2人は自分達が有利だと当然分かっている。

どれだけ力を得ようとも、経験の差で凌駕できる。ならば、確実に追い詰めてその命を刈り取るだけだ。

いくら陽和がディレイドを追い詰めるほど化け物じみた強さを有していたとしても、彼と共に歩む彼女達はそうではない。

 

 

———だからどうした?

 

 

「ふふっ」

「ははっ」

 

現実を突きつける2人に対し、雫とセレリアは満身創痍にも関わらず笑い声を上げた。

雄叫びと悲鳴が木霊するこの戦場で、場違いな笑い声にクレア達は眉を顰める。

急に笑い出した。まさか絶望のあまりに心が壊れたか?あるいは、まさかこの状況下でも勝てると思っているのか?

そんなふうに2人が怪訝に思うが、そのどちらでもない。2人の心は正常だし、この状況でも勝てると思えるほど命知らずではない。

では、なぜ笑ったのか。

それは、彼女達は知っているからだ。

 

「どうやって勝つかですって?そんなの簡単なことよ」

「そうだな。簡単なことだな」

 

まだ発展途上の戦姫達は背中合わせのまま示し合わせたかのように笑みを浮かべながら、声を合わせ大にしてそれを口にする。

 

「「今ここで、限界を越えるっ‼︎‼︎私達が愛する彼のようにっ‼︎‼︎」」

 

青と紫の女傑達は、魔力を噴き上げながら高らかに宣言した。

クレアとシャルフィという格上の強敵に勝つ方法。それは本当にシンプルなもので、ここで限界を超えて強くなること。

しかし、そんなことを言葉にしたところで、すぐに限界を突破できるとは限らない。いや、そもそもいつできるか分からないものなのだ。だが、彼女達は知っている。

どれだけ困難に追い詰められたとしても、何度も限界を超えて乗り越えてきた2人が愛してやまない『英雄』の姿を‼︎

その姿を、その背中を自分達は何度も見てきた。見てきたからこそ、彼に惹かれて恋をした。

だからこそ、だからこそだ‼︎

彼と共に歩むと誓ったのに、自分達が限界を超えないでどうする⁉︎

ここで諦めるような自分達なんかで、胸を張って彼の隣を歩めるものか‼︎‼︎

 

 

『よくぞ吼えた‼︎2人とも‼︎‼︎』

 

 

その想いに、帝王が応えた。

直後、4人の近くに何かが地響きを立てて落ちてきた。

砂煙が巻き上がり、それが晴れた時そこにいたのは、紫黒の竜エレボスを組み伏せる炎竜ードライグだった。

 

「エレボスッ」

「マジかよっ」

『グゥ………ァッ………』

 

組み伏せられるエレボスの姿にクレアとシャルフィは表情を強張らせる。

何度も血を吐き出すエレボスの姿はまさに満身創痍だ。至る所が焼かれたり、裂かれたりとし流血が止まらない。魔人族最強の英雄ディレイドの相棒がここまで一方的に蹂躙された姿に歴戦の戦士達である2人は驚愕を隠せなかった。

血を吐き全身ボロボロのエレボスを組み伏せながら、ドライグは2人を見下ろす。

 

『それでこそ相棒が愛する2人だ。どんな逆境であっても、勝利を諦めぬその高潔な意志に称賛を送ろう』

 

同時に雫とセレリアを鮮やかな紅蓮の光が包み込んだ。

まさに炎の如き紅蓮は2人の魔力光を阻害することなく、むしろより輝かせるように灼熱の輝きを以って称賛を示した。

その効果として2人の体の傷は瞬く間に癒えて、魔力すらも大幅に回復した。

 

『大分消耗しているようだったからな回復させた。だが、これ以上は何もせん。こいつらはお前達自身の力で打倒して見せろ。お前達ならばできるだろう?』

 

自分が手を貸すのはここまでだ。

ここから先は彼女たち自身の力で立ち向かわなければ意味がない。いや、そもそもこの回復自体も余計なお世話だったのかもしれない。

しかし、助けられる位置にいながら死なせるのは論外だ。ならばせめて、死なぬように回復させる。とはいえ、援護はそこまで。

クレア達は雫達自身の手で打倒しなければ、意味がない。むしろ、負けたら相棒の期待を裏切ることになるぞ?と暗に発破をかけたドライグに2人は揃って不適な笑みを浮かべると、

 

「「勿論」」

 

力強く頷いた。

できるさ。できるとも。恋人が信じているのだ。恋人の相棒が鼓舞してくれたのだ。ならば、尚更負けられない。

闘志の炎を燃やす2人に対し、対峙する獣達は冷酷な殺意を研ぎ澄ます。

 

「黙って聞いていれば随分と調子のいいことを言うじゃない。多少回復したところで何になるって言うの?」

「そうだぜ。その炎竜がなんと言おうとも状況はなんも変わっちゃいねぇぞ」

 

2人が纏う蒼緋の魔力に殺気が帯びる。

雫達の猛りに対抗するかのように、殺意を膨れ上がらせた2人は泰然と構える。

クレアはドライグに組み伏せられながらもなんとか抜け出そうと必死にもがいているエレボスに視線を向けると吼える。

 

「エレボス立ちなさいっ‼︎ディーはまだ戦っている‼︎なら、従魔のあなたが先に倒れてどうするっ‼︎‼︎」

 

遠く離れた戦場で竜の咆哮が轟き、炎と雷が激しく荒れ狂っている。

それはつまり、相棒たる英雄ディレイドがまだ戦っていることを意味している。それならば、相棒たるエレボスに脱落など許されるはずがない。

そんな無様をディレイドに見せてもいいのかと叱咤するクレアに、エレボスは竜眼を妖しく輝かせながら応える。

 

「ッッ、グゥルゥオオォォォォォォォォォォォォッッ‼︎‼︎』

『ぬっ⁉︎』

 

雄叫びをあげ、紫黒の魔力を全身に纏い雷を迸らせながら、根性でドライグの拘束を振り払い、一足先に飛び上がったドライグに翼を広げて襲いかかる。

ドライグは応戦しながら、2人に最後の助言を贈る。

 

『2人とも、確かにそいつらは強い‼︎だが、お前達も十分に強いことを忘れるな‼︎‼︎』

 

ドライグは炎の翼を羽ばたかせて空高く飛び上がり、エレボスを誘導する。

再びドライグとエレボスが空で戦う中、2人の戦姫は背中合わせに立ち、互いに倒すべき獣を見据え言葉を交わす。

 

「勝つわよ。セレリア‼︎」

「勝つぞ。雫っ‼︎」

 

魔力を噴き出しながら、2人は地面を蹴って飛び出した。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

瑠璃と緋色の魔力が激突し、二色の水流が激しく渦を巻き絡み合う。

枝葉の如く無数に伸びる水のアーチをお互いに滑りながら、水竜と蒼鮫は刃と槍を振るい、青と赤の軌跡が無数に描かれ、火花が散る中、水竜ー八重樫雫は思考を巡らせる。

 

(さっきは威勢よく言ってみたものの…‥正直、きついわね)

 

顔面を貫こうと突き出された槍を刀で受け流しながら、雫は冷や汗を流す。

ドライグのおかげで傷は全快し、魔力も大幅に回復した。ほぼ戦う前の状態に戻ったと言えるが、それでもシャルフィの猛攻に圧されてしまう。

 

「おらどうしたぁ‼︎あたしに勝つんじゃねぇのかぁっ⁉︎」

「っ……‼︎」

「多少回復したところで、実力差が縮んだわけじゃねぇだろっ‼︎なのに、このあたしを倒そうなんざ、思い上がるんじゃねぇ‼︎‼︎」

 

緋水纏う豪槍を真上から叩きつけ、雫を水の足場ごと沈める。

アーチを突き破り、真下へと落下する雫は翼を咄嗟に広げて地面への墜落は避ける。しかし、上空に飛び上がった時にはすでにシャルフィが自分の目の前にいて、緋水を纏わせ巨大化させた尻尾を振り抜いていた。

 

「———“緋水流尾”ッッ‼︎‼︎」

「ぐぅっ‼︎」

 

反射的に翼で自身の体を包んだ雫だったが、その翼の上から水の尻尾は叩きつけられ、今度こそ地面に叩き落とされる。

砂埃を巻き上げて墜落し、何度も地面をバウンドしてようやく止まったが、シャルフィの追撃は止まらない。

 

「———“緋水・大顎門”ッッ‼︎‼︎」

 

槍を突き出し、そこから巨大な緋水の鮫の頭部が顕現し、鋭い牙が生え並ぶ顎門を大きく開き雫を喰らわんと迫る。

すぐさま身を起こした雫だったが、回避が間に合わず左翼と左腕を喰われ、その下の地面が大きく抉られた。

 

「〜〜〜ぃあっ⁉︎……っっ、“絶象”ッッ‼︎‼︎」

 

傷口から鮮血が噴き出し、雫の表情が苦悶に歪む。

だが、悲鳴をあげるのをグッと堪えた雫はすかさず再生魔法を発動して左翼と左腕を修復する。

今度は雫の方から攻めに転じる。

地面を踏み砕き翼を羽ばたかせながら、水のアーチをも利用して勢いよく高度を上昇。ある程度の高度まで到達すると反転し、水のアーチを昇り追いかけてくるシャルフィに向けて刀を振り下ろす。

 

「———“洪瀑・竜水撃”ッ‼︎」

 

振り下ろされた刀の合図に合わせて、雫の頭上に無数の巨大水塊が形成され、それが先端部が円錐に尖ってドリルのように回転しながら落ちてきたのだ。

視界を埋め尽くす水塊の質量爆弾群には流石にシャルフィも表情を険しくさせて、緋色の魔力を激らせて迎撃。

 

「———“緋水・大鮫牙”ッッ‼︎‼︎」

 

一つ一つが人間並の巨大な鮫の水牙をガトリングの如く連射。

自身の槍の刺突だけでなく、魔法陣からも無数に発射して、降り落ちる水塊を迎え撃った。

空で二色の水の塊が激突して爆ぜる。赤と青の水飛沫が大地に降り注ぐ中、雫は薄明を納刀し空間障壁を足場に構えて極太の水の居合を放つ。

 

「“海切”——————ッッ‼︎‼︎‼︎」

 

居合切りはそのまま飛ぶ斬撃へと昇華。

極太の水の斬撃となってシャルフィを下の大地ごと切り裂かんと迫るが、シャルフィは全身を捻り迎え撃つ。

 

「“緋水・大鮫刃”ッッ‼︎‼︎」

 

全身を捻った反動で槍を振り抜いて、放ったのは雫と同じく飛ぶ斬撃。

二色の半月状の斬撃が大地に落ち、あるいは大空へと昇り、激突。

青と赤の魔力光が拮抗するが、程なくして緋水の斬撃が瑠璃の斬撃を切り裂き、雫へと襲いかかる。

雫は反射的に“波城壁”を展開し、それを防ごうとする。だが、シャルフィの渾身の斬撃はあろうことかその障壁すらも食い破り雫の胴体を斜めに裂いた。

 

「つぅ〜〜〜ッ⁉︎」

 

雫の体がさらに空高く打ち上げられる。

その体に刻まれた傷はそこまで深くはない。咄嗟に防御として挟んだ薄明のおかげで、致命傷には至らなかったもののそれでもそれなりのダメージがあった。

翼で制御することすらままならず、無様に回りながら空に打ち上げられる雫は血を吐き出しながら、悔しさに表情を歪める。

 

(ここまでやっても勝てないなんて……)

 

自分の技はもう出し尽くした。数多の水属性魔法、幼少の頃より培ってきた八重樫の剣術の全てを。そして、それらを複合させた渾身の一撃“海切”すらも、シャルフィの魔法と技の前に呆気なく破れてしまった。

ドライグに大幅に回復されたとしても、全ての戦術がもう通用しない。

詰み。そうとしか言いようがなかった。

 

(私はっ、なんでこんなにも弱いのっ)

 

バートと同等の力であったとしても、竜人族に転生し力を得た今の自分ならば戦えると思っていた。

でも、結果はこのザマだ。陽和から力をもらったのに、ドライグに回復してもらったのに、それでも敵に追い詰められているという事実に雫の心には悔恨の炎が燃え上がる。

 

「これで‼︎終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎」

 

そんな彼女めがけシャルフィが緋色の水竜巻を纏って空を駆け上りながらとどめを刺そうと槍を向ける。

轟々と唸るこれまでにないほどの威力で渦巻く竜巻は、それそのものが一本の槍だ。

シャルフィはその巨大槍でこの戦いに終止符を打とうとしていた。あと、10秒もしないうちに自分を貫くことだろう。

 

(情けないっ……悔しいっ……)

 

もう自分に打つ手はない。

あれほどの竜巻に自分の持てる手札では抗えない。何をしようともこのまま無慈悲に貫かれて終わる。

雫の冷静な思考がその事実を無情に突きつけてきた。それをわかってしまっているからこそ、自分の情けさに怒りが湧いてくる。何も出来ないことに悔しさが湧いてくる。

だが、それは何も打つ手がないからだけではない。

 

(どうして私は竜化ができないのよっ⁉︎)

 

雫が己に怒りを抱くもう一つの理由。それはー竜人族を竜人族たらしめる魔法ー己を竜とする『竜化』がまだ使えないことだ。

転生した眷属は多少なりとも時間がかかるとは聞いていた。だが、それでも、陽和が竜化を会得するまでの時間を考えると、自分は遅すぎると言ってもいい。

 

『生来の竜人族』と『転生した竜人族』とでは竜化のメカニズムは違う。

生来の竜人族は本能としてやり方を刻まれているため、成長していけば次第にできるようになるものだ。特にこれと言って、特別な方法などは使っていない。

対して、転生した竜人族は各々によって竜化の方法が変わってくる。陽和が死地に晒されることで覚醒することもあれば、アルビオンのように転生した翌日には何故か竜化出来ていたなど人それぞれだ。

だからこそ、雫がどのタイミングで竜化できるかは誰にもわからないのだ。

 

陽和は『きっかけが必要』だと言った。

ドライグは『その時が来たら』と言った。

ティオは『己を信じればいつか成る』と言った。

 

心優しく聡明な彼らのことだ。できないことを責めることもなく、焦らずに自分のペースでやればいいと言ってくれた。

だが、

 

(今出来なきゃ意味がないのよっ‼︎)

 

切り札の存在がわかっているのに、それを今この状況下でまだ使えないのが腹立たしい。

弱いままでいたくないから強くなるって決めたのに。

彼と同じ時を生きて隣で支えるって決めたのに。

これまでの守られるだけの自分が嫌だったから、力を求めたのに、まだ自分は弱い。

 

ギリッと牙が軋む音が雫の口から溢れ、感情の発露によって皮膚だった箇所が竜鱗へと変化し、縦に割れた竜眼が瑠璃色に輝く。

今、雫の胸中を占めるのは怒りの炎。敵への怒りではなく、己の無力さを呪う自責の憤炎だ。

決意したはずなのに、力を得たはずなのに、それでもまだ弱い自分への怒りが際限なく高まっていく。

 

刹那、ドクンと体の内側で力強い脈動が響く。

 

その脈動に合わせるかのように、魔力が滾る。

 

(勝ちたいっ。いいえっ‼︎私は勝たないといけないのよっ‼︎‼︎)

 

憤怒の炎を原動力にし抱くは勝利への渇望。

しかし、その実態はただの勝利ではない。

 

(陽和の為にもっ、他ならぬシャルフィさん達の為にもっ‼︎‼︎)

 

その勝利は誰よりも愛する彼と、今まさに自身の胸を貫こうと穂先を向けるシャルフィの為に捧げる。

彼女達の覚悟はわかった。だが、それはあまりにも悲しすぎる。あんなにもセレリアを想えるのに、戦うことしか選べないなんて、そんな悲しい結末なんてごめんだ。

親友のセレリアが本当に幸福になる為にはシャルフィ達が必要なのだ。

だから、その未来を自分が切り拓く。

今ここで彼女を打倒することで、彼女達も幸福になっていいのだと示す。

 

(私が勝って未来を示さないといけないのよっ‼︎‼︎)

 

セレリアに幸せになって欲しいからこそ、雫は意志を強固に、怒りを気力へと変える。

怒りは気炎へと変わり、気炎は魔力の高まりへと変わる。

可視化できるほどに高められた魔力が滾る様は、彼女が愛する男を象徴する炎のように激しく燃え上がっていた。

それを見た瞬間、シャルフィは背筋に悪寒が伝うのを感じた。

 

(っ、こいつっ、まさかっ)

 

核となった魔鮫の本能が騒いでいた。

何か来ると。とんでもない何かが今目覚めるぞと。

ソレが目覚めたらひっくり返されるぞ、と獣の本能が疼いたのだ。

 

(それでもこの一撃を決めれば終わりだっ‼︎‼︎)

 

焦燥を露わにした彼女は雫が何かをする前にとどめを刺そうと加速し、槍を心臓目掛けて突き出す。

緋色の槍が雫を貫こうとする。だが…………一瞬遅かった。

 

 

 

「ああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ———————————————ッッ‼︎‼︎‼︎』

 

 

 

雫が大口を開ける。

開かれた顎門からは音塊が放たれ、同時に瑠璃色の輝きが爆ぜる。

空間を揺るがす音塊はまさしく竜の咆哮そのもの。

音塊と瑠璃色の輝きの爆発が合わさり、物理的な衝撃波となって目前まで迫っていたシャルフィを吹き飛ばした。

 

「くそがぁっ‼︎‼︎」

 

あと一歩のところで弾かれたシャルフィは水のアーチで自分を受け止めると、すかさず顔を上げて雫の方を睨みながら悪態をつく。

見上げた先では雫が瑠璃色に輝く水球に包まれていた。その様は、まさに『蕾』のようであり、水球の周囲を無数の水のアーチが渦を巻く光景はまさに壮麗の一言に尽きる。

シャルフィはこれから起こるのが何かをおおよそ察しがついているため苦い表情だったが、周囲の魔人族達はその美しさに息を呑んで見惚れていた。

そんな中、唯一彼女の恋人は激闘を繰り広げながら、小さく笑みを浮かべその新生を祝福する。

戦場に壮麗な『青』の輝きが広がり、多くの人が見上げる中、蕾が花開きソレが姿を表した。

 

 

『—————————』

 

 

空中に溶けるように消えた水球から花が芽吹くように翼を広げて姿を現したのは一頭の流麗な竜だ。

体長は18mほどでシルエットは陽和やティオのような西洋のドラゴンではなく、蛇のように細長い東洋の龍に近い。

鱗の色は海の如き鮮やかな瑠璃色。頭部から生える水色の角が大小4本。短い四肢から伸びるか鉤爪は水色だがその数は4本だ。背には己の体を覆い隠せるほどの鷹にも似た青白の竜翼。細長い頭部の後頭部から伸びる鬣は美しい純白だ。

一番近い姿で言えば中国神話に登場する『応龍』が一番近い。そんな有翼の龍のような形態となった青い竜は、瑠璃色の竜眼を開くと月を仰ぎ見て咆哮を上げた。

 

『クゥオオオアアアアァァァァァァァァァァァァァ—————————ッッッ‼︎‼︎‼︎』

 

夜天に轟いたのは壮麗な咆哮。

陽和やディレイド、ティオのように荒々しいものではなく、どこまでも透き通るような美しい咆哮だった。

シャルフィは青竜を睨むと冷や汗を流しながら牙を剥き出しにして叫んだ。

 

「いつまでも使わねぇと思ったが、やっと出しやがったなヤエガシシズクっ‼︎‼︎」

『ええ、そうね。ようやく使えるようになったわ』

 

青竜から響く声音は雫の声だ。

瑠璃色に輝く鱗を持つ壮麗な青竜は、シャルフィの言った通り雫だ。

 

 

———“赤竜帝の恩恵”派生技能“海竜化”。

 

 

赤竜帝の眷属として転生した雫がようやく会得した竜人族を竜人族たらしめる派生技能ー己を竜へと変化させる力。

これでようやく雫は完全に竜人族へと成った。

 

『これが、私の竜の姿……』

 

雫は竜と化した己の体を長い首を動かしながら見回す。

自分がイメージしていた姿は陽和達のようなドラゴンの姿だ。だが、蓋を開けてみれば、自分は蛇のように細長い龍の姿であり、予想とは違った姿だ。

 

『これじゃあドラゴンじゃなくて龍ね』

 

自分の姿に笑みを浮かべる雫。

予想とは違う姿に少し期待はずれのような感覚はある。

だが、なぜだろうか。

 

『…………でも、不思議とこの姿がしっくりくる』

 

この姿はなかなかどうしてしっくりくる。むしろ、この変化が心地よくすら思えてくるほどだ。

予想していた姿は違っていたが、そんなこともうどうでもいい。これでようやく、自分は本当の意味で竜人族になれたのだから。

雫は翼を羽ばたかせてその場に留まりながら、自分を険しい表情で見上げてくるシャルフィに視線を戻して告げる。

 

『シャルフィ・マリアーネ。随分と待たせてしまったわね。ようやく貴女に私の全力をぶつけられるわ』

 

そう告げるや雫は顎門に瑠璃色の輝きを収束させシャルフィが何かをするよりも早く、それを解き放つ。

咆哮と共に放たれたのは青き極光だ。

 

「っっ⁉︎」

 

開幕の大技。

その極光に本能が危機を察し、シャルフィは咄嗟に回避する。刹那の差でシャルフィがいた場所を極光が通過し、その下のアーチを容易く断ち、地面へと突き刺さるとそのまま地面を穿った。

底が見えないほどに深々と地面を穿ったブレスの威力に、シャルフィは冷や汗を流しながら、焦燥を露わにする。

 

(っっ、やっぱり単純な威力そのものがあがってやがるっ‼︎)

 

ディレイドと同じだ。

独学かつ変成魔法のおかげとはいえ、彼もまた竜人族の固有魔法ー“竜化”を会得している。その強化倍率を知っているからこそ、雫の力も底上げされていることを理解できてしまった。

シャルフィの推測はまさしくその通りであり、“海竜化”を会得して海竜となった雫のステータスは著しく向上している。

竜人形態では敏捷のみに補正がかかっていたが、海竜形態では魔力、魔耐以外の全てのステータスに補正がかけられる。

 

=========================

 

八重樫雫 17歳 女 レベル:41

天職:剣士

筋力:9860 [海竜形態+7500]

体力:8870 [海竜形態+8500]

耐性:8630 [海竜形態+8500]

敏捷:11340[海竜形態+10500]

魔力:8800

魔耐:8790

 

=========================

 

ただでさえ高いステータスに補正が加わったことにより、海竜形態の彼女はセレリアとほぼ同等のステータスとなった。

とはいえ、なぜ同じ竜人族であるはずなのに、ティオのソレよりも竜形態での強化補正値が高いのか。

 

それは彼女が王より直接血を与えられたからだ。

ティオのように種族として確立してから長い年月が経過し、始祖の血が薄れているわけではない。二代目の赤竜帝として覚醒した陽和から直接血を与えられ眷属となり、竜人族に転生した。

言って仕舞えば、血の濃さが違うのだ。

 

『赤竜帝の血』とは、つまるところ力の塊。

一見すればなんてことのない血だが、眷属化するための魂の了承を得た場合に限り、取り込んだ者には一滴であっても絶大な効果を与える。

純度が高ければ高いほど得られる恩恵は高い為、赤竜帝として覚醒した陽和から直接血を与えられた雫の方が強化倍率は当然高くなる。

 

更に付け加えるなら、雫は“神の使徒”として召喚されている。

異世界からの召喚者として元々高かったステータスが、赤竜帝の血によって更に強化されることで、奈落の化け物たるハジメや獣魔兵であるセレリアと並び、ようやくシャルフィに届くところにまで到達した。

 

「っ、上等だぁっ‼︎‼︎」

 

それを今のブレスの一撃でシャルフィも感じ取ったのだろう。一瞬焦燥を露わにしていたが、すぐさま獰猛な獣の形相へと変え槍を構えて仕掛けようとする。

だが、その時点で雫はすでに次の攻撃へ移っていた。

大きく翼を広げた背後で無数の光が瞬いた瞬間、それらは一斉に瑠璃色の光の尾を引いてシャルフィに襲いかかったのだ。

 

「っっ⁉︎“緋水波盾”っ‼︎」

 

同じ水使いであるが故にソレが無数の水の弾丸であることを理解したシャルフィはすぐさま緋水の障壁を展開。アーチに乗って回避行動をとり雫の背後に回り込もうとする。

だが———

 

『追いなさい』

「っっ⁉︎」

 

静かなひと言が告げられるや、回避したはずの水弾が向きを変えてシャルフィに向かってきたのだ。

 

「っっ……舐めんなぁっ‼︎」

 

まさかの追尾先にシャルフィは目を見開くも、さすがは歴戦の戦士。動揺は一瞬ですぐさま迎撃に切り替えた。

自分も同じく水の弾丸を構築し、障壁からマシンガンのごとく乱射する。

青と赤の水弾が激突し弾けて相殺する。さっきまでなら打ち勝てたはずなのに、相殺されるほどに雫の力が上がっていることに苦い表情を浮かべる。

その時、自身の視界に影が掛かる。見上げれば、そこには瑠璃色の巨体がー海竜がそこにはいて、既に長い尾を鞭のようにしならせていたのだ。

シャルフィが気づいた時にはすでに遅く、障壁を容易く破りシャルフィを長い尾が打ち据えて地面に叩き落とした。

 

「がっ、ぐぅっ⁉︎」

 

地面に深々とめり込んだシャルフィは全身が軋むような鈍痛に苦悶の声をあげる。ここにきて初めての看過できないダメージだ。

全身に纏っている水鎧のおかげでダメージを軽減できていたが、それがあったからこの程度で済んだ。もしも鎧がなかったら、一瞬意識が飛びかけるほどのダメージはあっただろう。

 

『クゥアアァァッッ‼︎‼︎』

「ちぃっ‼︎」

 

響く鈍痛にシャルフィは硬直してしまっているが、轟く竜の雄叫びに体を無理やり動かす。

軋む体が悲鳴を上げるのも厭わずに、水鎧を操作して体を強制的に動かしてその場から飛び退く。直前までシャルフィがいた場所に雫が降下して水を纏わせた鉤爪を叩きつけたのだ。

地面が粉砕し、小さなクレーターが生じるほどの破壊力。その細い腕からは想像できない威力だったが、竜化した竜人族のことだ。これくらいはやってのけるだろう。

飛び退いたシャルフィは地面を蹴り雫の胴体を貫こうと槍を構える。対する雫は翼を広げ、縁をシャルフィに向けながら振り下ろした。防御のために頭上に掲げた槍に翼が激突するが、そこから鳴り響いたのは金属音だ。

雫の翼はシャルフィの鰭と同様に縁だけではあるが金属質なのだ。そのため、陽和が装甲を変化させて翼に刃を纏わせる一方で彼女の翼はデフォルトで刃が備わっており、その刃翼でシャルフィを斬り裂こうとしたのだ。

 

(なんって、重さだよっ⁉︎)

 

受け止めたシャルフィは踏ん張りきれず、片膝を突いてしまい、槍から伝わる重さに目を見開く。

海竜化したことによる膂力強化だけでなく、落下速度、翼の重みなどが加わったことによる膂力増強+加重による一撃の強化。それは、獣魔兵たるシャルフィであっても危機感を抱かせた。

 

「っっ、らぁっ‼︎」

 

それでも身体強化魔法で無理やり膂力を増強して翼を弾く。

竜翼が弾かれ雫は仰け反るが、あろうことか雫は弾かれた勢いを利用してその場で回転したのだ。

 

「……はっ?」

 

15mを超える細長いが巨大な竜が、その大きさを感じさせない身軽な動作で回転したことにシャルフィは一瞬呆けてしまう。

これまで狩ってきた大型の魔物達でこんな身軽な動きをできるものなどいなかったからこそ、初見の状況に反応が遅れてしまった。だが、それはこの状況では致命的だ。

一回転したということは、腕や翼もその動きに連動するということ。つまり、シャルフィとは反対側にあった片翼が回転の勢いに合わせてこちら側に来るということだ。

 

「〜〜〜っっ⁉︎」

 

それを理解し焦るシャルフィに迫るのは月光を反射して煌めく竜翼の刃。

シャルフィの予想通り、回転の勢いに連動した片翼が掬い上げるように下から迫ってきたのだ。

気づいた時にはすでに回避が間に合わず、シャルフィは左下腹部から左肩に縦に斬り裂かれた。

 

「かっ……」

 

縦に裂けた傷から血が噴き出る。シャルフィの口からも血が溢れた。

だが、

 

((浅いっ‼︎))

 

斬った雫も斬られたシャルフィも、今の一撃が致命傷には至らない浅い傷だと気づいていた。

完全に回避は叶わなかったものの、歴戦の戦士としての直感と獣の反射神経が彼女を間一髪のところで救ったのだ。

もしも、直撃していたら、戦闘に支障が出る可能性はあったほどの一撃だ。

だが、それは躱された。故に、戦闘は続行できる。

 

「ハッハハハハハハァァッッ‼︎‼︎」

 

牙を剥き獰猛に呵呵大笑を上げたシャルフィは一歩前に踏み込み槍を突き出し、水の槍を射出する。

それは雫の竜鱗に突き刺さり、胴体を抉る。

美しい瑠璃色の竜鱗に赤い血が滲むが、傷は浅い。

雫は鉤爪を振り下ろし、槍の穂先と竜の鉤爪が火花をちらしながら斬り合いを始める。

 

「やるじゃねぇかっ‼︎竜化なんて初めてのはずだろうっ‼︎随分と戦い慣れてんなぁっ‼︎‼︎」

『すぐそばにいいお手本がいたからね‼︎彼らの動きは勉強になったのよ‼︎』

「なるほど‼︎そりゃあ納得だ‼︎」

 

確かに身近に竜の手本のような人物が2人もいるのだ。戦い方を参考にするのに不足はない。

雫の学習能力の高さならば2人の動きを見るだけでも十分勉強になる。そして、その学習能力の高さを遺憾なく発揮した雫の猛攻が始まった。

 

 

『———“青華繚乱・剣の舞”』

「っっ⁉︎」

 

 

言霊と共に夜天に無数の『青』が咲き誇る。

『青』の正体は水の華だ。しかし、花弁の一枚一枚が水刀といういわば刀の華でもある。

そんな刀華の花弁がハラハラと散り、水刀が宙を踊りながらシャルフィに襲いかかった。

 

「チィッ‼︎」

 

宙を舞い踊る水刀にシャルフィは舌打ちをすると、周囲に緋水の盾や鮫牙を展開して迎え撃つ。

刹那、盾や牙と水刀が激しく撃ち合う音が響く。それだけでなく、シャルフィは槍を振るい刀を直接叩き落としていく。

だが、

 

(っっ、あの野郎っ魔法の処理能力も上がってるのかっ⁉︎)

 

叩き落としても消えることなく、軌道を変えて別角度から水刀が襲いかかってきたのだ。

先程までは見せなかった水刀の同時操作。その数、実に百。

それを彼女は今自由自在に操作できている。

 

魂魄魔法、生成魔法を使わず水属性魔法のみでの百本の水刀の同時操作は以前の雫ならば不可能だ。脳の許容上限を超えている。

だが、今彼女はソレができている。操作に専念しているためか、その場から動いてはいないが百本の水刀をそれぞれ自由自在に操作するのは、ソレを差し引いたとしても埒外な技量だ。

どうやら、海竜化したことによりステータスが向上しただけでなく、魔法の処理能力も向上したようだ。

事実その通りであり、海竜化、否、真の竜人化に伴い雫のステータスは軒並み上昇しただけでなく、魔法の処理能力もそれに比例して上昇している為、模索段階であったはずの魔法を行使できているのである。

 

『———“剣華散乱”』

 

雫は百本の水刀を操作しながら翼を大きく広げ瑠璃色の輝きを宿すと、一度大きく羽ばたいた。

そうすると翼に纏っていた魔力が水の小太刀へと変化して弾丸の如くシャルフィめがけて降り注いだのだ。

 

「なにっ⁉︎」

 

水刀を捌いていたシャルフィは自分の許容量を超える水刀の雨に思わずそんな声をあげてしまう。

だが、流石は歴戦の猛者というべきか。シャルフィは大きく一回転し周囲に群がる水刀を薙ぎ払うと同時に水のベールを展開して瞬く間に障壁を構築し防御の構えを取った。

間一髪防御が間に合い降り注いだ水刀は障壁とぶつかり、周囲の地面が砕け砂埃が舞う。

砂埃が舞う中、雫は百本の水刀を自身の背後に浮かばせながら地面に降り立ち砂埃を睨む。やがて、砂埃が内側から緋色の魔力によって払われてシャルフィの姿が顕になる。

 

顕になったシャルフィの背中や肩には水の刀が突き刺さっていて血が服に滲み地面に滴り落ちている。

“海竜化”によって強化された雫の魔法は遂にシャルフィの防御を破ることに成功したのだ。だが、所詮一度破った程度、一切の油断はせずにシャルフィを睨む雫に対し、シャルフィは一度舌打ちをするも、すぐさま獣の如き獰猛な笑みを浮かべ豪快に大笑いした。

 

「ははっ、はっはははは、ははははははははははははぁっっ‼︎‼︎」

 

戦場に不意に笑い声が響く。

肩を揺らすほどに笑った彼女は一頻り笑うと緋色の魔力を滾らせ、牙をむき出しに吼える。

 

「いいなぁ‼︎やっぱ戦いはこうでなくっちゃ面白くねぇ‼︎あの炎竜が言った通りだ。認めてやるよ、ヤエガシシズク。お前は強い。それこそあたしの命を奪える可能性があるぐらいにな」

『随分と評価してくれるわね』

「謙遜すんなよ、あたしは本当に認めてるんだぜ?竜化前ならともかく、竜化を会得した今のお前は強ぇ。気を抜いたらやられかねねぇほどにな」

 

だから、と槍を構えたシャルフィは表情を引き締め真剣な表情を浮かべると冷徹な声音で告げた。

 

「こっからは、あたしも本気で行く」

 

これまではまだ余裕があった。

だが、竜化した雫の強さでは手加減をしていたら敗北の可能性が高い。だからこそ、獣魔兵『蒼鮫』の全力を出して雫を迎え撃つことにしたのだ。

緋色の魔力が竜巻の如く激しく渦巻き、緋水となってシャルフィを包み込む。巨大な緋水球の中でシャルフィは自身の最強を発動した。

 

 

「———“緋水・大魔海鮫”ッッ‼︎‼︎」

 

 

雄叫びが轟き、緋水球が変形する。

鰭が、尻尾が生え、鋭く尖った頭部には鋭い牙が生え並ぶ。頭の先端部に槍の如き角が生えているし、緋水で形作られた擬似的な肉体ではあるが、そのシルエットはまさしく、鮫そのものだった。

その魔法は奇しくも陽和が編み出した『ドライグ』と似通っており、中に術者のシャルフィがいるが彼女は陽和と同じことを水属性魔法のみで実行してみせたのだ。

 

(間違い無く、ここからが本気の勝負になるわね)

 

雫の竜眼が警戒に細められ、低い唸り声が喉から溢れる。

感じるプレッシャー、魔力の高まりからしてもあの水鮫がシャルフィのとっておきなのは間違いない。

ならば、今までのようにはいかないだろう。竜化を会得して強くはなったが、それを以ってしても先ほどのように上手くはいかない。

自分と彼女の戦いはこれからが本番なのだと気を引き締めてざるを得ない。

警戒を高める中、紫の眼光を宿す大鮫の中にいるシャルフィが宣戦布告する。

 

 

『これがあたしのとっておきだ。早々にくたばるんじゃねぇぞ‼︎シズクっ‼︎』

『上等よ‼︎そっちこそ覚悟しなさい‼︎シャルフィ‼︎‼︎』

 

 

二頭の獣は咆哮をあげる。

第三ラウンドの火蓋は切って落とされ、水鮫と海竜は激突した。

 





今回書き過ぎてしまったのでそれをキリのいいところで分割しての投稿です。
次の話を近い内に出せたらと思っています。
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