血濡少女のヒーロー?アカデミア   作:夏秋冬

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第7話 血濡少女と紅さす影

「千染、少しいいか?」

 

放課後、帰ろうと荷物をまとめている美亜を相澤が引き止める。

特に急ぎの用が無かった美亜はそのまま談話室へとついて行った。

夕暮れの廊下を2人とも無言で歩く。相澤の右斜め後ろを歩きながら(何のようだ?今日の怪我を心配して…なわけがないか)と美亜は気を引き締める。

 

「お前の個性、あれは本当に『操血』か?」

 

座った途端いきなり切り出された展開に、美亜はわざと軽く顔をしかめ、いかにも不満ですといった表情で相澤の目を見据える。

 

「何故、個性届けには『操血』と書いてあるはずです…それに実際に血を操っているではないですか(やはり無理があったか、B組の担任が操血の時点で嫌な予感はしていたんだがな、にしても流石に聞くのが早すぎるだろ、デリカシーのかけらも無いのか)」

 

「単純な疑問だ、『操血』ならブラドのようにコスチュームに何らかの仕掛けを作るはず。にも関わらずお前のスーツはただ着ているだけ。それに余りにも量が多すぎる、あれは成人男性でもぶっ倒れる出血量だ。細身のお前が耐えられるはずがない」

 

互いの鋭い視線が交差し、美亜はやがて参りましたと言わんばかりに目を伏せて大きく息を吐いた。

相澤の指摘は的確で言い逃れができるものではない、そう判断した美亜は手の内を晒すことにした。

 

「嘘をついてすみません。私は別に騙そうとしたわけじゃ無いんです、ただ怖がられたくなくって……せっかく新しい高校生活が始められるのに」

 

徐々に顔を伏せ両拳を膝の上で強く握る、話終わる頃には肩もわずかに震えている。そんな目に見えて落ち込んだ美亜に相澤は驚き、落ち着かせるよう、自分では優しげと思える慣れない声を出した。

 

「すまん…言い方がキツかったか、それについては責める気はない。それで本当の個性を話してくれる気になったか??」

 

「はい…私の個性は『(ブラッド)』です。ほぼ血液操作と出来ることは同じですが、違いがあります。それは体外に流れ出るときの血の増幅です。だから全力を出すにはブラド先生の方式だと太いパイプを繋ぐ必要があって、それでは機動力が損なわれてしまうんです」

 

「成る程、だからあれ程の量の血が出せるのか。聞いたことない個性だな…『血』そのものを司る、随分と範囲が広く強力だ。だが自傷は痛くないのか?」

 

そう聞かれると美亜は顔を上げ真っ直ぐ相澤を見る、そして優しく笑いかけた。

 

「痛いですよ?でも慣れてますから」

 

「そうか、それならいい」

 

夕陽に照らされた表情こそ女神が笑っているかのようだ、きっとこの笑顔を普段からすれば、彼女はたちまち人気者になるだろう。

ただ多くの目を見てきた相澤は気付く。紅の眼の奥にドロっとした黒いモノが漂っていることに、背筋が冷たくなるが平穏を装って答える。話は終わったとばかりに立ち上がって美亜は部屋から出て行った。

 

美亜が荷物を取りに教室へ戻ると、まだほとんどの生徒が残っていた。美亜に気付いた芦戸や何人かの男子生徒が声を掛ける。

 

「おぉ!千染じゃねえか、今日の演習マジで凄かったぜ!俺は 切島鋭児郎(きりしま えいじろう)、今皆で戦闘訓練の反省会してんだ!」

 

「俺は 砂藤力道(さとう りきどう)!個性もド派手でカッコ良かったな」

 

「美亜ちゃんも反省会参加してよー、アドバイスして欲しいな」

 

奥を見ると他にも何人かのグループに分かれて話し合っている姿が見える。

緑谷と爆豪、それにあの轟はいないようだ。

 

「すまないが私は帰らせてもらう。今日は早く寝たい気分だ」

 

「たはー、お婆ちゃんかよ!アドバイス貰いたいやつみーんな帰っちまうなー。まぁいいや、お疲れ!また明日な!」

 

「今日はありがとね!これからよろしく、美亜ちゃん!」

 

「あぁ、よろしく頼む」

 

断った美亜に対しても皆は嫌な顔一つせず元気に挨拶をして送り出す。

帰路についた美亜はさっきまで黒い感情が渦巻いていた心が少しだけ楽になったのを感じた。

 

「にしても千染美亜、いまいち掴めないよな、やっぱ表情が変わらないからかね」

 

「あれがクールビューティーってやつだろ、正直すっげえ似合ってるよな」

 

「同い年には思えない!あれはモデル級だぜ!クールな千染がおいらだけに見せる一面…グへへ」

 

去った美亜について早速馬鹿なことを話している瀬呂、上鳴、峰田にため息をつきながら芦戸、常闇が話しかける。

峰田は既に蛙吹によって縛り上げられ、地面に転がっている。

 

「話してみると意外と感情豊かだよ美亜ちゃん、顔に出ないだけかもね。以外と喋ってくれるし!」

 

「常に自信があるように振る舞っているのも、己を律するためかも知れん」

 

関わった2人から高評価を受けているし、とりあえず悪い奴ではないんだろうと納得する。

そもそもこのクラスに爆豪という超問題児がいる時点でどんな奴も可愛く見えるのだ。

 

 

横浜市某所、雑居ビルが立ち並ぶ一角、知らなければ誰も気づかないであろう外見のバーの中には3人…いや2人と一匹がいた。

 

「見たかコレ?教師だってさ…」

 

どこか子供らしさを残した声の男が呆れたような声で新聞を放り投げる。その新聞には『オールマイト 雄英の教師に!!』と大きく見出しが載っている。

声こそ子供らしさを残しているが、その姿は異形であった。ただれた病的に白い肌、その体は痩せ細っていて、黒のTシャツと黒のパンツによってよりその白さが際立つ。髪は青白くボサボサで、無造作に輪郭を隠している。そして何より彼の顔は一つの大きな手首から先がない右手につかまれていた。掴まれているというより自分でつけているのだ。さらには両腕と脇、肩にも無数の手だけに掴まれている。

男は心底楽しそうに、そして憎そうに声を上げる。

 

「なァ…どうなると思う?平和の象徴が…敵に殺されたら…」




2000UA突破ありがとうございます!
閑話休題というよりフラグ建設回になりました。
今のところ美亜に対して疑問を持っているのは根津、相澤です。
オールマイトはちょっとおかしいな?ぐらいの認識です。

千染美亜
個性『操血』→『血』
血を司る個性。操作や増幅、出来ることは幅広そうだ。
隠していた意味は分からない、千染の言葉を信じて良いものか…
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