血濡少女のヒーロー?アカデミア   作:夏秋冬

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第8話 血濡少女と記者と委員長

バスに揺られる事20分、ぐっと伸びをした美亜の目には雄英高校の校門が見える。しかし今日は何やら人だかりができている、何事だと思いながらもその正体がマスコミである事に気付いた美亜は、面倒ごとに出来るだけ関わらないよう端から校門に入ろうとする。

 

すると元来の優しい性格故か、振り払うことができずに格好の的となっている砂藤が目に入る。沢山のマスコミからの質問に戸惑いながらも一つ一つ答えようとしている。

あほか、その筋肉は何のためにあると美亜は面白くなさそうに1つ鼻を鳴らすと、正面から堂々と入る。

 

「おい、邪魔だ。登校出来ないだろ、少しは迷惑というものを考えてくれ。大体朝から「君も雄英高校の新入生ね?質問してもいいかしら!」

 

「私は…邪魔だと言ったはずだ…どけ」

 

人の話を聞かず、詰め寄ってきた上に図々しくもコメントを求めてきた記者に対し、紅い眼で鋭く睨みつける。記者が思わず怯み、後ずさった。そのまま記者の壁を掻き分け、唖然としている砂藤の手を掴み校舎内に入った。

 

「全く、朝から忌々しい。あいつらの中には常識とか配慮が存在しないのか…」

 

ブツブツ言いながら大股で歩いている美亜に手を引かれながらも砂藤は勇気を出して「なぁ…」と声をかける。

しかし声を発した瞬間、美亜の怒りが自分に向かってきたため、心底後悔した。

 

「なんだ…そもそもお前もお前だぞ。あんな奴らにビビってどうする!ヒーローにならメディアの10人や20人など軽くあしらえなければ務まらんだろう!」

 

「だ…だけどとにかく千染さん、助けてくれてありがとう。俺が捕まってたからわざと気を引くようなことしてくれたんだろ?それなのに俺は呆然としてしまってすまなかった。

ただ俺が感謝してるってことはちゃんと伝えさせてくれ」

 

砂藤が眼を見てしっかりと感謝の言葉を伝えると、美亜の怒りの勢いが萎んでいく。未だ引っ張っていた手をぱっと振り解き、小さな声で『わかったなら良い、次は助けんぞ』と言ってそっぽを向いてしまった。

しばらく並んで無言で歩いていると美亜が問いかける。

 

「そういえば…砂藤、さっきは何を聞かれていたんだ?」

 

「あぁ、オールマイト先生が今年から教師になっただろ?それで授業内容とかどう思ってるかとか色々とな…やっぱすげぇよなぁー、流石No.1だよ」

 

「くだらん話だ、教員ともあろうものが生徒に迷惑をかけてどうする。みんなを守るヒーローである以前に身近な人間を守ってほしいものだな」

 

「俺や口田はともかく皆なら大丈夫だろ、あれぐらいは切り抜けられるよ。あ、爆豪とかはヤバそうだけどな…」

 

茶化すように言って肩を竦める美亜を砂藤がなんとか宥めつつ2人は教室に入った。

仲良さそう(他人目線)に話しながら美亜と登校してきた砂藤は当然峰田に首を掴まれガクンガクンと揺さぶられた。

 

校門前、愛想悪く記者を追い出し、そのまま戻ろうとした相澤に詰め寄ろうとしていた記者がセキュリティに引っかかり締め出された。校門は鉄の重厚な扉に閉ざされ、記者たちが口々に文句を言う。

その様子を1人の男が後ろから静かに見ていた。

 

 

「今日のHRだが君らに……学級委員を決めてもらう。」

 

「「「「学校っぽいの来たーーーー!!!!!」」」」」

 

相澤の言葉に臨時テストか?と身構えてしまった生徒達、しかしその後告げられた突然の学校イベントに沸き立ち、その直後次々と立候補の手が上がる。

 

「緑谷、学級委員とは何だ、何故皆がやりたがる?」

 

美亜は横でおずおずと控えめに手をあげている緑谷に聞く。緑谷は突然美亜に話しかけられたことでびっくりして慌てるも直ぐに説明を始める。

 

「あっ、千染さん。ヒーロー科だと集団を導く素質が鍛えられるから学級委員は人気があるんだ。えっと…学級委員って言うのは色々な所で皆を先導したり、意見を纏めたりするんだ。千染さんはやらないの?」

 

「説明ありがとう緑谷、生憎私は面倒臭いのは嫌いでな。だか…皆が手を上げると言うなら私もあげてみるか、それが協調性と言うものだろう」

 

よくわからないことを言いつつもすっと綺麗に手を挙げた美亜に苦笑いしつつ、緑谷もさっきより高く手を挙げる。

皆が口々に騒がしく主張していると飯田の声が響き注目があつまる。

 

「静粛にしたまえ!!責任重大な仕事だぞ…『やりたい者』がやれるのではない、周囲からの信頼あってこそ務まる聖務…ここは民主主義に則って投票で決めるべき事案だ!!!」

 

「そびえたってんじゃねーか!何故発案した!!」

 

力強く言い切った飯田だが、その右手は天に向かってそびえ立っている。

相澤の時間内に終わればなんでもいいとの鶴の一声により投票が行われた。

 

緑谷3票

八百万2票

千染2票

緑谷の3票がトップ、ついで八百万と千染が同数となった。男女1人ずつのためこの2人の内どちらかが学級委員になる。自分に2票も入っていることに首を傾げていると八百万が声をかけてくる。

 

「あの…千染さん、どうやって決めましょうか、やはり再投票で「かまわん、学級委員はお前がやれ八百万」

 

八百万が突然の展開に目を白黒させてフリーズしたので話を続ける。

 

「気にするな、私と八百万ではお前の方が適性が高いと思っただけのこと。本気で望んでいる者に譲るのは吝かではない、その代わりやるからにはしっかりとやれよ?」

 

そう言って少しだけ口角を上げた美亜は思わず同性でも見惚れるほどの蠱惑的な笑みを浮かべた。八百万も例外ではなく、妖しく煌く紅の眼に思わず見惚れてしまう。

 

「………っ!は、はい!ありがとうございますわ千染さん!私、貴方の分まで頑張ります!」

 

(こっ、怖…固まったかと思えば急に喋り出して…まぁ、その直向きさは嫌いではないがな)

 

しばらくフリーズした後、勢いよく顔を近づけて喋り出した八百万に軽く引きつつもその真っ直ぐさに好感を覚えた。

 

 

昼休み、退屈な午前の授業が終わり、皆それぞれグループとなって昼飯を食べに向かう。お昼楽しみだなーと思いながら昨日と同じように美亜を誘おうと麗日は顔を向けた。

 

「常闇、話したいことがある。よければ昼2人で食べないか?」

 

そんな長閑な時間に急に爆弾が投下された、美亜が常闇を昼飯に誘ったのである。しかも美亜が赤らんだ顔を逸らしながら照れたように誘うという、普段からは想像もできないような雰囲気を醸し出している。

クラス中が驚きに包まれてフリーズしている中、最も唖然としているのは席に座っている常闇だった。

 

「あっ、ああ…構わないが…」

 

「良かった、では行こうか」

 

そう言って常闇と共に足早に教室から出ていく美亜。その2人の背を皆が目で追いながら見送る。ドアが閉まり、2人が十分に離れたことを確認した瞬間、阿鼻叫喚に包まれた。

 

「うわあぁぁぁ、何でだ常闇ーーー!!」

 

「あいつ、クールなフリしてやることやってんじゃねえか、裏切り者!!」

 

「えー、え、ええーー、これそう言うことやんな、そういうことやんな??」

 

「お茶子ちゃん落ち着いて、方言が濃いわ」

 

「美亜ちゃんって自分から誘うこともあるんだー、意外と積極的?」

 

「大丈夫ですわ皆さん、2人ともミステリアスでお似合いかと…」

 

「「お似合いとか言うなよーーー!!」」

 

八百万の精一杯のフォロー?で峰田と上鳴の2人が崩れ落ちる。

 

「あんたら…会ってから3日よ、ありえないっての」

 

そんなバカ2人に耳郎は呆れながら突っ込んだ。顔を赤くしてた理由は分からないが、まさか誘うのが恥ずかしくて照れていたなんてことは無いだろう。あの見た目だから今までも引く手数多だったんだろうなーとしょうじきちょっと羨ましい。

その言葉を皮切りに皆ぞろぞろと食堂に向かっていく、もちろん話題は美亜と常闇についてだった。

 

食堂に着いた2人は、常闇がさわらの西京焼き定食、美亜はオムライスを受け取ると空いている席を探す。ヒーロー科の他にサポート科、経営科、普通科の生徒らも集う食堂は非常に混み合っている。常闇はさりげなく横に人がいる席に自分が座り、対面の美亜を横に人がいない席に誘導する。

 

「ありがとう常闇、君は紳士だな」

 

「当たり前のことだ、気にするな」

 

学級委員の事や午前の授業についてなど当たり障りのない会話をしながらご飯を食べる。

しばらくして美亜が本題に入った。

 

「常闇、お前の個性『黒影』あれは影を自在に操っているのか?」

 

「話はそれか。近いけれど少し違うな。影は影だがあいつは意思を持ち、自分で行動できる。いわば影のモンスターを体の中で飼っている状態だな」

 

「成る程…そういう個性もあるのか、面白いな。わざわざ呼び立てて済まなかった。もしあれを意図的に作り出しているなら私の戦い方の参考になるかと思ってな」

 

「構わない。それにしても千染の個性は『ウウーーー!!!』

 

常闇が何かを問いかけようとした瞬間、食堂に警報音が鳴り響く。周りの生徒はビクッと反応し、辺りをキョロキョロとせわしなく見渡している。

 

『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください』

 

「セキュリティ3??おい、セキュリティ3って何だ」

 

放送によって繰り返し避難が誘導される。美亜は聞き慣れない言葉を近くの上級生を捕まえて訪ねる。上級生は慌てた表情で早口で説明する。

 

「校舎内に誰かが侵入したって事だよ!3年間でこんな事初めてだ!」

 

「侵入者だと??敵か!」

 

美亜と常闇は正体を掴もうと窓に向かって歩くが、出口に向かおうとする人の波に押し流される。雄英高校に侵入者という前代未聞の事態に皆が軽いパニックになっており、誰もが我先にと向かうせいで押し合いとなってしまっている。そんな生徒たちに邪魔されたことで美亜の苛立ちが募る。何とか隙間を縫って、時には押し除けて流されないように耐える。

 

(クソっ!何だこいつらは、何をそんなに馬鹿みたいに焦っているんだ、この学校にはNo1ヒーローがいるだろ!!)

 

「常闇!私を『黒影』で窓に向かって運べ、上からなら行ける」

 

「あっ…ああ」

 

そう言って常闇の方に顔を向けた美亜の眼は燃え上がるような紅に染まり、常闇はその剣幕に流されるように黒影を出す。黒影は流れるように生徒の隙間を抜けると美亜の体を掴む。

 

「大丈ーーー夫!!!」

 

突然出口の上に非常口のような形で張り付いた飯田が叫び、あまりに意味不明な事態に皆の注目が集まる。

 

「ただのマスコミです!なにもパニックになることはありません、大丈ーーーー夫!!

雄英高校の生徒として、最高峰に相応しい行動をとりましょう!!」

 

徐々に騒めきが収まっていく、一瞬でも立ち止まった事で事態を飲み込む冷静さが生まれた。飯田の声で皆が安心し、我に帰りパニックは沈静化した。『黒影』に体を掴まれていた美亜もその様子を見てゆっくりと地面に降りた。

 

 

「委員長はやっぱり飯田くんが良いと…思います!あんな風にカッコよく人をまとめられるんだ、僕は飯田くんがやる方が正しいと思う」

 

その後、帰りのHRで緑谷が飯田を委員長に推薦し、皆が賛同、飯田と八百万が改めて1年A組の委員長となった。

 

(カッコ良かったか?だが咄嗟の機転と大胆な行動力は見事だった。

それにしてもどうやって…美波も万全と言っていた雄英のセキュリティをただのマスコミが…?)

 

頬杖を突きながら外を眺めて考えていた美亜は、飯田の熱い挨拶で我に帰った。

 

 

教員一同が校門を見ている。

 

「どうやってただのマスコミがこんなことができる?」

 

雄英の誇る鋼鉄の雄英バリアがまるで砂になったかのように崩れ去っていた。

校長はその頭脳で最悪の答えを導き出す。

 

「唆した奴がいるね…邪な者が入り込んだか、もしくは宣戦布告の腹づもりか…」

 





美亜 (どうやって誘えば良い?やばい、なんか恥ずかしいぞ)

常闇 (俺か?俺なのか?)

今回の中盤は少し悪ノリが過ぎました…話半分に読んでください。
次回からいよいよUSJ編へ突入です。少し長くなったので3か4話に分けようと思っていますが、どうしてもキリが悪くなる…。
美亜の本気の戦闘を楽しみにしていてください。
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