血濡少女のヒーロー?アカデミア   作:夏秋冬

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第15話 血濡少女とUSJからの帰宅

美亜が目覚めると病室は既に真っ暗で日が暮れている。歩けるから帰るか、皆に心配をかけたから謝らなければ。そんなことを考えながら軽くひと伸びをしてベッドから降りる。その時ドアが軽くノックされ、入るわよという声に続きドアが開いて灯が付く。

 

「元気かしら?と言ってもそんなわけないか…あら、もう歩けるの?車椅子はいらなかったか」

 

「えっと…誰だ?」

 

入ってきたのはスーツを着こなし、キリッとした目元をしたできる女感溢れる女性、美亜は思い当たる人物がいなくて思わず問いかける。できる女風ミッドナイトは苦笑いを浮かべながら答える。

 

「18禁ヒーロー、ミッドナイト先生よ。いつもと服が違いすぎてわからなかったかしら…これで分かる?」

 

いつもつけてる目元を覆うベネチアンマスクでは無く、黒縁のしっかりした眼鏡をかける。美亜はハッとした表情をすると納得して頷いた。

 

「貴方を家に送り届けるわ、流石にその状態で1人で返すわけには行かないわよ、特別に車で送っていってあげる。いつもの格好じゃ流石に不味いかな…と思って。荷物とかない?まとめて鞄に入れてあげるわ」

 

「いえ、特にないです。でも助かりました、腕がないものでバスの定期券も出せないですから」

 

わざと腕を大袈裟に振って肩を竦める美亜に苦笑いで返すミッドナイト、余りにも返しづらい冗談にオールマイトならうまく返せるのかしらと考えてしまう。

 

「その様子だと元気そうね、良かった。行きましょうか千染さん」

 

並んで駐車場に向かう2人、腕が無くても背筋を伸ばし美しく歩く美亜に感心しながら歩いている。

 

「貴方の個性、『操血』だったわよね?」

 

「あぁ、厳密には少し違いますけど大体同じです。USJの広場見ましたか?あそこの血は大体私のです」

 

「それは…なんというか本当に大丈夫なの?」

 

ミッドナイトは心から心配する。駆けつけて目にしたのは広場を染め上げる血、もしあれが全てこの少女のものであれば生きていられるのが不思議だ。

 

「それは「Hey!こっちだぜガール!」

 

答えようとした美亜を遮って大きな声がかかる。2人で声のした方を見ると車の横に立ち大きく手を振っているマイクを見つける。ミッドナイトは不思議そうに首を傾げる。

 

「マイク?私が送るんじゃなかったの」

 

「呼ばれてますよミッドナイト先生、では私は用事を思い出したのでこれで」

 

「何言ってるの、私はガールって歳じゃないわよ…。なに?嫌なの?」

 

踵を返して何処かへ行こうとする美亜を引き止め、自分の言った言葉に傷つきながら車の方へ連れて行く。

 

「いや…最初は気にならなかったが、あのテンションは苦手だ。単純にうるさいっていうか…」

 

「それマイクの前では言っちゃだめよ、泣いちゃうから」

 

そう言って車に到着し、マイクが助手席のドアを開けて美亜を座らせてくれる。

 

「なに?送ってくれるの?」

 

「校長からのご指名だ、正直乗り気じゃないけどな」

 

「テンション低いわね…、千染さんをしっかり元気付けて上げなさいよ」

 

いつになくテンションの低いマイクの背中をバシッと叩いて喝を入れる。

マイクは運転席に座ると助手席の窓を開けてエンジンをかける。

 

「しっかり休んで、元気になって学校に来るのよ。くれぐれも無理しないようにね」

 

「ありがとう、ミッドナイト先生」

 

「マイク、後は任せたわよ。さっきはああ言ったけどあんまり騒がしくしないようにね、彼女まだ本調子じゃないんだから」

 

「まかせな!俺のドライビングテクであっという間に家に着くぜ!!!」

 

早速煩いマイクに呆れながら、邪魔にならないよう車から離れる。美亜が此方に軽くお辞儀をすると車が発進する。

 

「さてさて、熱犬孤児院だな!バッチリカーナビに入ってるぜ!」

 

「そうですか」

 

「気分転換に俺のラジオでも聞くか?最高な気分になれるぜ!」

 

「そうですか」

 

「No1ラジオDJと車に乗ってる気分は?」

 

「そうですか」

 

「シヴィーーー!!」

 

話しかけるなオーラを出している美亜にも臆さずに次々と話しかけるマイク。飄々としたテンションで話すが急にトーンが下がり真面目な声に変わる。

 

「と、冗談はこれぐらいにして…今回俺が行くのは謝るためだ」

 

あまりに真剣な声に思わずマイク先生の方を向く。そこにはいつものおちゃらけた笑顔では無く、教師としての責任を背負い少し苦々しい顔をしたマイクが前を見据えていた。

 

「生徒がヴィランに襲われてるってのになにもできず、その上千染にこんな大怪我を負わせてしまった。それですまなかった、はい終わりではいけないんだよ」

 

「マイク先生…」

 

流石の美亜も言葉を失いその横顔をじっと見る。するとマイクは急に笑顔になって笑い出す。

 

「HAHAHA!!俺のクールな横顔にシビれたか!」

 

「このクソ声でかスピーカー野郎」

 

「シヴィーーー!!」

 

そんな会話をしていると孤児院の前に到着する。マイクはバックミラーを見ながら手櫛で髪型を軽く整え運転席を降りて助手席のドアを開ける。一呼吸おいて覚悟を決めるとインターホンを押す。暫くしてバタバタと走る音と共に女性の声が聞こえ、ドアが開く。

 

「美亜おかえり、遅かったじゃない………」

 

ドアを開けた拳士は目線を後ろのマイクに向けた後、固まったまま動かなくなってしまった。

 

「Hey!初めまして犬千代拳士さん!!」

 

「え…え?マイク……先生!と、とりあえず中に入れ!」

 

そう言ってマイクの腕を引っ張って玄関に入れる。その際、美亜の腕を引こうとしてその腕に気づく。

 

「美亜!どうしたの!まさか…」

 

「どうしたのワンちゃん!」

 

拳士の驚いた声に台所で夕飯を作っていた美波が駆けつけてくる。そして美亜の腕を見て何かを察したように俯くと顔を暗くする。

 

「美亜、一体なにがあったの…まさか個性を」

 

「私は大丈夫だから、心配しないで」

 

「それについては私に説明させてください。今は千染さんをとにかく休ませてあげましょう」

 

笑顔で大丈夫という美亜といつに無く丁寧なマイクの声で美波は少し落ち着きを取り戻したようだ。そして今気づいたとばかりにはっとマイクの方を見ると、美亜に自室に休むように声をかける。美亜は二階に登る前に2人に声をかけておく。

 

「美波さん、拳士さん、マイク先生を責めないであげてくれ。悪いのは私だ、だからお願い、冷静に話を聞いて欲しい」

 

悲しそうな顔でゆっくりと頷く美波と、今にも泣きそうになっている拳士。流石にマイクがかわいそうに思うが、自分がいても逆効果にしかならないと感じたので諦めて二階に登った。

 

熱犬孤児院を出て後ろを振り向くマイク、オレンジの暖かな灯りが漏れる玄関で2人が見送っている。

 

「熱田さん、拳士、今日は久しぶりに顔を見れて良かった」

 

「私もよ、マイク君。ごめんなさいね、こんな遅い時間まで話してしまって」

 

「マイク…久しぶりに会うのが、こんな機会になるなんて残念だ」

 

2人はとても申し訳なさそうな顔をしている。マイクとしても7年ぶりに会った2人とこんな業務的な報告しかできないなんて本意ではない。7年間何をしていたか、あの時何があったのか、美亜はどんな個性を持っているのか…聞きたいことは山ほどある。しかし責任ある教室として、敵襲撃事件とそれに伴う美亜の怪我、雄英高校の考える今後の対策などを説明しなければならなかった。

それでもこの2人の友人とは笑顔で別れたいと思う。雄英高校の教師である自分が暗い雰囲気だと余計な心配を掛けてしまうかもしれない。なにより旧友との久々の再会と別れがこれでは寂しすぎる。

 

「オッケーオッケー、互いに話しにくいこともあるだろうよ。そんな暗い顔するなって!じゃあな!お2人さん!」

 

キラリと白い歯を見せ、努めて明るい声で別れる。サムズアップも忘れない、これが有ると無いとでは全然違う。急にテンションを上げたマイクに面食らったのか、美波はあの時のような優しい微笑みを、拳士は少しだけ楽しそうな苦笑いを浮かべている。満足したマイクは車に乗り込むと、熱犬孤児院を後にした。

 

「こんな時間まで起きてていいのかよ!ミイラマン!」

 

「婆さんの処置が大袈裟なんだよ。それでどうだった?」

 

スピーカーから響く相澤の声、珍しく緊張した声色だ。消息を絶っていた旧友との再会、それも何かを隠している。更には根津直々の任務まで有るとなれば緊張するのも無理はないだろう。

今回マイクが聞き出せと命じられたのは3つ。7年前の事件の日何をしていたか、何故消息を絶ったのか、そして美亜の個性についてどこまで知っているのか。

 

「残念ながら何も聞けなかったぜ、ありゃ無理だ。拳士なんか今にも泣きそうだったからなー、あの空気でそんな重要な事聞けねぇよ」

 

「そうか…仕方ない。2人の様子は?」

 

「元気そうだった、熱田さんも拳士も相変わらずだ。孤児院もちょっとボロかったけどいい感じだったぜ」

 

「それなら良かった…」

 

相澤は見た目や言動に反して意外と面倒見の良いタイプで、消息を絶った2人の事も手を尽くして調べていた。だからこそ珍しく心から安心したような気の抜けた声を出した。それを茶化しつつ、遅くまで頑張った自分に対して労いの言葉を求めたマイクであったが、無情にも切られてしまった。

 

「はー、やっぱ俺にはシヴィーだよなぁー」

 

そう愚痴ったマイクだが、表情はとても嬉しそうな笑顔を浮かべていた。




区切りのいいところまで書けましたので、間を開けたいと思います。1週間以内には次の話をあげようと思っています。
最近になって読んでいただける方が増え、とてもとても嬉しいです!
次から体育祭編に入ります、美亜の活躍を期待しつつ、よろしくお願いします!
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