血濡少女のヒーロー?アカデミア   作:夏秋冬

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第20話 血濡少女と体育祭 第二種目:2

「実質それ(1000万)の争奪戦だ!!」

 

「緑谷くん!いっただくよー!」

 

開始早々複数の騎馬が緑谷へと突撃する。当然1000万Pを取ることがこの勝負においての最適解だ。緑谷の居る競技場中央部へと多くの騎馬が向かう中、美亜達は距離を取るために端へと走る。特に爆豪チームからは離れなければならない。あのチームには芦戸が入り、こちらを見ながら話し合っていた。何か策を講じてくる可能性があり、戦わずして突破することが最善だ。

 

「やはり皆1000万狙いか、奪取が早過ぎればリスクを負うだけだろうに」

 

「まぁウチらは我関せずに2位以降を狙おうよ、そっちのが遥かに安全でしょ」

 

「爆豪だ!!右後方から来ている!!」

 

「は?」

 

振り返った美亜の視界には、単騎で空を飛び突撃してきた爆豪が映る。寸前で顔面への爆破を右腕で防ぐと、返す左腕で弾き飛ばした。空を舞った爆豪に牽制の黒影が迫り、爆豪はスタングレネードのように閃光を放って攻撃を防ぐ。さらに耳郎のイヤホンジャックが伸び、ハチマキを狙うも空中で身体を逸らし回避、騎馬から離れた爆豪を瀬呂がテープで引っ張り回収した。

 

「あっっぶな!あいつ空中で体捻るとかどんな運動神経してんだ」

 

「緑谷や轟、1000万Pを無視して此方に来るとは…千染…余程気に入られてるらしいな」

 

「はぁ…障子、ナイスだ。まさかあそこまで作戦無しに突っ込んでくるなんてな…」

 

「千染ェ!ぶっ潰す!!」

 

冷静に距離を取ろうとする美亜達に爆豪から怒鳴り声が投げ付けられる。作戦を無視して単身の突撃を決行した爆豪に、騎馬の面々からは抗議の声が上がっている。そんな声を無視して美亜を睨みつける爆豪からは、闘志が目に見えると錯覚するほどの気が溢れている。

 

『騎馬から離れたぞ!?良いのかアレ?』

 

「テクニカルなのでオッケー!崩される以外で地面に足ついてたらダメだったけど!」

 

開始早々の爆豪によるド派手な戦闘に会場が沸く。騎馬戦か怪しい動きではあったが、ミッドナイトは面白い!とサムズアップして許可を出した。

 

「ほんと…美亜、あいつに何したの…?」

 

「知らん、勝手に私を過大評価しているだけだ」

 

爆豪達に対して冷静さを保ちながら少しずつ距離を取っていく。人はあまりにブチギレている他人を見ると冷静になれるらしい。そんな逃げ腰の美亜達に、更に苛立ちを募らせた爆豪は再び単身で突撃する。

 

「逃げんじゃねェ!」

 

美亜達の騎馬で近接戦闘を担う常闇、しかし彼の『黒影』は光に弱い。闇が深い程攻撃力が増すが制御が困難になり、逆に光が強ければ強いほど制御はし易くなるが攻撃性が落ちる。先程も爆豪のスタングレネードによる強い光で黒影が臆し、攻撃を止めてしまった。

戦闘演習の時か、それとも抜群の戦闘センスかは分からないが爆豪はそれに気付いている。だから防御は美亜が行うしかない。

 

「そんなワンパターンな攻撃が通用すると思うなよ」

 

再び単身で突撃してきた爆豪、意表を突くためか今度は顔面ではなく、腹部の辺りを狙ってきた。しかし巨大化させた右腕でガード、再び弾き返す。そしてできた隙を美亜達は見逃さない。テープで回収される爆豪、そちらに意識が集中している他のメンバー、その間騎馬は無防備に晒されている。

 

「耳郎!やれ!」

 

耳郎のイヤホンジャックが足元に刺さり、爆音と共に地面を砕く。足場を崩された騎馬は右に体制を崩し、右騎馬の芦戸と前騎馬の切島が膝をつく。

 

「やべぇ!油断した!」

 

「爆豪!前方に注意して!美亜ちゃん達が来るよ!」

 

宙に投げ出されたままの爆豪は、騎馬へと向いた意識を美亜達に向けて不敵に笑う。自分ではなく騎馬本体を狙った、回収を担っていた瀬呂が崩れれば自力で騎馬へと戻らなければならない。そうなれば両手が塞がる上、空中では躱すにも限界がある、黒影と血腕でハチマキを奪う事ができるだろう。つまりは本腰を入れて勝負してくるという事、最も奪われる気など毛頭ないが。

 

「強えくせにいっつもスカしやがって気にくわねぇ!本気で……おい!逃げんな!!」

 

しかし美亜達は騎馬が崩れたのを視認すると一目散に逃げ去った。遠ざかる美亜の背中を目にしながら騎馬へと回収された。

 

「あいつ…舐めてんじゃねぇぞ!おい塩顔!!何でテープで足を固定してんだ!追えねェだろうが!!」

 

「まじで落ち着けって!こうでもしないとまた1人で突撃するだろ!」

 

「そうだぜ爆豪、俺らには作戦があるんだ。逃げに徹しているあいつらはお前1人じゃ崩せねぇし、今使うのは早すぎんだろ」

 

「やるなら終了直前、初見で勝ち切らないと2度も通用する策じゃないよ。美亜ちゃんを倒すならここは我慢しないと」

 

3人の説得に流石の爆豪も気まずそうに顔を背ける。2度も身勝手に突撃した上、ガラ空きの騎馬を狙われチームを危機に晒したのだ。もし攻められていればハチマキを取られていたかもしれない。

頬を両手で打ち気持ちを切り替える。美亜は苛つくが先ずは緑谷からだ。悪りぃと一言呟くと緑谷達の方へと駆け出した。

 

「追ってきては…いないようだな…」

 

「全く…正に悪鬼羅刹、手に負えんな」

 

「でもやっぱ凄いな、戦闘力はずば抜けてる。ウチまじで怖かったよ」

 

美亜達は爆豪と轟の騎馬に近寄らず、他からポイントを奪う策に出る。上位4チームが上がれるこの騎馬戦、無理に強い爆豪、轟と戦うよりは他から取るのが安全策。緑谷はあのメンバーならいずれ誰かに取られるはずだ。相手が爆豪か轟ならそのままスルー、他の騎馬なら1000万を狙えばいい。

近くにいる中で最も戦力が弱いのは普通科の生徒が騎手を務める心操チームだ。何のつもりかは分からないが、普通科の生徒が生き残れる程この体育祭は甘く無いだろう。経営科やサポート科ならそっちの進路を選びたいという可能性があるか、強力な個性を持ちながら普通科に入学するメリットは無い。ただ嫌な予感はする、何故B組の生徒はあいつを騎手に選んだのか、そして余裕があるような笑み、何か秘策を持っている可能性もある。ただ何があっても遠距離から攻撃し、最悪逃げればいい。

美亜が騎馬の面々に指示を出そうとした時、障子から声が上がる。

 

「左!四足歩行の騎馬が来ている」

 

獣のような咆哮が聞こえ、何かが此方に駆けてくる足音が聞こえる。左を見ると四足歩行で迫るB組の 宍田獣郎太(ししだ じゅうろうた)と、その背に乗った 角取ポニー(つのとり ポニー)が見えた。宍田は個性『ビースト』によって全身毛むくじゃらで巨大化している、更には身体能力の強化もある為かそのスピードは相当なものだ。迫る騎馬に作戦を考えつつ警戒を強めていると何処かから峰田の声が掛かる。

 

「千染ー!オイラが来たぜ!!」

 

「いや何処だよ」

 

「角取の後ろ…ちいさくて見えない…」

 

耳郎の冷静なツッコミに対して、悲しそうに小さな声で伝える障子。しかしその声は聞こえてしまったようで峰田の声のボルテージが上がる。

 

「舐めるなよ耳郎!やっちまえ角取!!」

 

「結局他力本願かよ……」

 

再び耳郎がツッコミを入れるも今度こそ無視して突撃してくる。しかし指示を受けた角取は何も仕掛けてくる気配は無く、ただ此方を見ているだけだ。

 

「とにかく正面だ、あいつ中々速いぞ。それに獣化する個性…心当たりがあるが単純な肉体強化が最も厄介だ」

 

美亜の頭に思い浮かぶのは獣化ではないが、同じく強化系の個性『犬』を持つ拳士だ。流石に拳士クラスの基礎体力や格闘術は無いと思うが、同じように力や速さ、視覚や嗅覚が強化されているに違いない。その上拳士とは違って明らかに巨大化している。単純な力押しができ、さらにその速さで距離を取りづらい為一対一でも相当難敵だ。

 

「千染!後ろだ!」

 

宍戸の突撃を防ぐ手段を考える美亜へと鋭い声が掛かる。後ろを振り向いた美亜の視界は後方から飛来する2本の角を見る。弾丸のような速度で襲い掛かる角にいち早く気付いた常闇が黒影で迎撃する。しかしたったの1本で弾き飛ばされてしまった。

 

「何て威力だ!!」

 

寸前に迫る残りの一本を血腕で横薙ぎにする。射線を逸らしたものの勢いを殺しきれずに体制を崩してしまった。傾いた体を左腕を地面について支える。

 

「やば!更に2本来てる!!」

 

「クソ、こんなデタラメな威力のくせに何本操れるんだ!逃げるぞ!」

 

しかし騎馬の面々の足は動かない。いつの間にか峰田の『もぎもぎ』が足について移動を阻害していた。峰田の本命は角によるハチマキの奪取、宍戸の咆哮や突撃はもぎもぎから目線を逸らすためのブラフだ。苦し紛れに残された右腕を振り上げ、角を弾き飛ばす美亜だったが、捌き切れなかった一本が美亜の頭からハチマキを奪い去った。地面に崩れ落ちた美亜の横を駆け抜けた峰田は、角からハチマキを受け取ると大きくガッツポーズを決めた。

 

「どうよオイラの作戦!完璧な勝利だぜ!!」

 

『ここで番狂わせだ!A組と組めなかった峰田が千染らA組の騎馬から見事!ハチマキを奪取!!』

 

走り去っていく峰田達に対し、崩れ落ちた美亜達は騎馬を組み直すもその表情は暗かった。

 

「くっ!…完全に油断していた」

 

「完璧な作戦だったよ…B組の人達の作戦かな」

 

「いや…あの言い方…峰田の策だ」

 

「そっか…やるじゃん。皆必死でやってるんだよね…」

 

騎馬が組み直され、混戦となっている中央を見据えて美亜は思う。私は始めから脳無、(ヴィラン)しか見えていなかった。敵襲撃事件で傷を負った私は、表面こそ平気だと取り繕ってはいたが、傷つく事を恐れてしまっていたのだろう。だから体育祭もリスクを負わずに、傍観者のような態度を取る事で、知らず知らずの内に自身を守ろうとしていた。そんな私を責める人はいないだろう、むしろ悲劇の少女として同情されるに違いない。ただどんな理由があろうと、雄英高校体育祭では恐れる者、挑戦しない者に勝利は与えられない。あの事件すらも乗り越えていく、それが'"Plus Ultra"なのだろうか。

 

(正直…勝敗に興味などない…。生きることが出来るのならばそれで構わないのだがな…。だが…この体育祭は孤児院の皆が見ている。あまり無様な姿は見せたくはない…かな。それに轟や爆豪、芦戸や妨害してきた奴に勝負を仕掛けられておきながら逃げ回るというのも格好が付かない。全く…面倒だが仕方ない)

 

「はぁ……やめだやめだ。2.3.4位狙いだとか、自分達の土俵に持ち込むだとか、リスクを負わないだとか、そんな事で勝てるはずなど無かったな…。いい作戦を思いついたよ。立ち塞がる敵を全て潰す。目指すのは上のみ、全てを蹴散らして私達が頂点に立つ」

 

その言葉を聞いて落ち込んでいた皆が笑顔になる。見上げた美亜の眼は紅く、美しく燃え上がっていた。

 

「異存無し」

 

「いいねそれ、めっちゃロックだ」

 

「それがお前の選択か…暴れるぞ黒影」

 

美亜達は闘志を燃え上がらせ、一様に瞳を煌めかせながら混戦の中心を目指す。まずは峰田達、先程の汚名を返上するべく駆け抜けた。




ダークホースは峰田君でした!原作と違って障子が美亜のチームに入った為、A組の面々に断られてしまいました。そんな彼は宍戸と角取のB組チームへと縋ります。彼の個性と、千染を始めとしたA組の面々は自分を舐めているため、意表を突くことができると懸命にプレゼンします。必死な思いが通じたのか、B組の作戦か、こうして無事に騎馬を組むことができました。
尚、次回の美亜のターゲットが峰田に定められました…

読んでいただきありがとうございます。
書くのが遅いので期間がだいぶ空いてしまいました…。案はこの後もできているのですが文章に起こせない…
さて、騎馬戦は次回で終わると思います。その後は昼休みの後に少し幕間を挟んで、様々な人の体育祭の裏を書けたらと思っています。
これからも美亜の活躍の応援をよろしくお願いします。
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