血濡少女のヒーロー?アカデミア   作:夏秋冬

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第21話 血濡少女と体育祭 第二種目:3

『各所でハチマキの奪い合い!!早くも混戦混戦!1位は変わらず緑谷チームだ、なんとか猛攻を防ぎ切っているぞー!1000万を奪い取るのは誰だ!?それとも守り抜くことができるのか!?』

 

美亜チームは混戦の中心部へと峰田達を追って突撃する。美亜が見据えるのは前のみ。

 

「止まって貰うよ千染さん。ハチマキをとられて悔しいのはわかるけど…殺気立ってて怖いよ」

 

正面に立ち塞がった凡戸チーム、その向こうでは爆豪チームが物間チームと対面している。どうやらB組の一部は協力してA組を潰す気でいるらしい。爆豪と物間の周囲にA組の騎馬を近づけさせず、一対一の状況を作り出しているのだ。

 

(くだらんな…そんな奴らにあいつが負けるはずもない)

 

「退け、A組だのB組だのに興味はない。だが…立ち塞がるというのなら…潰す!」

 

走り出した美亜達、その両腕が凡戸チームへと襲いかかる。しかし凡戸の個性『セメダイン』は顔にある穴から接着剤のような液体を噴出し、その場に固めることができる個性だ。接着剤で美亜の腕を固め、地面に落とそうと発射する。両腕を固めてしまえば戦闘能力を奪うだけでなく、騎馬全体の動きを封じることができる。

しかし、血腕は接着剤が纏わり付く寸前で分裂した。無数の枝の様に分かれ、間をすり抜ける。降り注ぐ数多の血腕に驚愕し、足を止めてしまった凡戸チームのハチマキを奪い取り、駆け抜けた。残された凡戸チームの周囲で、接着剤が付き、切り離されて落ちた腕がどろりと血液に変わった。

 

「あれが操血…怖ぁ…」

 

「ん」

 

「いやー!ワーってビックリして声も出なかったよ!声出さなきゃ意味ないよね!!」

 

一瞬で凡戸チームを抜き去った美亜達は爆豪と物間を無視し、緑谷チームへと向かっていた峰田達を追った。そんな美亜チームに気付いたのか、峰田達も待ち構える様に反転し迎え撃つ。再び対面した美亜チームに、相変わらず小さくて見え難い峰田は声を張り上げる。

 

「何度やっても無駄だぜ!そのPもオイラ達が頂く!」

 

「かかってこい…ではないな…私達がチャレンジャーだ。2度も負けるわけにはいかない、頼むぞ皆」

 

両騎馬が互いに駆け出す。再び左右から2本ずつ角が飛来するが、今度こそ警戒していた障子が気付く。この『角砲(ホーンホウ)』が厄介だ。接近戦に対する戦力を『黒影』に頼る美亜チームは、当然防御の策も少ない。4本もの角砲を防ぐには常闇の黒影、それに美亜の両腕を使ってしまう。峰田チームの狙いはそこにある。2本ずつ左右から角を飛ばす事で、黒影と血腕を角の対処にとられれば美亜達の騎馬の攻撃力どころか防御力まで皆無。そこに宍戸のスピードで正面からぶつかれば確実に鉢巻を奪うことができる。

 

(さぁどうする!オイラの考えた最高の作戦!もう少し近づけばもぎもぎで足を絡めとってやるぜ!!)

 

思惑通り左右の1本ずつを常闇が両腕で弾き逸らす。しかし黒影が対処し切れなかった2本が襲いかかる。それでも美亜はこちらを見据えたまま動かない。幻覚かその迫力故か、その両眼が一瞬だけ真紅の炎を纏い、そして障子の目も紅く輝いた様に見えた。悪寒が走った峰田チームの目の前で、障子が触腕を伸ばし肉に突き刺すことで角を無理やり止めた。血飛沫が上がり、肉が潰れる嫌な音が聞こえる。勝利の為に両腕を躊躇なく差し出すあり得ない光景に角取は角砲を止めてしまう。

 

「障子!!」

 

「止まるな、駆け抜けろ!」

 

「当たり前だ。その両腕、無駄にしてなるものか」

 

痛みに顔を歪めつつ走る事を辞めない障子、その威圧感に宍戸、角取は気圧される。対して美亜チームはこちらを見据えたまま寸分の動揺もない。4人共がこうなる事を覚悟していたかの様に闘志を燃やし、その目に怯えや恐怖は微塵も無い。

B組は集団でA組を潰す策を取った。反対した生徒も居たが、宍戸と角取はその策に賛同した。彼らが狙うは2.3.4.5位、何故このハチマキにそこまで拘るのか。自分の両腕を犠牲にするなど狂気の沙汰だ、理解できない。

だが峰田には気持ちが分かった。障子、耳郎、常闇、比較的大人しく、闘志を前面に出す事はしない3人。どちらかといえば常に冷静な思考を持ち、暴走しがちな切島や緑谷らを諫める奴らだ。その3人もあの敵襲撃事件を経験し、千染が自身を犠牲にして相澤先生を守り抜く姿を聞いた。そしてA組には緑谷と爆豪がいる。あいつらは常に上を目指し、誰よりも真っ直ぐだ。性格は正反対、どう見ても仲が悪い2人が中心となって高め合い、皆がそれに感化されている。

誰もがヒーローを目指す高い志を持ち、その為には千染、爆豪、轟ら程の実力が必要なことも理解している。これがA組とB組の差、目指す場所と覚悟の差だ。

しかし峰田だって負けてはいない。A組の奴らとは組めなかったが、A組と組むことを渋っていたこいつらをなんとか説得し、泣きついてまで組んでもらった。だからこそ負けるわけにはいかない、そこまでしたのだ、負けたくない。

 

「オイラだって負けねえぞーーー!!!」

 

峰田が『もぎもぎ』を前方に放る。個性発動の限界量を超えて、頭から血を流しながらも投げ続ける。もぎもぎの壁を作り美亜達の接近を妨害し、『角砲』の装填と体制を立て直す時間を稼ぐためだ。角取に角を再度放てるよに、宍戸には一度距離を取る様に伝えようとする。

 

「全力でいくぞ!!!耳塞ぎなよ!!!」

 

だが時すでに遅し。『イヤホンジャック』を突き刺した『触腕』の特大のスピーカーから凄まじい爆音が響いた。皮膜によって覆われ、指向性を得た音圧は凝縮されて峰田チームを襲い、もぎもぎが吹き飛び道が開けた。峰田チームは爆音と音圧を何とか耐えるが、脳が揺れ目や耳がやられたのか周囲の様子を掴めなくなった。ぼやけた視界が明るくなる事で、もぎもぎの壁が吹き飛んだのが分かる。白飛びした世界で2つの紅炎が揺らめき、急速に接近してくる。平衡感覚を失い、ふらつく宍戸の髪を引っ張り、鼓膜がやられたであろう耳に全力で叫ぶ。

 

「右だ!!!右に跳べ!!!!」

 

聞こえたのか、それとも必死な思いが通じたのか、宍戸は右に飛びギリギリで美亜の突撃を回避する。風を切る音が耳を掠め、寸前で血腕を躱せた事に思わず安堵しそうになる。まだだ、あいつらがこれで諦めるはずがない。頭がガンガンと痛く涙が滲むが、それを置き去りにして後ろを振り向く。

 

「まだだ…千染の腕は伸びる!角取!!……え!?」

 

振り返った峰田の目の前には、右腕を伸ばし、今にもハチマキを取らんとする美亜が居る。真紅の両眼が峰田を見据え、勢いそのままに鉢巻を全て奪い取り疾風のように過ぎ去った。追った黒影に血腕を伸ばし、騎馬へと引き戻される再び美亜は、峰田達の上空を飛びながら見下ろして言う。

 

「峰田、それにB組の奴らも…見事だ」

 

その姿を見上げて峰田は思わず呟く。

 

「かっけぇ………」

 

そして天を仰いだまま3人とも地面に崩れ落ちた。

 

扇子によって風に指向性を持たせる風斗の個性を参考に、耳郎が放つ爆音の衝撃波をレーザーの様に射出する切り札を考案した。本来は爆豪チームとの対戦で使用する予定だったが、その策を使わざるを得なかった。それ程に強敵だった。

もぎもぎを吹き飛ばし、ハチマキ奪い取ろうとしたが宍戸の身体能力でギリギリ回避を許してしまった。右腕を躱された美亜は、素早く振り向くと宍戸に左腕を伸ばした。そのまま黒影に放り投げられ、自身の腕を縮める速度に加える事で峰田達に再び急接近、勢いそのままに鉢巻を奪い取ったのだ。

 

「よっしゃ!やったね!!」

 

「まさに宿敵との決戦、この高揚感…」

 

先程までの緊迫感のある雰囲気は霧散し、満面の笑みの耳郎と、頷きながら悦に浸る常闇の2人。そこに黒影によって美亜が引き戻される。

 

「よくやった皆、それで…大丈夫か障子?」

 

3人に顔を向けられた障子は、力なく垂れた両腕を見る。耳郎の『イヤホンジャック』を攻撃に使う為、自身の体にプラグを挿して簡易的なスピーカーとなった。爆音が体内を響き渡り、筋を切ってしまったのか腕の力が入らない様だ。皮膜も衝撃波を受け止めた為にボロボロになっている。さらに角取の『角砲』を受けた傷からは血が止めどなく流れており、リカバリーガールの元へ行かねば腕が使えないことは明白であった。

 

「大丈夫…では無いな…だがまだ足は動く」

 

「いい覚悟だ。さて、次はどいつを潰す??」

 

障子の傷を自身の血で覆いながら平然と前を見据えた美亜。障子は自分の腕に纏わり付く血に驚きながらも、それが自分の傷を覆い、止血してくれている様を見て落ち着きを取り戻した。

この美亜という少女は本当に性格がコロコロと変わると3人は感じる。気紛れなのか分からないが、今の様に熱く燃え上がったり、かと思えば氷の様に冷たくなったりと不安定さが垣間見える。

今、体育祭の熱気に当てられた為か熱くなっている美亜は悪くないと思う。コロコロと変わる性格の中では1番様になっている。そして何より、この美亜と居ると心強く、覚悟が決まる。体の内から闘志が燃え上がる様に熱くなり、気持ちが鼓舞されているのが分かる。

 

『千染チームが宍戸チームからハチマキを取り返したぞー!なんて執念、なんてプライド!生徒達の熱はドンドン高まってるぜ!』

 

「派手な動きで見てるこっちも楽しいやなー!」

 

「敵と戦ったってだけでこうも差が出るかね」

 

『やはり狙われまくる1位と、猛追をしかけるA組の面々共に実力者揃い!アレだな、A組は派手で目立つな!!さて…現在の保持Pはどうなっているのか…』

 

「まて…爆豪がポイントを取られた」

 

『あら!?B組大躍進じゃねぇか!1位の緑谷に次いで2.3位がB組だ!!ってか爆豪あれ……!?』

 

「千染、爆破個性持ちを探せと言ったな…見つけたぞ。爆豪からハチマキを奪ったやつ、物間だ…」

 

周囲を探っていた障子の目には、顔面に『爆破』を叩き込まれる爆豪が映る。しかしその直後、返す爆豪の『爆破』を顔面に受けながらも無傷で防ぎ切って見せた。同系統の個性で相殺したとも考えられるが何かがおかしい。

 

(相殺した?…ではなく防御したのか?だとすればまるで切島の『硬化』だ…)

 

爆豪チームを置き去りにし、物間チームは悠々と此方へ向かってくる。人の良さそうな笑みを浮かべる物間と、無表情ながらも鋭い美亜の視線がぶつかる。

 

「あぁ、千染さんか。そんなに睨まれたら怖いじゃないか。それが敵襲撃を乗り越えたA組のBIG3ってやつの迫力かい?」

 

「私の邪魔をするのはお前か…物間…。相手が誰であろうと立ち塞がるのであれば…潰す!」




現時点での保有P
緑谷チーム 1000万300
鉄鐡チーム 1130
物間チーム 970
千染チーム 845
轟チーム  615
拳藤チーム 445
爆豪チーム 0
葉隠チーム 0
小大チーム 0
心操チーム 0
宍戸チーム 0

少し補足をさせていただきます。

○凡戸チーム
恐怖で足がすくんでしまった為ハチマキを奪われてしまいました。正面から無数の赤黒い腕が迫って来たら誰でも怖いですよね…小大唯さんかわいそう…

○耳郎と障子のコンビ技
本来爆豪チームとのタイマンで使う作戦でした。射程や範囲は狭いですが、正面に一点集中させる事で強力な衝撃波を放つことができます。美亜チームは接近戦が弱いという自身の弱点を正確に把握しており、爆豪チームが接近して来た時に使う事で大きな隙を作る作戦でした。ただ峰田チームが余りにコンビネーションが取れており、厄介だった為泣く泣く使った形です。また切り札を伏せていては勝てる相手ではないと、ある意味峰田達を認めた事になります。

○障子の状態
今回で障子の両腕と皮膜がずたずたになりましたが、目や口、耳を生やしての索敵は未だ可能である為、爆豪チームがハチマキを取られた事に気づき、物間の爆破個性を目撃することができました。

○A組BIG3
雄英高校では3年生のトップ3人がBIG3と呼ばれています。敵襲撃事件の後、切島や瀬呂、葉隠らが「轟・爆豪・千染」の3人の事をそれに習ってA組BIG3と呼び始めました。本人達の耳に入ると何を言われるか分かったものでは無いので隠れて呼んでいましたが、聡い物間君は何処からか嗅ぎつけたようです。ちなみに轟は気付いていますがどう呼ばれようと特に何も感じていません。

お久しぶりです。ここまで読んでいただきありがとうございました!
騎馬戦が思ったより長くなってしまい、4話立てとなりました。あと1話で騎馬戦終わり!昼休みとEXTRAだ!
次話ではVS物間チームから終幕へと一気に書きあげたいと思います。既に満身創痍の障子を抱える美亜チームはどの様に戦うのか、見守っていただけると幸いです。
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