「あっ…美亜ちゃん…、やっぱり強かったよ!いやー完敗だった!私もまだまだだ頑張らないと!」
芦戸と美亜は観覧席に戻る通用口でばったり鉢合わせた。普段の様にニコニコと笑いながら話しかける芦戸に対して、美亜は無表情でじっと見つめる。
芦戸は佇む美亜に不思議さを感じながら、一緒に行こうと手を伸ばした。そしてその右腕が未だに血腕である事に気がつく。
「本当にごめんね、右腕だけじゃなくていっぱい蹴り飛ばしちゃって…。でも本当にリカバリーガールの所に行かなくていいの?」
芦戸は謝罪と心配の言葉を述べながら、佇む美亜に近づいた。すると突然、頭の上に美亜の左腕が優しく乗せられる。面食らった芦戸が目を白黒させてフリーズする中、その手がゆっくりとぎこちなく、撫でる様に動き出した。
「芦戸…お前は本当に強かった。先の試合、一つ違えば勝敗は変わっていただろう。正直敗北を覚悟したぞ…。
自分が成長していないなんて絶対思うな、上ばかり見ても仕方がないだろう。何事も足元を見て一歩ずつ…だ。私もこの2週間そうしてきたのだから」
「美亜ちゃん…慰めてくれてるの……?」
「あぁ、その通りだ」
驚いた表情のまま呆けていた芦戸、その唇が噛みしめられ真一文字に結ばれる。目には涙が溜まり、それでも泣くまいと思うがせり上がる涙をどうすることもできない。一筋零れ落ちた涙が頬を伝い、堰を切ったように止めどなく溢れ出した。
「私…私…っ!勝ちたかった…!!美亜ちゃんに…後一歩で届くって…!強いからとか、憧れてるからとかいくら言い訳しても……やっぱり勝ちたかった…。勝って横に並びたかった!」
美亜は声を上げて泣き出した芦戸をその胸で受け止め、あやす様に背中をさすった。
「全く……やはり美波さんは凄いな、これは好き好んでやる事じゃないだろ…」
その表情は一見すれば無だ。しかしここに美波や拳士が居たのなら、その僅かに口角の上がった優しい笑みに驚いた事だろう。
「おー、お帰り美亜。三奈もお疲れ様、接戦でいい試合だったよ。怪我は大丈夫なの?」
「あぁ、この程度なら問題ない。それより上鳴は?見たところ既に腕相撲が始まっているのだが…」
美亜と芦戸が戻ると、既に第三戦の延長戦である切島と鉄哲の腕相撲が始まっていた。
第八戦の勝者と戦う美亜としては、詳しく知っている個性の上鳴に勝ち進んでもらいたかったのだが…。
美亜と芦戸は耳郎の横に座って試合の様子を聞いた。
「瞬殺だよ瞬殺、ほんっとなす術無くって感じ…」
第八戦、上鳴対塩崎の戦いは瞬殺で終わった。開始早々上鳴は全力の放電をするも、塩崎の個性『ツル』によって作られた盾に阻まれる。そのまま地を這うツルに拘束されあえなく試合終了となった。
「聞いた感じ塩崎さんってすっごい強そうだね…美亜ちゃん頑張って!私の分まで勝ち進んでね!」
『引き分けの末キップを勝ち取ったのは切島!!これで2回戦目進出者が出そろった!つーわけで…そろそろ始めようかぁ!』
芦戸の応援に美亜が頷くと同時に、スタジアムにプレゼント・マイクの声が響き渡る。
2回戦の初戦は緑谷と轟。体育祭で好成績を残している2人の対戦に多くの注目が集まる。勝ち残った者も既に敗退した者も、これから始まる激戦を己の糧とすべく熱く視線を向ける。
『今回の体育祭、両者トップクラスの成績!緑谷対轟!START!!』
開始した瞬間、轟の強大な氷結攻撃が緑谷を襲う。対して緑谷も指を弾き、生み出された衝撃波が相殺しあってスタジアムを揺らした。しかし緑谷の個性は諸刃の剣、弾いた指はひしゃげて赤黒く腫れあがっている。
「うわぁ…えぐいな…。美亜も言われてたけどさ、緑谷の個性もなかなかバイオレンスだよな」
「あ?」
緑谷は2発目の氷結攻撃を相殺する為に再び指を犠牲にした。その様を見た瀬呂が顔を顰めて呟くも、美亜に睨み付けられて慌てて話題を変える。
「怖!い…いや違くてさ…、でも轟とか爆豪もなんだけどずるいよな。強烈な範囲攻撃ポンポン出せるんだぜ」
まさに経験者は語る、苦し紛れの話題転換とはいえ妙に真に迫る表情で瀬呂は呟く。その哀愁漂う背中に上鳴や砂藤が同情する様に手を置き、ドンマイと慰める。
しかしそんな瀬呂に当の爆豪から厳しい反論がぶつけられる。
「ポンポンじゃねぇよ、ナメんな。筋肉酷使すりゃ筋繊維が切れるし、走り続けりゃ息切れる。個性だって身体機能だ。奴にも何らかの"限度"はあるハズだろ」
爆豪は自分の手のひらを見つめて考える。爆豪の"限度"は威力だ。あまりに強力な威力の爆破は自分の汗腺を痛める。先の麗日戦では、瓦礫の流星群を打ち砕いた大爆発で暫く手の痛みが治らなかった。
強力な個性には代償が伴うものが多い。だからこそヒーロー達もコスチュームやアイテムで欠点を補うのだ。彼は小手に汗を溜める事で、許容超過の爆破をノーリスクで打てるようにしていた。
「考えればそうだよな…じゃあ緑谷はあの轟の相手に耐久戦を挑むつもりかー、でもきつくね?」
瀬呂はそう呟いて再び闘技場での激戦に視線を戻す。轟も緑谷の意図に気がついたようで、強力な氷結攻撃を次々と繰り出す。緑谷もそれを全て打ち消すが、既に両腕はボロボロの有様だ。
緑谷を圧倒する轟、しかし彼の動きに僅かな変化が現れ始めた。戦闘センス抜群の爆豪のみが気付いた僅かな変化、氷結の威力と身体能力が徐々に弱まっている。
(そういうことか…!?ちくしょう…)
それは轟と戦っている緑谷も理解した。そして距離が近いからこそ気付くことができた体の震え、それらを総合して導き出された結論は緑谷に火を付けた。
轟の放った止めの氷結、それをあろうことか壊れている指で相殺する。
「震えてるよ、轟くん。君自身冷気に耐えられる限度があるんだろう…!?それって…左側の熱を使えば解決出来るもんなんじゃないのか……?」
緑谷の鬼気迫る迫力に轟の足が止まる。
轟の"弱点"を看破した緑谷は、壊れた指を握りしめて叫ぶ。
「皆…本気でやってる。勝って…目標に近付く為に…っ!半分の力で勝つ!?まだ僕は君に傷一つつけられちゃいないぞ!全力でかかって来い!!」
緑谷の覚悟に、その言葉に皆が息を呑んだ。緑谷はボロボロになりながら、壊れた指を更に壊しながら轟に抗い続ける。
轟の脳裏に過去の情景が映る。オールマイトを越えるべく作られた自分、厳しい訓練に倒れた自分を庇ってくれた母はいつも父に殴られていた。しかしそんな優しかった母の精神は、いつの間にか壊れてしまった。最後に覚えている記憶の中の母は、化け物を見るような目で自分を見ていた。
だから…俺は親父を………
「君の!力じゃないか!!」
緑谷の叫びに、轟の脳裏に母の記憶が呼び覚まされた。血に囚われず、なりたい自分になっていいんだよと背中を押してくれた母。いつの間にか忘れてしまっていた大切な記憶。
轟の左半身から炎が吹き上がる。舞い上がる炎は、今にも泣きそうな轟の表情を照らし出した。
「焦凍ォオオ!!やっと己を受け入れたか!ここからがお前の始まり!俺の血をもって俺を超えて行き…俺の野望をお前が果たせ!!」
突如スタジアムにエンデヴァーの声が響き渡る。しかしそんな声を無視して、轟は緑谷と向かい合った。
「緑谷…ありがとな…」
轟は小さく呟くと、全力の炎を放つ。そして緑谷も渾身の一撃を放った。
散々冷やされた空気が瞬間的に熱され膨張する。緑谷の超威力と相まってとてつもない爆風が生み出された。
闘技場は砂埃と湯気が煙のように立ちこめ、何も見えない。徐々に煙が晴れる。そこには無残に崩壊した闘技場と、ステージに立つ轟。緑谷は場外へと吹き飛ばされ横たわっていた。
「緑谷くん場外…。轟くん、三回戦進出!!」
ミッドナイトが勝敗を宣言するとスタジアムは割れんばかりの歓声に包まれた。緑谷が担架に運ばれ、A組の数名が心配で救護室へと向かった。残った生徒も凄まじい戦いを振り返って何やら話している。
「轟…一つ過去を乗り越えたか。なぁ緑谷…お前と戦えば私も………」
そんな中一人控え室へと向かう美亜、彼女が呟いた言葉は誰にも聞かれる事なく喧騒の中へと掻き消えた。
切島対飯田の試合は飯田が勝利を収めた。短期決戦ばかりだった一回戦と違い、此方も再び長期戦となった。飯田は持ち前のスピードで翻弄しつつ蹴りを喰らわせるが、切島の個性"硬化"によって阻まれる。対して切島の攻撃も飯田を捉えることができない。互いに攻め手を欠く中で一進一退の攻防が繰り広げられる。
しかしこの試合では場外に押し出すことさえできれば勝利できる。飯田のレシプロバーストが解き放たれ、切島の正面から怒涛の蹴りが叩き込まれる。個性の限界を迎え徐々に押され始めた切島は、そのまま場外へと押し出されてしまった。
次の爆豪対常闇は爆豪が勝利を収めた。タイマンでは無類の強さを誇る『黒影』だがその弱点は光だ。爆豪は開始早々ひたすら攻め続ける。爆破によって巻き起こされる強力な光に常闇は防戦一方になってしまう。弱り切った黒影が最後の力を振り絞るも、爆豪の放った『閃光弾』で試合が決まった。
常闇の口から「まいった」という言葉が告げられ、スタジアムは爆豪の抜群の強さに大いに沸いた。
「嗚呼…千染さん、貴方は嘘をついていますね…。欺瞞は悲しみを、苦しみを、悲劇を生みます。さぁ懺悔しなさい、これは貴方に与えられた贖罪の機会なのです」
次の試合は、千染対塩崎。塩崎は両手を組み、目を閉じて祈るような姿で美亜に告げた。それに対する美亜の反応は無い。いつもの様に無表情、紅く揺らめく眼が塩崎を静かに捉えている。
『さぁ次の試合は千染対塩崎!B組はここで意地を見せたいところだ!いくぜ…START!!』
開始早々、美亜が仕掛ける。未だ目を閉じて天を仰いでいる塩崎に対して速攻を仕掛けた。姿勢を低くして最高速度で駆け出す。両の血腕は刀状に変化し、ツルが迫ってくることを想定した上で真っ向から両断するつもりだ。しかし…
「私のツルを前に、逃れる術など無いと知りなさい」
塩崎の目が薄く開き、美亜の姿を見る。次の瞬間、地を這い、空を舞い、四方八方から無数のツルが美亜を襲う。美亜の誤算はツルの速さや量を把握できていなかったことに有る。もし上鳴との試合を見ることができれば、自ら懐に飛び込むという愚策を取ることはなかったかもしれない。
「なっ!くそ…っ!」
両腕を振るってツルを斬り飛ばすも限界がある。殺到するツルに飲まれた美亜は全身を捕われて行動不能となった。最早一歩たりともそこから進むことはできないだろう。
余りにも呆気ない結末にプレゼント・マイクの驚きの声がスタジアムに響く。
『まさかの瞬殺ーー!千染行動不能により塩崎の…『待て、まだだ』
ミシ……ミシ……と微かな音が静まったスタジアムに響く。ツルに締め上げられた美亜が強引に引きちぎろうともがき、ツルが軋む。
力技で懸命に脱出を図る美亜に対し、塩崎は涼しい顔で遠くからその姿を眺める。
美亜の個性は『操血』、B組の担任ブラドキング先生と同じだ。しかしこの体育祭を通して見てきた彼女の個性はとても『操血』には見えない。唯一まともに戦闘した物間は競技終了後に頭を悩ませていた。彼曰く「操血…のはずなんだけどねぇ…僕にはそれだけでは無い気がするんだよ」だそうだ。
「おやめなさい…貴方に出来る贖罪は己が欺瞞を恥じて告白することです。私も悪戯に貴方を傷つける事は本意ではありません。さあ、降参しなさい」
美亜は激しくもがいてツルを引きちぎろうとしている。ツルの棘が肉に喰い込み、ぶちぶちと凄惨な音が鳴る。じわじわと血が隙間から溢れ、ツルを紅く染めていく。
「貴方は…なぜそこまでして」
「欺瞞…贖罪…罪を告白しろだと?なら教えてくれよ。ここで罪をぶちまけたとして………お前の信じる神とやらは私を赦してくれると思うか?」
塩崎は美亜の鬼気迫る姿に思わず後ずさる。鼻を吐く鉄の匂いと、ドスの効いた声が不気味さを増す。
しかし塩崎も負けるわけにはいかない。ヒーローを志す者として、B組最後の一人として。頭を振り払って恐れを克服すると憐憫を含んだ目で美亜の眼を睨み返す。
「嗚呼千染さん、何と罪深き方。穢れし者には裁きを……ッ!!」
美亜を拘束していたツルに一瞬綻びが生じた。縛り上げていたツルが力を失った事で、両腕が動かせる程の隙間が開ける。その一瞬の隙を美亜は逃さない。血腕を刀状に変化させて一閃、ツルを両断して塩崎へと駆ける。
「B組の奴らはどいつもこいつも…勝負の間に気を緩めるとは愚かな!」
呆けたように立ち竦む塩崎、その目は恐怖によって見開かれている。しかし直ぐに己を取り戻すと美亜を再び封じるべくツルを放った。
迫るツルを回避する為に、血腕を地面に叩きつけ美亜は大跳躍を見せる。しかし空に逃げ場はない、地を覆ったツルは竜巻の如く渦を巻いて立ち登る。美亜は血を撒き散らしながら、血腕を素早く変化させ自身を囲う球体を作り出した。球体状の盾ならば体とツルの間に空間を作り出し、行動不能となる事を防ぐことができる。
しかしこの最終種目のルールは、単純な戦闘と違い相手を場外に押し出せば勝利となる。そのルールにおいて、空中で相手に捕らえられる事は敗北に直結する。
渦巻くツルに絡みとられた美亜は、自身の作り出した球体諸共捕らえられ、そこには巨大なツルの柱が聳え立った。
今度は完全に封じた、塩崎は額に流れる汗を拭って呼吸を整える。あろう事か勝負の最中に気を抜いてしまい、危険な距離まで詰められてしまった。一度は破られてしまった拘束だが、今度は気を緩めない。もし彼女が策を講じるべく球体を解けば、今も万力の様に締め上げ続けるツルが直ぐに絡みつく。
「千染さん…貴方の希望は潰えました。嗚呼…悲しいことです…。ですがいつかご自身の本当の個性を告白してくださることでしょう。我がツルよ!謀る者に裁きを!!」
美亜を捉えたツルが場外へとその頭を垂れる。しかし万策尽きたのか、中で球体が解除される気配はない。
「あーこれは決まったな…塩崎って子は要チェックだ」
「うーん、千染も頑張ってたけど…やっぱり攻撃手段が乏しすぎるよね。操血?だっけ、愚直さも悪くないけど…。突進一辺倒では流石に勝てないよね」
このツルが地面に着く時こそ決着、にも関わらず観客の目線はその先に無かった。客席後方の全体を見渡せる位置で観戦していた者、そして一部の目敏いヒーローが見ていたのは塩崎の背後。
「あの子は視野が狭まってしまったな。警戒する気持ちもわかるが…戦況を見渡せる目はヒーローに欠かせないぞ」
突如塩崎の胴を巨大な腕が掴む、それは千染の血腕。目の前でツルの柱に囚われている筈の美亜が、あろう事か塩崎の背後から血腕を伸ばしていた。
「なっ…!どうして!」
「はぁ…、悪いな塩崎。どうやら勘違いのようだ。すれ違いって怖いよな?」
(くっ!ツルを…だめ!柱に使い過ぎた!間に合わない!)
美亜の血腕が場外へと振り抜かれる。全身を掴まれた塩崎は抵抗すら許されない。想定外の事態に、塩崎は思考を立て直す間も無く場外へと投げ出された。掴まれたままの塩崎が地面に叩きつけられ、主審のミッドナイトが「勝負あり!」と宣言した。
『塩崎茨、場外!千染美亜、またまた大逆転で3回戦進出だ!!』
『千染の気迫が勝ったな。ツルが残っていれば千染本体を狙うなり出来たのだろうが…「反対側」つまり美亜のいる筈だった方に塩崎はリソースを割き過ぎだ。無意識の内に警戒してしまったんだろう』
一瞬の静寂が流れ、状況を飲み込んだ観客達からの大歓声がスタジアムを包んだ。担架を持ったロボットが、かなり勢いよく叩きつけられた塩崎の元へと駆けていく。
勝者の美亜は、大歓声を意にも介さずスタジアムを立ち去った。力を失ったツルから現れた血の球体が糸のように解け、美亜の後を追うようにその両血腕に吸収される。全身に残るトゲの傷が痛々しいが、その表情は相変わらず涼しげでまるで何事も無かったかのようだ。
そんな涼しげな美亜の表情だが、分かる物が見れば呆れたような疲れたような、そんな微妙な表情をしていることが分かるだろう。
(はぁ…、何かと思えば『個性』のことだったとは。杞憂に終わって何よりだが……何か知られたのかと思ったぞ。まったく、無駄に疲れた)
通路を歩く美亜は、天井を仰ぎ大きくため息を吐く。
塩崎の言っていた欺瞞、罪とは恐らく明かしていない個性の事だったのだろう。B組の誰か、物間辺りが気付いて入れ知恵したに違いない。冷静になって考えてみれば、面識もない唯の高校一年生が知ってるはずがないのだ。きっと敵襲撃事件のせいで疑心暗鬼となり、余計な事を考え過ぎてしまっている。美亜は「疲れた…」と呟き、ふらついた足取りで皆の元へ向かった。
「成る程なぁ…あの球体はブラフだった訳か。注目させておいて、後ろから抜け出た自分は背後に回り込む。そりゃあ目の前で作られたら中に居ると思うよな」
「あの一瞬での判断力は見事だな。ただやっぱ攻撃手段が乏しいよなぁ。今の所、予め腕に血を纏って準備してるみたいだけどさ」
「血を流さないと戦えないだと困るわね。その時には既に行動不能ですじゃあ戦力にならないわ、『操血』だから仕方ないんだけど」
プロヒーロー達は先の試合を分析している。負けてはしまったが、範囲・速度共に優れている塩崎は非常に高評価を受けている。的確に相手を追い詰めていく試合運びも見事、さらにツルによる拘束が可能という点も注目されている。ヒーローは敵を殺すのではなく拘束しなければならないのだ。
対して、勝った美亜の評価は微妙なものが多い。二試合共奇襲による掠め手などによる勝利で、真っ向からぶつかって捻じ伏せる圧倒的な戦いを見せていない。最終種目のベスト4まで残っているのだから弱くはないが、他の面々と比較すると特段注目する程ではない。可能性があるとすればコスチューム次第で化けるかも。というのが大半のヒーロー達から見た美亜の評価だ。
しかし一部のヒーロー、より実力のある者は美亜の違和感に気づいた。
「へー、あれが例の千染くんですか。どう思いますエンデヴァーさん」
「黙れ、あんな奴に興味はない。炎を使うショートに敵う奴などいないからな。そもそも何故お前がここに居る、ホークス」
一般観客席の上にある招待席、そのテラスに降り立ったホークスは、エンデヴァーからの視線に肩を竦めて戯けた。
「そんな睨まないでくださいよ、暇だったから来てみただけです。そしたらエンデヴァーさんが見えたから挨拶でもと思いまして…」
「それでわざわざ福岡から来たというのか?くだらん嘘をつきおって…」
No3ヒーロー、ホークス。今年のヒーローチャートJPで、21歳にしてトップ3入りを果たした最注目のヒーローだ。性格はマイペースで不遜、雲を掴むように何を考えているのか理解ができないと同業者からは言われている。突然来訪してきた彼に、エンデヴァーは呆れたような冷たい目線を送った。
「ねぇエンデヴァーさん、あの子"血を操る"だけじゃないですよね。まさか…気付いてないです?」
「茶化すな小僧。もしかしたら操血と増幅のハイブリット個性やもしれんが…ショートの足元にも及ばんザコ個性だ」
エンデヴァーはそう言い放つと、試合前の轟に声をかけるべく席を立った。残されたホークスは退場する美亜の背中を見て呟く。
「あれが敵襲撃事件の…。成る程ねぇ、あり得るなら『再生』やろか…?だとしたら相当な強個性だと思うんよなぁ」
ホークスが聞いた情報では、信じがたい事に彼女は脳無と一対一で耐え凌いだらしい。オールマイトと撃ちあえるパワー、再生など、複数の個性を有する「改人」。渡り合う彼女は一体どれほどの実力なのかと思って見に来たが、とてもそんな実力があるようには見えない。
しかしそれも操血に再生が合わさった個性であると考えれば納得できる。つまり渡り合ったのではなく、ただ死ななかっただけなのだ。一通り試合を見てきて、確信は持てないが荒唐無稽な説では無い筈だ。先程救護室の助手に聞いたが、美亜は第一試後に折れた腕を治しに行っていない。ならばこの短時間の間に、骨折とあれだけの全身の打撲をどうやって治したのか。
「話…聞くべきなんかねー。インターンか……ヤなんだよな、あぁいう死生観がぶっ壊れたやつは」
相変わらずだらりと立ちながら、ホークスは空を見上げる。個人的には最高に関わりたく無いタイプの人間だ。死なないとはいえ、勝てるはずも無い脳無に突撃してる時点で精神的に何処かおかしい。いくら雄英高校の生徒といえど、まだ15歳の高校生だ、死地に躊躇なく飛び込むなどあってはいけない。ヒーローは自己犠牲で死にかけることが仕事では無い。生きて、背中を見せて、多くの人を安心させる者こそ真の……
「おっと、考え過ぎたな。オフなんだし気楽にいかんと疲れるわ」
悩んでも考えても、どっちにしろ私情など要らない。より良い世の中を、ヒーローが暇を持て余せる、そんな世の中を作る為なら何だってする。それが俺の役割なのだから。
美亜、またまた辛勝。
正直21巻の塩崎は強過ぎです。複雑な構造物を躱しながら伸びるツルに、上鳴が個性を使う瞬間に「磔刑」「信仰の盾」を展開できるスピード。弱点って掠め手に弱いぐらいじゃ無いでしょうか。なので成長前と言う事にして、ある程度そこからスケールダウンさせています。
余談ですがその勝負の上鳴はカッコいいですよね。それと八百万の「違いますの本当は、違いますのよ拳藤さん」からが好きです。ドヤ顔八百万可愛い。
ちなみに決め手は、自身の前に球体を生成した美亜。自分は球体を切り離して後ろから脱出していました。盾として出したと思った塩崎はツルで封じますが、血腕を塩崎の背後に突き立て、縮小させ回り込みました。そんなので次の爆豪に勝てるのか……?
ホークス
インターンフラグが立ったような立たないような…
原作でも常闇くんを情報収集のために呼んでますし、脳無と直接戦った美亜なんて気になりまくってる事でしょう。ただ焦凍大好きなエンデヴァーには無視されました。
彼はオールマイトが倒れておらず、敵連合も活発で無いので結構フラフラしています。今後忙しくなるから今の内に英気を養って欲しいですね。
美亜はホークスの元にはインターン行きません(断言)