血濡少女のヒーロー?アカデミア   作:夏秋冬

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第5話 血濡少女と戦闘訓練 前編

オールマイトが行うヒーロー基礎学、場所は入試の時と同じく模擬市街地である。行われるのは屋内での対人戦闘訓練、「(ヴィラン)組」と「ヒーロー組」に分かれた2対2の屋内戦だ。

状況は5階建ての建物、敵が建物内に核兵器を隠していて、ヒーローはそれを無事処理しようとしている。制限時間内に確保テープを巻き付け互いを捕まえるか、核兵器を敵が守り切るか、ヒーローがタッチして回収すれば勝ちとなる。

 

組み合わせはクジで決めることとなる。

美亜が引いたクジは「E」、コンビは芦戸三奈だ。対戦相手はグループH、常闇踏影と 蛙吹梅雨(あすい つゆ)だ。

 

「やった!美亜ちゃんとコンビだ、よろしくね」

 

「よろしくな芦戸、しかし相手は常闇と蛙吹…厳しい戦いになりそうだ(何でこんなテンション高いんだ。お前が組むのは体力テスト15位だぞ)」

 

 

第一戦はヒーロー側緑谷・麗日と敵側の爆豪・飯田の対戦となった。開始早々に緑谷を殺すほどの勢いで攻め立てる爆豪。その戦闘スタイルを知り尽くした緑谷に翻弄されるものの、持ち前のセンスと強力無比な個性で緑谷を追い詰め、建物をぶち抜く程の大爆発を放つ。

しかし、それを利用した緑谷と麗日の起点により麗日が核に触れ、ヒーロー側の勝利となった。

 

爆豪が暴走、核兵器があるのに暴れ回った第一戦に対し、その後は各々が個性を活かした戦闘が行われた。

特に目立ったのは 轟焦凍(とどろき しょうと)、個性『半冷半燃』、開始早々に建物全体を凍結させ敵の身動きを奪い悠々と勝利した。

 

「仲間を巻き込まず核兵器にもダメージを与えず、尚且つ敵を弱体化!」

 

「何だよあの威力、最強じゃねえか!」

 

「あれはどうしようも無いわね、轟くん、本当に凄いわ」

 

「轟ってあのエンデヴァーの息子なんだろ?」

 

「まじ?エンデヴァーって言えばNo2ヒーローじゃん!すっげー」

 

モニタールームで皆が騒いでいる。ただ、あまりに強力な個性に対策を立てられる生徒はいない。美亜も例外ではなかった。

 

(『半冷半燃』?あれは強いな、液体を使う私にとって天敵にも程がある…

確か個性は遺伝するって聞いたことがある、No2ヒーローの炎にあの強力な氷、片方でも強力なのに、とんでもない掛け合わせで子を産んだな)

 

ちなみにもちろんエンデヴァーとかいうヒーローも知らないので皆の話に相槌を打って知ったかぶりをしておく。流石の美亜でもNo2ヒーローを知らないのは雄英生としてあまりにも不自然だと考えた。そもそもホークスを知らない時点で割と手遅れである事には気付かない。

 

そしていよいよ4戦目、美亜の番が回ってきた。

 

第四戦 千染・芦戸VS常闇・蛙吹

 

敵が先に入って準備した後、五分後にヒーローチームが突入してくる。

敵側となった美亜と芦戸はこの時間で作戦を立てることにした。互いの個性が分からない限り上手く連携が取れるはずもないのでまずは個性の確認から行う。

 

「私の個性は『酸』、体から溶解液を出せるよ!地面を滑ったりして移動できるから機動力には自信あり!ただ量は限界があるし、遠くには飛ばせないの」

 

「いい個性だな、機動力はこの戦闘では非常に重要になる。遊撃をしてもらおう。

私の個性は『操血』だ。自身の血液を操作できる、近接は多少戦えるが機動力はほぼ無いから防衛戦しか向いてないな」

 

「操血…?あ!B組のブラド先生と同じだね!いーなー、手本が直ぐ近くにいるじゃん」

 

「私は別に手本にする気など無いのだが…まぁいい、とにかく今は作戦を立てよう」

 

芦戸は話しながらしっかりとストレッチをしている。柔軟性が高く引き締まったアスリートのような体、運動神経はA組女子の中ではトップだ。私にもあれぐらいの運動神経があればもっと戦いの幅が増えるのにとじっと見つめてしまった。

しかし時間がもったいないと直ぐに気持ちを切り替え、落ち着いて作戦を立てようと周囲を見渡す。動き回るのは芦戸に任せよう、そう考え自分はブレインを務めることにした。

核兵器のあるこの部屋は5階に位置し、入口のある壁と核兵器を挟んだ対面の壁には多数の窓がある。窓から陽の光が差し込み部屋を照らしている。核兵器は私より2回り以上の大きさで、これに触れさせないようにというのは難しそうだ。

色々と策を考えていると、ストレッチを終えた芦戸か軽く伸びしてからよしっ!と気合を入れていた。

 

「さっき美亜ちゃんも言ってたけど私が遊撃に回るのが1番かも!

うーん、この部屋外に面してるから背面に窓が多いね。常闇くんと梅雨ちゃんの個性なら窓から入ることができるはず…どっちかが窓から入ってくると考えたほうがいいよね」

 

思わず感心する。活発で人との距離も近い、よく喋るしテンションも高い、勝手に芦戸のことを単純馬鹿だと思っていた。なかなかよく周りが見えているな、それに相手の個性も既に記憶している、考えを改めるべきか。自分がブレインとなるのでは無く共闘しようと決めた。

 

「あの2人の個性…先の体力測定を見るに蛙水は明らかに『蛙』だな、常闇はあの腹から出てる影を操るとかだろう。確かに舌を伸ばす、影に窓枠を掴ませるなどして窓から入れそうだ」

 

「梅雨ちゃんケロケロ言ってて可愛いよね!

常闇くんは体力テスト見た感じだとそうだよね…強そうだなぁ、かっこいいし」

 

「とりあえず常闇の戦闘力、蛙水の機動力は驚異だ。この部屋で待ち構えて核を守りつつ2人同時に戦うのはまずいだろう。

一撃でも核に触れられたらアウトなシチュエーションで乱戦は避けたい。

理想は機動力のある芦戸が4階でどちらかを抑えている間に、私が部屋に入ってきた残りを相手取って制圧することだな」

 

ここで美亜が懸念していることを芦戸に伝える。

 

「一つイレギュラーが起きるとすれば、2人同時に窓から入ってくる、2人とも馬鹿正直に正面から突撃してくるの2通りあるな。

核もある以上乱戦はあいつらとっても不可能、流石にやらないと信じたいが…」

 

「そもそも本当に2人ともが窓から入れる個性か分からないし、もし2人とも正面から来たらすぐ連絡する!

そしたら美亜ちゃんは5階の階段前で待ち構えてればいいと思う!」

 

「成る程な、窓から来ないのであれば何も核の前で待つ必要はないか。とっとと殲滅してしまえば楽に終わる」

 

涼しい顔で余裕を見せる美亜に『この子、すっごい自信だなぁ…どこから来るんだろう』と芦戸は少しだけ苦笑いした。

 

5分が経過し、オールマイトから開始の合図が掛かる。

 

「よし!じゃあ私4階に行ってくるね。

絶対勝とうね!」

 

「当然だ、負けると考えて勝負する奴がいるか、健闘を祈る」

 

元気に言い残して芦戸は下に向かっていく。

芦戸に対する認識をふざけた奴から意外に真剣でものを考える奴に変えながら準備を始めた。

 

芦戸からの通信が絶えず入っており、順調に所定の位置に着こうとしている。流石の常闇と蛙水も開始早々突っ込んでくることはないか、と予想外の事態にならなかったことに安心する。

 

「3階に降りる階段前に到着!今のところ来てる気配はーーーッ!!!!」

 

芦戸から所定の位置、4階と3階を繋ぐ階段前の廊下に着いたと通信を受けていた最中、突如声が乱れる。

 

「常闇君ッ!一人で突っ込んできたよ、やっぱり影が襲いかかってくる!」

 

「おい、1対1で対処は可能か??」

 

「大丈夫!回避しながら時間を稼ぐからその間に梅雨ちゃんの制圧をお願い!

まだ姿が見えないから多分窓から!警戒を緩めないで!!」

 

そう言って芦戸は戦闘に戻る。

突如階段の下から襲いかかって来た黒影(ダークシャドウ)、油断していれば今頃吹き飛ばされていただろう、芦戸は飛び退いて廊下へと交代した。

常闇の黒影は伸縮自在の影のようなモンスターを体に宿し、それを操ることで戦闘を行う。影はその腕や首を伸ばしながら自在に襲いかかってくる。

そんな常闇の猛攻を酸で牽制し、床を滑り、時には壁を滑って回避しながら隙を窺う。狭い廊下では回避するのにも一苦労だ。本来なら直ぐに制圧されてもおかしく無いのだが、芦戸の身体能力と個性を使った動きがそれを可能にしている。

 

(攻撃も防御も凄い、射程も長いし隙がないよー。近づこうとしたら距離を取られるしどうしよう……)

 

想像以上の個性の強さに攻めあぐねている芦戸は、とにかく時間を稼ぐことに集中する。

 

(とにかくここで常闇くんを足止め!そうすれば梅雨ちゃんと美亜ちゃんの一騎打ち、私たちの理想の形に持っていける!)

 

勢いを増していく常闇の攻撃を紙一重で躱しながら、5階への階段だけは死守する為、酸を吐き距離をとった。

 

一方美亜は蛙水を迎え撃つために準備をしていた。

戦闘服に袖が無いため、本来なら腕を切り落とすことができるが、見られるわけにはいかないのでとりあえず手首を切ることにする。

血を手に吐いて右手に纏わせ、その人差し指をナイフのように尖らせる。入試ではナイフを所持していたが流石に校内での凶器の所持は許されなかった。その為に外から見えない口内を噛み切ってナイフを作ることにしたのだ。そしてそのまま左手首を斬り付ける。

鮮血が勢いよく流れ、地面を紅く染め上げてゆく。流れる血を見つめる美亜の顔には何の感情も宿っていない、ただただ恐ろしいほどに美しく整った無表情が人形の様に貼り付いていた。




ブラド先生…可哀想…今後も彼が美亜の参考となることは無い…かも…、因みに美亜自身は他人の技をパクる事に対してなんら抵抗は有りません。

ここまで読んでいただきありがとうございます。
驚くほど沢山の方に読んで頂けて、嬉しい限りです。
現在USJ編まで書いておりますのでそれまでは連続投稿をしていきたいと思います。
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