血濡少女のヒーロー?アカデミア   作:夏秋冬

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第6話 血塗少女と戦闘訓練 後編

「なっ、何やってるの?!」

 

「うぉぉぉ、おいおい不味いだろあれ!!」

 

モニタールームではいきなり手首を切って血を噴出し続ける美亜を見て悲鳴が上がる。既に地面には半径1mほどの血溜まりができているがそれでも血は止まる気配がない。

八百万や切島など正義感の強い生徒がオールマイトに演習の中止を訴える。

 

「オールマイト先生止めましょう!あの血の量は尋常じゃありません、あのままでは美亜さんが倒れてしまいますわ!」

 

「落ち着くんだ皆!!美亜君の個性は『操血』、血の操作ができるから恐らくは大丈夫だろう…」

 

昼に食堂で美亜の個性を聞いていた飯田や麗日が焦る皆を抑える。あれが個性だという話や美亜の平気そうな雰囲気から少し落ち着きを取り戻すも心配そうにモニターを見つめている。

 

(んー、なんか血の量が多くない?気のせいかな…)

 

そんな中でオールマイトだけ、美亜の様子にに違和感を抱いて首を傾げていた。

 

 

(芦戸はしっかりと常闇を抑えている。ここまでは1番良いパターン…だが何故だ、何故蛙吹がこない??)

 

既に試験開始から5分以上が経過した。芦戸は常闇をしっかり足止めしてくれている。しかし美亜は少しずつ疑念を持ち始める。当然この訓練には時間制限があって、それを迎えると敵側の勝利となる。悪戯に戦力をばらけさせ、その上で時間を無駄に使うのは余りにも愚作だ。もし本気で窓から奇襲するにしてももう少し早く来るはず。その方が失敗したときに次の策を打つ時間が残る。

美亜の抱く疑問が大きくなってきたその時、芦戸から通信が入る。

 

「美亜ちゃん!常闇君が想像以上に強い!黒影(ダークシャドウ)がどんどん大きく、強くなってる。抑え切れないかも!」

 

「なんだと…?本気を出していなかったのか。とにかくまだ蛙吹が見えない以上、芦戸が突破されるとまずい。なんとか耐えろ……

 

いや…まさか!芦戸上だ!!!」

 

美亜の声に弾かれたように上を見た芦戸、その目には天井に張り付いている蛙吹が写った。

 

「梅雨ちゃんっ!天井に貼り付けるなんて!!」

 

「そんなに名前を呼ばれたら照れちゃうわ」

 

軽口を叩きながら蛙吹は勢いよく舌を伸ばしてくる、その先には補助テープが付いている。

芦戸は咄嗟に酸を全力で地面に分泌、その反動で後ろに飛ぶことで回避する、その隙を常闇は見逃さなかった。襲いかかってきた黒影(ダークシャドウ)に空中で吹き飛ばされ、なす術なく地面を転がる。階段への道が開けてしまった。

 

「痛っ…、ごめん美亜ちゃん5階に登られた。梅雨ちゃん壁に貼り付けるよ!今2人がそっちに向かってる!」

 

常闇と蛙吹は美亜と芦戸の裏をかいた。窓から突入できる個性を持つ2人を警戒して、必ず部屋に1人は残る。だからこそ2人での正面突撃、派手な常闇に意識を向けさせ、窓から来ると思われた蛙吹が天井から忍び寄って捕縛する。2対1の状況に持ち込んで、一人一人確実に捕縛出来る状況を作った。

想定外だったのは芦戸の身体能力が想像以上に高く、回避されてしまった点。しかし階段への道はこじ開けることができた。

 

「ケロッ!やったわね常闇ちゃん。」

 

「だが彼女には悪いことをした、相当痛いはず…しばらくは立ち上がれないだろう。

だが今は次、千染美亜…個性は分からんが2対1なら対処可能だ」

 

2人が後ろを警戒しながら核兵器のある部屋に着くと、核の前に美亜が仁王立ちしていた。

 

「なかなかやるな、裏をかいてくるとは。感心したぞ常闇、蛙吹、だが一歩でも踏み入れてみろ、私の個性が貴様らを屠る」

 

踏み出そうとした2人は思わず躊躇してしまう、それほど床には夥しい量の血が一面に広がっている。濃厚な鉄の香りに思わず顔をしかめながらも警戒を緩めない。

 

「この個性…なんだ一体…」

 

「血ね。これは踏まないほうがよさそうだわ。私は壁と天井に貼り付いて核を狙う、常闇ちゃんは縁から血を踏まないように黒影(ダークシャドウ)で攻撃して」

 

「御意…、後ろから芦戸が来るかも知れん、入り口に立って警戒しておく」

 

(常闇と蛙吹…冷静な思考だ。この光景を目にして咄嗟に対処できるか…)

 

「行け!黒影(ダークシャドウ)!」「アイヨ!!」

 

入り口に立った常闇が血の縁ギリギリから飛ばしてくる黒影(ダークシャドウ)、嘴が貫かんとしたその時、美亜は手を大きく上に振り上げる。その動きと連動するように地面から血の盾が出現し、攻撃を弾き飛ばす。

 

「常闇ちゃんの黒影(ダークシャドウ)を弾くなんて、凄い防御だわ」

 

そう言いながらも横から蛙吹の舌が伸び、核兵器に触れようとしてくる。触れられただけで敵側(ヴィラン)は負けになるので、これも盾で弾がなければならない。あの柱が厄介だ。核の周囲を囲むように4本の柱が立っていて、その間を飛び移って四方八方から舌を伸ばしてくる。

遠距離から2人の猛攻に遭い、防戦一方になる美亜、防ぎ漏らし、負けてしまうのも時間の問題に見えた。蛙吹の舌は速いが威力に欠けるため宙に浮かした盾で防げる。地面から血を吸い上げ、それを宙に浮かして防御に回すことでなんとか2対1の手数の差をカバーしている。だが問題は常闇、黒影(ダークシャドウ)は威力も高くそして速い。その威力は意識して防がなければ突破されてしまう。

 

「クソッ、遠距離が2人も!ランダムのチームでこれは相性悪すぎだろ!」

 

「美亜ちゃん悪いわね。遠距離攻撃ができる2人でほんとよかったわ」

 

「血の饗宴…良い技だ、だが俺たちがその守りを砕くのは制限時間より早い」

 

美亜の悪態に対し、蛙吹と常闇の余裕は崩れない。

もし片方だけでも近接ならば簡単に捕縛出来る。血溜まりに踏み込んできた瞬間に周囲から無数の触手を生やして捕縛テープを巻きつければ良い。飯田程のスピードが有れば話は別だが、それ以外ならば充分対処が可能だ。

しかし今回は双方が遠距離攻撃が可能な個性の上、判断も冷静で決して血溜まりに入ろうとしない。

未だに盾で防ぎ続ける美亜は誰が見ても時間制限による勝利を狙っている。しかしとても防ぎきれるとは思えない。完全に場を制しているのは、ヒーローチームであった。

 

モニタールームから見ても大勢は決したように見える。

猛攻は止むことなく美亜に降り注ぐ。対して打開策はなく、盾を作って防ぎ続けるしか無い。ここまで個性を乱用しているのだ、美亜の顔にも流石に疲れが浮かんでいるように見える。

皆2対1でここまで耐え凌ぐ美亜の想像以上に強力な個性や、常闇と蛙水の冷静な作戦について話している。その中で八百万は忘れていたことに気づいた。

 

「芦戸さん…どうして助けに来ませんの…」

 

強力な黒影(ダークシャドウ)の腕と嘴の猛攻と隙を縫う舌、それらを必死に防ぎ続けて数分が過ぎる。明らかに盾を精製するスピードが下がっており、美亜は肩を上下させ荒い呼吸をしていて苦しそうだ。もう時間の問題だ、勝利を確信した蛙吹はふと美亜の顔を見る。

そこに浮かんでいたのは僅かに口角を上げた美しく不敵な笑み。

 

次の瞬間、窓から入り口に向かって強力な光が差し込む。

 

「なにっ!」

 

光が直撃した常闇の黒影(ダークシャドウ)は勢いを失って小さくなる。その隙を見逃さない美亜は瞬時に血を腕に纏わせ、常闇に向けて振り抜いて伸ばす。その手の先には捕縛テープが握られている。

 

「常闇ちゃん!」

 

蛙吹は咄嗟に常闇を抱えて入り口から出ることで助けようと前に降り立つ…………が

 

「「かかった」」

 

2人の声が重なる。

降り立ったはずの蛙吹はそのまま下に落ちる、血溜まりの下にあるはずの地面がなかった。

 

「三奈ちゃん、すごいわ」

 

地面の代わりに開いた穴、張り巡らせれていた捕縛テープを体に絡ませながら4階に落ちる。

そのまま地面に落下した蛙吹、目を開けると満面の笑みを浮かべてピースしている芦戸が居た。

 

「「私達の勝利だ(よ)」」

 

「ヒーローチーム2人捕縛、ヴィランチームの勝利!!」

 

決着を告げるオールマイトの声が響いた。

 

 

演習を終えた4人は大した怪我もなかったことから、歩いて皆のいるモニタールームに向かっていた。

 

「見事なコンビネーションだったわ三奈ちゃん。まさか4階から天井を溶かしているなんて…」

 

「蛙吹が俺を庇うと予測し俺の前の床を溶かす、その上で千染の血で覆い簡易的な落とし穴を作ったわけか…。それに日光だ、まさか予め入り口に光が差す位置の窓を血で覆うとは。いつ俺の黒影(ダークシャドウ)の弱点に気づいた?」

 

「芦戸と戦ってた時だ、体力テストの時とあまりにも勢いが違う。4階の廊下は5階の階段に近づく程暗くなっていたからな。それにシャドウって名前だ、いかにも光に弱そうだろ?まぁ…それでもあくまで推測でしか無かったが」

 

「美亜ちゃん凄かったんだよ!5階に上がってくるなって言われたからびっくりしたよ。 よくあの短時間で作戦考えられたね」

 

「当然だ、戦いは判断力が物を言う。常に冷静さを失わないこと、これに勝る強さはない」

 

「美亜ちゃんはブレないわね、あと皆私のことは梅雨ちゃんって呼んでくれると嬉しいわ」

 

モニタールームについた4人を歓声が迎える。口々に作戦の質問や個性の使い方について聞いてくる。

特に美亜の個性に疑問や心配の声が上がったが、美亜は相変わらず表情を変えずに『操血』と答える。これまでの戦闘で1番といっていい程に接戦で見応えのある勝負に皆興奮していたため、適当な言い訳で何とかなった。

 

「今回はなかなかいい演習だったぞ!残念ながら敗れてしまった常闇少年と蛙吹少女も相手の裏を描く動きに冷静な対処、ヒーローとしての素質を遺憾なく発揮してくれた!!

勝利したヴィランチームは特に素晴らしかったな!

芦戸少女!常闇少年の猛攻を耐え凌ぎ、美亜少女に準備の時間を作った、突破を許した後も自身の個性を最大限に活かす動き、見事だ!」

 

オールマイトからの講評は絶賛であった。蛙吹と芦戸は言わずもがな、クールな常闇ですら嬉しさから思わず赤面するほどの高評価だ。そんな中でも美亜は涼しげに腕を組みながらオールマイトの目を見据えて聴いている。

 

「そして美亜少女、あの2人の猛攻に耐えた強力無比な個性、芦戸少女との素晴らしいチームワーク、そして最後に見せた起死回生の妙策、見事だ、まさにPlus Ultra!最高だったぞ!!」

 

美亜は表情一つ動かさずまるで興味が無さそうだ。そんな彼女の態度にオールマイトはoh…と肩を落とし、皆が爆笑していた。

こうして雄英高校での濃すぎる初めてのヒーロー基礎学が終わった。

 

「「「ありがとうございました」」」




オールマイト「あの子の個性…怖!!!」

ブラドキング「あの…俺、個性同じなんですけど…」

読んでいただきありがとうございます。作戦がガバガバなのは許してください。どうしても常闇君と戦って欲しかったので。ただ常闇君強いので思ったより難しくなってしまいました、死人は出せないので……。
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