この世に蔓延る獣を狩る者。いつしかそれは日常的な行いから仕事へと姿を変えて行った。獣狩りをする者を「スレイヤー」と呼ばれた。
獣狩りをしない者は様々な仕事でスレイヤーを支える。今では世界中で獣が発生し、アメリカに本部を置いたスレイヤー協会が獣狩りを担っている。
「昔はもっと自由だったのさ。協会なんていなかったから好き勝手獣を狩れた。その頃は生活ももっと自由だったのだが…」
新人の教育を任された私は彼に協会の不満を零していた。事実、協会が出来たことでスレイヤーは協会所属が義務になったり、報酬の上納をしなければならなくなったり、協会の施設内での生活を強要される。
「日本支部は広いからマシだよ。アンカレッジ支部は狭くて仕方ない。あそこは少数精鋭だからいいのだが、戦いの道具になった気分だよ」
「先輩はスレイヤー歴何年なんですか?」
「8年だ。内フリー2年、アンカレッジ3年、日本3年」
随分と容赦のない奴だ。道具になった気分と言った過去を掘り返させるなんて中々の根性じゃないか。だがそういう奴じゃなきゃ、この仕事は務まらない。良くも悪くも積極的なのが大切だ。
「それと新入り、ナイフは常に研いでおけ。適当な仕事を好む奴はいない」
「はい!」
その数日後。新入りにようやく支部長の許可が下ったため実戦を始める。スレイヤー養成学校を卒業しているとの事だが、動きがたどたどしい。
私はフリーからの人物を第1世代、協会設立後の人物を第2世代、養成学校卒の人物を第3世代と呼んでいるが、第3世代の動きを見ていると養成学校はろくなことを教えていないのだろう。
第1や第2にある「命を奪う戦い」ではなく、「仕事としての戦い」をしているように見える。私達とは違う意味で殺しを躊躇っていない。マニュアル的な戦闘で、同じような動きしかしない。嫌いではないが、鼻につく。
「対象の討伐を完了しました!」
「討伐じゃない、狩猟だ。忘れるな、私達は組織に管理される戦闘員ではなく気高き狩人だ」
「す、すみません…」
「分かればいいんだ」
その後初任務であったので支部長へ報告を行うことになっていた。私もついて行かなければならないらしく。
「さて、君にはこれから日本支部の為に尽くすのだ。覚悟はできているか?」
「は、はい!」
「結構、結構。明日からも励みたまえ」
支部長は小太りの中年で、常に秘書を従えている。その様は旧世代の奴隷制度みたいだ。私はこの男が嫌いだ。権力だけの豚に支配されていると思うと腹が立つ。
「支部長の印象はどうだ、新入り?」
「何だか嫌な人ですね」
「だよな…。まぁいい。明日またアイツのところに行くから準備しておけ」
翌日、私は覚悟を決めて自分の部屋を出る。
「狩人長、こちらの準備は完了しました」
「了解した。失敗するなよ」
私は新入りの部屋に行き、彼を叩き起した。まだ眠そうにしていたがそうも言ってられないのだ。引きずり出して支部長室へ向かった。
「全く、何度見ても嫌になるジャッカルの紋章だ」
「どうして協会はジャッカルを使うんでしょうね?」
「ハイエナよりマシだと思ったんだろ」
扉を蹴破り、椅子にふんぞり返った支部長に駆け寄る。青ざめた顔を見ると笑いが堪えられなくなる。
「な、なんのつもりだ!」
「さぁ?」
この醜い男の心臓目掛けてナイフを入れる。引き抜くと噴水のように血が吹き上がり、辺り一面を汚していく。
振り向きざまにナイフを秘書の顔に投げる。よく研がれたソレは額を穿いた。射的の的が倒れるように死体は後ろに倒れた。
「だから言っただろ?ナイフは常に研いでおけ、と」
「…!!」
私の仲間達が一斉に動き出し、協会職員を屠る。真っ赤に染まった協会の真ん中で仲間達に聞こえるように私は言う。
「ここに反スレイヤー協会 ロイヤルハリヒアの設立を宣言する!日本支部は占拠した!」
「先輩…なんてことを…!」
「何言ってる?ロイヤルハリヒア副長はお前だぞ?」
「そんな…」
「安心しろ。狩りの対象が獣から人間になっただけだ」
次はアジア第1支部への侵攻を開始する。私達は人間に奪われた自由を取り戻す。獣より先に人間を滅ぼさなければならない。私達は弱者に飼い殺される気は無いのだ。