ここはグッドフィールズ魔法学園。
12歳から30歳までの魔法に覚醒した人間が入学する場所。在学年数も自由で、卒業試験をパスすれば最短半年で卒業し、国家公務員「魔法使い」として働くことが出来る。
学園が抱える生徒の数は莫大で、当然学園も馬鹿みたいに広い。学園祭などは国をあげての凄いものになる。
私は19歳の学園生、マーセナリークラブ副部長だ。
マーセナリークラブは学園の何でも屋で、金さえ払ってもらえば校内清掃代行、クラブの補欠、虫退治何でもこなす。
マーセナリークラブはレイダークラブを従えている。レイダークラブはいわばボランティアで、入るクラブのない生徒が所属する大所帯だ。普段の依頼はマーセナリーがこなすが、体育祭や文化祭などはマーセナリーがリーダーとなってレイダーを動かして運営する。私達無しには大きな祭りは成し得ないのだ。レイダーで活躍を認められた生徒がマーセナリーに入部できる。
「副部長クン、今日の依頼は?」
「第一寮への物資運搬だけです」
「じゃあ行ってきてくれ!」
「了解しました」
部長の朱鷺坂 弥生さん(23)に言われて依頼の遂行を始める。最近は学園の機械化が進んだせいで我々マーセナリーの仕事は激減している。最盛期では一日に20もの依頼をこなしたものだが、最近では1日1つあればいいくらいにまで落ち込んでいる。
この運搬も「魔道兵の調子が悪いから頼むよ 」と言われて頼まれたものだ。本来ならもう人間がやることじゃない。依頼がなくなり収入もなくなってクラブを離反してレイダーに戻る生徒が増えた。部長と副部長は校則で部から離れるには廃部させるしかないのでどうしたものかと言うところである。
「マーセナリークラブ、物資をお届けに参りました」
「こういう時は助かるよ、やる気はないだろうが続けてくれると嬉しい」
「またのご利用を」
今の私達はこんな感じだ。行事の時いがいいてもいなくても変わらない。いなかったらいなかったで不便くらいにしか思われていない。
「部長、このままだと食堂アルバイトに逆戻りですよ」
「私には秘策があるんだな。ちょーっと来てみなよ」
ノートパソコンを二人で覗き込む。そこには夜間の対魔物警備の仕事の依頼が来ていた。先日、学園内に魔物が侵入して大騒ぎになったので正門以外を結界で封鎖したのだ。正門は出入りに必要不可欠なため結界を張れない。そのため人間による警備が必要になったらしい。
「22時から翌朝6時の8時間で日当1万5千円!これ、逃す手はないだろう!?」
「では私が仕事を受けて上納する形でいいですか?」
「馬鹿者!私達二人でやるんだ!」
部長はこちらを向いて私の手を握った。その目からは並々ならぬやる気が感じられる。確かに美味い仕事ではあるのだが…。
「決定だ!では副部長クン、この依頼をマーセナリークラブは正式に受けることにした!しっかり準備しておくようにな」
「はぁ…」
いくら学校側の依頼とはいえ、夜間に異性が近くにいたら風紀委員が黙っちゃいないだろう。波乱の予感がする。
「ヨリさん、今夜部屋行っていいですか?」
「おうよ。話でもしたくなったか?」
「そんな感じです」
私の数少ない友人のヨリト。年上で気の利くいい人だ。私は不満や愚痴が溜まると彼に聞いてもらうのだ。
「おいおい…お前さん呑みすぎだ…。どうしたんだよ…」
「部長に手ェ握られてから心臓がバクバク言ってるんですよ…何かの病気だろうけど医者の世話になるのはダルいから酒のせいでそうなってることにしたいだけです…」
「それだけじゃないだろ…」
「夜間警備ですよ!?部長と2人で!風紀委員に目ェつけられたらどうなることか…怖い怖い…」
私は既に日本酒を3瓶飲み干した。心臓が痛い。そそう、酒のせいだ。そのせいだ。学園に秘密で酒を飲む悪人への天罰だ。
「お前さん、そりゃあれだな。恋の病ってやつだな」
「あぁ?ヨリさん何言ってるんです?」
「手握られて心臓高鳴って、2人きりにちよっと期待してるんだろ?」
「違いますね…」
「いいや、バレバレだ。お前は嘘が下手なんだよ」
ヨリトは私の背中を2度叩いて大笑いした。まるで私を嘲笑うように、あるいは過去の自分に重ねてそれを嘲笑うよう。いや、そのどちらでもあったのかもしれない。
「お前さんが恋かぁ…。それもあのおてんば娘ね…。悪くないじゃないの」
「ヨリさんは嘘が上手いですね」
私はさらに呑む。ヨリトの話が信じられないのだ。私は色恋など興味が無いし、それに相応しい人間でないと自覚している。この劣等人間に許される行いではない。憧れがないと言えば嘘になってしまうが、私は行いも悪く、魔法も上手く扱えない。人間らしく生きる前に、魔物の殲滅という魔法使いとしての使命を果たすために生きなければならないのだ。
「…おはよう。お前さん、寝坊するぞ?
………?うわぁぁぁぁぁ!!!」
「カツカレーの方、カウンターへどうぞ」
「いやぁ、朱鷺坂さんが戻ってきてくれて嬉しいよ。マーセナリークラブは良かったのかい?」
「いいんだ。私にはいる理由もなくなってしまったし…」
「そっか。彼も戻ってきてくれたら良かったけど、未成年が酒飲んで死んだって…。擁護できないよねぇ」
「副部長クンを悪く言うな!!」
「ご、ごめん…」