心が弱くても勝てます   作:七件

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他クラス偵察:後編

 

 

 

「ところで、どこに向かっているの?」

「龍園が送ったスパイがAかBか確かめたい」

 

 以前佐倉と来たように、折れた大木の根本から森の中に入り進んで行く。大勢の生徒が道を踏みならしたような痕跡があり、前より歩きやすくなっていた。

 

「それで。龍園が何をしようとしているか、分かったか?」

 

 オレは襲いくる蚊を払いながら、堀北に確認する。

 

「理解に苦しむわ。スパイを送りながら、試験を放棄したような態度を取る。どちらがブラフか、もう少し落ち着いたところで考えたいところね。あなたはどうなの」

「単純に考えれば、龍園は他クラスと組んだんだろうな。そしてAクラスの確率が高い」

「でも昨日言っていたわよね。挟まれているクラスがAと組むのに賛成はしないって」

「なにもクラスポイントを分けるだけが正解じゃない。確定ではないが、今後Cクラスにとって有利になるような条件をつけて、Aクラスにポイントを譲渡した。そう考えることもできる。だからといってこの試験を捨てたつもりもないんだろう」

 

 堀北は立ち止まり、オレの言葉を噛み砕く。

 

「それがスパイを送った根拠、ということ?」

「ああ。龍園はスパイを送り込み、150ポイントを手に入れるつもりだ。失敗しても、Aクラスに課したその条件次第じゃ痛くも痒くもない可能性がある」

「あなたの想定どおりなら、既にCクラスの一人勝ちということね」

 

 その事実に、顔を曇らせる堀北。

 

「龍園は意外に頭がキレるらしいな。正直舐めていた」

「……どうするつもり」

「お前が伊吹からリーダーを守り通せば、Dの損害はない」

 

 ついには黙り込んでしまった。

 

 龍園は勝つための戦略を誰よりも張り巡らせている。

 そしてどのクラスよりも一歩先に勝利へと進んでいる。

 足下さえすくわれなければ、負けることはないだろう。

 

 

 

 程なくしてBクラスのベースキャンプに辿り着く。

 すると、昨日とは違い、ピリついた雰囲気が漂っていた。

 

「何か、あったのかしら」

 

 堀北がそう呟くと、一人の生徒がオレたちに気が付き、顰めっ面を隠さず「何の用だ」と威嚇してくる。

 

「悪い。海を目指していたら迷いこんだんだ」

 

 オレはその男子生徒に釣用具を見せる。

 一応警戒は解いてくれたが、やはりどこか落ち着きがないように見えた。

 事情を聞こうとすると、

 

「あれ?堀北さんと、それに綾小路くん?」

 

 ハンモックの位置を変えようと木に紐を結びつけていた少女が、振り向いて近付いてくる。ジャージ姿は活発な印象のある一之瀬には凄く似合っていた。

 

「知り合いか?」

 

 男子生徒が一之瀬に問う。

 

「うん。二人はDクラスの生徒だよ。ほら、この前対Cクラスで同盟を結んだでしょ?その時の子たち」

「そうだったのか……疑って悪かった。俺は神崎隆二だ。よろしくな」

「私は堀北鈴音。で、こっちの荷物持ちは綾小路くんよ」

「ああ、よろしく」

 

 神崎と握手を交わす。

 

「偶然あなたと会うこともできたし、確認したいことがあるの。あの同盟は試験中は関係ない、というのは変わりないわよね」

「うん、そうだね。本当は互いにリーダーを当てない、とかできたら楽だったんだけど……」

「素晴らしい提案だけど、そればっかりは私たちだけで決められることではないわ。ごめんなさい」

「ううん、大丈夫だよ」

「……何かBクラスにトラブルでもあったようだけど、詳しく聞かせてもらっても良いかしら。普段とは、何だか違うように見えたから」

 

 堀北の質問に、神崎が目を細める。

 一之瀬は気まずいようで、頬をかいた。

 

「え、っとね。言ってもいいよね、神崎くん」

「変に詮索されるのも困るしな。俺から説明しよう」

 

 どうやら、Bクラスが所持していたマニュアルが、何者かによって井戸に落とされ、使い物にならなくなってしまったらしい。昨日の夜までは無事な姿が確認されていたが、朝になって、井戸の底に浮かぶマニュアルが発見されたとか。なんだか殺人事件みたいだな。ひよりが喜びそうだ。

 

 井戸の水質も汚染されたようなものなので、飲み水としても使い物にならなくなってしまったそうだ。

 犯人は未だ分かっていない。

 だが、もしBクラスに犯人がいれば、環境を汚染したとしてペナルティを喰らうので、無闇に訴えることもできない。

 

 そういった事件もあって、Bクラスは今、窮地に立たされている。

 

 

「お話中すいません。あの、一之瀬さん。中西くんはどこに居るか分かりますか?」

 

 その話を聞いている最中、メガネをかけたマッシュ頭の男子生徒が現れ遠慮がちにそう尋ねてきた。神崎は彼に睨みをきかせる。

 

「この時間は海の方に出向いていると思うよ。どうかしたの?」

「お手伝いに行こうかと思いまして。余計なことでしたか」

「ううん、そんなことないよ。ありがとう。じゃあ向こうで千尋ちゃんたちの手伝いをしてもらえるかな。私から言われたって話せば大丈夫だから」

「分かりました。ありがとうございます」

 

 そんな短いやり取りをしてから、彼は去っていった。

 

「彼は……」

「金田。Cクラスの生徒だ」

 

 神崎が忌々しげに答える。

 こんな事件も起きれば、疑われるのは仕方ない話だ。

 きっと彼も肩身の狭い思いをしているのだろう。

 

「でもね、私は金田くんじゃないと思うな。もし意地悪なことをするなら、初日にこんな怪しいことするかな?」

「だが実際大打撃を受けた。二日目なら必要な道具も揃っていないからマニュアルが必要だ。再発行するにはポイントを消費しなくてはならない。それを狙ったんだ」

「ううんっと、嘘を吐いてるようには見えないっていうか……。まあ、こんな事を言ってもしょうがないよね」

 

 一之瀬は、にゃはは、と困ったように笑う。

 神崎の懸念も当然と言えば当然だろう。

 

「マニュアルを貸し出す、と考えたのだけど、敵に塩を送るような行為を、クラス全員が許してくれるとは思えない。力になれなくてごめんなさい」

 

 今は敵とは言え、堀北もBクラスの惨状を気の毒に感じたようだ。

 

「ううん、こっちの問題だからね。気持ちだけ貰っておくよ」

 

「Cクラスの彼を擁護するつもりはないけれど、私のクラスも伊吹さんというCクラスの生徒を匿っているわ」

 

 そして堀北はさっき龍園から聞いた詳細を二人に伝える。

 好き放題暴れ回る龍園に対して謀反を起こした二人のうち一人だということ。伊吹は殴られた経緯もあったこと。

 一之瀬はその話を聞き、力強い瞳に戻っていく。

 神崎もその話を考慮に入れつつ、顎に手を当てて考え始めた。

 

「敵情視察に変わりないから、そろそろ私たちは行くわ」

「そっか、情報ありがとね」

 

 堀北と共に、Bクラスのキャンプ地を後にする。

 

 

 

 

「Bクラスの生徒がやったとは考えられないわね」

 

 暫く離れたところで、堀北はそう確信したように言った。

 

「だが、スパイがわざわざ自分に疑いをかけるようなことをすると思うか?」

「リーダーを当てるつもりがない訳でもないでしょうし……。いえ、当てるつもりがあるからこそ、動いた?」

「……オレはてっきり堀北が全てを理解した上で、龍園の法螺話を一之瀬に伝えたと思ったんだが」

 

 オレが呆れたように言うと、堀北は不思議そうに首を捻った。

 

 

「そうするべきだと、あの時直感的に思っただけ」

 

 

 正直、オレは堀北の実力を掴み切れなくなっている。

 須藤の件から、完全に手から離れてしまったような感覚だ。

 今回で測れると思ったが、見当違いだったらしい。

 体調不良がかなり影響しているところもあるのだろうが。

 

 勿体ぶっていても仕方がないので、オレは彼女にヒントを与える。

 

「一之瀬は、自分のクラスメイトと金田は犯人じゃないと確信している。なら、犯人はどこからやってきたと考える」

 

 立ち止まり、空見上げた。

 一匹の大きな鳥が悠々と風を切る。

 彼女もつられて鳥を目で追う。

 そして、何かに気が付いたように、ハッとオレの方を向いた。

 

「外から。そして、彼女は架空の敵を作り上げてしまい、外への警戒を強める。内側の守りが疎かになる」

「だから、スパイは優位になる」

 

 堀北は顔を歪ませた。

 

「つまり、私はCクラスの手助けをしてしまったということね」

「Bクラスがポイントを落とす手伝い、が正しいな。だから、最善手だったんだ」

 

 未だ煮え切らない表情をしている堀北に、オレは言い聞かせる。

 

「勝負事に綺麗も汚いもない。違うか?」

 

 暫く何も言い返してこなかった。

 自分の行いを消化しているのだろう。

 そして、彼女は先を行く。

 

「あまりに捨て身すぎるわ。そのまま疑われる可能性の方が高いのに」

「龍園ならやりかねないだろうな」

「なら伊吹さんも、そういった方法を取る可能性がある……」

「いや、強引な手をDには打たない。そしてその理由を、堀北。お前はよく知っているはずだ」

 

 堀北は顔を背け、自嘲する。

 

「策は講じてある。安心して」

 

 内憂外患。

 どのクラスも、それは変わらないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Aクラスの偵察を終えて、キャンプ地に戻る。成果ゼロは流石に怒られるかと思ったが、須藤が気遣ってオレのバケツにこっそり二、三匹入れてくれたので、白い目を向けられる事はなかった。ポテチのお礼だとかなんとか理由を付けてくれたが、堀北を想ってのことだろう。須藤にはもう足を向けて寝られないな。

 

 軽い昼食を作るらしく、釣ってきた魚がこの暑さで腐る前に焼いて食べることになった。先着順で、戻ってきた生徒に順番に調理班が渡していく。最後の方だったので、大分小さな魚だった。

 

「堀北。魚を食べると頭が良くなるらしいぞ」

 

 そう言って堀北の顔を前に串刺しにされた魚をチラつかせたが、ガン無視された。これ以上無視されるとオレの心が死んでしまうので、撤退することにする。

 

 オレは全員とは少し離れた位置でクラス全体を俯瞰する。

 男子は比較的全員固まって食べているが、女子はそれぞれチームが距離を取っている。明らかに隔たりがあるようで、まるで他クラスのグループみたいだ。

 軽井沢、篠原、櫛田の三グループがあり、例外的に櫛田は全員に顔が利く感じだ。堀北だけ孤立しているようだが、もはや貫禄さえ感じる。誰かに話しかければしっかり受け答えしているし、余所者扱いというわけでもない。

 因みに佐倉は櫛田のグループにいる。みーちゃんとも仲良くなったと嬉しそうに報告してくれた。そして同じく伊吹も櫛田達と食べているようだ。天使様のお心は慈悲深いらしい。……鬱憤溜まってそうだなあ、と旅行が終わった後のことを考えて憂鬱になる。

 

 ボーッとしながら魚をチビチビ胃の中に収めていると、男子グループの中に平田が居ないことに気が付いた。周りを見渡してみても、どこにも居ない。誰も気にかけていないところを見るに、席を外している理由は皆知っているだろうし、別に放っておいても良かったが、なんとなく朝の件を思い出し、平田を探すことにした。

 

 クラス全員を黙らす、場を支配する力を持っていたのは想定外だった。

 そして、平田はそれを封印している。

 上手く使えればクラスをより潤滑に動かすことができるかもしれない。

 

 オレはふと龍園を連想してしまった。

 Cクラスだったら楽だったろうな、とぼやきそうになる口を抑える。

 

 

 

 

 平田が居たのは、山内たちが伊吹を発見した場所だった。

 佐倉から場所は教えてもらっていたが、平田もまた気付いたということか、それとも堀北の指示か。

 

 オレの気配に気付いた平田はビクッと肩を揺らし、振り向いた。そして安堵したようにホッと息を吐く。

 

「綾小路くんか。伊吹さんかと思ってビックリしたよ」

「悪い。声をかけるべきだったな」

 

 平田は地面を掘り返しており、そこには何か機械が埋まっていた。

 

「それ……」

「どうやら無線機のようだね」

「龍園の所にも同じモノがあった」

「ビンゴってところかな。あまり疑いたくはなかったんだけどね……」

 

 平田はどこかやりきれないような顔をする。

 

「堀北の指示か」

「堀北さんが伊吹さんの爪の間に土が挟まっていたって教えてくれたんだ。それについて話し合って、ここに何か埋めたんじゃないかって推論になってね。今は昼食休憩だから、彼女にも気付かれないだろうし、僕が確認しに行くことになったんだ。皆には野暮用って伝えてあるよ」

「……そうか」

 

 事後報告の鬼だなんだ言っていたくせに、堀北こそ、オレに何も言わずに勝手に行動しているらしい。チーム戦には報連相が大事だというのに、頑固なところは変わらない。

 え?おまいう?なんの話だ。

 平田は掘り返したことがバレてしまわないよう、埋め直していく。

 

「綾小路くん。彼女を、どうするべきだと思う」

「直接確認を取って、リタイアを勧めるのが無難だな」

 

 オレは手伝う事はせず、切り株に座って残りの魚を食べながら平田の質問に答える。

 

「そう、なるよね」

「ただ、相手は龍園だ。そう簡単に引き下がることはしないだろう」

「それって、」

「彼女が殴られたのは事実だ。仕事を全う出来なかったという理由で、制裁が加えられるかもしれないな。それに、平田がリタイアを勧めたとクラスメイトが知れば、伊吹はやはりスパイだったのかもしれないという疑惑の目を向けるだろうな」

 

 平田は顔を歪めた。

 そして、沈痛な面持ちで手を止める。

 そんな様子の平田に、オレは大きめのため息を吐く。

 

「他クラスの生徒だぞ?平田が気に病むことじゃないだろ」

「……それでも、僕は彼女を蔑ろにすることはできない」

「まあ、伊吹をクラスに留めたままでも対抗する策は考えられる」

「僕のわがままに応えてくれるのかい?」

 

 平田はパッと顔を上げた。

 

「応えることができるかもしれない」

「……本当に?」

「ああ。だから、理由を教えてくれ。オレは平田の行動が単なる偽善だとは思えない。だからこそ、疑問なんだ。病的なまでに他者を気遣いすぎる。何のメリットもないのにだ。そこには何か深い理由があるんじゃないか?」

 

 平田は黙ったまま何かに耐えるように埋め直し、それから、立ち上がって土を払った。

 「場所を変えよう」と彼は深い森へと進んでいく。

 なんだかその時だけは、彼の背中は弱々しく小さく見えた。

 少しだけ開けた場所には細い川が流れている。キャンプ地より更に川の上流に辿り着き、砂利の上に彼は座った。オレもそれに倣う。その頃には魚も食べ終えていた。

 

 

「僕は中学二年生になるまで、どちらかというと、クラスで目立たない生徒だったんだ」

「平田が?……あまり想像できないな」

 

 いつもリーダーシップを発揮している男からはイメージが難しい。

 

「目立ちもせず。かと言って影も薄過ぎず。友達もそこそこ。本当に普通だったんだ。そんな僕には幼馴染みがいた。杉村くんっていうんだ。小学校も六年間同じクラスだったし、家も近所だったから毎日一緒に登下校してたっけな」

 

 懐かしそうに、そしてどこか儚げに平田は過去を思い返す。

 

「中学一年生になって初めて別のクラスになった。それからは、段々と交流も減っていって。まあ、それ自体はよくある話だと思う。

 でもね、僕が新しい友達と仲良くなっている裏で、杉村くんは虐めにあっていた」

 

 平田は砂利を握りしめる。

 その拳は震えていた。

 

「僕はどこにでもいる、平凡な、そして卑怯で残酷な人間だった。だから、見て見ぬ振りをした。彼は何度もSOSを出していた。言葉にはしなかったけれど。でも、ずっと。彼は、助けを求めていたんだ」

「それは……」

「いずれ虐めも飽きてやめる。不登校になって虐めはなくなる。誰かが助けてくれる。そんな希望的観測に縋って、僕は何もしなかった。ずっと仲良かった杉村くんを、赤の他人として、大事な人と捉える枠組みの隅に追いやったんだ」

 

「あの日のことは今でも夢に見るよ。サッカーの朝練で登校していた僕が教室に戻った時、杉村くんは顔を腫らして僕を待っていたんだ。ぼくは……僕は、何も言わなかった。むしろ、居心地の悪ささえ感じていた。まるで、僕の醜く浅はかな感情を突き付けられたような感じがして。彼の傷が、僕の罪そのものだったから。……そして、見せつけるみたいに、彼はその日の授業中、窓から飛び降りたんだ」

 

「死んだってことか?」

 

「脳死って判断されたみたいだよ。今でもご両親は杉村くんの快復を信じて待っている。多分。あの時、僕は一度死んだんだろうね。僕は今でも、あの日の償いのために生きている」

「だから、手を伸ばせる範囲の人を救いたいのか。それがたとえ他クラスの生徒だとしても」

「うん。この学校では矛盾を孕んだ生き方になるのは重々承知の上だった。でも、やっぱり難しいね」

 

 平田は、どうしようもない、そんな顔で乾いた笑いを漏らす。

 

 だが、今の話では説明しきれていない部分がある。

 それは、平凡だった彼が、場を支配するような力を持ち合わせていることだ。

 人の本質を見抜く観察眼は、もうSOSを見逃さないため。

 人と人とを取り持つコミュニケーション能力は、軋轢を生まないため。

 だとすれば、あの凍てつくような雰囲気はなんだ?

 

 ……今は無理に聞く必要はないか。

 

 

「合点がいったよ。平田はどんな人に対しても平等に接していた。それこそクラス関係なくな。不都合なら答えなくていいが、もしかして軽井沢との関係はフェイクだったりするのか?」

「そんなことまで分かるんだね。少しだけ、君が恐ろしいよ」

「簡単なロジックだ」

 

 オレはなんでもないように言う。

 

「……詳しくは今は言えないけど。そうだね。彼女もまた、僕を必要としていたんだ。察しが良い君なら気付くと思うけど」

「俄かには信じ難いな」

「そういう人には特有の匂いや気配がある。強く振る舞っているだけで、今の性格は本当の軽井沢さんではないんだろうね」

「へえ、そんなものも分かるのか。凄いな」

「綾小路くんにも……」

 

 何か含んだ言い方をしながらも、彼は一度言葉を切る。

 そして、真っ直ぐオレの目を射止める。

 

「今の話から分かるように、僕は君の味方だ。それだけは分かって欲しい」

「平田が敵だと考えたことはなかったな」

 

 オレは曖昧に濁した。

 もしかしたら平田があっさりと打ち明けたのは、これを言う為だったのかもしれないな。

 面倒なため軌道修正を図る。

 

「防衛は堀北に完全に任せきりだが、見た感じ大丈夫だと判断している。平田のわがままだとは言うが、無闇にCクラスに警戒されるのもマズい。だから伊吹を追い出すことは今後もないだろうな。この件に関しては平田が心配するような事はないさ」

 

 そう伝えると、平田は「ありがとう」と、どこか寂しげな笑顔を浮かべた。

 

 

 

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