電ノ望ム世界   作:砂夜†

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第五話

 鎮守府に帰った電と赤城は、すぐに一二三少将の執務室へと足を運んだ。

 執務室には一二三少将と加賀。そして恰幅の良い中年の男性がソファに座っており、そのすぐ横に、腰まで伸びる長い黒髪を持った女性が仁王立ちしていた。

「君はここの艦娘かね?」

 男性がじろりと電を見る。

「は、はい! そうなのです!」

 電は男性の階級章を見て、すぐに敬礼をする。階級は中将、一二三少将よりも上の位だ。粗相があってはならない。

「駆逐艦、電なのです」

「お久しぶりです、五十嵐中将」

 赤城も電に続き、敬礼する。

 どうやら赤城は、この男性を知っているようだ。

「うむ、そこの艦娘とは初対面だな。私は五十嵐中将。横須賀鎮守府本部に所属しておる」

 横須賀鎮守府本部、深海棲艦との戦いが最も激しい場所である。それゆえに、戦力も他の鎮守府より遥かに充実している場所だ。

「こっちは長門。私の艦隊旗艦だ」

「よろしく頼む」

 長門は電と赤城に敬礼をする。

「電ちゃん、赤城さん、今から五十嵐中将からお話がある。傾聴してくれ。」

「うむ。先日の、この鎮守府への深海棲艦の襲撃。その際に重巡リ級が現れたそうだな。この近海では非常に珍しいことだ。そこで上層部は私と長門を援軍として派遣し、なおかつこの鎮守府近海の深海棲艦を撃滅せよと辞令が下ったのだ」

 無限とも思える数を持つ深海棲艦ではあるが、どの海域にも出現するというわけではない。規則性は不明ではあるが、少数で練度の低い深海棲艦しか出現せず、攻め込まれる頻度が少ない海域というものが確かに存在する。この鎮守府近海は、その数少ない海域であった。

 強大な戦力を持って、その少数の敵を撃滅すれば、長期に渡り平和が約束される可能性は高い。

 その上層部の思惑は、電にもわかる。だが、

「え? でも、正規空母が二隻もいるから大丈夫と思うのです」

 電は不思議に思い、ついそんなことを言ってしまった。

 その瞬間、部屋の空気が凍りついた。

「んむ!?」

「い、電ちゃん! し、失礼しました。では、私達はこれで下がらせていただきます。五十嵐中将、長門さん、失礼します。」

 電の口は赤城の手によって物理的に塞がれ、そのまま部屋の外に引きずられて行ってしまう。

「ど、どうしたのですか?」

「もぅ……ビックリしたぁ。電ちゃん、不用意に発言しちゃダメよ」

「えと……どういうことなのです?」

 間違ったことは言っていなかったと思う。深海棲艦重巡リ級はたしかに強力な艦だが、それでも正規空母が二隻もいるこの鎮守府なら十分に対応できる。

「話せば長くなるんだけどね。提督は元々横須賀鎮守府本部に居てね、その時から五十嵐中将とは折り合いが悪いの」

「仲が悪いのに、助けに来てくれたんですか? すっごくいい人なのです!」

「残念ながら、現実はそうじゃないの。たぶん五十嵐中将は上層部に掛け合って、今回の援軍に志願したんでしょうね。わざわざ虎の子の長門さんまで引っ張ってきて」

「なんでそんなことをするのです?」

「分かり易く言うと……提督、一二三少将は三十歳で、五十嵐中将は五十歳なの」

 分かり易いと言うが、電には意味が解らなかった。

「つまりね、五十嵐中将は三十歳で少将になった提督が気に入らないの。たしか五十嵐中将が三十歳の時は少佐だったはずだから、なおさらでしょうね」

 電の頭の上に浮かぶ「?」マークを見て取ったのか、赤城は言葉を付け足してくれた。

「そういうものなのですか……」

「そういうものなのよ。大人の世界って複雑よね」

 二人してため息をつく。

「よぉ、電。お早いご帰還だな」

「うふふ~。電ちゃん、昨日はちゃんと眠れた~?」

 と、そこに天龍と龍田がやってきた。

「て、天龍さん……龍田さん……」

 電は身を固くする。

 この二人は電の訓練をよく見てくれる、言わば教官のような存在だ。

 特に天龍にはいつも怒鳴られており、これから怒られると思うと体が震えてくる。

「まあ、色々言いたいことはあるけどよぉ。戻ってきたってことは、艦娘としてやってく覚悟は固まったってことか?」

「はい!」

「っへ。そうか、まあ頑張りな」

 天龍は電の頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でまわすと、そのまま背を向けて歩き出した。怒鳴られると思っていた電は、その呆気なさに拍子抜けした。

「じゃあ、懲罰の時間といこうかしらぁ~。鎮守府の回りを100周してきてねぇ~」

「なのです!?」

 しかし怒鳴られるよりも衝撃的な発言が、電を脅かす。

 いつもにこにこしていておっとりな態度をとっている龍田だが、天龍よりも恐ろしい存在なのだ。

「頑張れよ~。いろんな意味で」

 天龍は笑いながら去って行く。

「ほらほら~早く走ってぇ~。電ちゃんがいなくなって心配した鎮守府のみんなのためにもぉ~」

「あぅ……はい……」

 電が今言われたくない、心を抉るような発言を遠慮なく言ってくる。

 この鎮守府で最も恐るべき存在は誰か。電は再確認させられたのだった。

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

 

「はぁ……はぁ……」

 すでに太陽は水平線上に姿を隠すために、その身体をオレンジ色に染めていた。あと一時間もしないうちに、この景色は夜の闇へと変わるだろう。

 そんな美しい景色の中で、電は息も絶え絶えという様子で走っていた。

 罰としての鎮守府百周は、なんと九十九周まで終えていた。

 身体能力は通常の人間よりも高い艦娘だが、それでも疲れるものは疲れる。

「あと……ちょっとなのです!」

 気合いを入れなおして足に力を入れ、最後の力を振り絞り速度を上げる。港、工廠を通り過ぎ、鎮守府の裏手に到達する。

「感心だな。手を抜くことなく走っていると見える」

 いつ来たのか。鎮守府の裏手に、長門がいた。

「あ、長門さん」

 長門は壁に背を預けて、腕を組み、鋭い眼光で電を見た。

 その威圧感に気圧されながらも、敬礼をして挨拶をする。

「日課の訓練なのか? 中々に厳しいな」

「あ、いえ。これはその……」

 脱走して心配をかけた罰、と言うわけにはいかない。

「ちょっと失敗してしまいまして……その罰というか」

 しかたなく、電はなれない嘘をつき、その場を切り抜けようとした。

「ほぅ。どういう失敗をしたのだ?」

「あぅ……それはその……」

 やはり慣れないことはするものではない。自主訓練です、とでも言っておけば余計なことは聞かれなかっただろう。

「いや、部外者が聞くことではないな」

 と、長門は苦笑してそれ以上の追及を止めた。

「なんにせよ、鍛えることはいいことだ。肉体を鍛え、精神を鍛え、技術を鍛え、深海棲艦との戦いに勝利しなければならないからな」

 その武人を思わせる物言いと態度が、長門の性格を電に伝えた。

 気安く話しかけられる雰囲気の持ち主というわけではないが、電は聞いてみたくなった。

「あの、長門さんはなんで戦うのです?」

 長門が戦う理由、艦娘としての存在意義を。

「戦う理由、か。そうだな……その前に一つ聞きたいんだが。電、君は深海棲艦と艦娘の秘密について、何か聞かされたか?」

「えと……はい」

 数秒悩み、電は肯定した。軍機を知ったことを咎められるかと警戒してのことだが、一二三少将の許可あってのこと、と思い出してのことだ。

「なら話は早い。私が戦う理由は、深海棲艦を助けてやることだ」

 意外にも、それは電と同じ理由だった。そしてこの口ぶりからすれば、長門は深海棲艦を助ける方法を知っているのではないか。

「あ、あの! 助ける方法があるのですか!?」

 思わず、電は聞いていた。困難な方法かもしれないが、絶対に知りたい。

「何も難しいことじゃない。いつも通り、深海棲艦を水底に返してやればいいだけだ」

「え……」

 長門は、さも当たり前という風に言った。

「で、でも。それじゃあ、助けてないのです……」

「君は何か勘違いをしていないか? まさか、深海棲艦を艦娘にすることが助けること、だとでも思っているのか?」

「ち、違うのですか?」

 図星を指され、電は狼狽える。

「……これは私の考えなんだがね、深海棲艦というのは呪詛の塊なんだよ。あの戦争のね」

「呪詛……」

 重巡リ級の眼を思い出す。たしかに、長門の言う通りの眼をしていた。

「私の最後はね、多くの船と一緒にいたんだ。敵味方問わずの、多くの船。眩しくて、とても熱い光が私の身体を焼いた。艦首に穴も開けられ、敵国の実験に使われた」

 それは言葉では言い表せないほどの屈辱だっただろう。長門の手は、怒りのせいか強く握りしめられている。

「敗軍の艦としては、当然の処置なのかもしれんがな。だが私が何よりも納得がいかないのは、自国の艦をあのような実験の標的にしたことだ。国のために戦ったというのに、満足に弔われもせずに水底に沈められる。それがどれほど口惜しいことか」

 鬼気迫る表情の長門に、電は思わず一歩後ずさってしまう。

「きっと深海棲艦というのは、そういった恨みや無念を抱えたままこの世界に来た軍艦が成ってしまうモノなんだろう。そんな恨みを持ったまま生きるのは不憫というものだ。戦場にて打倒してやることこそ、深海棲艦への救済だろう」

 それは電とは全く違う思考だった。同じ「助ける」という道を選んでも、求める結果はあまりにも違う。

「でも! それじゃあ、悲しすぎるのです……」

 電が人の姿を得て、艦娘となってからまだ月日は浅いが、それでも多くのことを学んだ。それは太陽の暖かさや、雨の冷たさ、風の匂い、仲間と過ごす楽しい時間、美味しい食事、山のようにある楽しいことを知らずにいるのは、とても不幸なことではないのか。

 できるなら、深海棲艦にもその楽しさを知ってもらいたい。そして手を取り合いたい。それこそが、電が目指す平和な世界だ。

「悲しかろうがなんだろうが、私は自分の考えを曲げる気はない」

 話はそこで終わりとでも言うように、長門は一方的に話を打ち切る。

「どの道、今回の作戦では殲滅が目的だ。君が深海棲艦に同情しようが勝手だが、私情で戦いに手を抜くことがないようにな」

 そう言い残し、長門が去って行った。

 追いかけることも言い返すこともできずに、電はそこでへたり込み俯いてしまった。

 長門の言う通り、上官の命令が深海棲艦の撃滅であるならば、それに従わなければならない。

 それに、深海棲艦を艦娘にする方法もわからないのだ。長門の言う通りにするしかない。

「うぅ……」

 だがそれでも、電は諦めたくはなかった。心まで諦めてしまえば、もう二度と深海棲艦を救うことができなくなりそうだったから。

「あぅ!?」

 突然、頭に何かがぶつかった。驚いて頭を上げると、そこには天龍が仏頂面をして立っていた。

「ったく。何やってんだオメーは。いつまでたっても百週目走り終わんねーから、心配したぞ」

「て、天龍さん……」

「なにいじけてんだよ? さっき長門さんとすれ違ったけど、なんか言われたのか?」

「それは、その……」

「あーもうイジイジしてんじゃねぇ! 迷ってるぐらいなら言っちまえ!」

 電の態度が快活な天龍の逆鱗に触れたのか、天龍は大声で電を怒鳴りつけた。

「は、はい! その……深海棲艦は、海に沈めた方がいいって言われて。深海棲艦を艦娘にするのは、無理だからって」

「へぇ。まあ、長門さんの考えが一般的だよな」

「天龍さんも……なのですか?」

「っへ。俺はそこまで頭回らねぇよ。仲間守ることを考えるだけで精いっぱいだ。俺の仲間傷つけるヤツは、深海棲艦だろうが艦娘だろうが容赦はしねぇ。そう思って戦ってるだけだ」

 明確な答えであった。迷いがなく、天龍らしい答え。

「で、お前はどうしたいんだ?」

「電は……助けたいのです。深海棲艦を助けてあげたいのです。艦娘にしてあげられたら、きっとみんな仲良くなれるのです」

「ははっ。随分上から目線だな」

「上から……ですか?」

 笑われることを覚悟していた電にとっては、天龍の言葉は予想外のことだった。

「そうだろ? 助けてあげたいとか、艦娘にしてあげたいだのって。深海棲艦のこと何も知らねぇヤツが言っても、深海棲艦からすりゃ余計なお世話かもしんねぇぜ」

「それは……そうですけど」

「でも、ま。いいんじゃねぇか? お前がそう思うんならそれでよ」

 しかし天龍は電の考えを否定しなかった。

「いいの、ですか?」

「いいもなにも、それがお前の考えだろ? だったらそれを貫けよ。誰に何を言われようがな。深海棲艦がお前の言うことを拒否しようと、お前は自分の考えを押し通せ。そんでな、言葉で何言ってもダメならよ、一発ぶん殴ってやれ」

 ニカっと笑い、天龍は握りこぶしを電の前に突き出した。

 天龍らしい乱暴で直線的なアドバイスだったが、それは電のモヤモヤとした心の雲を吹き飛ばしてくれた。

「体当たりでぶつかりゃよ、案外何とかなるかもしれねぇぜ。なんたって俺達艦娘の存在が奇跡みたいなもんだ。深海棲艦が艦娘になったりとか、ひょっとしたら和解したりとか、それぐらいの奇跡ぐらい起こったって不思議じゃねぇよ。だからそう悩むな」

「はい!」

 電は両の拳を握る。自分の思いを、その小さな手のひらで握りしめ、放さないように。

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

 

 一週間後。

 索敵艦より、この鎮守府近海を主戦場としている深海棲艦の部隊を発見したとの報告が入った。

 数はおよそ三十。八割が駆逐艦、残りの二割が軽巡洋艦という内訳であった。そして一隻だけいる重巡リ級。この鎮守府の戦力で、十分に撃滅できる相手である。

 相手の戦力を測れたことにより、五十嵐中将と一二三少将は作戦を立て始めた。

 そして、全艦娘が作戦室へと集められた。

「ではこれより、深海棲艦撃滅作戦の概要を発表する!」

 五十嵐中将は艦娘の前で、大声を張り上げる。

「少将、作戦の説明を」

「はっ! じゃあ、説明するよ」

 一二三少将は黒板の前に立ち、白墨で作戦の図を描いていく。

「作戦は基本的には、正規空母で先制攻撃をし、その後戦艦の火力を持って制圧するというものだよ」

「俺達軽巡や、駆逐艦はどうすりゃいいんだ? 戦艦の射程距離からの砲撃なんて無理だぜ?」

「天龍ちゃん、龍田さんの二人で、空母と戦艦の攻撃を逃れた艦を仕留めていく」

「でも~敵が四方八方に逃げちゃう可能性もあるわよぉ~」

「うん。その可能性もあるね。だから予め、空母と戦艦の攻撃の際に、敵が逃げやすい道を作ってやるんだ。そうすることにより、敵の行動を操作する。ここまでで、何か質問はあるかい?」

「この前みたいに~奇襲を受ける可能性はないかしらぁ?」

「今回は、こちらから攻撃を仕掛けるわけだからその可能性は低いかな。索敵艦をいつもよりも増やし、鎮守府へと攻める」

「本部からの命令は、撃滅だ。特に……この近海では初めて発見された重巡リ級だけは、確実に撃破せよ、と厳命を受けている」

 一二三少将はすまなそうに電の顔を見る。このような命令を艦娘に通達しなければならないことを、詫びるようでもあった。

「重巡リ級か。強い艦ではあるが、この長門が一撃の元に沈めてやろう」

「ふはは! うむ。その意気だぞ長門」

 五十嵐中将は満足そうに笑う。

 電は考える。このままでは雷を助けるどころではない。このままでは間違いなく、雷かもしれない重巡リ級は沈められてしまう。

 どうすればいい?

 電は何をいった所で無駄だろう。艦娘一人が何を言った所で、作戦が中止になるわけがない。それに深海棲艦の撃滅は、人間の安全にとってはいいことなのだろう。

 それならば電にできることは、後悔しないようにするだけだ。

 こうしていればよかった、あれをしていればよかったなどと後から悩まないように、深海棲艦を助けられなくても、行動するだけだ。

「あの、電は何をすればいいのですか?」

「……電ちゃんは、待機だ」

「え……待機……なのですか?」

「ああ。鎮守府を空にするのは、危険だからね。この鎮守府の警備を任せたい」

「うむ。たかが駆逐艦だが、警戒任務ぐらいはできるだろう」

 申し訳なさそう言う一二三少将とは対照的に、五十嵐中将は電を見下すように言う。駆逐艦など戦力にはならない、とでも言いたげな雰囲気だ。

 だが反論はできない。鎮守府に戦える艦娘がいなければ、万が一奇襲を受けた時など対処ができない。

 行動の自由すら許されない電は、ただ歯を食いしばって耐えることしかできなかった。

「では、作戦開始は明日だ! 六月十四日の○五○○時にこの鎮守府から出撃する! 今日は解散とする」

 五十嵐中将の一声で全員が敬礼をし、五十嵐中将と長門は部屋を出て行った。

「それじゃあみんな、明日に備えて今日はゆっくり休んでくれ」

 一二三少将、赤城、加賀、龍田と続いて退出し、部屋に残ったのは電と天龍だけになってしまった。

 そして作戦室に残ったのがこの鎮守府の仲間だけになった時、

「提督! 作戦の提案があるんだけどよぉ」

 天龍は挙手をして、立ち上がった。

「うん。お願いするよ」

 天龍がそう言いだすのをわかっていたように、一二三少将は先を促す。

「まあ、簡単な作戦なんだけどよぉ」

 作戦自体はシンプルなものだった。実現は可能だろう。だがその内容に、誰もがどよめいた。

 作戦はこうだ。撃滅作戦時に重巡リ級だけを故意に、包囲網から逃がす。そして鎮守府に待機している電が重巡リ級を迎撃する。

 重巡と駆逐艦の戦力差はあまりにも大きい。下手をすれば電も轟沈してしまうかもしれない。

「あらぁ~いいのかしらぁ~? 鎮守府の近くには町が近くにあるから、電ちゃんが負けちゃうと大勢の人が危険にさらされるかもしれないわよぉ~?」

「作戦海域はここから五十㎞は先だろ。鎮守府から電が出撃して、中ほど辺りで迎撃すりゃあ、電が沈んでも鎮守府にリ級が行くまでに俺らが迎撃できる。鎮守府に危険はねぇ。提督、どうだ?」

「……そうだね。でも、危険性皆無というわけじゃない。指揮官としては、その作戦は承諾できない。でも」

 一二三少将は席を立ち、言った。

「鎮守府へと向かう敵を電ちゃんが迎撃するということなら、それは問題はないだろうね」

 正式な作戦としては許可できないが、偶然そうなってしまったのなら止める理由はないということだろう。

「っへ。あんがとよ、提督。電、これははっきり言ってヤバイ作戦だ。嫌なら拒否すりゃいい。だけどお前がやるってんなら、俺達が協力するぜ」

 その力強さに背中を押され、電は言った。

「はい。お願いします」

 電は、戦う覚悟を決めた。

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