ゼロの武偵 作:滝瀬
キンジのやるはずだった係を手伝わされて疲れた
「秋月先輩、これどうぞ」
茶色いお茶のような物・・・紅茶か
見知らぬ人から貰うのはあまり良くないな
だが、俺の場合は左腕が今は痛い
何より、左利きの俺は昨日や一昨日は外食した程の激痛もあった事だ
ここはありがたく貰っとくのが吉だろう
それに、喉も乾いていたことだしな
「あぁ、ありがとう・・・・この紅茶は君が淹れたのか?」
甘ったるいが、後味はスッキリしており好みの味だ
上の階から無表情で見つめてくるレキをガン無視して資料をまとめていく
とにかく、忙しいな
秋月家
父親は第二王子で母は第三王女
絵に書いたような家族構成だ
しかも父親は王子という立場を捨てて日本へ逃げた
そして、今は社長という地位を得て暮らしている
「流石に、出来すぎてるって思わないか?なぁ、父さん」
「全ては俺の実力だ」
パソコンをカタカタと打ちながら話を進めていく
そんなにも忙しいらしい
まぁ、その冷静さも今から崩れる
鞄の中から分厚いホチキスで止めた資料
それを父のパソコンの横に置く
ピタリと父の動きも自然と止まった
「アラン・フォード・シリウス。それが、父さんの本名だよね?」
「それがどうした?俺は忙しいんだ、早く帰れ」
カタカタとまだパソコンを触る手を止めない
それどころか、帰れとまで言ってきた
「父さんは
ピタリ
父さんの動きが止まり、こちらを見てくる
その瞳はいつもよりも冷たい視線だ
「父さんはSSRのSランク武偵で能力はテレポート」
瞬間移動
そう言った方がわかりやすいだろう
俺の場合は能力の根本がよくそっくりなのだ
空間と空間を繋げて飛ばす
物の作られる過程を吹っ飛ばして必要な物だけを取り寄せる
「何日か前にアンデッドにあったんだ。その資料にざっと目を通してみてよ」
英国貴族に貧民街の住人
それに一般人などの死体の写真
父の顔が一瞬、歪んだ
「被害者が父さんの知り合い、もしくは同じ名前の人達なんだ」
そう、Aが殺したと思われる人物
全員が全員、何故か父さんという原点に辿り着く
Aが殺した人の中で女性が殺された事も無いのだ
「最後の一個の死体に至っては母さんのと死因が似通っている」
父さんが武偵として活動していた時期
Aの活動が活発だった時期が丁度重なっている
偶然?
生憎だが俺には共通点があるようにしか見えないんだよ
これを理論付けて証明するのは難しい
だが、俺はそんな能力はもってないんだ
謂わばこれは推理
俺は推理なんてする頭脳タイプじゃない
「俺の母さんを殺したのはAだよな?」
「・・・・零、お前は何をするつもりだ?」
眼鏡を外し、こちらをまん丸とした目でみる父
だけど、そんな事に構っている暇はないのだ
俺が知りたいのは真実だけ
はっきり言って父親は情報源でしかない
机の引き出しを引く父
対して俺は腰に刺していたグラムを抜いた
────ガンッ!
父親は引き出しから取り出した拳銃のトリガーを引いた