ゼロの武偵 作:滝瀬
「前より動きも良くなったみたいだね」
手の中で金属の繋がった紐を投げる兄
本当に化け物かお前は・・・
直系で5センチくらいの鉄球を弟に投げつける兄
そんなのがどの世界に居るんだ
この世界というか目の前に居るけども
「一夜・・・」
「もう兄さんって呼んでくれないんだ?良いよ、その方がやりやすいから」
徐に懐から石のような物を取り出した兄
石のような物質は段々、溶けていき兄の事を守るように包み込んでいる
その様子を茫然と眺めるだけだった
「久しぶりにパンクラチオンで勝負しよう」
パンクラチオン
ギリシャであった格闘技
目潰しと噛み技は禁止の格闘技だったはず
一夜はそれを今でも守っているのか守っていないのかはともかく警戒はしよう
「零、早く構えないと死ぬぞ」
低い声と先程は感じなかった程の殺気
目は笑っているが口は笑って居らず、構えない一夜
その言葉を聞くと自然に体が戦う構えをしていた
目線を上げるのは、相手の一挙一動を確認する為
顎は急所の一つでもあり、強打を受けると失神する可能性もある
左腕は、目線より少し上に拳がくるようにして、肩で顎を守れるようにした
右腕は、横腹にくっつけるように構えることで体を守るようにする
両腕はほぼ90度に曲げる事で相手のパンチを防ぎやすくなり、防御面では完璧な筈
「ボクシングで勝負するんだ。というかボクシング出来たんだね」
普通の会話
それに交えて殺気を殺し、右脚を俺の顔に目掛けて蹴り上げてくる
普通に左腕で顔を守るようにガードするも、固い
先程、身にまとった金属
その物質が硬く、元々の脚の力
この2つのせいで、攻撃が完全には防げない
少し左によろけたが持ち前の体幹で、なんとか転ばずに済んだ
「前だったらすぐに転んだのに。少し鍛えたんだ」
「生憎とあの時の俺とは多少は違う」
少し、後ろに後退
一夜の左足を、掴み後ろへと背負い投げる
「柔道も使うのずるく無い?」
空中で1回転し着地
再び、こちらを見る一夜
俺は油断はできないので再び構え直す
「兄さんは超能力まで使ってるだろ」
兄さんは屁理屈が得意だ
パンクラチオンは目潰しと噛み技を使ってはならない
だから、
「まぁ、そうなんだけどね」
大振りで再び左脚を俺の右側頭部を狙って振り上げた
咄嗟に防ぐ為に右腕を上げ、脚の動きを止める
だが、一夜の右腕が俺の鳩尾を打った
「ぐっ・・・・!」
片手を使って後ろへとバク転
だが、後ろにはすでに一夜が待ち構えていた
右側頭部に蹴りを入れられ、正面の壁の近くまで転がる
「こんなんじゃ、すぐに殺されるぞ」
歩いてこちらまで来て俺を見下ろす一夜
その姿はまるで、獰猛な野生動物が獲物を見つけたような姿だった