無事シンガポールに着き、ポルナレフの荷物は警官にゴミと見間違えられ、女の子も取り敢えずは我々に着いてくる一連の流れがスムーズに進んだ。
「部屋は……ベラ、あの子と同じ部屋でいいか?」
「あの子がいいのなら」
ちらりと女の子のほうを見るととくに嫌な顔はしていなかった。
「別に、あっちのフランス人よかずっとマシだわ」
「なんだとガキ」
「なによ!べーっ!」
「ま、まあまあ、じゃあ部屋は4つですか?」
「そうなるな、よし、君、部屋を4つくれ」
鍵が4つ出され、いの一番にジャンが鍵をとる。
「アンちゃん、って呼んでいい?」
「いいわよ」
「先に部屋に行っていてくれる?私あの人について行かなきゃ行けないの」
「フーン、わかったわ」
「一応、鍵は閉めておいてね。女の子なんだから」
「わかってるわよ!」
「それじゃあね」
軽く手を振ってジャンの後を追う。
「待って、ジャン!」
「どうしたんだ?お前はあいつの子守りだろ?」
「あの子はもう子守りする年齢じゃないでしょ。それに敵スタンド使いに狙われている私があの子の近くにいたら逆に危ないよ」
「それもそうだな、で、俺のところに来たと?」
「年長のお二人で1ペア、学生組で1ペア、じゃあ残った私たちでもう1ペアってわけ」
「ははっ!なるほどな」
雑談をしながらジャンの部屋に向かう。
ドアを開ける瞬間、部屋の中から嫌な空気がした。
ここにも敵スタンド使いがいるんだよね。
私の知らないスタンド使いのことを考えれば、ここシンガポールでも気が抜けない。
「結構綺麗な部屋だね」
「そうだな」
「……人形」
「結構ホテルにこういう人形置いてあることあるよな」
「たまにね」
「しかし、てめーら俺たちに休む暇も与えてくれないというわけか……出てこい!」
すると冷蔵庫の扉がゆっくり開き、中から傷だらけの男が出てきた。
「なかなか鋭い殺気をしているな、ひとつ名乗っておきな。このポルナレフに殺される前にな……」
「おれの名は呪いのデーボ、スタンドは『悪魔のカード』の暗示呪いに振り回され精神状態の悪化!不吉なる墜落の道を意味する。なぜおれが冷蔵庫の中にいることがわかった?」
「あんたもしかしなくてもマヌケ?冷蔵庫の中のものが全部外に出てたら誰だって不自然に思うでしょ?」
私がそう言うとデーボはほんの少しだけ顔をしかめた。
「エボニーデビル!」
「シルバーチャリオッツ!」
ジャンはすぐさま呪いのデーボの顔面をぶっ刺す。
止めようとしたが、チャリオッツのスピードを私が止められるわけが無い。
「つ、ついにやったな……フヒヒ、よくも、よくもこんなんしやがって!ウヘヘヘヘ、痛え、痛えよお~~~とっても、痛えよお~~~!!!!」
呪いのデーボは一人笑いながら落ちていった。
急いで外を見たジャンの足がぱっくり切られる。
「ッ!いつの間に切りやがった!?おいベラ!俺の足が切れる瞬間を見ていたか!?」
「見ていた、けど、本当に突然切れたの、あのスタンド使いが何かしたんだろうけど私には何が何だか」
「とりあえずジョースターさんに連絡しなくては!」
「なら足、こっちに寄越して、手当するから」
「助かるぜ」
自分の持っている小さめのショルダーバッグから救急箱を取りだし、ジャンの足を手当する。
これでホテルの人間が殺されないはず。
「ベラ、話は聞こえてたか?」
「5分後にジョースターさんの部屋」
「ああそうだ」
「早く行って損はないしもう部屋を出る?」
「そうだな……あれ、部屋の鍵がないぞ確かこの台に置いたはずなんが」
「どこ落としたの?」
「ちっ、ベッドの下だ。さっきのドタバタで吹っ飛んだか?……ん、意外と狭いな、ベラ、ベッドの下の鍵取れるか?」
「取れると思うけど、私別に小柄なわけじゃないからね。170ある女だからね?」
「俺から見たら小さいっての」
「そーですか」
ベッドの下に落ちている部屋の鍵を取るべく手を伸ばす。本音を言ったらこのベッドの下に行きたくないけど、頼まれたんだから断る訳にも行かない。
鍵を取り、ベッドの下から出ようとすると、両手両足が何かコードのようなもので縛られ、ベッドに張り付けの状態になる。
「ッ、ジャン!さっきのスタンド使いが現れたかもしれない!!」
「ああ、何か小さいのが……さっきの人形か!?」
ジャンが人形に向かってチャリオッツの攻撃を仕掛けるがちょこまか動く人形になかなか当てられない、というより下手に攻撃してベッドの下にいる私に怪我をさせてはいけないと思っているのかもしれない。
そしてギゴギゴとのこぎりの音が響く。
「ジャン!!」
「わかってらぁ!!」
「ウケケケケ!お前らに捕まえられるわけがない!よくも俺の片目を潰してくれたな!よくもよくもよくも!!!」
原作とは違い、今のチャリオッツはちゃんと見えているからエボニーデビルに攻撃がよく通る。
ボロボロになったデーボに剣先を向けながらポルナレフが質問をする。
「おいデーボ、聞きたいことがある。俺は両手とも右手の男を探している。その男のスタンドの正体を喋ってもらおうか」
「馬鹿か?スタンドの正体を人に見せる殺し屋はいねえぜ、見せたときは相手か自分が死ぬ時だからよ!てめーらのように知られちまってたらよぉ~~!弱点まで知れ渡っているのさあ~!」
「このド低俗野郎が」
エボニーデビルがばらばらに刻まれてしまった。
「お、終わったの?」
「ああ」
「それならさ、助けてくれるととても嬉しいんだけど」
「今助ける」
ジャンに助けられ二人でジョースターさんの部屋に向かう。
『やっと来たのか』なんて言われて何とも言えない感情に襲われた。
ちょっとぐらい休ませてくれてもいいのに。