アヴドゥルと少し話してから私たちはすぐに戦っているであろうジャンと典明くんのもとへと向かう。
向かうとちょうどホル・ホースが逃げようしていた。
それを承太郎が思い切りぶん殴る。
「……アヴドゥルのことはすでに知っている。彼の遺体は簡素ではあるが埋葬してきたよ」
「卑怯にもアヴドゥルさんを後ろから刺したのは両右手の男だが直接の死因はこいつの弾丸だ。さて、この男をどうする?」
「俺が判決をいうぜ、死刑!」
私が止めようとしたのと、女性が飛び出してきたのはほぼ同時だっただろうか。
「お逃げください!ホル・ホース様!わたくしには事情はよく分かりませぬがあなたの身をいつも案じておりまする!それがわたくしの生きがい!お逃げください!早く!」
「承太郎!ベラ!何ぼさっとしてんだ!ホル・ホースを逃がすなよ!」
「もう遅い」
「よく言ってくれたベイビー!おめーの気持ち!ありがたく受け取って生き延びるぜ!そしてイザベラ!また会おうぜ!」
私はホル・ホースのその言葉には何も返さず、ただにこりと笑った。
「ジャン、その女性が可哀そうよ」
「そうだぞポルナレフ、その女性も利用されている一人にすぎん。我々は先を急がねばならんのだ、奴一人に構っている時間はないんじゃ」
そんなこんなでジャンの調子もすっかり戻り、一行には少しの平和が戻ってきた。
アヴドゥルは一時離脱してしまうのには変わりないけれど。
「チュミミーン」
「ジョースターさん、何か言いましたか?」
「いや、わしは何も」
「俺だってなんも言ってないぜ?」
この声って確か、スタンド、エンプレスだったかな。
次から次へと、私たちが安心できる日なんてこの50日の間にあるんだろうか。
バスで聖地ベナレスへと向かう。
「イザベラさん」
「ん?なに?」
私は典明くんの隣に座る。
「いえ、大したことではないですけど」
「いいよ、どうしたの?」
「ホル・ホースが『また会おうぜ』と言ったのが少し気になって」
ちら、と後ろのジャンを見てから典明くんに小声で話す。
「勧誘したのよ、SPW財団に」
「えっ、なんで」
「純粋に彼が欲しかったんだよね。でも断られちゃった」
「そりゃあそうですよ」
「でも私は一回振られたぐらいじゃめげないよ。もう一度会ったら次は最初よりも熱烈な勧誘をしてやりたいわ」
「な、なんだかイザベラさんらしいですね」
「そう?」
「はい」
典明くんがいつものようにくすくすと笑う。
この子供らしい笑顔が私は大好きなのである。
「ジョースターさん腕の悪化したんですか?」
「う、うむ……」
「それ以上悪化しないうちに医者に見せた方がいいですよ」
「私が同行しましょうか」
「病院に行くだけじゃ、何もそこまでしてくれなくても大丈夫じゃぞ」
「そうですか」
「みんなはホテルで待っていてくれ」
「わかりました」
そう言ってジョセフを除いた4人でホテルに向かう。
心配だ、無理にでもついていくべきだったか……。
「ベラ」
「な、なんでしょうか」
「背負いすぎだ」
「……そう、ですね」
「少しぐらい休め、俺がいてやるから」
「ありがとうございます」
あの日夢にDIOが出てから眠るのが怖くなっている自分がいる。
でも、今なら、この人が隣にいてくれる今なら眠れそうだ。
私は、背負いすぎているのだろうか。自分ひとりこの先を知っているからというだけで全部を救おうだなんて傲慢すぎるだろうか……。
そんなことを思いながら静かに目を瞑った。