承太郎を牢屋から引きずり出した翌日、ジョセフとアヴドゥルと3人で茶室にいた。
すると承太郎が花京院を背負って茶室に来た。
「……私、救急箱持ってきますね」
ジョセフが何か言っていた気がするが、気にもとめずホリィさんに救急箱を貰いに行った。
部屋を出る瞬間、ちらりと花京院の額に目をやる。
気味の悪い肉の芽がヒクヒクと動いている。この肉の芽に花京院は支配されてしまっているのかと思うとなんとも言えない気持ちになる。
『彼が何したって言うんだ』
そんなことを言いたくもなった。
「ホリィさん。救急箱ありますか?」
「あるわよ!」
様付けはやめろと本人直々に言われたのでさん付けをしている。
……ちなみにだがこれは承太郎とジョセフにも言われた。でもジョースター家バンザイの財団職員が呼び捨てはどうかと思い、とりあえず敬称はつけている。
「さっきの男の子の手当をするの?」
「はい。一応ホリィさんも来てくださいますか?私は応急手当が苦手なので」
「あらそうなの?ベラちゃんのことだから出来ないことなんてないと思ってたわ」
「まさか、私も人の子ですから苦手なことや出来ないことの一つや二つありますよ」
「うふふ、なんだか可愛いわね」
「や、やめてください……」
「うふふっ」
ホリィさんが小さい子を甘やかすように私の頭を撫でる。
恥ずかしいから手を振り払おうかと思ったが、この聖母の優しい手を振り払える人間なんかそういないだろう。
救急箱を持って茶室に小走りで向かう。ホリィさんは洗濯物を取り込んでから来るらしい。
「救急箱、持ってきました」
花京院の血を拭き取り、簡単な手当をする。
「包帯きつくない?」
「はい、大丈夫です」
「そっか。あ、自己紹介忘れてたね。私はイザベラ・ポズウェル、君は?」
「花京院典明です」
「いい名前、典明くんって呼んでもいい?」
私がそう聞くと花京院、もとい典明くんは恥ずかしそうに目を逸らしながらこくりと頷いた。
「花京院くん、調子はどう?」
「あ、だ、大丈夫です」
「そう!よかったわ。あと花京院くん、今日は泊まっていきなさいな」
「いいんですか?」
「もちろんよ。さ、お布団の準備をしましょうね。ベラちゃん手伝ってくれる?」
「はい」
ホリィさんは夕飯の準備をするからと台所に行ってしまった。
「……あの、イザベラさん」
「ん、なに?」
「イザベラさんはどうしてこんなに良くしてくれるんですか?私は敵として来たというのに」
「そんなこと言ったって、今は違うんでしょう?」
「そう、ですけど、でも」
「年下は年上に甘えるものだよ。何も考えず眠ったら?」
「…………はい」
心做しかしょんぼりする典明くん。
なにかかける言葉はないかと言葉を探していると、あることを思い出した。
「あのさ、典明くん。私も生まれた時からスタンド使いなんだよ。君もなんでしょ?さっきジョースターさんが言ってた。だからさ、なんだか仲良くなれそうじゃない?私たち」
「!!……そうですね。僕もあなたと仲良くなりたいです」
「ぼく……」
「?、何か言いました?」
「ううん、なんにも。私ホリィさんの手伝いしてくるね」
「わかりました」
典明くんの一人称が「僕」になってた。
つまり素を出してくれたということだ。私に、今のところ、私にだけ。
……こんな嬉しいことがあるだろうか!無意識なのかは知らないが、とにかく仲良くなれたんだ。
そう思うと同時に、彼がこの先の旅で命を落としてしまうという事実が頭をよぎって思わず吐きそうになった。
私が、私がこの先の展開を変えないと。私が守らないと。
誰一人殺させない。生きて日本に帰ってきてやる。
そう心に誓った。